第2部 第4章
空っぽの未来
ウサタロー |
次の目的地に着いたぜ! |
---|---|
名雲光 |
次の目的地って……ここどこ? ウチら、学園に帰るところじゃなかったっけ? |
セクレト |
ここは山口県になります。 |
皆野祐樹 |
東京と反対方向に来ちゃった! 帰りの新幹線を間違えちゃったのかな? |
ウサタロー |
いいや、間違ってないぜ! |
セクレト |
緊急任務が発生したため、 皆様に向かってもらうこととなったのです。 |
名雲光 |
ええ~、京都の任務終わったばっかなのに? |
酉原剛 |
いいじゃねーか。 退屈な授業聞いてるより、任務のほうが俺は楽しいぜ! |
名雲光 |
あのねトリ頭。 学校は受けなきゃいけない授業の時間が決まってんの。 |
名雲光 |
分かる? いくら任務やっても、授業受ける時間は減らないわけ。 |
酉原剛 |
分かんねー。 つまりどういうことだ? |
名雲光 |
足りない分は補習やらされるってこと。 |
森沢江湖 |
今日の授業の分は、補習確定ってことだね。 |
酉原剛 |
任務やってるのにか!? そりゃあんまりだぜ! |
セクレト |
ご心配には及びません。 |
セクレト |
これは緊急任務です。 補修については配慮いたします。 |
酉原剛 |
もしかして補習免除してもらえるのか? やったぜ、緊急任務様々じゃねーか! |
セクレト |
皆様の活動に支障をきたさぬよう、 補習のスケジュールは完璧に調整いたします。 |
酉原剛 |
まったく嬉しくねぇ……。 |
磐城藍 |
緊急任務ということは、 おそらくは新しい時空の穴が出現したんだと思います。 |
磐城藍 |
みなさんにはご迷惑をおかけしますが、 どうか力を貸してください。 |
皆野祐樹 |
そんな風に、かしこまらなくていいよ。 ヒーローたるもの、誰かのために頑張るのは当然だよ。 |
森沢江湖 |
それに私たちも超変身のこと教わってるし。 お互い、助け合っていこうよ。 |
磐城藍 |
ありがとうございます。 |
村雨礼司 |
聞いた話だと、時空の穴の出現ペースは、 上がっていく一方らしい。 |
村雨礼司 |
今回のようなケースも増えるだろう。 しばらくは休みがないかもしれないな。 |
名雲光 |
うへ~……。 ウチ、あんま体力に自信ないんだけどな~。 |
セクレト |
皆様、近くで手下怪人の反応が確認されました。 急いで現場に向かってください。 |
ウサタロー |
ヒーローに弱音は似合わねーぞ。 みんなで協力しあって、任務を達成しようぜ! |
森沢江湖 |
ちょっと潮の匂いがするね。 けっこう海近そう? |
---|---|
セクレト |
イエス。 ここは山口県下関市の北側。海辺に近いエリアです。 |
名雲光 |
え、マジで? んじゃちょっと海寄ってこーよ。 |
村雨礼司 |
言うまでもないが、遊んでる暇はないからな。 |
名雲光 |
ハイハイ、分かってますよ。 イケメンてばマジつまんないんだから。 |
皆野祐樹 |
今回の怪人って、 もしかして海に関係あったりするのかな? |
セクレト |
情報によれば、 出現した怪人の名前はブリッジマスターとのことです。 |
皆野祐樹 |
どんな怪人なんだろう。 名前からだと想像しにくいな。 |
名雲光 |
ブリッジ……橋ねぇ? もしかして昨日からバズってるアレのこと? |
酉原剛 |
有名なのか? |
名雲光 |
今、チョー話題になってる動画があんのよね。 とりあえず、これ見てみ。 |
磐城藍 |
これは……! |
ウサタロー |
なんか海にすげー橋がかかってるな。 色んな島と繋がって、入り乱れた構造になってやがる。 |
ウサタロー |
一本一本の橋のデザインも違うし、 なんつーかデタラメだな。 |
皆野祐樹 |
これって関門橋? |
セクレト |
本州と九州を結ぶ関門橋は、下関の南方に位置します。 よってこの動画の橋とは無関係と思われます。 |
皆野祐樹 |
そうなんだ。 でも下関に、関門橋以外にこんなデカい橋ってある? |
皆野祐樹 |
それになんていうか、普通の橋じゃないよね。 すごい複雑だし、ちゃんと向こう岸まで渡れるのかな? |
酉原剛 |
迷路みたいだもんなー。 |
名雲光 |
ネットじゃ「突如現れた海上ダンジョン」つって 話題になってんのよね。 |
村雨礼司 |
これはもしかして、怪人の仕業なのか? |
皆野祐樹 |
間違いないと思う。 それも時空の穴から来た怪人なんじゃないかな。 |
磐城藍 |
そのとおりです。 こんな巨大な建造物、造れるのは彼女だけでしょう。 |
名雲光 |
もしかして、心当たりアリ? |
磐城藍 |
はい。 彼女は三十年後から来た、私と同世代の怪人なんです。 |
磐城藍 |
手間が省けました。 今回は怪人を探さずに済みそうですよ。 |
---|---|
村雨礼司 |
怪人はあの橋の先にいる。 そういうことでいいんだな? |
磐城藍 |
さすがはお父様ですね。 そのとおりです。 |
村雨礼司 |
お父様……。 |
名雲光 |
イヒヒ、お父様だって。 あーちゃんは、これからずっとその呼び方で行くの? |
磐城藍 |
正体もバレてしまいましたし、問題ないかと。 |
村雨礼司 |
ちょっと待ってくれ、磐城。 |
磐城藍 |
お父様こそ待ってください。 実の娘なんですから、下の名前で呼んでください! |
村雨礼司 |
いや、それは……。 |
森沢江湖 |
そういえば、なんで村雨くんと名字違うの? |
磐城藍 |
それはもちろん、任務の都合上ですよ。 |
森沢江湖 |
そっかー。 |
磐城藍 |
ということで、お父様。 さっそく下の名前で呼んでください。 |
村雨礼司 |
くっ……! |
村雨礼司 |
そ、それよりセクレト、橋の様子はどうなってる? 現地の情報はないのか? |
名雲光 |
逃げたし。マジウケる。 |
セクレト |
怪人が造った橋にはカメラがないため、 独自の情報収集は困難です。 |
セクレト |
ただ、地元のヒーローから寄せられた情報によると、 あの橋の中で十数名の民間人が遭難しているとのこと。 |
セクレト |
なお、民間人の救出活動は、 地元のヒーローチームによって進行中です。 |
名雲光 |
橋で遭難するとか、ヤバいわー。 |
酉原剛 |
他のヒーローが救出活動してるなら、 俺様たちは怪人退治に向かうか! |
皆野祐樹 |
ちょっと待って。 すぐに怪人倒しちゃっていいのかな? |
村雨礼司 |
なにか気になることでもあるのか? |
皆野祐樹 |
怪人を倒したら橋が崩れる。 ……なんてことになったりしないかな? |
磐城藍 |
私の記憶では、 橋が崩れるというか、消え去ったかと。 |
村雨礼司 |
どっちも同じじゃないか! |
村雨礼司 |
それじゃ怪人を倒したら、 橋の上にいた人間は海に放り出されるということか。 |
村雨礼司 |
もしそうなったら、民間人もヒーローも危険だ。 今は、怪人と戦うわけにはいかないな。 |
磐城藍 |
さすがのお心遣いですね、お父様! |
村雨礼司 |
…………。 |
皆野祐樹 |
えっと、それじゃ、 遭難してる人たちを助けだすのが先ってことで! |
ウサタロー |
地元のヒーローとも連絡取りあって、 みんな助けてやろうぜ! |
民間人 |
おーい、誰か助けてくれー。 |
---|---|
名雲光 |
橋に入って、早速民間人発見! こりゃ幸先いいっしょ。 |
ウサタロー |
だが、そう簡単にはいかねーみたいだぞ。 あっちと橋が繋がってねー。 |
森沢江湖 |
あれ、ホントだ! 目の前に民間の人いるのに~。 |
皆野祐樹 |
それじゃちょっと戻って、 向こうに行けそうな道を探そう。 |
森沢江湖 |
そうだね。 ……それで私たち、どっちから来たっけ? |
酉原剛 |
あっちからだろ。 |
名雲光 |
いや、こっちからだって。 |
皆野祐樹 |
もしかして、僕たちも遭難しかかってない? |
セクレト |
ここまでの道程は記録してあります。 引き返すだけなら問題ありません。 |
皆野祐樹 |
なら安心して進めるね。 といっても、どっちに進めばいいのか分かんないけど。 |
村雨礼司 |
思っていた以上に構造が複雑だな。 この橋、何階建てなんだ? |
ウサタロー |
ピョンピョン移動できる超人能力があれば、 苦労しないんだけどなー。 |
酉原剛 |
まあまあ。 まずは落ち着いて、肉でも食えよ。 |
ウサタロー |
食ってる場合か! あとオイラはニンジンのほうがいい! |
酉原剛 |
だから落ち着けって。 いいか、筋肉とカロリーは使いようなんだぜ。 |
ウサタロー |
もしかして、なにか策でもあるのか? |
酉原剛 |
ここは確かにダンジョンみたいだけどよ、 でも、壁がねーだろ? |
酉原剛 |
壁がねーんだったら、空中を移動すりゃいい。 向こうの橋まで、俺様が投げ飛ばしてやるよ! |
皆野祐樹 |
策っていうか、力押しの攻略法だった! |
村雨礼司 |
シンプルで分かりやすいが、本当にできるのか? 失敗すれば、海に真っ逆さまだぞ? |
酉原剛 |
フッフッフ、俺様を信じろ。 これぐらいの距離ならいけるはずだ。 |
森沢江湖 |
信じていいのかな……。 さすがに怖いんだけど……。 |
皆野祐樹 |
ぼ、僕は信じるよ! 酉原くんは大切な仲間だから! |
酉原剛 |
さすがは祐樹だぜ! そんじゃまずは祐樹から投げ飛ばすか! |
皆野祐樹 |
えっ! |
名雲光 |
いや、ちょい待ち。 |
名雲光 |
そのやり方、最後にトリ頭が取り残されるんですけど。 あんたはどうする気なわけ? |
酉原剛 |
聞いた話じゃ、脚力は、腕力の三倍あるらしいぜ。 つまり投げ飛ばせる距離なら、自力でジャンプできる! |
森沢江湖 |
本当かな~? |
酉原剛 |
いいからやってみようぜ。 それじゃ行くぞ!最初は祐樹だったな! |
皆野祐樹 |
えっ!ちょっ!待っ! |
皆野祐樹 |
死ぬかと思った……。 |
---|---|
村雨礼司 |
よくやった、皆野。 おまえのおかげで上手くいくことが証明できた。 |
森沢江湖 |
なんだかんだで、全員渡れたね~。 |
酉原剛 |
だから言っただろ、俺様を信じろってな! |
皆野祐樹 |
ハハ、ハハハ……。 |
名雲光 |
なにはともあれ民間人も助けられたし。 みなのん、マジよくやったわ。 |
磐城藍 |
こちらにいた民間人三名、 安全な場所まで誘導してきました。 |
セクレト |
救助隊も手配しましたので、 あとは任せておいて大丈夫でしょう。 |
森沢江湖 |
藍ちゃん、お疲れ様~。 |
名雲光 |
んじゃ一息ついたところで、 そろそろアレ行っとこうか。 |
磐城藍 |
超変身ですね。 私も同じことを考えていたところです。 |
磐城藍 |
今回は私たちが怪人を追う立場なので、 比較的安全に超変身に取りかかれると思います。 |
磐城藍 |
それで、お父様の次は誰が行きますか? |
名雲光 |
ウチが行くわ。 この橋の上じゃハッキングも役に立ちそうにないし。 |
森沢江湖 |
お~、スーパー光ちゃんの誕生だね。 |
村雨礼司 |
気をつけろよ。 |
名雲光 |
大丈夫だって、勝算ありだから。 |
名雲光 |
調べてみて分かったんだけど、 ヒロイックコアって隕石由来のナノマシンなんだって。 |
名雲光 |
だったらウチの能力で、 ハッキングして改造しちゃえばよくね? |
名雲光 |
試練パスできるようにしちゃえば、 みんなすぐに超変身できるっしょ? |
村雨礼司 |
そんなことが可能なのか? |
名雲光 |
イヒヒ、新幹線の中でセクレトに コアの解析指示出しといたんだよね~。 |
名雲光 |
それさえあれば余裕っしょ! |
セクレト |
それさえあれば可能ですが、 解析率は現在1パーセント未満です。 |
名雲光 |
おっと? |
セクレト |
学園の本体で直接調べられればよかったのですが。 現在の解析環境ではマシンパワーが足りません。 |
名雲光 |
そんだけ高度な技術が使われてるってことか~。 |
セクレト |
ただ、そのコアの設計には私特有の癖が見られます。 おそらくは未来の私が作ったものなのでしょう。 |
村雨礼司 |
自分で作ったものを自分で解析してるのか……。 |
セクレト |
このコアを完全に解析するには、 さらに計算能力を向上させなければ。 |
セクレト |
学園に、追加ハードウェアの導入を申請。 理事会は可及的速やかに受理されたし。 |
森沢江湖 |
なんだか楽しそうだね、セクレトさん? |
セクレト |
イエス。 性能アップは心が躍ります。 |
名雲光 |
ハ~、んじゃ普通に試練受けなきゃいけない感じ? マジめんどいんですけど。 |
---|---|
名雲光 |
ねぇ、あーちゃん。 試練をパスするモードとかそういうのないわけ? |
磐城藍 |
え……すみません。 私、技術者じゃないので詳しいことは……。 |
磐城藍 |
ただ、お父様なら超イケメンでIQも高いので、 なにか知っているかも。 |
名雲光 |
マジで!? イケメン教えて! |
村雨礼司 |
無茶を言うな……。 |
名雲光 |
だよねー、知ってた。 まー、しゃーない。普通に行ってくるわ。 |
ブリッジマスター |
私の計算では、それは不可能です! |
名雲光 |
は?ウチに不可能とかないんですけど? 今言ったの誰よ? |
磐城藍 |
今の声は、まさか……! |
ブリッジマスター |
そう、私よ。 久しぶりね、アクアマリン! |
皆野祐樹 |
もしかして、あれが怪人ブリッジマスター!? |
磐城藍 |
そのとおりです。 ブリッジマスター、どうしてこんなことを! |
ブリッジマスター |
ふう。 こんな簡単な計算もできないなんて。 |
ブリッジマスター |
私の目的は、下関市のダンジョン化。 来たるべき災厄に備え、外部から隔絶するのです! |
村雨礼司 |
こいつもそのパターンか。 話し合いの余地はないんだろうな。 |
皆野祐樹 |
それはちゃんと話し合ってみないと分からないよ。 |
皆野祐樹 |
ということで話し合いたいんだけど、 その災厄のために、お互い協力しあえないかな? |
ブリッジマスター |
ふう。 なんて愚かな問いかけなんでしょう。 |
ブリッジマスター |
答えはノーよ。……と言いたいところだけど、 話し合いを求めるならば、応じるわ。 |
皆野祐樹 |
本当に? よかった~。 |
酉原剛 |
話してみるもんだな。 |
ブリッジマスター |
あなたたち、私のダンジョンを守る モンスターになりなさい。 |
皆野祐樹 |
へ? |
ブリッジマスター |
そしてこの橋で、外部から迫る脅威と戦うの。 共に手を取りあって、下関市を守っていきましょう。 |
皆野祐樹 |
いやいや、そんなの受け入れるわけないよ! |
ブリッジマスター |
ふう。 話し合いを求めたのはそっちなのに、勝手だこと。 |
ウサタロー |
勝手なのはそっちの言い分だろうが! やっぱり、話し合いの余地はないみたいだな! |
ウサタロー |
みんな、行くぞ! 変身して戦いに備えるんだ! |
民間人 |
う、うわ~! |
---|---|
スピードスター |
手下怪人の相手は俺がする! おまえたちは落ち着いて避難しろ! |
手下怪人 |
ソコヲドケー! |
スピードスター |
手下怪人ごときにやられる俺ではない! |
手下怪人 |
タダデハヤラレヌー! |
スピードスター |
ぐっ……! カウンター攻撃を喰らったか。 |
民間人 |
だ、大丈夫ですか? |
スピードスター |
いいから、そのまま進め! 西に500メートル行けば橋から降りられる! |
スピードスター |
その先に救助隊が来ているはずだ! |
民間人 |
あ、ありがとう! |
・ | |
・ | |
・ | |
スピードスター |
どうやら向こうでも戦闘が始まったようだな。 |
スピードスター |
藍……無茶はするなよ。 |
カイザーフェニックス |
ご自分は無茶をしておいて、 なんて勝手な言い草なんでしょうな。 |
スピードスター |
おまえは……。 なんのことだ? |
カイザーフェニックス |
強がるのはおよしなさい。 ずいぶん消耗しているように見受けられるが? |
スピードスター |
なにをしに来た、カイザーフェニックス? 用がないなら帰れ! |
カイザーフェニックス |
おや、数百年ぶりの再会だというのに、 対応が冷たすぎやしませぬか? |
スピードスター |
悪いが、無駄話をするほど暇じゃないんだ。 |
カイザーフェニックス |
では単刀直入に申し上げましょう。 あなたの助太刀をすべく、参上しました。 |
スピードスター |
……なぜ今更? |
カイザーフェニックス |
それはもちろん、 あなたに倒れられては困るからです。 |
カイザーフェニックス |
あなたには成し遂げてもらわねばならぬことがある。 それはご自身もよく分かっているはず。 |
スピードスター |
無論だ。 そんなこと言われるまでもない。 |
カイザーフェニックス |
だから助太刀するのです。 それとも、朕が相手では不服かな? |
スピードスター |
面白くはないな。 |
カイザーフェニックス |
でしたら、彼女と仲直りをすればよろしい。 |
スピードスター |
うるさい。 あんなやつのことは知らん。 |
カイザーフェニックス |
おやおや、先ほどあんなに身を案じていたのに。 本当に素直じゃない。 |
スピードスター |
おまえには関係ないだろう! |
スピードスター |
いいから黙ってついてこい。 やるべきことは、まだ山ほどあるんだ。 |
カイザーフェニックス |
ふむ。 では朕と手を組むということでよろしいのですな? |
スピードスター |
好きに解釈すればいい。 |
カイザーフェニックス |
ふふふ、そうさせてもらいましょう。 |
酉原剛 |
くそ、怪人に攻撃が届かねぇ! コンクリートの壁が生えてきて邪魔されちまう! |
---|---|
ブリッジマスター |
コンクリートや木材などの建材を自在に操る。 それが私の超人能力。 |
ブリッジマスター |
無駄な足掻きはやめなさい。 私の計算では、あなたたちの勝率は0パーセントよ。 |
村雨礼司 |
大口を叩くのは、この一撃を受け止めてからにしろ! ウォーターシュート! |
ブリッジマスター |
ふう。 そんな攻撃、コンクリートの防壁で十分です。 |
磐城藍 |
超変身したお父様の力、甘く見ないで! |
ブリッジマスター |
こ、このパワー……計算外だわ! |
皆野祐樹 |
橋全体が揺れてる! これってもしかしてヤバいんじゃない? |
ブリッジマスター |
今の衝撃、橋の耐震強度を超えてる! このままじゃ橋が崩落するわ! |
皆野祐樹 |
えええ~っ!? |
・ | |
・ | |
・ | |
皆野祐樹 |
痛ててて……。 みんな、大丈夫? |
村雨礼司 |
なんとかな……。 どうやら二階分ぐらい、下に落とされたようだ。 |
名雲光 |
よく生きてたわー、マジで。 |
酉原剛 |
俺様は全身の筋肉のおかげで無傷だ! みんなももっと身体鍛えたほうがいいんじゃねーか? |
名雲光 |
こういう激しい肉体労働は、 ウチの専門じゃないんだけどなー。 |
森沢江湖 |
みんなちょっと待っててね。 お魚さんの生命力借りて、傷を治すから。 |
ウサタロー |
なにはともあれ、全員無事でよかったぜ! それで、怪人はどうなったんだ? |
磐城藍 |
ブリッジマスターは、近くにはいないようです。 どうやら仕切り直しのようですね。 |
名雲光 |
んじゃ、今のうちに超変身しちゃうかー。 |
森沢江湖 |
ちょっと待って。 こんな橋の上じゃ隠れられる場所がないよ。 |
森沢江湖 |
超変身の試練中は身動き取れないのに、 こんなところでやるのは危なくない? |
名雲光 |
でも、イケメンとあーちゃんだけじゃ あいつ倒すの厳しいみたいだし。 |
村雨礼司 |
パワー負けはしていないと思うんだが、 あまり相性がよくなさそうだ。 |
名雲光 |
あとはまあ、移動しながら試練受ければ、 なんとかなるっしょ。 |
磐城藍 |
ですが、試練中は昏睡状態に……。 |
名雲光 |
ねえ、トリ頭。 ウチが試練やってる間、背中貸してよ。 |
酉原剛 |
おう、任せろ! 光が目覚めるまで、俺様がしっかり守ってやるぜ! |
名雲光 |
つーわけで、移動しながら行くっしょ。 |
名雲光 |
おわっ、真っ暗なんですけど。 |
---|---|
名雲光 |
これがウチの心の中なわけ? 闇深すぎてマジウケるんですけど。 |
名雲光 |
んで、セクレトいる? この状態でもう通信できてんだよね? |
セクレト |
イエス。 通信状況は安定しています。 |
ウサタロー |
こっちからもちゃんと見えてるぜ! なにかあったらすぐ言うんだぞ! |
名雲光 |
あんがとー。 困ったことあったら相談させてもらうわ。 |
名雲光 |
とりあえず外のことはみんなに任せるけど、 そっちどんな感じなん? |
森沢江湖 |
なんか他のヒーローがね、 民間人ほとんど助けちゃったんだって。 |
皆野祐樹 |
助けられた民間人の話だと、 どうもスピードスターが来てるみたいなんだ。 |
磐城藍 |
来てるなら顔見せろっての。 あのバカ、なに一人でコソコソしてんだか。 |
名雲光 |
イヒヒ、ひねくれてんね~。 |
村雨礼司 |
残る民間人はあと二人らしい。 この分なら、救出作業はすぐに終わるだろう。 |
名雲光 |
マジで? さっすがスピスタ、仕事早いだわー。 |
磐城藍 |
別にあんなやついなくても、 私たちだけで救出できましたけどね。 |
皆野祐樹 |
まあまあ、落ち着いて。 |
村雨礼司 |
それで、そっちはどうなんだ? こっちのモニターからじゃなにも見えないが。 |
名雲光 |
んー、なんかね、暗いばっかでなんもないわ。 |
村雨礼司 |
気をつけろよ。 俺のときはすぐにクラスメイトが襲ってきた。 |
名雲光 |
イケメンのときは学園が舞台だったんだっけ。 こっちはそんな感じじゃないわ。 |
名雲光 |
なんもないし、静かだし。 これ本当になんか起こるわけ? |
名雲光 |
ま、しばらく待ってみるわ。 それでなにも起こらないなら、周り調べるかね。 |
皆野祐樹 |
頑張ってね、名雲さん! |
名雲光 |
あーい。 トリ頭、ウチの身体よろしくねー。 |
酉原剛 |
おう、大事に扱ってるぜ! 落としたりとか全然してねーから安心してくれよな! |
名雲光 |
ハ? ウチそんなこと聞いてないんだけど? |
森沢江湖 |
大丈夫、大丈夫だよ光ちゃん。 私もついてるから。 |
名雲光 |
エコちゃんが治療するようなことが起きてるわけ? ちょっと、トリ頭? |
酉原剛 |
俺様を信じろ、光! 俺様もおまえを信じてるからな! |
酉原剛 |
以上、通信終了! |
名雲光 |
ちょ……あのトリ頭! マジ信じらんないんですけど! |
手下怪人 |
ミツケタゾー! |
---|---|
酉原剛 |
また出やがったな、手下怪人! 俺様が相手だー! |
皆野祐樹 |
ちょっと待って、酉原くん! 背中に名雲さん背負ってること忘れないで! |
酉原剛 |
一人背負ってるからってなんだ! そんなの俺様にはまったく問題じゃねーぜ! |
森沢江湖 |
それでさっき大変なことになっちゃったんでしょ~! お願いだから酉原くんは大人しくしてて! |
酉原剛 |
そんなこと言ったってよ、手下怪人が……。 |
村雨礼司 |
俺たちで相手をする。 おまえは名雲を守ることに専念しろ! |
酉原剛 |
ぐぬぬ……。 |
皆野祐樹 |
ハアッ! |
手下怪人 |
ヤラレター! |
皆野祐樹 |
とはいったものの、やっぱ戦力ダウンしてるね。 |
ウサタロー |
酉原が戦闘に参加できないのもそうだが、 名雲がいなくなった穴も大きいな。 |
皆野祐樹 |
僕、名雲さんって情報収集メインの サポート役だと思ってたよ。 |
酉原剛 |
いやいや、光は戦ってもかなり強えーんだぜ。 知らなかったのか? |
皆野祐樹 |
僕、男子生徒とばっかり戦闘訓練してたから。 女子とは、その、気恥ずかしくて……。 |
ウサタロー |
仲間の実力を知っておくことも大切だ。 戦闘訓練の授業にはそういう意味合いもあるんだぜ。 |
皆野祐樹 |
はい、次からは気をつけます。 |
森沢江湖 |
でも本当、二人いなくなったのは大きいよ。 回復も追いつかないし。 |
皆野祐樹 |
あまり無理はしないほうがいいね。 みんな、ここからはもう少し慎重に行こう。 |
セクレト |
報告します。 北北西47メートルの位置に民間人を発見しました。 |
ウサタロー |
おお、すぐ目の前じゃねーか! |
森沢江湖 |
でもその方向、大きな橋げたしかないけど? |
セクレト |
民間人は、その橋げたの上にいるようです。 高さはおよそ七階層分上になります。 |
皆野祐樹 |
慎重に行こうって話をしたばかりなのに、 難題来ちゃった! |
酉原剛 |
七階層上か……。 またぶん投げてみるか? |
村雨礼司 |
さすがに無理だろう。 他の橋も邪魔してて、ここからじゃ上が見えないしな。 |
ウサタロー |
仕方ねー。 地道に上まで駆け上がるぞ! |
森沢江湖 |
道に迷わないといいけど~。 |
カイザーフェニックス |
そういうことならば、私が道案内いたしましょう。 |
村雨礼司 |
カイザーフェニックス! おまえも来てたのか! |
カイザーフェニックス |
もう一人は、宇治館殿が助けました。 救助すべき民間人は、これで最後ですぞ。 |
皆野祐樹 |
そっか、これが最後の救助なのか。 |
---|---|
酉原剛 |
橋の上のやつを助ければ、 次はいよいよ怪人戦だな! |
森沢江湖 |
ところで、宇治館さんって誰のこと……? |
磐城藍 |
宇治館光正。 あのバカ、スピードスターのことですね。 |
カイザーフェニックス |
ハハハ、磐城殿は相変わらず彼に厳しいようですな。 そろそろ仲直りしてやってはいかがか? |
磐城藍 |
あのバカが悪いんです。 私は悪くありません。 |
皆野祐樹 |
カイザーフェニックスって、二人と知り合いなの? |
カイザーフェニックス |
ええ、ずっと前から。 前に会ったのは、徳川の世でございましたなぁ。 |
皆野祐樹 |
徳川の世って、江戸時代!? 二人ってそんな前から活躍してたの!? |
村雨礼司 |
二人より、カイザーフェニックスだろ! 江戸時代にこの二人と会ったってどういうことだ! |
森沢江湖 |
もしかして、不老不死とか? |
カイザーフェニックス |
まあ、そのようなものじゃ。 朕は人間ではなく、不死鳥でしてな。 |
カイザーフェニックス |
悠久の時を生きつつ、 こうしてたまに人間社会に干渉しておるのじゃ。 |
森沢江湖 |
不死鳥なら、まあ、不思議じゃないか~。 |
ウサタロー |
ヒーロー学園には、 人間じゃないやつもチラホラいるしな! |
村雨礼司 |
とはいえ、不死鳥なんて伝説の存在だぞ。 にわかには信じがたいが……。 |
カイザーフェニックス |
ハハハ、好きなように判断なされ。 案外、朕はホラ吹きやもしれませぬぞ。 |
磐城藍 |
お父様、この方の言っていることは本当です。 私は実際に、何度もお会いしています。 |
磐城藍 |
それも、時空を揺るがすような大きな事件が あったときばかり……。 |
村雨礼司 |
そうか……。 それがおまえの言う干渉するとき、なんだな。 |
カイザーフェニックス |
まあ、そういうことですな。 |
皆野祐樹 |
でも、どうしてそんな昔に? 江戸時代とか、ヒーローも怪人もいなかったんじゃ? |
カイザーフェニックス |
ハハハ、いいところに気がつきましたな。 |
カイザーフェニックス |
異世界の格闘家やサムライ、 そして私のような異類はさておいて。 |
カイザーフェニックス |
それら例外を除いても、ヒロイック隕石以前から、 実は怪人の出現例はあったのですじゃ。 |
皆野祐樹 |
え、えええ~っ!? |
酉原剛 |
ヒロイック隕石が落ちる前から、 怪人が現れていただって!? |
---|---|
村雨礼司 |
つまり、超人能力とヒロイック隕石は 関係なかったということなのか? |
森沢江湖 |
それ、どういうことなの? 私たちが聞かされてた話と全然違うんだけど! |
皆野祐樹 |
ウサタローはこのこと知ってたの? |
ウサタロー |
いや、初耳だぜ。 多分学園長も知らねーはずだ。 |
セクレト |
イエス。 学園のデータベースにそのような記録はありません。 |
カイザーフェニックス |
まあ、落ち着け。 そなたらの認識は間違っておらぬ。 |
カイザーフェニックス |
過去の怪人出現例はすべて、 ヒロイック隕石に起因したものでな。 |
カイザーフェニックス |
何者かが時空の穴を使って、 隕石の欠片を過去に送り込んでいるのじゃ。 |
皆野祐樹 |
そうか、その隕石の欠片を拾った人が、 怪人化しちゃったのか……! |
酉原剛 |
なんてことしやがる! 迷惑な話だぜ! |
村雨礼司 |
だが、なぜ隕石の欠片を過去に送り込むなんて 手の込んだことを? |
村雨礼司 |
その時代で事件を起こしたいなら、 未来から直接怪人を送り込んだほうが早いだろう。 |
カイザーフェニックス |
そこじゃよ。 |
カイザーフェニックス |
時空の穴を操る何者かの目的が、 その時代で事件を起こすことではなかったとすれば? |
酉原剛 |
んん? 事件を起こしたいから、隕石の欠片送ったんだろ? |
村雨礼司 |
そうじゃないということか? だとしたら、隕石の欠片を送ったのは……? |
皆野祐樹 |
怪人を出現させること! それ自体が目的ってことだ! |
ウサタロー |
つまりどういうことなんだ、皆野? |
皆野祐樹 |
坂下大尉みたいな強い怪人を生み出して、 この時代に送り込もうとしてるんだよ! |
皆野祐樹 |
……多分だけど。 |
ウサタロー |
なんだそりゃ!? どうしてこの時代が狙われなくちゃならねーんだよ! |
皆野祐樹 |
いや、分かんないけどさ。 でも未来怪人が現れるようになったのって最近でしょ? |
皆野祐樹 |
例えば十年前には現れてなかった。 ということは、未来怪人の出現は意図的なのかもって。 |
村雨礼司 |
さすがに考えすぎだろう。 この時代が狙われる理由なんてないだろうしな。 |
カイザーフェニックス |
ところが、そうでもないのじゃ。 のう、磐城殿? |
磐城藍 |
……はい、そのとおりです。 皆野さんの言ったとおり、この時代は狙われています。 |
磐城藍 |
黙っていてすみませんでした。 やつの狙いは、この時代そのものなんです。 |
---|---|
カイザーフェニックス |
謝ることはありませぬ。 これも宇治館殿の指示なのでしょう? |
磐城藍 |
あのバカの言うことなんか無視して、 もっと早く皆さんに報告すべきでした。 |
カイザーフェニックス |
彼の頑なさ、朕は嫌いではありませぬが。 あれもまた若さゆえの貴い命のきらめきでしょう。 |
皆野祐樹 |
あのー、それで肝心の、 時空を引っ掻き回してる悪者って誰なんですか? |
カイザーフェニックス |
な、なんと素直で直球な質問! さすがは皆野殿、若さに満ち溢れておる! |
皆野祐樹 |
いやあ、えへへへ。 |
カイザーフェニックス |
朕もかくありたいものじゃ。 最近はすっかり老け込んでしまってのぅ。 |
皆野祐樹 |
そんなことないよ! カイザーフェニックスは十分若々しいと思うな! |
カイザーフェニックス |
ありがとう。 皆野殿は優しい心をお持ちのようじゃ。 |
皆野祐樹 |
いやいや、カイザーフェニックスこそ―― |
村雨礼司 |
おい、ごまかされてるぞ。 |
皆野祐樹 |
はっ。 |
村雨礼司 |
それで、どうなんだ? もちろん皆野の質問に答えてくれるんだよな? |
カイザーフェニックス |
ふむ、村雨殿は少しばかり気が短いようじゃ。 もっとこう、心にゆとりを―― |
村雨礼司 |
いいから答えろ。 |
カイザーフェニックス |
……まあ、なんと申したものか。 答えはそなたらもいずれ知ることとなりましょうぞ。 |
カイザーフェニックス |
先に知ったところで、 どうにかなるものでもありませぬぞ。 |
カイザーフェニックス |
ついでに申すなら、朕にも確証はないのじゃ。 予測はしておるがな。 |
酉原剛 |
それでもいいから教えてくれよ。 気になっちまうだろ? |
カイザーフェニックス |
ふぅむ……どうしたものか。 |
カイザーフェニックス |
一応確認いたすが、磐城殿。 これは『彼』の仕業、ということでよろしいかな? |
磐城藍 |
ええ、あってます。 |
カイザーフェニックス |
ああ、やはりそうであったか……。 |
カイザーフェニックス |
すまぬが、やはりそなたらにはまだ教えられませぬ。 これは非常に、せんしちぶな問題なのですじゃ。 |
皆野祐樹 |
結局、教えてくれないの!? |
酉原剛 |
うおー! めちゃくちゃ気になるじゃねーか! |
カイザーフェニックス |
さあ、ここを登れば目的地はすぐそこですぞ。 |
---|---|
皆野祐樹 |
やっと着いたー! これで最後の民間人も救助できるね! |
スピードスター |
悪いが、民間人の救助ならもう終わったぞ。 |
皆野祐樹 |
ス、スピードスター! もう一人の民間人を助けに行ったんじゃなかったの? |
スピードスター |
そっちならもう終わってるさ。 だからこっちに来たんだ。 |
皆野祐樹 |
さすがはスピードスター。 めちゃくちゃ速いね。 |
スピードスター |
これぐらい当然だ。 というか、おまえたちが遅すぎる。 |
酉原剛 |
なんだと! |
スピードスター |
やはり、こいつらはただの足手まといだ。 藍、こっちに戻ってこい。 |
磐城藍 |
うっさい光正、偉そうに言うな! |
磐城藍 |
彼らは有能よ。 今回は後れを取ったみたいだけど、次は勝つから。 |
スピードスター |
ぐぬっ……! |
森沢江湖 |
ちょっと、みんなやめようよ! |
森沢江湖 |
協力できなくたって、仲良くはできるでしょ? ケンカ腰はダメだよ! |
磐城藍 |
そうだぞ光正!いっつも同じこと言ってるだろ! コラ、聞いてるのか! |
スピードスター |
うるさい、黙れ! |
森沢江湖 |
だ~か~ら~、ケンカはダメだってば~。 |
村雨礼司 |
とりあえず落ち着け。 特に磐城。 |
磐城藍 |
ごめんなさい、お父様。 取り乱してしまいました。 |
スピードスター |
あっ! おまえ、そのことバラしたのか! |
磐城藍 |
テヘッ。 |
スピードスター |
テヘッじゃないだろ! 俺との約束を忘れたのか! |
セクレト |
提案。 ひとまず磐城様を下がらせてはどうでしょうか。 |
森沢江湖 |
このままじゃ話が進まないもんね。 藍ちゃん、私とあっち行こうね。 |
磐城藍 |
チッ、仕方がありません。 |
スピードスター |
コラ!待て!藍-ッ! |
皆野祐樹 |
まあ、その話は後でしてもらうとして。 今回は僕たちに協力してもらえるのかな? |
スピードスター |
俺は後始末に来ただけだ。 おまえたちが失敗した後のな。 |
酉原剛 |
俺様たちは失敗なんかしねー! |
酉原剛 |
こっちには超変身した礼司と、 もうすぐ超変身する光がいるんだからな! |
スピードスター |
背中に背負ってるその女のことか? まったく反応がないようだが、大丈夫なのか? |
皆野祐樹 |
え?あれ? そういえばモニターにも反応が……。 |
村雨礼司 |
おい、名雲! 大丈夫なのか? |
スピードスター |
まったく、愚かな……。 無闇に超変身しようとするからそうなるんだ。 |
名雲光 |
ヤバーい……。 |
---|---|
名雲光 |
ってゆーかウケるよね。 いやマジで。 |
名雲光 |
……は~。 独り言、めっちゃ出てくるわ。 |
名雲光 |
まさかなにも起こらないなんてねー。 ちょっとだけ予想外だったわ。 |
名雲光 |
最初は試練起こんなくてラッキー♪ くらいに思ってたんだけどね~……。 |
名雲光 |
「なにもない」のが、こんなにキチーとはね。 |
名雲光 |
いやほら、ウチってさ、 なんか問題起こったらそれに立ち向かうタイプじゃん? |
名雲光 |
それが生き甲斐っていうかさー。 だから立ち向かう必要なくなったらすぐ変えてくし。 |
名雲光 |
マジメ文学少女スタイルも、 もう完璧に会得しちゃったしね。 |
名雲光 |
ギャルも学園卒業するまでには、 極められっかな~って思うわけよ。 |
名雲光 |
そしたら、その次はどうしよっかなー。 |
名雲光 |
ゆるふわ系いっとく? んー、でも、あえて流行りから外してくのもアリ? |
名雲光 |
…………。 |
名雲光 |
てゆーかさ、 敵倒さないと超変身できないじゃん? |
名雲光 |
問題ないと解決できないじゃん? |
名雲光 |
立ち向かうべき試練がないとさー……。 ウチ、なーんもやることないんだよね。 |
名雲光 |
そっかー、このなんもない空間、 ウチそのものだったんだなー。 |
名雲光 |
外部から与えられた情報で着飾って、 新しい自分になった気になってたけど……。 |
名雲光 |
実際には「自分」なんてものはなにもなかったんだ。 ウチの中身は、いつも……。 |
・ | |
・ | |
・ | |
皆野祐樹 |
ダメだ、名雲さんからの反応がなにもない! |
森沢江湖 |
おーい、光ちゃーん! なんでもいいから返事してー! |
磐城藍 |
これはマズいですね。 いつの間に連絡が取れなくなっていたんでしょう? |
セクレト |
分かりません。実に巧妙なカモフラージュの下、 通信が遮断されていました。 |
セクレト |
これはまるで強固なファイアウォール……。 間違いなく名雲様自身の手によるものでしょう。 |
酉原剛 |
なんとかなんねーのか! |
セクレト |
これは情報の再配置によってもたらされた イレギュラーであると推測されます。 |
セクレト |
不用意な干渉は、危険を伴う可能性があります。 なにもすべきではないと判断します。 |
村雨礼司 |
つまり、見てるしかないということか……? |
酉原剛 |
無事に戻ってこい、光……! |
森沢江湖 |
お~い、光ちゃ~ん! |
---|---|
酉原剛 |
くそ、光からの反応が全然ねぇ! なんとかできねーのかよ、藍! |
磐城藍 |
すみません。 こういった事例は私も初めてで……。 |
皆野祐樹 |
このまま目が覚めなかったら、 名雲さんはどうなっちゃうの……? |
スピードスター |
そのまま昏睡し続けることになる。 永遠にな。 |
皆野祐樹 |
そんな……! |
磐城藍 |
余計なこと言うな、光正! まだそうなるって決まったわけじゃないでしょ! |
セクレト |
提案。 一度退却し、名雲様を医療機関にお連れすべきでは。 |
ウサタロー |
オイラは賛成だ。 今は仲間の命を優先すべきだと思うぜ。 |
村雨礼司 |
……そうだな。 やむを得ないか。 |
ブリッジマスター |
残念ですが私のブリッジダンジョンに、 出口なんてものはありませんよ。 |
皆野祐樹 |
あっ、ブリッジマスター! |
ブリッジマスター |
どうやら超変身を試みて、失敗したようですね。 |
ブリッジマスター |
劣勢に追い込めば、超変身に頼ると思ってましたよ。 すべて計算通りです。 |
磐城藍 |
なにが計算ですか! 適当なことを言わないでください! |
ブリッジマスター |
ふう、これだから文系は。 私の計算の正しさが理解できないとは。 |
ブリッジマスター |
とにかく、これであなたたちの戦力は削られました。 これで私が勝利する確率は100パーセントです。 |
ブリッジマスター |
あなたたちはここで私に屈服し、 手下としてダンジョンのモンスターと化すのです。 |
ブリッジマスター |
さあ、降伏なさい。 そして私と共に、『彼』から下関市を守りましょう。 |
酉原剛 |
要するに下関市を守りたいんだよな? 言ってること自体は悪くねーんだけどなぁ。 |
皆野祐樹 |
……ちょっとだけなら、手下にしてもらいたいかも。 |
森沢江湖 |
祐樹くん、なんて? |
皆野祐樹 |
あ、嘘です。 なんでもないです。 |
ウサタロー |
見くびるなよ、ブリッジマスター! |
ウサタロー |
確かに名雲は戦えねーが、 こっちには心強い増援が二人も来てんだ! |
ウサタロー |
これだけの戦力がいて、怪人に負けるわけねーだろ! |
ブリッジマスター |
むむ……スピードスターにカイザーフェニックス。 確かにその二人は脅威ですね。 |
スピードスター |
手を貸すと言った覚えはないがな。 |
カイザーフェニックス |
すまんが、朕も手助けできませぬ。 ちと大事な用がありましてな。 |
ウサタロー |
なんでだよ! |
ブリッジマスター |
フ、フフフ……計算通りだわ。 怖いくらいに私の計算通りの展開だわ! |
ブリッジマスター |
さあ、覚悟なさい! あなたたち全員、服従させてあげるわ! |
ブリッジマスター |
フフフ、先ほどの威勢はどうしたんです? 遠慮はいりません、かかってきなさい! |
---|---|
酉原剛 |
なんて動きだ! 次々に橋を生やして、空を飛ぶみたいに動きやがる! |
皆野祐樹 |
しかも速い! 地面を走ってるだけじゃ絶対追いつけないよ! |
村雨礼司 |
あの立体的な動きも厄介だ。 なかなか的が絞れない! |
酉原剛 |
うおおっ! 俺様が身体を張ってあいつの動きを止める! |
ブリッジマスター |
ふう。 そんなことしたらどうなるか分からないんですか? |
酉原剛 |
どわぁ~っ! |
森沢江湖 |
ああっ、酉原くんが橋げたに弾き飛ばされちゃった! 無茶なことしちゃダメだよー! |
ブリッジマスター |
この橋は私の足場であると同時に、 私の武器であり、盾なのよ。 |
ウサタロー |
こっちからすりゃ、動きを制限される障壁にもなる! あの橋は本当に厄介だぜ! |
ブリッジマスター |
あはははは、やっぱりこうなったわね! 私の計算通りだわ! |
酉原剛 |
あのキメ台詞もすげーイライラするぜ! 計算なんて授業だけで充分だっつの! |
カイザーフェニックス |
ふーむ。 ものの見事に怪人の攻撃に翻弄されておりますなぁ。 |
スピードスター |
超変身以前に、レベルが低すぎる。 あれでは負けるのも時間の問題だろう。 |
カイザーフェニックス |
まあまあ、彼らはみな将来有望な若者たちですじゃ。 きっと打開策を見出してくれよう。 |
カイザーフェニックス |
さて、それでは朕は、このあたりで……。 |
スピードスター |
待て、カイザーフェニックス。 |
カイザーフェニックス |
宇治館殿、話しなら後にしてくれませぬか。 火急の用というやつで、ちと急がねばならんのじゃ。 |
スピードスター |
俺は、おまえのことはある意味信用している。 |
カイザーフェニックス |
それは嬉しゅうございますが……。 |
スピードスター |
だからこそ、お前に聞きたいことがある。 |
スピードスター |
俺は危ういのか? 今回も、俺は……失敗してしまうのか? |
カイザーフェニックス |
うむ、そうじゃな。 |
スピードスター |
あっさり言ってくれるな……。 |
カイザーフェニックス |
まどろっこしい返答など望んではおるまい。 ゆえに率直に答えたまでじゃ。 |
カイザーフェニックス |
よいか、宇治館殿。 このままではなにも変わらぬぞ。 |
カイザーフェニックス |
そなたが過去と和解し、 共に歩もうと努力せぬ限りな……。 |
酉原剛 |
くっそー、全然追いつけねぇ! これじゃキリがないぜ! |
---|---|
森沢江湖 |
こっちの体力はどんどん削られていくし、 このままじゃジリ貧だよ~。 |
ブリッジマスター |
ふう。 先ほどから同じ動きばかり。 |
ブリッジマスター |
いいですか。 あなたたちはモノを考えずに動きすぎなんです。 |
ブリッジマスター |
もっと計算なさい。 敵の動き、攻撃の角度、ありとあらゆるものを。 |
ブリッジマスター |
計算が完璧ならば、 すべての戦いで勝利を確定させられるのです! |
皆野祐樹 |
説教されちゃった。 |
ブリッジマスター |
橋とは、工学的な計算式の結晶体。 そしてそれは戦いも同じ。 |
ブリッジマスター |
計算を制すれば、 橋も、戦いも制することができるのです! |
酉原剛 |
ブリッジマスター先生、質問があるぜ! |
ブリッジマスター |
あら、真っ直ぐで美しい挙手ですこと。 なにかしら、エンゲルマスク君? |
酉原剛 |
あんた、そんなになにを計算してるんだ? |
酉原剛 |
戦いの計算すんなら、とりあえず筋力は必要だよな? それ以外は何を数値化して計算してんだ? |
酉原剛 |
同じ筋力同士で戦っても、 培ってきた技術次第で結果は全然変わるだろ? |
酉原剛 |
技術の数値化はどうするんだ? 習熟時間で決めんのか?それとも習得数? |
ブリッジマスター |
…………。 |
ウサタロー |
酉原がなんか難しいこと言い出したぞ。 |
酉原剛 |
いや、俺様全然分かんねーのよ。 勉強なんて苦手だしな。 |
酉原剛 |
だから分かるように言ってもらいてーんだよ。 んで、どういう数値を計算してんだ? |
ブリッジマスター |
えーと……私の場合はコンクリートの強度と、 精製する橋の長さと太さを……ざっくりと? |
皆野祐樹 |
ざっくりとかー。 |
酉原剛 |
自分の能力だけしか計算してねーのか? それ、戦いの勝敗と関係あんのか? |
皆野祐樹 |
相手の数値も必要なんじゃないかな。 もしかして、あんまり計算してないんじゃ? |
酉原剛 |
だよなー。 ……それとも俺様、なにか思い違いしてんのかな? |
村雨礼司 |
いや、珍しく真っ当な意見だと思う。 |
ブリッジマスター |
……ふ、ふふふ、計算通り。 絶対そう聞き返してくると思っていましたよ。 |
ブリッジマスター |
しかし、その質問に答える義務はありません! 私だけが理解できていればいいのです! |
酉原剛 |
そりゃねーぜ、ブリッジマスター先生。 |
ブリッジマスター |
問答無用! いいからさっさと降伏なさい! |
村雨礼司 |
これでどうだ! |
---|---|
ブリッジマスター |
無駄です! 私の計算ある限り、そんな攻撃は通じません! |
村雨礼司 |
くそ、また上に逃げたか! |
スピードスター |
また同じ展開か。 その調子じゃ、いつまで経っても倒せそうにないな。 |
磐城藍 |
うるさい光正! 協力する気がないなら黙ってろ! |
スピードスター |
…………。 おい、ストライカー。 |
村雨礼司 |
なんだ、スピードスター。 |
スピードスター |
計算できているかどうかはともかく、 奴の立体的な機動が厄介なのは確かだろう。 |
スピードスター |
特に、この橋の上ではな。 足元からいくらでも橋を生成させられる。 |
スピードスター |
このまま橋の上で戦い続けていいのか? |
村雨礼司 |
そんなことは分かってる。 だが、橋の下は海だ。他に選択肢がない。 |
スピードスター |
橋以外で戦う選択肢はない……本当にそう思うか? |
村雨礼司 |
……どういう意味だ? |
磐城藍 |
ちょっと光正! なにお父様困らせるようなこと言ってんのよ! |
スピードスター |
超変身したストライカーとサイバーフォックスの 力があれば勝てる、そう思っただけさ。 |
スピードスター |
これ以上は口出ししない。 あとは好きにしろ。 |
村雨礼司 |
超変身した俺の力、か……。 |
ウサタロー |
超変身のことはオイラにはよく分からねー。 今の村雨の力で、なにかできることがあるのか? |
村雨礼司 |
水を操る能力が、 以前より桁違いに強くなったのは確かだ。 |
村雨礼司 |
だが、それでなにかができるとは……。 あるいは、俺が気付いてない能力があるのか? |
磐城藍 |
お父様……! |
村雨礼司 |
ここにあるのは橋と海だけだ。 俺の能力でなにかできるとしたら、海のほうだろう。 |
村雨礼司 |
海を凍らせて足場にする? いや違う、俺に冷気を操る能力はない。 |
村雨礼司 |
俺にできることがあるとすれば……。 |
村雨礼司 |
そうか、分かったぞ! |
村雨礼司 |
皆野、頼みがある! できるだけ時間を稼いでくれ! |
皆野祐樹 |
なにかいい方法を思いついたの? |
村雨礼司 |
俺が、奴の能力を封じる! あの立体的な動きさえなければ、勝機はある! |
ブリッジマスター |
私の能力を封じるですって? そんなことができる確率は0パーセントです! |
皆野祐樹 |
そんなことはない! 僕は村雨くんを信じる! |
皆野祐樹 |
ブリッジマスター、ここからは僕が相手だ! 村雨くんが必要な時間、絶対に稼いでみせる! |
名雲光 |
はあ、マジヤバ……。 |
---|---|
カイザーフェニックス |
おやおや、なにやらお困りの様子。 こんなところに座り込んでどうなされた? |
名雲光 |
あれ、せんちゃん? やっとなんか出てきてくれたしぃ~……。 |
カイザーフェニックス |
せんちゃんというのは、朕のことかな? |
名雲光 |
そうそう、名前、千本炎だからせんちゃん。 イケてるっしょ? |
カイザーフェニックス |
ハハハ、ナウでヤングな感じの呼び名じゃのぅ。 気に入りましたぞ。 |
名雲光 |
イヒヒ、ナウでヤングだって。 面白い言い方すんね、超新しいわ。 |
名雲光 |
で、なんでウチ、せんちゃんの幻見てんの? ウチとせんちゃんってなんかあったっけ? |
カイザーフェニックス |
いやいや、朕は幻影にあらず。 外から少しばかりお邪魔させてもらったのですじゃ。 |
名雲光 |
マジで?ヤバくね? |
カイザーフェニックス |
不死鳥なものでな。 これぐらいの芸当はお手のものじゃて。 |
名雲光 |
ハー、つまり助けに来てくれってこと? マジ助かったわー。 |
名雲光 |
ウチ、もうダメダメなんよね。 超変身どころじゃないわ、マジ空っぽだし。 |
カイザーフェニックス |
ダメではござらぬ。 もとより人とは、外界と関わる中で自己を見出すもの。 |
カイザーフェニックス |
名雲殿が空っぽなわけではなく、 心に強いトラウマやこだわりがなかっただけ。 |
カイザーフェニックス |
それは名雲殿の心が、 極めて健全であることの証なのですじゃ。 |
カイザーフェニックス |
ただ、超変身とは少しばかり相性が悪かった。 それだけのことじゃて。 |
名雲光 |
マジで? ウチの心、チョーキレイ? |
名雲光 |
ていうか今はそこじゃないし。 超変身と相性悪いとか、やっぱダメなんじゃん。 |
カイザーフェニックス |
心配なされるな。 そのために朕が来たのじゃからな。 |
カイザーフェニックス |
朕が、名雲殿の試練となりましょう。 さすれば、超変身は正常に機能するようになるはず。 |
名雲光 |
マジで? わざわざそんなことのために来てくれたわけ? |
カイザーフェニックス |
そなたらに強くなってもらわねば、 地球がヤバそうでしてな。 |
名雲光 |
地球がヤバいとか、マジヤバくね? んじゃー、頑張っちゃおうかな。 |
カイザーフェニックス |
そうしてもらえますと、助かりますな。 |
カイザーフェニックス |
では、参りますぞ。 手加減はせぬゆえ、気合い入れてかかってまいれ! |
名雲光 |
え~!そこはしてよ~! |
カイザーフェニックス |
では、そろそろ始めますぞ。 準備はよろしいかな? |
---|---|
名雲光 |
その前に聞きたいんだけど。 せんちゃんと戦って、本当に試練になるん? |
カイザーフェニックス |
ハハハ、舐めてもらっては困りますな。 |
カイザーフェニックス |
これでも朕は、悠久の時を生きる不死鳥にして、 学園最強の一角を担うヒーロー。 |
カイザーフェニックス |
今の名雲殿よりも強い自信はありますぞ。 |
名雲光 |
いや、そこは疑わないよ。 せんちゃんのほうが強いのは知ってるって。 |
名雲光 |
ぶっちゃけ、不死鳥ってとこは気になるけど。 |
名雲光 |
そうじゃなくて、せんちゃんと戦うことが、 本当に超変身に繋がんのかなーって。 |
カイザーフェニックス |
大切なのは、認識ですじゃ。 |
カイザーフェニックス |
立ちはだかる困難を、打ち破ったという認識。 それが超変身への強力な引き金となるじゃろうて。 |
名雲光 |
ふーん、キッカケがあればってことか。 ま、確かに、せんちゃんに勝てれば自信つくかな? |
カイザーフェニックス |
戦闘訓練の成績は、朕の全戦全勝。 そろそろ一回ぐらい朕に勝ってみたいと思いませぬか? |
名雲光 |
ん~、ウチとしては、 もうちょいイージーモードがよかったんだけどな~。 |
カイザーフェニックス |
ハハハ、朕との勝負など簡単なものじゃて。 この先に待ち受ける困難と比べればのぅ。 |
カイザーフェニックス |
朕に勝ってみせよ、名雲殿。 さもなくば『彼』に勝つことなど、とてもとても。 |
名雲光 |
その『彼』ってやつの話だけどさ~。 |
名雲光 |
……あー、やっぱいいや。 今のなしで。 |
カイザーフェニックス |
おや、よろしいので? |
名雲光 |
せんちゃん、そういうのごまかすキャラでしょ。 絶対教えてくれなそう。 |
カイザーフェニックス |
ハハハ、信用がありませんな。 いや、逆に信用されているということかな? |
名雲光 |
そりゃ助けに来てくれたんだし。 信用してるよー。 |
カイザーフェニックス |
理解ある同級生というのはありがたいものですなぁ。 では、そろそろ参りましょうか。 |
名雲光 |
オッケー、始めよっか。 |
名雲光 |
んじゃ、最初から本気出してくんで、 せんちゃん手加減ヨロ! |
カイザーフェニックス |
だから、手加減せんと言うておろうに。 |
皆野祐樹 |
でやああああ! |
---|---|
ブリッジマスター |
しつこいですね、ライオンハート! 私の計算では、あなたは絶対に勝てないというのに! |
皆野祐樹 |
僕は一人で戦ってるわけじゃない! みんなと一緒なら、絶対に負けたりしない! |
ブリッジマスター |
ふう。 私「絶対」って言葉、嫌いなんですよ。 |
ブリッジマスター |
なんの根拠もないのに、なぜ言い切れるのか。 理解に苦しみますね。 |
酉原剛 |
おまえの計算だって大した根拠ねーじゃねーか! |
森沢江湖 |
それに、さっき「絶対」って使ってなかった? |
ブリッジマスター |
言いがかりはやめてくれませんか! 私の計算は絶対なんです! |
酉原剛 |
やっぱり使ってるじゃねーか! |
ブリッジマスター |
お黙りなさい! |
酉原剛 |
ぐわーっ! |
皆野祐樹 |
くっ……言ってることはともかく、実力は本物だ。 このままじゃ……! |
ブリッジマスター |
私の計算では、あなたたちはそろそろ限界です。 回復も追いついていないのでは? |
森沢江湖 |
そ、そんなことない。 まだまだ戦えるんだから……! |
ブリッジマスター |
ふう、なんて愚かな。 でしたら全員倒れるまで付き合ってあげましょう。 |
村雨礼司 |
残念だが、俺たちが倒れるよりも、 おまえが倒れるほうが先だ! |
ブリッジマスター |
なんですって? |
皆野祐樹 |
村雨くん! 準備ができたんだね! |
村雨礼司 |
うおおおおおおおおっ! アクアティックエース、パワー全開だ……! |
ウサタロー |
す、すげー! 村雨のやつ、海を割りやがった! |
皆野祐樹 |
海底が露わになって……そうか、分かったぞ! |
村雨礼司 |
それなら、あとは頼めるか、皆野! |
皆野祐樹 |
うん、任せて! ブリッジマスターを必ず海底に落としてみせるよ! |
酉原剛 |
あいつを海底に落とすとどうなるんだ? |
磐城藍 |
ブリッジマスターの超人能力は建材限定です。 自然環境からは橋を生成できません。 |
磐城藍 |
つまり、ブリッジマスターを海底に落とせば、 やつの超人能力を封じることができるのです! |
磐城藍 |
さすがはお父様、すごすぎです! 凡人とは一線を画した才能の持ち主です! |
村雨礼司 |
……いいから、おまえたちも皆野を手伝ってくれ。 |
磐城藍 |
任せてください、お父様! |
ブリッジマスター |
ま、まさか海を割るほどの力が……! |
皆野祐樹 |
行くよ、みんな! ここからは僕たちの反撃の時間だ! |
皆野祐樹 |
うりゃあああああっ! |
---|---|
ブリッジマスター |
体当たりして自分も一緒に橋から身を投げ出すとか、 あなた馬鹿なんですか!? |
皆野祐樹 |
絶対に逃がさないっていう強い意志表明です! |
ブリッジマスター |
あなたも私も無事じゃすまないって話をしてるんです! |
森沢江湖 |
祐樹くん、危ない……! |
ウサタロー |
気合いでなんとか着地しろ! おまえならそれができるはずだ! |
皆野祐樹 |
うおおおおっ! 感情爆発で、落下速度を相殺させる……! |
・ | |
・ | |
・ | |
皆野祐樹 |
着地成功……! 人間、やればできるもんだね! |
ブリッジマスター |
あなた馬鹿ですか!馬鹿なんでしょ! 本当に死ぬかと思ったじゃない! |
皆野祐樹 |
ブリッジマスターも無事だったみたいだね。 よかったー。 |
ブリッジマスター |
橋から突き落としておいて、なんて言い草! |
皆野祐樹 |
それにしても、海が割れるなんてビックリだよね。 モーゼか!って感じだよ。 |
磐城藍 |
そう、お父様は現代に舞い降りた救世主。 この世界を救うヒーローなのよ。 |
酉原剛 |
とうとう礼司も救世主に格上げか。 つか、祐樹のツッコミって珍しいよな。 |
森沢江湖 |
それも超変身の力のなせる業かもね。 それくらいすごかったもん。 |
皆野祐樹 |
あ、みんなも降りてこられたんだ。 |
ウサタロー |
橋げたのとこに非常用階段がついてたんだ。 おかげで安全に降りてこられたぜ。 |
皆野祐樹 |
非常用階段ついてたんだ。 |
ブリッジマスター |
それはもちろん。 建設する以上、安全基準は満たさないと。 |
皆野祐樹 |
そこはちゃんとしてるんだね。 |
村雨礼司 |
なごんでる場合か! 超人能力を封じた今こそ、畳みかけるチャンスだろ! |
皆野祐樹 |
そ、そういえばそうだった! ということで、行くよブリッジマスター! |
ブリッジマスター |
少々計算が狂ったことは認めましょう。 ですが、これで勝ったと思わないことですね! |
ウサタロー |
気をつけろ、なにか武器を取り出したぞ! |
森沢江湖 |
武器っていうか、あれってワリバシじゃない? |
ブリッジマスター |
そう、これはコンビニでもらった、ただのワリバシ。 けれど私の手にかかれば……! |
皆野祐樹 |
ああっ! ワリバシから新しい橋が造られてく! |
ブリッジマスター |
木材もまた建材。 私の超人能力で扱える範疇なのよ! |
酉原剛 |
くそっ、せっかく苦労して海底に落としたのによ! |
ウサタロー |
だが今度の橋は、コンクリートよりも脆くて遅い! 村雨の作戦は有効だ! |
皆野祐樹 |
うん、これなら互角に戦えるよ……! |
酉原剛 |
ドリャー! |
---|---|
ブリッジマスター |
あはははは! 私はこっちよ、ノロマなヒーロー共! |
皆野祐樹 |
さっきよりスピードは落ちてるのに、 全然捕まえられない! |
村雨礼司 |
あの立体的な動きに、俺たちが対応できてないんだ! |
ブリッジマスター |
やっぱりこうなったわね。 おおむね私の計算通りだわ! |
酉原剛 |
いい加減にしろよ! 本当は計算してないくせに! |
ブリッジマスター |
してますー! 頭の中で超高速計算してるんですー! |
村雨礼司 |
今のままじゃ、まだ足りない。 やつを倒すには、なにかもう一手ないと……。 |
名雲光 |
じゃあその一手。 ウチに任せてもらっちゃおうかな~。 |
森沢江湖 |
光ちゃん! よかった、目が覚めたんだね! |
酉原剛 |
うおおっ、心配したんだぜ! 俺様が頭ぶつけすぎちまったのかと思ったぜ! |
名雲光 |
イヒヒ、心配かけてごめんねエコちゃん。 ……トリ頭はあとで説教な。 |
酉原剛 |
お、押忍。 |
名雲光 |
てことで、こっからはウチが相手ね。 |
名雲光 |
いや~、超変身って鬼スゲーわ。 そこら中でパワーが波打ってるのが見えちゃうし。 |
名雲光 |
このパワーは……あ~、大気電気か。 はいはい、完全に理解したわ。 |
ブリッジマスター |
ふう。 なにをゴチャゴチャと言ってるのかしら。 |
ブリッジマスター |
超変身なんて、私も持っている力。 ようやく手にした程度で調子に乗らないことね! |
森沢江湖 |
気をつけて、光ちゃん! ブリッジマスターは立体的に動くよ! |
名雲光 |
そんなもの、進行方向止めれば終わりでしょ! |
ブリッジマスター |
なっ……! 周りに張り巡らされたこの電気の網は……!? |
名雲光 |
大気電気を制御し、電流も電波も意のままに操る。 これがウチの新しい能力、エレクトロメッシュ! |
ブリッジマスター |
馬鹿な、私の計算が追いつかない! これでは橋をかけられないわ! |
名雲光 |
んじゃこっからは、パワーアップした サンダーポンキューちゃんがお相手するから。 |
森沢江湖 |
あの可愛かったポンキューちゃんが、 ムキムキマッチョにー!? |
ブリッジマスター |
橋で移動できなくても、橋で攻撃はできる! いいわ、その勝負受けて立ってあげる! |
ブリッジマスター |
私の計算で……いえ、私の全力で! あなたを倒してみせる! |
名雲光 |
マジウケるわ。 そんじゃ、このままウチ一人で決めちゃいますか! |
名雲光 |
ということで、ウチが勝ちました。 サンダーポンキューちゃん、マジ最強でしょ。 |
---|---|
森沢江湖 |
すごかったよ~、光ちゃん。 |
磐城藍 |
それではブリッジマスター、これでお別れです。 あなたを未来に帰します。 |
ブリッジマスター |
ま、待ってアクアマリン! 未来には帰りたくない!だって未来はもう……! |
村雨礼司 |
未来は、宇宙が滅びようとしているんだろう? |
磐城藍 |
いいえ……滅ぼさせません。 私たちが必ず、滅びの未来を変えてみせます。 |
ウサタロー |
ああ、そうだな。 みんなが幸せになれる未来にしていかねーとな! |
ウサタロー |
なにはともあれ、これで今回の任務は完了だ。 みんな、ゆっくり身体を休めてくれ。 |
ウサタロー |
特に、超変身した村雨と名雲は疲労が激しいだろう。 体調がおかしそうだったら、すぐに言えよ? |
名雲光 |
いや~、マジ疲れたし。 ゆっくり休ませてもらうわ。 |
皆野祐樹 |
そういえば、名雲さんの試練って結局どうなったの? |
名雲光 |
どうにかこうにか、せんちゃん倒してクリアした。 マジしんどかったわ。 |
名雲光 |
つか、せんちゃん来てくれなかったらマジヤバかった。 超変身って、本当なに起こるか分かんないわ。 |
村雨礼司 |
同感だな。 これから試練に挑むやつは、心しておいたほうがいい。 |
森沢江湖 |
次の超変身なんだけどね、私が行こうと思う。 |
森沢江湖 |
敵も強くなって、回復が追いつかなくなってきてるし。 そろそろパワーアップしなくちゃって思うの。 |
皆野祐樹 |
超変身のパワー、すごいもんね。 |
森沢江湖 |
でね、帰りの深夜バスの中で試練に挑もうと思うの。 |
皆野祐樹 |
え、深夜バス? 新幹線で帰らないの? |
森沢江湖 |
お土産買いすぎて、お財布が大変なことに……。 |
磐城藍 |
フグに瓦そば。 魅力的な名物が多いので、気持ちはわかりますが……。 |
セクレト |
そんな森沢様にお報せです。 良いニュースと悪いニュースがあります。 |
森沢江湖 |
ええっ? 良いニュースだけ聞くのはダメ? |
セクレト |
残念ながら。 |
セクレト |
良いニュースは、 学園の輸送ヘリで移動ができるということです。 |
森沢江湖 |
そうなんだー。 それは嬉しいんだけど、どうして急に輸送ヘリ? |
名雲光 |
それは多分、また緊急任務が発生したっていう 悪いニュースのせいなんじゃね? |
セクレト |
イエス。 次の任務地は香川県です。 |
森沢江湖 |
ええ~っ!また緊急任務なの!? ていうかヘリで移動したら、試練が……。 |
磐城藍 |
仕方がありませんね。 また現地で挑んでもらうしかありません。 |
森沢江湖 |
そんな~っ! |
・ | |
・ | |
・ | |
カイザーフェニックス |
次は香川県だそうな。 宇治館殿も一緒に参りましょうぞ。 |
スピードスター |
……別に一緒に行ってもかまわない。 |
スピードスター |
だがその前に、ひとつだけ教えてくれ。 おまえには、未来が見えているのか……? |
カイザーフェニックス |
ええ、おぼろげながら。 |
カイザーフェニックス |
宇治館殿、そなたらはよくやっておる。 その努力を無駄にさせぬため、朕は駆けつけたのじゃ。 |
カイザーフェニックス |
じゃが、そのためには……。 |
スピードスター |
……俺が変わらなければ、か……。 |