第2部 第3章
父の志
森沢江湖 |
ねえ聞いた? 最近、時空の穴の発生回数がすごい増えてるんだって。 |
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皆野祐樹 |
それってやっぱり、 未来から来た怪人たちが関係してるんだよね? |
磐城藍 |
まあ、そうですね。 |
磐城藍 |
格闘家が現れるケースもあるようですが、 多くの場合は未来怪人が関係していました。 |
磐城藍 |
今回訪れた京都でも、 時空の穴の発生が確認されています。 |
磐城藍 |
また未来怪人と遭遇するかもしれません。 みなさん、気をつけてください。 |
酉原剛 |
未来怪人と戦って回ってるアクアマリンちゃんが 言うんだから間違いねぇんだろうな。 |
ウサタロー |
アクアマリンが一緒に行動してくれて、 すげー心強いぜ! |
磐城藍 |
みなさんには、 超変身をお教えすると約束しましたからね。 |
森沢江湖 |
これからよろしくね、アクアマリン。 |
磐城藍 |
ええ、よろしくおねがいします。 |
磐城藍 |
それと私のことは、 磐城藍と、気軽に名前で呼んでください。 |
酉原剛 |
磐城藍か……。 いい名前だぜ。 |
名雲光 |
ウケる。 トリ頭、鼻の下伸ばしすぎなんですけど。 |
酉原剛 |
鼻の下って伸びるもんなのか? |
名雲光 |
……マジウケるわ。 |
村雨礼司 |
ところで、スピードスターは一緒じゃないのか? |
磐城藍 |
なんで私に聞くわけ? あんなバカのこと、知るわけないでしょ! |
森沢江湖 |
藍ちゃん、口調が……。 |
磐城藍 |
任務をこなしていれば、 いずれ会うこともあるのではないでしょうか。 |
村雨礼司 |
そ、そうだな。 この京都にいるのが未来怪人なら、すぐ会えるかもな。 |
皆野祐樹 |
今回の敵は、どんな怪人なの? |
セクレト |
現在のところは不明です。 |
セクレト |
手下怪人の姿は確認されているため、 ボス怪人が存在していることは確実なのですが。 |
村雨礼司 |
いつも以上に情報がない感じだな。 |
酉原剛 |
おっと、みんな気をつけろよ。 手下怪人がお出ましになったみたいだぜ! |
ウサタロー |
よし、それじゃみんな、 任務を始めようぜ! |
ウサタロー |
やっぱ、まずはボス怪人を探すところからだよな。 |
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名雲光 |
いるとしたら、京都市内じゃね? 手下怪人もいたし、あんま遠くじゃないでしょ。 |
磐城藍 |
ちょっと待ってください。 今、ボス怪人と接触するのは得策ではないのでは? |
磐城藍 |
敵が通常の怪人であれば問題ありませんが、 今回は未来怪人の可能性が高いんですよ。 |
森沢江湖 |
そっか、今の私たちじゃ 未来怪人には勝てないんだもんね。 |
酉原剛 |
分かってるぜ。 超変身が必要なんだろ! |
酉原剛 |
さあ、藍! 今すぐ俺様に超変身を伝授してくれ! |
磐城藍 |
まずはこれを見てください。 |
磐城藍 |
これはヒロイックコアというもので、 超変身するために必要なものになります。 |
村雨礼司 |
ガネゴールドが言ってたコアってやつか。 |
磐城藍 |
これを正しい手順でヒーローと融合させることで、 そのヒーローの新しい力を引き出すのです。 |
皆野祐樹 |
それが超変身なんだね! |
森沢江湖 |
すごいね~。 ヒーロー用の便利グッズって感じ。 |
村雨礼司 |
どこで手に入るものなんだ? |
名雲光 |
便利グッズなら、やっぱ百均ショップとかじゃね? |
皆野祐樹 |
アハハ、お店で普通に買えたらビックリだよね。 |
酉原剛 |
そんな便利なものがあるなら、 もっと早く俺様に使わせてくれりゃいいのによ。 |
磐城藍 |
それはもちろん、理由があるからです。 安易には使わせられないんです。 |
不動老師 |
儂からも一ついいかな。 |
皆野祐樹 |
わわっ、不動学園長!? |
不動老師 |
儂も長いことヒーロー活動をしてきたが、 そのようなものの話を聞くのは初めてだ。 |
不動老師 |
ヒーローの新しい力を引き出すアイテム……。 そんなものが、本当に存在するのかね? |
セクレト |
イエス。 私も同様の疑問がございます。 |
セクレト |
それに類似するアイテムの情報は、 学園のデータベースにもありません。 |
セクレト |
全く未知の物質。 現在は存在するはずのない物質と推測されます。 |
酉原剛 |
存在してるのに存在しないとか、 なぞなぞかよ? |
磐城藍 |
いいえ、お二人の仰るとおりです。 これは未来の技術で生み出される物質なんです。 |
磐城藍 |
ヒロイック隕石を精製して純度を高めた物質。 それがヒロイックコアです。 |
村雨礼司 |
未来の技術!? つまりおまえとスピードスターは、やはり……。 |
磐城藍 |
はい。 私たちは三十年後からやってきた未来人です。 |
森沢江湖 |
なんとなくそうなんだろうなって思ってたけど、 二人はやっぱり未来人だったんだね~。 |
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皆野祐樹 |
クロタウロスと仲間だったとか言ってたしね。 でも本人の口から聞くと、やっぱりビックリするな。 |
皆野祐樹 |
あれ? でもクロタウロスは十年後の未来って言ってなかった? |
磐城藍 |
私たちは歴史を変えるために、 色々な時空を渡り歩いてきました。 |
磐城藍 |
その渡り歩いてきた時空の一つが、 クロタウロスのいた十年後というわけです。 |
皆野祐樹 |
なるほどー。 |
村雨礼司 |
ちょっと待て。 今もっと重要なことを言わなかったか? |
村雨礼司 |
歴史を変えようとしている、だと? |
磐城藍 |
私たちの本来の時代、三十年後の未来では、 宇宙が崩壊しようとしているのです。 |
村雨礼司 |
世界どころか、宇宙ときたか。 |
磐城藍 |
歴史を変えれば、未来は救えます。 私とスピードスターはそのために戦っているのです。 |
セクレト |
なお、スピードスターとアクアマリンは、 実は数十年前から目撃されています。 |
森沢江湖 |
えーっ!? それって学園長並みじゃない? |
磐城藍 |
色々な時空を旅してきましたから……。 留まっていた時間は、どこも短いんですが。 |
不動老師 |
同名を名乗る別人かと思っておったが、 まさか同一人物だったとはな。 |
ウサタロー |
歴史って本当に変えられるもんなのか? |
磐城藍 |
はい、変えられます。 そう簡単なことでもありませんが。 |
磐城藍 |
それに、その……。 |
森沢江湖 |
どうかしたの? |
磐城藍 |
……いえ、なんでもありません。 |
不動老師 |
ふむ……磐城くん。 君たちの戦い、これが初めての挑戦ではないな? |
磐城藍 |
……はい。 これが二回目です。 |
名雲光 |
え、それって……! |
酉原剛 |
二回目って、どういうことだ? |
磐城藍 |
…………。 |
名雲光 |
やめときな、トリ頭。 多分、ウチらは知らないほうがいいことだよ。 |
皆野祐樹 |
二人にいったいなにがあったんだろう……? |
酉原剛 |
俺様、難しいことはよく分からねー! |
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酉原剛 |
分からねーが、これだけは言っておくぜ! |
酉原剛 |
藍、俺様たちはおまえの味方だ! 助けが必要なら、いつでも協力するからな! |
名雲光 |
イヒヒ。 たまにはイイこと言うじゃん、トリ頭。 |
森沢江湖 |
そうだね! 私も喜んで手伝うからね、藍ちゃん! |
磐城藍 |
みなさん、本当にありがとうございます。 |
酉原剛 |
んで、そのためにもまずは超変身しねーとな! 早くそのナントカコアを俺様にくれ! |
磐城藍 |
ちょっと待ってください。 ヒロイックコアには、ひとつ問題点があるんです。 |
皆野祐樹 |
すぐには使わせられない理由がある みたいなこと言ってたよね? |
磐城藍 |
ヒロイックコアの起動は、すぐにでもできます。 |
磐城藍 |
ただ、一度コアを起動すると、 そのヒーローは数時間の昏睡状態になるんです。 |
森沢江湖 |
意識を失っちゃうってこと? それは確かに困るかも。 |
村雨礼司 |
なんでそんなに時間がかかるんだ? |
磐城藍 |
コアが、ヒーローや怪人の体内―― とくに脳内の情報を再配置するためです。 |
名雲光 |
あ~、つまりデフラグね。 そりゃ時間かかるわ。 |
森沢江湖 |
デフラグってなに? |
セクレト |
デフラグメーション。 「断片化の解消」を意味するIT用語です。 |
名雲光 |
要するに、部屋が取っ散らかってるから 整理しましょうってこと。 |
森沢江湖 |
わ、私の部屋は散らかってないよ! |
名雲光 |
いや、ものの例えだからね。 あと帰ったら掃除しようね、エコちゃん。 |
森沢江湖 |
はい……。 |
村雨礼司 |
今の俺たちの能力は、 効率が悪いということか? |
磐城藍 |
そういう理解で大丈夫です。 |
磐城藍 |
能力が効率化されれば、余力が生まれます。 その余力が、新たな力の源となるのです。 |
村雨礼司 |
俺なりに、能力を使いこなしてるつもりだったがな。 そんなに効率悪いのか? |
磐城藍 |
一度も掃除されておらず、 足の踏み場がない部屋のような状態ですかね。 |
村雨礼司 |
そんなにか! |
村雨礼司 |
クッ……。 なんというか、ショックだ。 |
皆野祐樹 |
自分ではキレイにしていたつもりの部屋が 汚いって言われると、けっこうショックだよね……。 |
磐城藍 |
ヒロイックコアの問題点は、 昏睡状態になることだけではありません。 |
---|---|
名雲光 |
そうなん? 寝てるだけなら楽なもんだって思ってたんだけど。 |
磐城藍 |
情報の再配置というのは、 いわば自我への攻撃なんです。 |
磐城藍 |
それは深層心理に基づくイメージとなって現れ、 ヒーローの自我へと襲いかかってきます。 |
酉原剛 |
うーん。 よく分かんねーな。 |
磐城藍 |
夢の中で誰かに襲われる、と思ってください。 その誰かに負けると超変身はできません。 |
酉原剛 |
なんだ、戦って勝てばいいのか。 |
酉原剛 |
だったら楽勝だぜ! 誰が相手であろうとも、俺様は負けない! |
森沢江湖 |
私、いやな夢見そう……。 悪夢って苦手なんだよね。 |
皆野祐樹 |
そうだね。 僕もちょっと怖いかも。 |
皆野祐樹 |
でも、負けても超変身できないだけだし、 肩の力抜いて挑んでもいいのかも? |
磐城藍 |
ただ超変身に失敗するだけで済めばいいですが。 |
皆野祐樹 |
あ、やっぱり、なにかペナルティが? |
磐城藍 |
昏睡から目覚めることなく、 亡くなったヒーローを見たことがあります。 |
皆野祐樹 |
ひぇ~……。 |
村雨礼司 |
最悪、死か。 デメリットが大きいな。 |
名雲光 |
いや、大きすぎでしょ。 マジヤバすぎなんですけど。 |
酉原剛 |
強くなるためには、試練がつきものだぜ。 それを乗り越えてこそのヒーローだろ! |
ウサタロー |
強くなるために死んじまったら意味がねぇ。 オイラとしても、推奨できねぇな。 |
??? |
ほほほ。 ヒーローというのは軟弱者なのでおじゃるな。 |
酉原剛 |
なんだと! どこのどいつだ、もう一回言ってみやがれ! |
??? |
何度でも言ってやるでおじゃる。 |
??? |
ヒーローは軟弱者でおじゃる。 ならばそのコア、麿が有効活用してやるでおじゃる! |
??? |
そして麿は! コアの力を得て超怪人へと進化しようぞ! |
??? |
さあ、そのコアを麿に寄越すでおじゃる! |
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皆野祐樹 |
公家だー! |
村雨礼司 |
まるで平安時代の貴族だな。 とんでもないボス怪人が現れたもんだ。 |
??? |
ほほほ、麿のミヤビさに驚いた様子。 褒めてもなにも出ませぬぞ? |
名雲光 |
いや、褒めてないから。 |
酉原剛 |
それで、あいつはどうなんだ? やっぱり未来怪人なのか? |
ウサタロー |
多分、あいつは違うぜ! |
皆野祐樹 |
え、どうしてウサタローにそんなことが分かるの? |
ウサタロー |
オイラがあいつを知ってるからだ! あいつは、坂下大尉だ! |
坂下大尉 |
ほほほ、麿の名前を知っておるとは。 麿も有名になったものでおじゃる。 |
セクレト |
坂下大尉は、東京都出身の怪人です。 |
酉原剛 |
は?東京? そのカッコで東京出身なのかよ。 |
名雲光 |
まあ、京都の人は、 麿とかおじゃるとか言わないもんね~。 |
坂下大尉 |
うるさいでおじゃる! 麿は心が都人なのでおじゃる! |
皆野祐樹 |
そういうの、地元の人から 一番煙たがられるんじゃないかな。 |
セクレト |
坂下大尉は、京都秘密警察KBIC長官を名乗り、 京都への再遷都を要求するテロ活動を行っていました。 |
村雨礼司 |
テロリストか。 危険な怪人のようだな。 |
名雲光 |
再遷都ねぇ。 そもそも日本って、東京に遷都してない説あるよね? |
坂下大尉 |
ほほほ、日本史の闇は深いのでおじゃる。 その闇を白日の下に晒すこともまた麿の目的の一つ。 |
酉原剛 |
なんかさっきから難しい単語ばっか並んでんだけどよ! あんま難しい話しないでくれよ! |
酉原剛 |
つーかセクレトは、 なんでそんなにこいつのことに詳しいんだよ。 |
ウサタロー |
坂下大尉は十五年前、不動仮面に退治されてんだよ。 だからデータベースに情報が載ってんだ。 |
皆野祐樹 |
つまり、過去から来た怪人なんだ! |
坂下大尉 |
え? 麿、不動仮面に負けたの? |
セクレト |
イエス。 不動仮面に捕縛され、超人刑務所に収容されました。 |
セクレト |
その後、超人能力の減衰に伴い釈放。 現在は滋賀県の水道管理局に勤務しています。 |
坂下大尉 |
ま、麿を騙して惑わせる作戦でおじゃるな! 騙されないでおじゃる、者どもかかるでおじゃるー! |
酉原剛 |
未来怪人じゃないなら問題ねー! 俺様が相手をしてやるぜー! |
森沢江湖 |
……ところで、京都秘密警察KBICってなに? |
磐城藍 |
ケービーイシーで、検非違使のことかと。 |
森沢江湖 |
ただの駄洒落だー!? |
酉原剛 |
なんだこいつ、めちゃくちゃ強えーぞ! |
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皆野祐樹 |
未来怪人並みに強くない? このまま戦うのはまずいよ! |
坂下大尉 |
あ、ありえないでおじゃる……。 麿が志半ばに敗北を喫するなんて……。 |
ウサタロー |
怪人の気がそれてる! 今がチャンスだ、一度撤退するぜー! |
・ | |
・ | |
・ | |
森沢江湖 |
追ってこないみたい。 ここまで来れば大丈夫かな? |
村雨礼司 |
しかし、どうなってるんだ? 過去から来たなら、あいつにはコアがないはずだろ? |
磐城藍 |
そのはずですが……。 もしかしたら、情報配置が最適値に近いのかも。 |
森沢江湖 |
えーと、つまり……? |
磐城藍 |
生まれながらにして、 超変身に極めて近い状態ということです。 |
磐城藍 |
もっと警戒するべきでした。 時空の穴で『あいつ』に召喚されるくらいなのに。 |
皆野祐樹 |
え、『あいつ』に召喚された? 時空の穴って、人為的なものなの? |
磐城藍 |
すべてがそうではないでしょうが、 『あいつ』なら時空の穴を開けられます。 |
名雲光 |
『あいつ』って誰なん? |
磐城藍 |
とても長い話になります。 また別の機会にお話しさせてください。 |
磐城藍 |
それよりも今は、超変身のことを考えましょう。 |
村雨礼司 |
やはりあの強さの怪人と戦うには、 超変身は必要だな。 |
磐城藍 |
デメリットはさっき話したとおりです。 まずは超変身の時間を稼げる場所を探しましょう。 |
ウサタロー |
おい、本当にやるつもりか? リスクが大きすぎるぜ! |
皆野祐樹 |
そうなんだよね。 超変身せずに済むなら、それが一番かも。 |
皆野祐樹 |
……坂下大尉って、もう十分強いってことだよね? その状態で超変身したらどうなるの? |
磐城藍 |
ほとんど変化はないと思います。 デメリットのことを考えると見合いませんね。 |
皆野祐樹 |
そのこと伝えて、諦めてもらおう。 そうすれば過去に帰ってくれるかも。 |
名雲光 |
セクレトの情報を嘘呼ばわりしてるのに、 ウチらの話、信じてくれると思う? |
村雨礼司 |
ついでに言うなら、コアが目的でもないだろうしな。 いずれにしろ帰ってはくれまい。 |
皆野祐樹 |
アハハ……ですよねー。 |
森沢江湖 |
超変身するかどうかはともかく、 とにかく一度、身を隠したほうがよくない? |
---|---|
森沢江湖 |
坂下大尉さん、多分、コアを奪いに来るよね? |
磐城藍 |
手下怪人で、こちらの位置はバレてしまいます。 私もそのほうがいいかと。 |
酉原剛 |
金閣寺はどうだ? |
名雲光 |
なんで金閣? ちなみに、金閣は寺の名前じゃなくて建物の名前ね。 |
酉原剛 |
京都に行ったら一度は寄るべきだって聞いたぜ。 |
名雲光 |
ただの観光の話じゃん。 |
森沢江湖 |
だったら清水寺だよ! 私まだ清水の舞台見たことないんだよね。 |
皆野祐樹 |
そういう話なら、僕は三十三間堂がいいな。 自分の顔の仏像探してみたいんだよね。 |
村雨礼司 |
どういう話だ。 観光地なんて却下に決まってるだろ! |
名雲光 |
そうだよ、みんな。 これはどうやって身を隠すかって話なんだから。 |
名雲光 |
その点、夜の祇園なんて隠れるには最適よ? 一見さんお断りだし、怪人は入ってこれないっしょ。 |
村雨礼司 |
今は昼だし、俺たち全員一見さんだろ! |
名雲光 |
さっきから文句ばっかだし。 だったらイケメンはどこがいいと思うわけ? |
村雨礼司 |
俺か? 俺は……そうだな、京都タワーなんてどうだ。 |
村雨礼司 |
視界が開けているし、 怪人の動向を探るには持ってこいだと思うが。 |
セクレト |
却下です。 |
名雲光 |
イヒヒ! イケメンってばセクレトにダメ出しされてやんの! |
村雨礼司 |
う、うるさい! |
セクレト |
多くの人が集まる場所は、すべて推奨できません。 戦闘に巻き込む可能性があります。 |
皆野祐樹 |
要するに全員アウトってことだね。 隠れるなら、人が来ないところ選ばないと。 |
磐城藍 |
……それは少し残念ですね。 |
村雨礼司 |
なんだ磐城、おまえまで観光地を推す気か? |
磐城藍 |
純粋に、観光してみたいと思っただけです。 未来には、京都の観光産業なんて残ってませんから。 |
村雨礼司 |
む……そうか。 それはなんというか、すまない。 |
森沢江湖 |
藍ちゃん! この任務終わったら、京都巡りしようね! |
磐城藍 |
ふふ、それは少し楽しみですね。 |
磐城藍 |
それはともかく、そろそろ移動しておきましょう。 また手下怪人が近付いてきているようです。 |
酉原剛 |
俺様、最強の場所を閃いたぜ。 |
---|---|
名雲光 |
一応聞いたげるわ。 言ってみ。 |
酉原剛 |
何時間も眠りっぱなしのやつを守るなら、 飯のことも考えなくちゃいけねぇ。 |
酉原剛 |
敵が来たら戦って、素早く飯食って。 こいつが重要になってくるはずだ。 |
酉原剛 |
つまりは、ファストフード店だぜ。 素早く飯食えるし、もうこれしかねーだろ! |
名雲光 |
はい却下。 トリ頭のわりには頭使ってるけど。 |
皆野祐樹 |
何時間も立て篭もることを考えるなら、 やっぱりホテルとかかな? |
セクレト |
万が一、見つかった場合が危険です。 また、他の宿泊客を巻き込む可能性も考えられます。 |
森沢江湖 |
人がいなくて隠れられる場所か~。 やっぱり街中は難しいんじゃないかな? |
皆野祐樹 |
そうすると、あそことかどうだろう……? |
・ | |
・ | |
・ | |
名雲光 |
んで、結局こうなったと。 |
皆野祐樹 |
竹林ならあまり目立たないし、 人も少なくていいんじゃないかな? |
村雨礼司 |
建物よりはいいんじゃないか。 |
磐城藍 |
それでは早速始めましょう。 誰から行きますか? |
酉原剛 |
それはもちろん、俺様からだぜ! |
磐城藍 |
他の方は? |
名雲光 |
ウチは様子見。 まずはどんなもんか見せてもらうわ。 |
森沢江湖 |
私はちょっと……。 死んじゃうかもしれないし、怖いかも。 |
皆野祐樹 |
僕もゴメン。 一番最初はキツイな。 |
村雨礼司 |
なら決定だな。 |
村雨礼司 |
最初に超変身するのは、俺だ。 |
酉原剛 |
なんでだよ! |
村雨礼司 |
悪夢なら見慣れている。 まずは俺が行って、様子を見てこよう。 |
酉原剛 |
俺様だって悪夢ぐらい、怖くもなんともねーぜ! |
村雨礼司 |
酉原、頼む。 昏睡中の俺のことを任せられるのは、お前しかいない。 |
酉原剛 |
! |
酉原剛 |
へっ……礼司にそう言われちゃー仕方ねーな。 いいぜ、俺様に任せておけ! |
名雲光 |
うわ、チョロッ。 |
皆野祐樹 |
名雲さん、シーッ! |
磐城藍 |
そうですか……あなたから。 |
村雨礼司 |
問題でもあるか? |
磐城藍 |
いいえ、なにも。 |
磐城藍 |
それではヒロイックコアを用意します。 礼司様も、心の準備を……。 |
村雨礼司 |
まずは俺が行って、そこで得た情報を共有する。 そうすることで、全員の成功率を上げるぞ。 |
---|---|
名雲光 |
イケメン……。 ウチのために身体を張ってくれるのね? |
村雨礼司 |
断じておまえのためではない。 |
名雲光 |
ま、情報は多いほうがいいし。 ウチは大歓迎だよ。 |
皆野祐樹 |
僕も話を聞かせてもらえると助かるな。 |
名雲光 |
これはトリ頭には任せらんないし、 イケメンが立候補してくれてマジ助かるわ。 |
酉原剛 |
んなもん直感で動けばいいじゃねーか。 |
名雲光 |
この雑さだもん。 |
磐城藍 |
未来の世界には、脳内の様子を確認できる モニターがあったのですが。 |
磐城藍 |
すみません。 そこまでは用意できていないんです。 |
セクレト |
脳内のモニターならば、私にお任せください。 |
村雨礼司 |
セクレト、できるのか? |
セクレト |
イエス。 意識が途絶えない限り、通信することも可能です。 |
森沢江湖 |
夢の中の村雨くんと喋れるの? セクレトってそんなことまでできるんだ! |
セクレト |
既存技術を組み合わせることで十分可能です。 |
名雲光 |
んじゃ、ウチらはここで、 イケメンの頭の中覗かせてもらおっか。 |
村雨礼司 |
嫌な言い方だな……。 できればおまえには見てほしくないんだが。 |
名雲光 |
いやん。 ウチに隠し事? |
村雨礼司 |
そのうち、おまえの頭の中も 覗き見られるんだってことを忘れるなよ! |
名雲光 |
ウチの頭の中知りたいの? イケメンってば、いやらしいんだから。 |
村雨礼司 |
この話はここまでだ! |
村雨礼司 |
磐城、さっさと始めてくれ! |
磐城藍 |
こちらも用意できました。 それでは礼司様、こちらに横になってください。 |
ウサタロー |
本当にやるのか、村雨? |
ウサタロー |
おまえのことだ、リスクは分かってんだろうけどよ。 無理はするんじゃねーぞ。 |
村雨礼司 |
最悪の事態ばかりを考えても仕方がない。 |
村雨礼司 |
スピードスターやアクアマリンにもできたんだ。 俺にもできるはずさ。 |
ウサタロー |
分かった。 んじゃ気合い入れて行ってこい! |
名雲光 |
イケメン。 気をつけてね。 |
村雨礼司 |
……ああ。 俺が寝てる間、こっちのことは頼んだぞ。 |
??? |
…………が…………で、 ……というわけだ。 |
---|---|
村雨礼司 |
む……? ここは教室か? |
村雨礼司 |
いつの間に眠って……。 いや、もしかしてここは夢の世界なのか? |
??? |
……本日の授業はここまで。 |
村雨礼司 |
なっ!? あれはまさか……ケアテイカー!? |
ケアテイカー |
各自、復習しておくように。 以上だ。 |
村雨礼司 |
ま、待ってくれ! いったいなにを話していたんだ? |
村雨礼司 |
俺はなにも聞いてないんだ! 頼む、もう一度授業を! |
ソルダート・レッド |
待ちたまえ、村雨くん! |
ソルダート・ブルー |
授業中に居眠りとは感心しないな。 優秀な君らしくないじゃないか。 |
村雨礼司 |
おまえたちはソルダート戦隊? すまないが、そこを通してくれないか。 |
ソルダート・グリーン |
少し待ちたまえよ。 私たちは君に話があるのだ。 |
村雨礼司 |
通す気はない……か。 これが磐城の言っていた自我への攻撃なのか? |
ソルダート・ホワイト |
なにをブツブツ言っているのかね? |
村雨礼司 |
いや、なんでもない。 それで俺になんの用だ? |
ソルダート・ブラック |
村雨くん、君は完璧だ。 |
村雨礼司 |
え? |
ソルダート・レッド |
学園の誰よりも強く、冷静な判断力を持っている。 君は、我々にとって憧れの的だったのだ。 |
ソルダート・ブルー |
だが、我々は強くなった! ケアテイカー先生の教えを受けて、成長したのだ! |
村雨礼司 |
ケアテイカーの、教えだと……? |
ソルダート・グリーン |
そうだ! 我らソルダート戦隊は、真のヒーローとなったのだ! |
ソルダート・ホワイト |
手合わせを願おう! 村雨くん……いや、ストライカー! |
村雨礼司 |
ちょっと待て。 俺にそんな気はないぞ! |
ソルダート・ブラック |
逃げるのかね? らしくないじゃないか、ストライカー。 |
村雨礼司 |
くっ……やはり避けては通れないのか? |
ソルダート・レッド |
そうだ。 構えたまえ! |
村雨礼司 |
おまえたち、ケアテイカーからなにを教わったんだ? |
ソルダート・ブルー |
フフフ、なんだと思う? 戦えば分かるかもしれないぞ。 |
ソルダート・グリーン |
では行くぞ、ストライカー! |
村雨礼司 |
でやーっ! |
---|---|
・ | |
・ | |
・ | |
名雲光 |
うわ、すっご。 これって本当に夢の中なん? |
セクレト |
イエス。 村雨様の脳内を映像化したものになります。 |
皆野祐樹 |
さっき、ケアテイカーがいたよね。 あれってやっぱり、本物ではないんだよね? |
磐城藍 |
ここにあるものは、 基本的に礼司様の深層意識が作り出した幻影です。 |
森沢江湖 |
つまり、村雨くんの記憶の中のケアテイカー っていうことなんだね。 |
磐城藍 |
はい。 ただ、再配置中はイレギュラーも多いのです。 |
磐城藍 |
例えば、父親であるケアテイカーの情報は、 礼司様の遺伝子内に存在しています。 |
磐城藍 |
その遺伝子内のケアテイカーの情報が、 コアの力を借りて、動き、話すとしたら……? |
森沢江湖 |
えーと、村雨くんの知らないケアテイカーが、 村雨くんの夢の中に出てくるってこと? |
名雲光 |
そんなことありえんの? |
磐城藍 |
それがありえるぐらい、 再配置中はなにが起こるか分からないんです。 |
酉原剛 |
夢の中で戦うっつったら、 定番の自分自身かなーって思ってたぜ。 |
磐城藍 |
もちろん、それもありえますが、 下手な想定はしないほうが身のためですよ。 |
磐城藍 |
私が知っている中では、 超人能力による外部からの介入という例もありました。 |
磐城藍 |
どこで、なにがどう作用するか分からない。 それが情報の再配置なのです。 |
皆野祐樹 |
それ、村雨くんに教えてあげたほうが よかったんじゃ? |
磐城藍 |
想定ができない以上、 言っても言わなくても変わりません。 |
皆野祐樹 |
そうかもしれないけどさ。 |
森沢江湖 |
ああっ! みんな、モニターのほうを見て! |
森沢江湖 |
村雨くんが、手下怪人に囲まれちゃってる! |
酉原剛 |
次から次へと、いろいろ来るんだな。 |
磐城藍 |
あまり見た目に惑わされないほうがいいです。 姿は違えど、どれも同じ、自我への攻撃ですから。 |
名雲光 |
敵は変幻自在ってわけね~。 |
酉原剛 |
うおおおっ、頑張れ礼司! 俺様がついてるぜ! |
ウサタロー |
オイラたちは、ただ見てるしかないんだよな~……。 |
村雨礼司 |
待ってくれ、ケアテイカー! |
---|---|
ケアテイカー |
……なんの用だ。 |
村雨礼司 |
さっきの授業のことで質問だ。 授業でいったいなにを話したんだ? |
村雨礼司 |
ソルダート戦隊に、なにを教えた? |
ケアテイカー |
大したことじゃないさ。 |
村雨礼司 |
嘘をつくな! あいつらは確かに強くなっていた。 |
村雨礼司 |
あんたの、教えでだ! それと同じものを、俺にも教えてくれ! |
ケアテイカー |
彼らは、自分自身の力で強くなっただけさ。 俺が手を差し伸べたわけじゃない。 |
村雨礼司 |
なぜ勿体ぶる? あんたは、俺の記憶の中のケアテイカーなんだろう? |
村雨礼司 |
あんたの知っていることは、 俺もすでに知っていることのはず。 |
村雨礼司 |
だったら素直に教えてくれてもいいだろう! |
ケアテイカー |
すでに知っているはずのことに、 なぜそこまで執着する? |
村雨礼司 |
そ、それは……。 |
ドクトル・フィッシュ |
お取込み中、申し訳ないのですが、 少しよろしいですかな? |
ドクトル・グッピー |
村雨くんに、折り入ってお話があるのですぞ。 |
村雨礼司 |
ちょっと待て。 今取り込み中なんだ。 |
ドクトル・フィッシュ |
実は吾輩たち、常日頃から村雨くんに 認められたいと思っていたのですぞ! |
ドクトル・グッピー |
ギョギョ~! 大胆不敵な告白でありますな! |
村雨礼司 |
人の話を聞け! |
ドクトル・フィッシュ |
そうはいきませぬ。 今日こそは、アレを撤回していただかねば。 |
ドクトル・グッピー |
「頭の水槽が割れたら即死しそう」という、 吾輩たちに関する失礼な認識のことですぞ。 |
村雨礼司 |
なぜそのことを!? 誰にも言ったことがないのに! |
村雨礼司 |
って、これが俺の夢の中だからか……。 |
村雨礼司 |
そのことは謝る。 だからもうどこか行ってくれないか? |
ドクトル・フィッシュ |
ウォ!言葉など不要! 吾輩たち、激オコなのですぞ~! |
ドクトル・グッピー |
ギョ! 心の底から認めさせてこそでありましょう! |
村雨礼司 |
くそっ、やっぱり問答無用なのか! |
村雨礼司 |
ケアテイカーもいつの間にかいなくなってる! 早くあとを追わないと……! |
村雨礼司 |
おまえたち、さっさとそこをどけ! さもないと、頭の水槽カチ割るぞ! |
坂下大尉 |
このような場所で、映画鑑賞会かえ? なかなかミヤビな遊びをしているでおじゃるな。 |
---|---|
坂下大尉 |
……おや、映っておるのはそなたらのお仲間かえ? |
皆野祐樹 |
うわっ、坂下大尉! どうしてこんなところに? |
坂下大尉 |
それはもちろん、 そなたらを追ってきたからでおじゃる。 |
酉原剛 |
そりゃいつかは見つかるだろうと思ってたけど、 いくらなんでも早すぎだろ! |
坂下大尉 |
ほほほ、驚いたでおじゃるか? 麿は鼻が利くのでおじゃる。 |
森沢江湖 |
頑張って隠れる場所探したのに~! |
坂下大尉 |
ほほほ、そう言うでない。 |
坂下大尉 |
観光客や歴史的文化財を傷つけることは、 麿としても避けたいところ。 |
坂下大尉 |
そなたらの京都への気遣い、まこと大儀でおじゃる。 |
皆野祐樹 |
大儀ついでに休戦というのはどうでしょう? |
坂下大尉 |
するわけなかろう。 |
皆野祐樹 |
ですよねー。 |
坂下大尉 |
じゃが、そなたらには敬意を表し、 正々堂々と戦いを挑むことを約束するでおじゃる。 |
坂下大尉 |
そこなイケメンにも手は出さぬ。 見るに、意識を失っているようじゃしの。 |
皆野祐樹 |
意外と紳士的だ! |
坂下大尉 |
ほほほ、麿は紳士ではなく公家。 公家的な振る舞いと評してもらいたいでおじゃるな。 |
名雲光 |
マジウケるわ。 公家の振る舞い方なんて知らんけど。 |
坂下大尉 |
そこなモニターに写る映像、そしてコア。 察するに、そこなイケメンは超変身の最中かえ? |
磐城藍 |
それは……。 |
坂下大尉 |
ほほほ、貴重な情報提供、感謝するでおじゃる。 どうやら超変身にはリスクがあるようでおじゃるな。 |
坂下大尉 |
そしてコアとやらは、 一度使うとなくなるようなものではない様子。 |
磐城藍 |
御明察とでも言うべきなんでしょうが、 察しがよすぎて腹が立ちますね。 |
坂下大尉 |
それでは、正々堂々とそなたらを打ち負かし、 コアを手に入れさせてもらうでおじゃるよ。 |
酉原剛 |
そんなことさせねーぞ! 俺様たちがここにいる意味、分かんだろーが! |
坂下大尉 |
ほほほ、民は公家に平伏すものでおじゃる。 そのことを分からせてやるでおじゃるよ。 |
ウサタロー |
おまえたち、分かってるな! 村雨が目を覚ますまで時間を稼ぐぞ! |
坂下大尉 |
まずは前座から。 者ども、行くでおじゃる~! |
村雨礼司 |
くそ、すっかり時間を取られてしまった。 |
---|---|
村雨礼司 |
まさか頭の水槽が拘束具だったとは……。 解き放たれたあいつらの強さはヤバかったな。 |
村雨礼司 |
……夢の中とはいえ、どうしてこうなった。 |
村雨礼司 |
いや、そんなことよりもケアテイカーだ! |
村雨礼司 |
さっきから学園中走り回ってるのに、 全然姿が見当たらない。 |
村雨礼司 |
ここはいったいどうなってるんだ、セクレト! |
セクレト |
ようやく呼んでいただけましたか。 私のことは忘れてしまっているのかと。 |
村雨礼司 |
若干、状況についていけてなかった。 サポートを頼む。 |
セクレト |
イエス。 まずは外界との通信を確立します。 |
酉原剛 |
礼司、なにをボサッとしてやがる! さっさと試練終わらせてこい! |
村雨礼司 |
いきなりご挨拶だな。 外でなにかあったのか? |
森沢江湖 |
ボス怪人に見つかっちゃったの~! |
村雨礼司 |
なんだと! いくらなんでも早すぎないか? |
皆野祐樹 |
村雨くん、ちょっとゴメン! 今喋ってる余裕は……うわ~っ! |
村雨礼司 |
皆野!? くそっ、悠長にしてる時間はなさそうだ! |
村雨礼司 |
早く目覚めないと……。 だが、どうすればいいんだ? |
セクレト |
アクアマリン様の言葉を借りるなら、 試練とは情報の再配置に伴うものです。 |
セクレト |
そのことから、試練を推し進めていくことで、 再配置の時間を短縮できる可能性が考えられます。 |
村雨礼司 |
なるほど……。 |
村雨礼司 |
そういうことならケアテイカーを探してくれ! カギを握ってるのは、おそらくあいつだ! |
セクレト |
申し訳ありません。 夢の中の捜索は、私には不可能です。 |
村雨礼司 |
それもそうか。 となると、やはり自分の足で探すしか……。 |
セクレト |
アクアマリン様の話から推測するならば、 試練は向こうからやってくるはずです。 |
セクレト |
ケアテイカーが本当に試練であるならば、 時が来れば、必ず村雨様の前に現れるでしょう。 |
村雨礼司 |
そう言われて、ただ待っていられるほど、 気は長くないんだ。 |
村雨礼司 |
やっぱり自分の足で探すぞ。 早く俺の前に現れてくれ、ケアテイカー……! |
ウサタロー |
通信が切れちまった! 村雨は無事なのか? |
---|---|
セクレト |
イエス。 問題ありません。 |
セクレト |
しかし、現状況における通信の継続は困難。 脳内モニターは一時中断します。 |
名雲光 |
イケメンのことは任せたよ、セクレト。 こっちはウチらがなんとかするから。 |
坂下大尉 |
ほほほ、なかなか頑張るでおじゃるな。 |
坂下大尉 |
では、そろそろ真打登場と参るでおじゃる。 ここからは麿が相手でおじゃるよ。 |
酉原剛 |
そのふざけた口調、なんとかなんねーのか? 気が抜けるぜ。 |
坂下大尉 |
ま、麿の口調がふざけている!? |
坂下大尉 |
公家にしてKBIC長官にして大尉たるこの麿に、 なんたる侮辱でおじゃるか! |
酉原剛 |
KBIC長官って偉いのか? |
磐城藍 |
KBICが検非違使を意味するなら、 要するに警察組織の偉い人のことですね。 |
坂下大尉 |
いかにも、麿は偉いのでおじゃる。 もっと麿を敬うでおじゃるよ! |
磐城藍 |
ただ、大尉はそう偉くはありません。 |
坂下大尉 |
おじゃ!? |
皆野祐樹 |
大尉って、軍隊の尉官のことだよね? 少佐の下だっけ? |
磐城藍 |
いえ、この場合は平安時代の官職のひとつ、 衛門府の大尉を意味するものかと。 |
名雲光 |
あ、そっちの大尉? でもそれだとおかしくない? |
名雲光 |
だって大尉は四等官の第三等級、判官相当でしょ? でも長官は四等官の第一等級だし、それって矛盾―― |
酉原剛 |
はいそこまで! 俺様、難しい話は嫌いでーす! |
森沢江湖 |
えーっと、つまりはどういうこと? |
名雲光 |
全部自称のデタラメで、全然偉くないってこと。 設定くらい、ちゃんと練りこんでほしいわー。 |
坂下大尉 |
デタラメじゃないでおじゃる! 麿は京の平和のため、日夜戦っているのでおじゃる! |
名雲光 |
なにと戦ってんだか。 京の都でエイリアンとでも戦ってるわけ? |
坂下大尉 |
キィィィ! さっきから好き勝手言いおって! |
坂下大尉 |
そなたらは、もう許さないでおじゃる! 麿を侮辱したこと、後悔させてやるでおじゃる~! |
クリオーネ |
ごきげんよう、ストライカー♪ |
---|---|
ゴーストトーク |
こんにち……わ。 |
村雨礼司 |
チッ、またか。 |
クリオーネ |
よろしかったら、 ゴハンでもご一緒しませんか? |
ゴーストトーク |
ヨモちゃんがね…… 村雨くんと仲良くなりたいんだって。 |
ゴーストトーク |
あ、ヨモちゃんっていうのはね、 私のお友達の幽霊で…… |
村雨礼司 |
そこをどけ。 |
ゴーストトーク |
え……? |
村雨礼司 |
幻影め……! さっきから鬱陶しいんだよ! |
ゴーストトーク |
い、いきなりどうしたの……? |
クリオーネ |
不機嫌ですわね。 もしかしてお腹減ってるんじゃありません? |
クリオーネ |
だったら一緒にゴハン食べましょうよ。 お腹がいっぱいになれば、きっと笑顔になれますわ♪ |
村雨礼司 |
もういいから、黙れと言ってるんだ! さっきから邪魔なんだよ! |
クリオーネ |
あらあら、失礼しちゃいますわね~。 |
クリオーネ |
そんな失礼な人は食べちゃおうかしら。 食べてよろしい?ていうか食べますわね? |
ゴーストトーク |
食べちゃって……いいと思う。 |
ゴーストトーク |
だってね……死んで幽霊になれば、 私と友達に……なってくれると思うし……。 |
ゴーストトーク |
ヨモちゃんと三人で……楽しく遊ぼ? |
クリオーネ |
まあ、それって素敵ですわ! |
クリオーネ |
私はお腹いっぱい、ゴーストトークにはお友達が! み~んな幸せになれますわね♪ |
クリオーネ |
ということで、食べますわね。 |
クリオーネ |
足からがいいかしら。それとも頭から? あ~ん、どっちから齧りましょう? |
ゴーストトーク |
足からが……いいと思う。 ほら……幽霊も、足がないでしょ……? |
クリオーネ |
そうですわね♪ 悲鳴も聞きたいですし、頭は最後まで残しましょう♪ |
村雨礼司 |
無駄話をする気はない。 悪いが、力尽くで推し通らせてもらう。 |
クリオーネ |
そんなこと言わないで。 私のために、囀ってくださらない? |
村雨礼司 |
手加減はなしだ、恨むなよ! |
ゴーストトーク |
痛いことしたら……すごく恨むよ……。 |
ゴーストトーク |
でもね……どれだけ恨んでも、 あなたが死ねば……お友達になれるから。 |
ゴーストトーク |
だから、私のために死んで……! |
酉原剛 |
ぐわーっ! |
---|---|
皆野祐樹 |
この人、やっぱり強い……! |
ウサタロー |
ああ。 ふざけたナリしてやがるが、実力は本物だぜ! |
坂下大尉 |
ほほほ、これが公家の力。 平民どもめ、麿に平伏すがいい。 |
名雲光 |
いや、公家関係なくない? 超人能力っしょ? |
磐城藍 |
冴え渡る剣技……。 それがあなたの超人能力なんですね? |
坂下大尉 |
ほほほ、いかにも。 KBICは剣豪でなければ務まらぬのでおじゃる。 |
酉原剛 |
それがどうした! こちとら凶器持ちヒールとの対戦は慣れてんだよ! |
酉原剛 |
うおお~! その程度のリーチ差、俺様のテクニックで埋めてやる! |
坂下大尉 |
ほほほ、生八ッ橋のように甘いでおじゃる! |
酉原剛 |
ぬあっ!? 危ねぇ、手元で剣が伸びやがった! |
ウサタロー |
坂下大尉の間合いは見た目以上だ! おまえたち、うかつに近付くんじゃねぇ! |
坂下大尉 |
ほほほ、伊達でKBIC長官を 名乗ってるわけではないのでおじゃるよ。 |
酉原剛 |
なんてやつだ。 学園長はこんなやつに勝ったってのかよ! |
坂下大尉 |
負けておらんもん! 麿、まだ不動仮面と戦っておらんもん! |
名雲光 |
子供かっつの。 |
森沢江湖 |
でも、学園長は戦ったことあるんでしょ? だったらなにかアドバイスもらえないかな? |
セクレト |
その件で、不動学園長より メッセージを預かっています。 |
皆野祐樹 |
アドバイス用意してくれてたんだ! 早く聞かせて! |
不動老師 |
今回、あえて儂から言うことはない。 君たちの……特に村雨くんの可能性を信じておる。 |
森沢江湖 |
信用してくれるのは嬉しいけど、 やっぱりアドバイス欲しかったな~。 |
坂下大尉 |
ほほほ、不動仮面め。 麿を甘く見たこと後悔させてやるでおじゃる。 |
坂下大尉 |
そなたの教え子をこの剣で八つ裂きにし、 そしてコアの力を得て、麿はそなたを倒す! |
名雲光 |
うへ~、やる気じゃん。 本気出されたヤバいかも? |
磐城藍 |
ここは私にお任せを。 礼司様が目覚めるまで、時間を稼いでみせましょう。 |
村雨礼司 |
ハア、ハア……。 ケアテイカー、どこにいる! |
---|---|
セクレト |
体力の消耗が激しいようです。 一度、休憩することを推奨します。 |
村雨礼司 |
そんな暇あるか! 外ではあいつらが怪人と戦ってるんだぞ! |
村雨礼司 |
少しでも早く試練を終わらせて、 あいつらを助けに行くんだ! |
村雨礼司 |
それに、こんなふざけた夢はごめんだしな。 あまり長居はしたくない。 |
セクレト |
焦りは禁物です。 ゆっくり確実に行くべきではないでしょうか。 |
村雨礼司 |
第一、ここは夢の中だぞ? 夢の中で休んで、体力が回復すると思うか? |
セクレト |
データがありません。 しかし、試してみる価値はあるかと。 |
村雨礼司 |
俺は疲れてなどいない。 このまま行く。 |
セクレト |
しかし、村雨様の脳波に乱れが見られます。 |
村雨礼司 |
再配置の影響だろう。 とにかく心配しなくていい、俺は大丈夫だ。 |
デスティニーローズ |
ちょっと村雨くん、無茶はよくないよ? そのままだと死んじゃうんだから! |
村雨礼司 |
……次の相手はおまえか。 |
デスティニーローズ |
うわ、怖っ。 殺気がすっごい伝わってくる。 |
デスティニーローズ |
それってクラスメイトに向けていい顔? 殺し屋みたいな顔してるよ? |
デスティニーローズ |
もうちょっと肩の力抜こうよ。 五霞ちゃんはみんなの味方なんだよ? |
村雨礼司 |
現実では、な。 |
村雨礼司 |
さっさとやるぞ。 立ちはだかるやつは、全員倒す。 |
デスティニーローズ |
あっきれた。 そんなだから、お父さんに会えないんだよ! |
村雨礼司 |
うるさい。 知ったような口を利くな! |
デスティニーローズ |
ホント、人の話聞かないんだから。 |
デスティニーローズ |
しょうがないなぁ。 それじゃ特別に、五霞ちゃんが相手してあげるね☆ |
村雨礼司 |
こんなところで負けてられるか。 負けてしまえば……すべてがおしまいなんだ! |
デスティニーローズ |
うんうん、そうだね。 元気出して頑張ろうね。 |
デスティニーローズ |
こっちも全力で行くから。 村雨くんの本気に応えてあげる! |
村雨礼司 |
行くぞ……! |
磐城藍 |
はあっ! |
---|---|
坂下大尉 |
ほほほ、なるほど。 そなたは多少できるようでおじゃるな。 |
坂下大尉 |
しかし、すでに見切ったでおじゃる。 そなたは麿の敵ではない。 |
森沢江湖 |
そんな、互角に戦えてるのに! |
磐城藍 |
決め手に欠けるのは確かですね。 私だけでは押し切れません。 |
皆野祐樹 |
スピードスターがいてくれればなぁ。 今回は来ないのかな? |
森沢江湖 |
ああっ! 祐樹くん、その話題は! |
磐城藍 |
は?光正? あんな役立たずいなくても、私一人で勝てるっつの! |
皆野祐樹 |
磐城さん、落ち着いて!僕が悪かったよ! もちろん僕たちだけで勝てるよね! |
磐城藍 |
……取り乱しました。 とにかく、なにか手を打たなければ。 |
坂下大尉 |
ほほほ、ならば時間をやるでおじゃる。 |
皆野祐樹 |
え、なんで? |
坂下大尉 |
このままでは趣がない。 一方的ではつまらぬ。 |
坂下大尉 |
公家は趣を重んずるのでおじゃる。 麿を楽しませる策でも考えてみるがよいぞ。 |
酉原剛 |
野郎、余裕ぶっこきやがって。 目にもの見せてやるぜ! |
ウサタロー |
だが、これはチャンスだ。 まずは村雨の様子を確認しようぜ。 |
皆野祐樹 |
セクレト、そっちの様子はどうなってるの? |
セクレト |
村雨様の脳波に乱れが見られます。 決して楽観視できる状態ではありません。 |
皆野祐樹 |
もしかして、ヤバいの? |
セクレト |
連戦による疲れと思われます。 |
セクレト |
相手は学園のクラスメイト全員。 村雨様はその全員を打ち破っております。 |
名雲光 |
クラスメイト全員ってマジ? それってウチらも含まれるわけ? |
セクレト |
イエス。全員です。 |
酉原剛 |
異議ありだ! 俺様が礼司に負けるはずがねぇ! |
名雲光 |
文句があるなら、 イケメンが目覚ましてからいいなって。 |
名雲光 |
んで、その感じだと、試練も終盤なんじゃね? もうすぐイケメン起きるかも? |
磐城藍 |
経過時間的にも、そうだと思います。 |
ウサタロー |
なら、村雨が目を覚ますまで粘ろうぜ。 |
酉原剛 |
守りの一手か。 いいだろう、怪人の攻撃はこの肉体で受け止める! |
磐城藍 |
私にもお任せください。 硬さなら自信がありますので。 |
坂下大尉 |
そろそろ話し合いは終わったでおじゃるか? 策は決まったかえ? |
酉原剛 |
おう! いつでも来い! |
坂下大尉 |
いい返事でおじゃる。 ならば、そろそろ決着をつけるでおじゃるよ! |
村雨礼司 |
ようやく現れたか、ケアテイカー。 |
---|---|
ケアテイカー |
変なこと言うじゃないか。 おまえが俺を追ってきたんだろう、礼司? |
ケアテイカー |
ところでクラスメイトたちはどうした? お前に用事があるようだったが? |
村雨礼司 |
全員倒してきた。 俺のクラスメイト、全員をだ。 |
ケアテイカー |
呆れたやつだな。 あの人数を、一人で倒してきたのか? |
村雨礼司 |
必ず勝たなければならなかった。 それだけだ。 |
ケアテイカー |
やろうと思ってできることじゃないだろう。 大したもんだよ。 |
ケアテイカー |
それで、今の気分は? クラスメイト全員を打ち倒してどうだった? |
村雨礼司 |
あれは、あんたの差し金なのか? |
ケアテイカー |
馬鹿を言うな。 俺がなぜそんなことをしなければならない? |
村雨礼司 |
試練の手引きをしているのは、 あんただと思っていた。 |
ケアテイカー |
俺ではないさ。 |
ケアテイカー |
とにかく、そこまでして俺を追ってきたんだ。 話ぐらい聞いてやらないとな。 |
ケアテイカー |
なんでも言ってみろ。 俺に聞きたいことがあるんだろう? |
村雨礼司 |
いや、なにもない。 |
ケアテイカー |
授業の質問がしたいと言っていたじゃないか。 |
村雨礼司 |
そう思っていたが、俺の思い違いだった。 おまえはケアテイカーじゃない。 |
村雨礼司 |
他のクラスメイトと同じ、ただの幻影だ。 そんなやつから学ぶことなど、なにもない。 |
村雨礼司 |
あんたもまた、俺の前に立ちはだかる者の一人。 俺が打ち倒すべき敵だ。 |
ケアテイカー |
敵だなんて、傷つくじゃないか。 それが親に対して言うことか? |
村雨礼司 |
なんとでも言え。 |
ケアテイカー |
まったく、誰に似たんだか。 |
ケアテイカー |
だがまあ、いいだろう。 俺もいいパパになりたいと思っていたところなんだ。 |
ケアテイカー |
構えろ、礼司。 おまえが『何か』を掴む手助けをしてやるよ。 |
村雨礼司 |
なにがパパだ。 今さら幻影から学ぶことなどあるものか! |
村雨礼司 |
行くぞ、ケアテイカー! あんたを倒して、その先に進ませてもらう! |
ケアテイカー |
負けた負けた。 強くなったなぁ、礼司。 |
---|---|
村雨礼司 |
なにが負けただ! ちょっと拳を交えただけだろう! |
ケアテイカー |
相手の力量を図るには十分だ。 おまえはとても強くなった、それで十分だろ? |
村雨礼司 |
ふざけるな、本気を出せ! 手を抜かれたことぐらい、俺にだって分かる! |
ケアテイカー |
別に本気じゃなくてもいいだろう。 おまえと力比べできただけで、パパは大満足だぞ。 |
村雨礼司 |
いいわけあるか! 伝説のヒーローがそんなことでいいのか! |
ケアテイカー |
いいんだよ。 勝ち負けにこだわりはないんでね。 |
ケアテイカー |
おまえも、こだわる必要はないんだぞ。 |
村雨礼司 |
なんだと!? |
ケアテイカー |
おまえは別に、 ソルダート戦隊に負けてもよかった。 |
ケアテイカー |
ただ終わった後、彼らに教えを請えばよかったんだ。 俺が授業でなにを話していたかと。 |
村雨礼司 |
それは……。 |
ケアテイカー |
それで話は終わっていたはずなのに、 おまえは意地を張ってこんなところまで……。 |
ケアテイカー |
ま、そんな礼司も嫌いじゃないけどな。 |
村雨礼司 |
どういうことなんだ……? |
ケアテイカー |
だからな、ヒーローは負けてもいいんだよ。 |
ケアテイカー |
それで死んでしまったとしても…… まあ、大局的に見れば、決して悪いことじゃない。 |
ケアテイカー |
ヒーローにとって一番大切なのは、志だ。 |
ケアテイカー |
なにを守り、なんのために生きるか。 その志を伝えることこそが、ヒーローの戦いだ。 |
ケアテイカー |
その志さえ受け継がれていけば、 俺たちの歩くこの道に、終わりなんてない。 |
ケアテイカー |
そして礼司。 俺の志は今、おまえと共にある。 |
ケアテイカー |
おまえが俺の志を継ぎ、 俺の歩いてきた道の続きを歩いているんだ。 |
村雨礼司 |
俺があんたの……父さんの、志を? |
ケアテイカー |
それがなにかなんて、今さら言う必要ないだろう? |
村雨礼司 |
……ああ、そうだな。 俺は父さんのことを、よく知っているよ。 |
村雨礼司 |
父さんが守ったもの。戦ったもの。 それはヒーローを目指す俺の道標そのものだった。 |
村雨礼司 |
父さん、ありがとう。 俺が進むべき道が、今ハッキリと分かった。 |
ケアテイカー |
やれやれ、やっと認めたか。 結局全部教える羽目になるとはな。 |
ケアテイカー |
おまえは意固地すぎるんだよ。 もっと素直になったほうがいいと思うぞ。 |
村雨礼司 |
……まったく。 一言余計なんだよ、父さんは。 |
ケアテイカー |
ハハハ、すまないな。 生憎と、俺はお節介でね! |
酉原剛 |
うりゃー! |
---|---|
坂下大尉 |
効かぬと言っているでおじゃる。 |
坂下大尉 |
はあ、これだから平民は困る。 趣というものをまるで理解していないでおじゃる。 |
坂下大尉 |
そなたら、本当に策を立てたのかえ? さっきから退屈で退屈で仕方がないのでおじゃるが? |
名雲光 |
ウチらの策は、もうちょい時間かかるんだよね~。 |
坂下大尉 |
くだらぬ時間稼ぎであろ。 もうよい、終わりにするでおじゃる。 |
皆野祐樹 |
わわっ、どうしよう。 これ以上の時間稼ぎは難しそうだよ! |
ウサタロー |
と言っても、オイラたちの頼みの綱は村雨だ。 こいつが起きてくれないと、どうにもならねぇ! |
磐城藍 |
まさか、失敗したのでしょうか……? |
酉原剛 |
そんなつまんねーヘマするようなやつかよ! 礼司を信じるんだ! |
森沢江湖 |
お願い、村雨くん! 早く目を覚まして~! |
坂下大尉 |
ほほほ、辞世の句を詠むでおじゃる。 麿が責任をもって、不動仮面に送り届けてやろうぞ! |
皆野祐樹 |
こ、このままじゃ……! |
坂下大尉 |
おじゃ!? このミヤビな光はいったい!? |
皆野祐樹 |
もしかして……! |
村雨礼司 |
みんな、待たせてしまったな。 ようやく戻ってくることができた。 |
皆野祐樹 |
よかった! 無事だったんだね、村雨くん! |
酉原剛 |
それで、肝心の超変身のほうはどうなんだ? |
村雨礼司 |
成功のようだ。 今までよりも強くなったと、はっきり分かる。 |
村雨礼司 |
これが超変身か……ものすごいパワーだ。 恐ろしささえ感じるほどにな。 |
名雲光 |
なんかコスチュームも変わってね? ふーん、いいじゃん。 |
坂下大尉 |
ほう、それが噂の超変身でおじゃるか。 なかなか趣があるではないか。 |
村雨礼司 |
みんな、ここまでよく頑張ってくれた。 あとは俺に任せてくれ。 |
村雨礼司 |
あの怪人は、俺が倒す。 |
坂下大尉 |
ほほほ、いとをかし。 超変身の力、試してやろうではないか。 |
坂下大尉 |
先ほどから退屈しておったところじゃ。 せいぜい麿を楽しませるでおじゃる! |
村雨礼司 |
見ているがいい! これが俺の新しい力だ! |
村雨礼司 |
これでも食らえ! |
---|---|
坂下大尉 |
おじゃ~! |
ウサタロー |
すげー! 村雨があの坂下大尉を圧倒してやがる! |
酉原剛 |
これが超変身の力ってわけか! カーッ、俺様も早く超変身したいぜー! |
村雨礼司 |
どうやら形勢は逆転したようだな。 |
坂下大尉 |
ぐぬぬ、まさかこれほどとは。 あな恐ろしや、超変身……! |
村雨礼司 |
どうだ、俺の新しい力は。 楽しんでくれているか? |
磐城藍 |
キャ~!カッコイイ~! これはもう勝ったも同然よ~! |
皆野祐樹 |
磐城さんの性格がまた豹変してる~! |
森沢江湖 |
すっごいテンション上がってるね。 ……でもなんで急に変わったんだろ? |
磐城藍 |
降参なさい、坂下大尉! 超変身したお父様に勝てる怪人なんていないんだから! |
森沢江湖 |
え、お父様? |
磐城藍 |
あっ。 今のはカットでお願いします。 |
名雲光 |
いやいやいや、今さらそれはないっしょ! え、なに、イケメンの娘ってこと? |
磐城藍 |
黙秘権を行使します。 |
名雲光 |
それって否定しないってこと!? うっそ、やっだ、マジ~!? |
坂下大尉 |
ほほほ、ずいぶんと若いお父上でおじゃるな。 若さの秘訣はなんでおじゃる? |
村雨礼司 |
…………。 とりあえず戦いの続きをやらないか。 |
坂下大尉 |
麿、気になって戦いどころじゃないでおじゃるな~。 説明してほしいでおじゃる~。 |
村雨礼司 |
……ちょっと待ってくれ。 俺もその、寝耳に水というか……。 |
皆野祐樹 |
その~、状況がややこしいんだけど、 実は彼女、未来から来ていてですね……。 |
村雨礼司 |
そんな説明しなくていい! |
名雲光 |
母親は誰なんですか! 認知はなさったんですか! |
村雨礼司 |
そんな話をしている場合か! というか俺に分かるわけないだろ! |
坂下大尉 |
そんな場合じゃないのは麿も同意でおじゃる! |
坂下大尉 |
今が勝機! 背中ががら空きでおじゃるよ、ストライカー! |
村雨礼司 |
ぐわっ、しまった……! |
坂下大尉 |
このまま一気に形勢を押し返すでおじゃる! |
村雨礼司 |
させるものか! |
村雨礼司 |
とにかく余計な話はあとだ! これで終わりにするぞ、坂下大尉! |
坂下大尉 |
む、無念でおじゃる……。 京都への再遷都を果たすという麿の……夢が……。 |
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村雨礼司 |
勝負あったようだな。 |
ウサタロー |
やったぜ、村雨の勝利だー! |
坂下大尉 |
麿はどうなるでおじゃる……? |
磐城藍 |
あなたには元の時代に戻ってもらいます。 |
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村雨礼司 |
坂下大尉は元の時代に戻ったか……。 |
村雨礼司 |
よし、これで任務終了だな! みんな、さっさと学園に戻ろう! |
森沢江湖 |
その前に、まずは聞くこと聞かないとだよね! |
森沢江湖 |
ねえ、村雨くんがお父さんって本当なのか? |
名雲光 |
母親は誰!? イケメンは誰と結婚しちゃうわけ!? |
磐城藍 |
え、えーとですね……。 |
村雨礼司 |
おまえたち、もうやめろ! |
村雨礼司 |
なんでも聞こうとするな。 磐城も困ってるだろう。 |
村雨礼司 |
話せることと、話せないことがあるはずだ。 それに前の話を忘れたのか? |
村雨礼司 |
未来は変えることができるんだ。 おまえたちは、余計なことを知って未来を変える気か? |
森沢江湖 |
あう、そういえばそうだったね。 |
名雲光 |
めっちゃ気になるけど……しゃーないか。 |
磐城藍 |
すみません、助かりました。 仰るとおり話せないことも多いので……。 |
磐城藍 |
でも、私……。 お父様とご一緒できて、とても嬉しいんです。 |
森沢江湖 |
親子っぽくていい場面だね~。 |
村雨礼司 |
そうだな。 父親と会えると嬉しいよな。 |
村雨礼司 |
実は磐城、おまえのおかげで、 夢の中で俺も父親と再会できたんだよ。 |
磐城藍 |
そうですか、おじい様と……。 それは本当によかったです。 |
磐城藍 |
……って、ちょっと待ってください! |
磐城藍 |
おじい様との再会もいいですけれど、 実の娘との再会も喜びましょうよ! |
村雨礼司 |
いや、急に娘とか言われても……。 実感がわかないというか。 |
磐城藍 |
お父様、ひどい! 私が産まれたときみたいに喜んでくださいよ! |
村雨礼司 |
ええ……娘が産まれたときみたいに……? |
名雲光 |
なにそれ超見たい。 やってやりなよ、イケメン。 |
村雨礼司 |
高校生に無理言わないでくれ。 まったく想像がつかん。 |
村雨礼司 |
……それより、ひとつだけ質問してもいいか? |
磐城藍 |
お母様のことは絶対に話せませんから。 |
村雨礼司 |
そうじゃなくて、その……。 俺は、いい父親になれていたか? |
磐城藍 |
はい! お父様は、最高の父親です! |
村雨礼司 |
……そうか。 |
磐城藍 |
今の質問ってどういう意味ですか? |
村雨礼司 |
大したことじゃないさ。 |
村雨礼司 |
さあ、今度こそ学園に帰ろう。 次なる任務が、俺たちを待っているぞ。 |