第2部 第2章
滅びの魔女
ウサタロー |
おまえたち、よくやったな! 仙台での任務は、これで終了だぜ! |
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森沢江湖 |
お疲れさまー。 |
皆野祐樹 |
今回の怪人、クロタウロスっていったっけ。 なんていうか、あんまり強くなかったような? |
酉原剛 |
パワーはなかなかのものだったけど、 動きがすげー単調だったな。 |
名雲光 |
マジ分かりやすかったわ。 おかげで今回は楽勝だったっしょ。 |
名雲光 |
毎回、あれくらい弱い怪人が相手だったらいいのに。 |
酉原剛 |
そうかー? 俺様は強い怪人が相手のほうが燃えるけどな。 |
ウサタロー |
クロタウロスは中学生だったって話だ。 未熟だったのも、そのへんが理由だろうな。 |
森沢江湖 |
中学生かー。 私、自分より年下の怪人と戦ったのって初めてかも。 |
皆野祐樹 |
僕もだよ。 あまり聞かないよね、中学生の怪人って。 |
皆野祐樹 |
でも、最後はちゃんと改心してくれてよかった。 きっとこれからは正しいことに力を使ってくれるよね。 |
酉原剛 |
おう、あいつは見所がある。 きっと立派なヒーローになってくれるぜ! |
名雲光 |
ともかく、ウチらの仕事はこれでおしまい。 そろそろ学園に帰んない? |
森沢江湖 |
そだね、帰ろっか~。 |
手下怪人 |
コソコソ。 |
森沢江湖 |
あれ!? 手下怪人さん!? |
名雲光 |
ちょっとエコちゃん。 そういう冗談マジ笑えないんですけど。 |
名雲光 |
――って、マジでいるじゃん! |
皆野祐樹 |
えーっ、どうなってるの? 本体の怪人を倒せば、消えるはずなのに! |
酉原剛 |
とりあえず手下怪人はぶっ倒す! ドリャ~! |
手下怪人 |
グワーッ! |
村雨礼司 |
セクレト、どうなってる? クロタウロスを取り逃したのか? |
セクレト |
クロタウロスの身柄は確保済みです。 逃げ出したという情報も入っておりません。 |
酉原剛 |
いや、多分こいつはクロタウロスのしわざじゃねぇ。 さっきより手下怪人が強くなってやがる! |
ウサタロー |
別の怪人が現れたってことか? とにかく、ちゃんと確かめてみたほうがよさそうだな。 |
名雲光 |
げ、マジ? ウチめっちゃ疲れてるんですけど? |
村雨礼司 |
楽勝って言ってただろ。 それならまだ戦えるよな? |
名雲光 |
鬼じゃね? マジありえないんですけど……。 |
酉原剛 |
手下怪人のやつ、一体だけかと思ったらすげーいるな。 |
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皆野祐樹 |
やっぱり他に怪人がいるんじゃないかな。 |
村雨礼司 |
どうだろうな。 やはりクロタウロスのしわざかもしれないぞ。 |
村雨礼司 |
なにせ中学生で悪の道に走るようなやつだ。 あまり信用すべきではないんじゃないか? |
森沢江湖 |
そもそもクロタウロスくんって、 どうして悪いことしてたんだっけ? |
ウサタロー |
初めて超人能力に目覚めて、 その強さに全能感を覚えちまったのさ。 |
ウサタロー |
なんでもできちまうことに気が付いて、 好き放題に暴れちまったんだな。 |
森沢江湖 |
超人能力でなんでもかぁ。 私、そういう人知ってるかも。 |
森沢江湖 |
タコヤキ怪人のキューバーンさんは、 そういう感じだったよ。 |
酉原剛 |
強盗したり、誘拐したり。 いかにもって感じの怪人だったよな。 |
皆野祐樹 |
森沢さん、キューバーンに捕まっちゃってたもんね。 |
森沢江湖 |
うん。 自分のことしか考えてない人だった。 |
名雲光 |
怪人的には、そういうのが普通なんじゃね? |
村雨礼司 |
クロタウロスがしていたのも、 キューバーンと似たような犯罪だ。 |
村雨礼司 |
コンビニ強盗にカツアゲ。 信念もなにもなく、ただ暴力をふるっていただけだ。 |
皆野祐樹 |
僕は、今暴れてる手下怪人は クロタウロスのしわざじゃないと思う。 |
皆野祐樹 |
だって、改心するって約束してくれたじゃないか。 嘘をついてる感じじゃなかったよ。 |
酉原剛 |
俺様も信じるぜ! あいつの目はまっすぐだった! |
村雨礼司 |
フン、どうだかな。 |
セクレト |
改めて確認しましたが、 現在、仙台市内全域に手下怪人が出現しています。 |
セクレト |
敵の正体は不明ですが、 なんらかの怪人が活動しているのは間違いありません。 |
ウサタロー |
とにかく、もう一度怪人を探すしかねーな。 怪人を見つければ、なにが起こってるか分かるはずだ! |
皆野祐樹 |
うん、そうだね! |
名雲光 |
完全に二度手間じゃん。 マジ勘弁してほしいんですけど~。 |
村雨礼司 |
ヒーローが泣き言をいうな。 ほら、行くぞ! |
森沢江湖 |
ねえ、あそこに変なものがあるよ。 あれってなんだろ? |
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酉原剛 |
お、本当だな。 なんか穴みてーに見えるけど……。 |
手下怪人 |
コンチワ。 |
森沢江湖 |
あ、こんにちわー。 |
森沢江湖 |
って、手下怪人さんだ! あそこから手下怪人さんが出てきたよ! |
酉原剛 |
あいさつ代わりの一発を食らえー! オリャ~! |
手下怪人 |
ヤラレター! |
ウサタロー |
なあ、この穴みたいなの、 もしかして時空の穴ってやつなんじゃねーか? |
皆野祐樹 |
だとすると、この手下怪人たちは 時空の穴から現れてるってことになるね。 |
酉原剛 |
つまり、どういうことだ? クロタウロスは関係ないってことか? |
村雨礼司 |
そうだな。 多分ボス怪人は、時空の穴の向こう側のやつだ。 |
森沢江湖 |
え、それってもしかして、ガネゴールドと同じ……? |
名雲光 |
またメチャクチャ強い怪人が来るかもってこと? それって超ヤバくね? |
村雨礼司 |
すでに来ているのか、これからやってくるのか……。 |
村雨礼司 |
いずれにせよ、 そう考えれば手下怪人が強いのも納得できるな。 |
森沢江湖 |
わ、私たちだけで倒せるのかな? 超変身のこととか、まだなにも分かってないのに。 |
名雲光 |
いや~、無理じゃね? 前回、あんだけ頑張っても全然ダメだったし。 |
皆野祐樹 |
コアがなければいくらやっても無駄だ……。 ガネゴールドはそんな風に言ってたよね。 |
ウサタロー |
コアとか超変身とか、いったいなんなんだろうな? |
名雲光 |
ま、そのへんのことはよく分かんないけどさ、 今回もスピスタに頼ればよくね? |
名雲光 |
ていうか、それしかないっしょ。 常識的に考えて。 |
セクレト |
それは難しいと思われます。 |
セクレト |
名古屋の事件以来、 スピードスターの目撃情報はありません。 |
名雲光 |
マジありえないんですけど。 |
酉原剛 |
だったら俺様たちでなんとかしようぜ! そうするしかねーだろ! |
村雨礼司 |
同感だな。 |
村雨礼司 |
俺たちはヒーローだ。 現れた怪人を倒すのが、俺たちに与えられた使命。 |
ウサタロー |
そうだな! 無理だと決めつけるにはいくらなんでも早すぎだぜ! |
ウサタロー |
学園に連絡して、応援を呼ぼう。 今、オイラたちにできるベストを尽くすんだ! |
セクレト |
手下怪人の目撃情報を更新。 最新の状況をお伝えします。 |
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酉原剛 |
仙台の街中に現れちまってるじゃねーか。 |
皆野祐樹 |
これみんな、クロタウロス倒したあとに現れたの? |
セクレト |
イエス。 どうやら散発的に時空の穴が出現している模様です。 |
名雲光 |
とりあえずこの情報を学園と共有して、 他のみんなに手下怪人やっつけてもらお。 |
酉原剛 |
んで、肝心のボス怪人はどこにいるんだ? |
セクレト |
今のところ目撃情報はありません。 |
名雲光 |
時空の穴の出現ポイントを予測することはできるかも? |
村雨礼司 |
そんなことが可能なのか? |
名雲光 |
時空の穴も不規則に出現してるわけじゃないと 思うんよね。 |
セクレト |
時空の穴の出現情報を収集することで、 パターンを割り出すことが可能かもしれません。 |
村雨礼司 |
すぐに割り出せるのか? |
名雲光 |
精度は甘いと思うけど、 今の情報から予測するなら、地図のこのへんかな。 |
酉原剛 |
よ、よりによってそこかよ! そいつはヤベーぜ! |
皆野祐樹 |
どうしたの酉原くん? そこになにかあったりするの? |
酉原剛 |
俺様が行きたかった牛タンの名店があるんだよ! |
皆野祐樹 |
へ? 牛タン……? |
酉原剛 |
仙台といえば牛タンだろ! 任務終わったら絶対食いに行こうって思ってたんだよ! |
酉原剛 |
ぐおおおっ! もしも戦闘に巻き込まれて店が破壊されたら……! |
村雨礼司 |
何を慌ててるかと思えば、牛タンの心配か……。 |
酉原剛 |
いいや、違うぜ礼司! |
酉原剛 |
俺様が心配してるのは! 仙台の食文化そのものだ! |
村雨礼司 |
胸を張って言うようなことか! |
酉原剛 |
ええい、こうしちゃいられねー! 早くそこに向かおうぜ! |
名雲光 |
本当に怪人が現れるとは限んないけど? |
酉原剛 |
本当に現れたら大変だろうが! |
酉原剛 |
とにかく俺様は一人でも向かうぜ! 仙台の食文化は、俺様が守ってみせる! |
村雨礼司 |
オイ、コラ、勝手に動くな! |
ウサタロー |
牛タンはともかくとして、 今は名雲の予測に従って動くのは悪くねー。 |
ウサタロー |
オイラたちも酉原に続こうぜ! |
村雨礼司 |
おまえも牛タン食いたかったのかとか言われそうで、 あいつの後を追いたくない……。 |
皆野祐樹 |
アハハ……確かに言いそうだね。 |
酉原剛 |
なんだ、おまえらも来たのか? |
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村雨礼司 |
置いていくわけにもいかないだろう。 |
酉原剛 |
そうかそうか。 おまえらも牛タン食いたかったんだな。 |
村雨礼司 |
言うと思ったぞ! |
ウサタロー |
それで、ボス怪人のほうは見つかったのか? |
酉原剛 |
あれを見てくれ。 すげーデカい時空の穴を見つけたんだ。 |
皆野祐樹 |
あっ!みんな気をつけて! ちょうど時空の穴からなにか出てくるみたいだよ! |
??? |
ぬう、ここはいったい……? |
ウサタロー |
なあ、怪人が出てきたのはいいんだけどよ、 あれってクロタウロスじゃねーか? |
皆野祐樹 |
本当だ! どうしてクロタウロスが時空の穴から出てくるの? |
皆野祐樹 |
ちょっとクロタウロス! 捕まったはずの君が、こんなところでなにしてるの? |
クロタウロス |
おまえはライオンハート! ……にしては、なんか若いような? |
皆野祐樹 |
中学生の君のほうが若いと思うんだけど……? |
クロタウロス |
中学……? そうか、ここは十年前なのか。 |
皆野祐樹 |
えっ? どういうこと? |
村雨礼司 |
……もしかして、おまえは十年後の未来から来たのか? |
名雲光 |
イケメンってば、いきなりどうしたの? ガネゴールドみたいなこと言い出しちゃって? |
森沢江湖 |
えっと、村雨くん。 もしかして、未来人の話信じちゃってるの? |
村雨礼司 |
信じてるわけじゃないが、 こいつも同類なんじゃないかと思ってな。 |
クロタウロス |
そうだ、俺は十年後の未来から来た。 |
クロタウロス |
おまえはストライカーだな? 話が早くて助かるぞ。 |
名雲光 |
アハハ、ウケる。 また未来人って……え、もしかしてマジで言ってんの? |
クロタウロス |
信じられないだろうが、本当だ。 俺は未来からやってきた。 |
森沢江湖 |
えっと、そうなんだ~。 ……反応に困っちゃうかも? |
村雨礼司 |
説明はしてもらえるのか? |
クロタウロス |
その反応、もしかしておまえたちは、 未来のことについてなにか知っているのか? |
村雨礼司 |
似たような事件があってな……。 未来人を名乗る怪人と会ったことがある。 |
クロタウロス |
ふむ……なるほどな。 |
クロタウロス |
いいだろう、まずは俺のことを話すとしよう。 |
クロタウロス |
なに、心配しなくてもいい。 俺におまえたちと敵対する意志はないからな。 |
ウサタロー |
なあ、クロタウロス。 ひとつ頼みがあるんだけど。 |
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ウサタロー |
オイラたちと戦う気がないなら、 とりあえず手下怪人なんとかしてくんねーか? |
セクレト |
手下怪人は現在も仙台市全域に展開中です。 |
クロタウロス |
ぬう、そいつはすまん。 勝手に出てしまっているのか。 |
村雨礼司 |
勝手に? 手下怪人はボスの命令に従うんじゃないのか? |
クロタウロス |
怪人になってから日が浅くてな。 まだ手下怪人を上手くコントロールできないんだ。 |
酉原剛 |
十年間、怪人やってたわけじゃねーのか? |
クロタウロス |
いや、それは違う。 これでも一応、ちゃんと改心したんだぞ。 |
名雲光 |
その姿で言われても説得力ないでしょ。 |
クロタウロス |
返す言葉もない。 これでも一時期はヒーローをやっていたんだが……。 |
皆野祐樹 |
へ~、ヒーローになったんだ? |
クロタウロス |
恥ずかしながら、おまえたちに憧れてな。 |
皆野祐樹 |
ぼ、僕たちに憧れて? エヘヘ、そう言われると照れちゃうな。 |
酉原剛 |
フッ、俺様は強いからな。 俺様に惹かれちまうのは仕方のないことだぜ。 |
村雨礼司 |
おだてられて、素直に喜ぶな。 |
酉原剛 |
なんだよ、別にいいじゃねーか。 |
村雨礼司 |
嘘を言ってるかもしれないんだぞ。 こいつの言葉は真に受けないほうがいい。 |
クロタウロス |
嘘なんかつくものか。 敵対するつもりはないと言ってるじゃないか。 |
村雨礼司 |
それなら聞くが、 ヒーローをやめた理由はなんだ? |
クロタウロス |
そ、それは……。 |
村雨礼司 |
改心したと言いながら、今は怪人じゃないか。 おまえは俺たちに嘘をついているんじゃないのか? |
クロタウロス |
俺が再び怪人になる道を選んだのは、 仲間のためだ。 |
クロタウロス |
そうしなければ未来の世界では 生き残ることができなかったんだ。 |
酉原剛 |
仲間のために怪人って……なんかおかしくねーか? |
森沢江湖 |
うん……みんなを守りたいなら、 なおさらヒーローのほうがいいんじゃないかな? |
クロタウロス |
おまえたちなら、そう言うんだろうな。 あの未来の世界であっても。 |
クロタウロス |
怪人化の道を選んだのは、確かに俺の弱さだ。 本当にすまない。 |
クロタウロス |
せめてもの罪滅ぼしというわけではないが、 俺にも手下怪人を片付ける手伝いをさせてくれ。 |
村雨礼司 |
フン……好きにしろ。 |
皆野祐樹 |
未来のヒーロー学園ってどうなってるんだろう? |
---|---|
ウサタロー |
いきなりどうしたんだ? |
皆野祐樹 |
クロタウロスの話を聞いてて思ったんだ。 |
皆野祐樹 |
もし怪人化しないと生き残れないって話が本当なら、 ヒーロー学園はどうなっちゃってるのかなって。 |
森沢江湖 |
そういえばそうだね。 私も気になるかも。 |
森沢江湖 |
ねえ、クロタウロスさん。 未来のヒーロー学園のこと、聞いてもいい? |
名雲光 |
ちょい待ち、二人とも。 そういうことは迂闊に聞かないほうがいいよ。 |
森沢江湖 |
そうなの? |
名雲光 |
ウチらが余計なことを知ることで、 未来が変わっちゃうかもしれないでしょ! |
皆野祐樹 |
あ~、確かに! そういう展開、SFとかでよくあるもんね! |
皆野祐樹 |
なしにしよう! 今の質問なしなし!答えなくていいからね! |
クロタウロス |
よく分からんが、 俺の伝えた情報程度で未来が変わるもんかね……? |
名雲光 |
未来ってのは些細なことで簡単に変わるもんなの。 そういうもんなの。 |
村雨礼司 |
SFの話なんだろ? |
クロタウロス |
それなら別に変えちまっていいんじゃないか? 今の未来より悪くはならないだろうし。 |
皆野祐樹 |
未来のヒーロー学園って そんなひどいことになってるの? |
クロタウロス |
ヒーロー学園、なくなってるからな。 |
皆野祐樹 |
な、なんだって~!? |
酉原剛 |
どうしてそんなことになっちまうんだよ! 未来のヒーロー学園でなにが起こるっていうんだ! |
クロタウロス |
…………。 |
酉原剛 |
おい、なんでそこで黙り込むんだよ! |
クロタウロス |
それは教えないほうがいいんじゃないと思ってな。 |
クロタウロス |
もし本当に俺の話で未来が変わるのだとしたら、 この話は『奴』の存在に関わることになる。 |
クロタウロス |
『奴』に関わることで未来がどう変わるのか? 俺にはまるで想像がつかない。 |
クロタウロス |
良くなるかもしれないし、 あるいは、さらに悪くなるかもしれない。 |
クロタウロス |
おまえたちはどう思う? この話、俺は伝えるべきなのだろうか……? |
森沢江湖 |
な、なんかすっごく話が大きくなってきてない? |
村雨礼司 |
ああ……この話はここまでにしよう。 安易に踏み込んでいい話題ではなさそうだ。 |
皆野祐樹 |
うう、未来ではいったいなにが起きてるの……? |
皆野祐樹 |
正直な話、クロタウロスが出現してから ずっと聞きたかったことがあるんだ。 |
---|---|
クロタウロス |
聞きたいというのであれば、教えてもいいが……? |
皆野祐樹 |
ううん、答えなくていいよ。 |
皆野祐樹 |
ほら、ガネゴールドが言ってたじゃない。 未来の僕たちは伝説になってるって。 |
酉原剛 |
言ってたな! 伝説のヒーローチームになってるとかなんとか! |
森沢江湖 |
そっか、クロタウロスさんは 私たちの未来の姿も知ってるんだ! |
酉原剛 |
俺様の大活躍っぷりを聞いてみたいもんだぜ! |
名雲光 |
いや、だから、そういう話は聞かないほうがいいって。 |
皆野祐樹 |
知ってしまったら、未来が変わるかもしれないよ。 僕たちは伝説にはなれないかもしれない。 |
村雨礼司 |
すでに伝説のヒーローチームという未来が 変わってしまっている可能性もある。 |
酉原剛 |
そいつは困る! |
名雲光 |
だから、あまり迂闊なことは聞かないようにしよ? ヒーロー学園のこととか気になるかもだけど。 |
村雨礼司 |
俺も同感だ。 『奴』のことは気にかかるがな。 |
森沢江湖 |
そうかもだけど……。 でも、クロタウロスさんの話ってすごく大切なような? |
皆野祐樹 |
うん……無視はできないんじゃないかな。 誰かは聞くべきだと思う。 |
ウサタロー |
だったらセクレトに任せてみねーか? AIなら迂闊なこと聞かねーだろうし。 |
名雲光 |
それが一番いいかもね。 言ってることが嘘か本当かも判断してくれるかも。 |
セクレト |
イエス。 実に合理的な判断だと思います。 |
セクレト |
付け加えるならば、 不動学園長にも同席してもらうべきでしょう。 |
皆野祐樹 |
それじゃ一緒にヒーロー学園まで来てもらおう。 どうかな、クロタウロス? |
クロタウロス |
俺はかまわないぞ。 |
酉原剛 |
だけどよ、どうやってヒーロー学園まで行くんだ? 怪人連れて移動したら、騒ぎになるぜ? |
森沢江湖 |
いつものように新幹線、ってわけにはいかないよね。 |
名雲光 |
だったら飛行機をチャーターするしかないっしょ。 人目に触れないし、一番確実じゃん? |
名雲光 |
というわけで手配よろしく、セクレト♪ |
皆野祐樹 |
名雲さん、いくらなんでもそれは無茶なんじゃ……。 |
セクレト |
手配しました。 仙台空港までお越しください。 |
皆野祐樹 |
ええ~っ!? 本当に飛行機で帰れるの!? |
皆野祐樹 |
仙台空港まで来ちゃったけど……。 本当に飛行機で帰れるの? |
---|---|
セクレト |
イエス。 学園長所有のジェット機を用意しました。 |
森沢江湖 |
飛行機で帰れるなんてすごいな~。 いつもと違ってちょっとセレブな感じだね! |
名雲光 |
ウチらだけの貸し切りなわけでしょ? テンション上がるわ~。 |
クロタウロス |
おお、飛行機が飛んでるじゃないか! |
酉原剛 |
そりゃ飛ぶだろ。 |
クロタウロス |
飛んでる飛行機を見るの、久しぶりなんだよ。 未来じゃ一機も飛んでないからな。 |
クロタウロス |
やはり昔の風景はいいものだな……。 平和そのものだ。 |
村雨礼司 |
おまえの手下怪人が暴れているがな。 |
クロタウロス |
それについては本当にすまないと思ってる。 |
皆野祐樹 |
あのさ、ガネゴールドも言ってたけど、 未来ってそんなにひどいの? |
クロタウロス |
……ひどいなんてもんじゃないさ。 |
??? |
皆様、こちらですわ~。 |
ウサタロー |
おっと、どうやら迎えが来たようだぜ。 |
嵐山瑠璃 |
お待たせしてしまったかしら。 皆様をお迎えにあがりましたわ。 |
皆野祐樹 |
あれ、嵐山さん? もしかして僕たちのために来てくれたの? |
嵐山瑠璃 |
はい~。 私、皆様の護衛役ですのよ。 |
森沢江湖 |
護衛がつくとか、ますますセレブっぽい! でも私たちもいるのに、どうして? |
嵐山瑠璃 |
ジェット機の移動中にも、 時空の穴から手下怪人が現れるかもしれませんでしょ? |
嵐山瑠璃 |
そこで私プリンセス・テフテフが、 皆様の応援として選ばれたわけですの。 |
森沢江湖 |
わざわざごめんね~、瑠璃ちゃん。 |
嵐山瑠璃 |
いえいえ、かまいませんわ。 それで、そちらの怪人さんが話にあった方ですわね? |
クロタウロス |
貴様ァ! こんなところにいたのか! |
嵐山瑠璃 |
きゃっ。 どうなさいましたの? |
クロタウロス |
どうしたもこうしたもあるか! 覚悟しろ! |
嵐山瑠璃 |
え~っと……? どこかでお会いしたことあったかしら? |
クロタウロス |
その説明は不要だ! とにかく貴様はここで殺す! |
皆野祐樹 |
ち、ちょっと落ち着いてよ! 急にどうしちゃったの!? |
クロタウロス |
止めてくれるな! 俺はなんとしてでも、この女を殺さねばならんのだ! |
村雨礼司 |
ええい、仕方がない! 俺たちでクロタウロスを止めるぞ! |
皆野祐樹 |
嵐山さん、大丈夫? 怪我してない? |
---|---|
嵐山瑠璃 |
ええ、平気ですわ。 |
嵐山瑠璃 |
けれど応援に来た私が、 まさか皆様に守られることになるなんて。 |
クロタウロス |
そこをどけ、ライオンハート! その女を守るというなら、ただではおかんぞ! |
皆野祐樹 |
敵対するつもりはないんじゃなかったの? |
クロタウロス |
おまえたちとはな。 だが、その女は別だ! |
森沢江湖 |
人違いじゃないの? だって瑠璃ちゃんとはさっき会ったばかりでしょ? |
村雨礼司 |
未来でなにかあったんじゃないのか? |
クロタウロス |
そのとおりだ! 俺はその女の未来を知っている! |
嵐山瑠璃 |
はい?未来? |
クロタウロス |
その女は世界に滅びをもたらす魔女だ! だから俺がその女を殺す! |
クロタウロス |
その女を殺して、 俺は世界を、そして未来を救う! |
嵐山瑠璃 |
あの~、なにがなんだかサッパリなんですけど。 |
クロタウロス |
おまえは理解しなくていい! そのまま死ね! |
皆野祐樹 |
問答無用だ~! |
名雲光 |
あんまり話通じなさそうじゃね? ここは一度逃げたほうがいいと思うんだけど。 |
ウサタロー |
よし、ここはオイラに任せろ! |
ウサタロー |
クロタウロスはオイラが引き留めるから、 その間におまえたちはジェット機で離脱するんだ! |
皆野祐樹 |
無茶だよウサタロー! |
ウサタロー |
いいから行け~! ウオ~ッ、勝負だクロタウロス! |
クロタウロス |
フン! |
ウサタロー |
あ~れ~っ! |
皆野祐樹 |
やっぱり一撃で吹き飛ばされた~! |
クロタウロス |
おまえたちも、逃がさんぞ! ジェット機は破壊させてもらう! |
酉原剛 |
なっ……ジェット機を一撃で! なんて野郎だ! |
名雲光 |
やっぱ時空の穴から来た怪人はマジでヤバいわ。 |
クロタウロス |
さあ、その女をこちらに渡せ! そうすればおまえたちは見逃してやる! |
村雨礼司 |
そんなことを言われて、 素直にクラスメイトを差し出せるものか! |
嵐山瑠璃 |
まあ、かっこいい。 私、素敵なお友達に恵まれましたわ。 |
森沢江湖 |
そんなことのんきに言ってる場合じゃないと 思うんだけど。 |
クロタウロス |
ならば、容赦はせんぞ! おまえたちに恨みはないが、これも未来のためだ! |
皆野祐樹 |
なんとかして嵐山さんを守らないと! いったいどうすれば……? |
クロタウロス |
逃げられると思うな! さっさと諦めて、その女を差し出せ! |
---|---|
皆野祐樹 |
どうしよう……。 このままじゃジリ貧だ。 |
森沢江湖 |
滑走路じゃ身を隠す場所もないよ。 一度ターミナルに避難した方がいいんじゃないかな? |
ウサタロー |
ちょっと待て~! ターミナルだけはダメだ~! |
嵐山瑠璃 |
あら、ウサタローさん。 ご無事だったんですね。 |
嵐山瑠璃 |
ですが、どうしてターミナルに逃げてはダメなの? |
ウサタロー |
クロタウロスに吹っ飛ばされたとき、 上空から見えたんだ。 |
ウサタロー |
空港の周りに出現した手下怪人たちが、 滑走路に向かって集まってきてやがる! |
村雨礼司 |
まさか、狙いは嵐山か? くそ、コントロールはできないんじゃなかったのか! |
ウサタロー |
興奮状態になって、 本能的に手下怪人を操れるようになったのかもな。 |
ウサタロー |
とにかく、今ターミナルに逃げ込んじまうと、 一般客たちを巻き込むことになっちまう! |
森沢江湖 |
そ、それじゃどうしたら……? どっちにしても、このままじゃヤバいってことだよね? |
名雲光 |
手下怪人に囲まれても面倒だし、 やっぱここは空路一択じゃね? |
村雨礼司 |
ジェット機は破壊されたのに、 どうやって空から逃げるつもりだ? |
セクレト |
ご安心ください。 新たにヘリコプターを手配しました。 |
名雲光 |
さっすがセクレト! |
セクレト |
いつ空港にヘリコプターが到着してもいいように、 ヘリポートに向かってください。 |
酉原剛 |
おい、逃げるのかよ! 今ここでクロタウロスを倒せばいい話だろ! |
皆野祐樹 |
今は無茶しないほうがいいよ。 僕たちだけでクロタウロスの相手は無理だと思う。 |
皆野祐樹 |
それに今は、嵐山さんを守ることを 優先したほうがいいと思うんだ。 |
酉原剛 |
ぐぬっ……分かったぜ。 |
嵐山瑠璃 |
私のせいでこんなことに……。 皆様、なんだか申し訳ございません。 |
森沢江湖 |
そんなこと全然気にしなくていいんだよ! |
ウサタロー |
よし、話はまとまったな! |
ウサタロー |
そんじゃ怪人たちの動きに注意しつつ、 ヘリポートに急いで向かおうぜ! |
村雨礼司 |
それで嵐山。 実際のところ、どうなんだ? |
---|---|
嵐山瑠璃 |
どうとは、なんのことでしょう? |
村雨礼司 |
クロタウロスに狙われる理由だ。 なにか心当たりはないのか? |
皆野祐樹 |
そいつは世界を滅ぼす魔女だ~! とか、すごい剣幕で言ってたよね。 |
嵐山瑠璃 |
え~と……そんな設定はないはずですけど。 |
皆野祐樹 |
設定? |
嵐山瑠璃 |
あ、ごめんなさい。 なんでもありませんわ。 |
嵐山瑠璃 |
狙われる覚えなんて、まったくないですわ。 あの怪人さんとは初対面ですし。 |
皆野祐樹 |
だよね~。 |
村雨礼司 |
それなら、世界を滅ぼす予定は? 滅ぼしたいと思ったことは? |
嵐山瑠璃 |
生憎と……今のところはありませんわね。 |
森沢江湖 |
そんな予定があったらビックリだよね。 |
ウサタロー |
そもそも、そんな野心を抱いている人間は ヒーロー学園に入れないと思うぜ。 |
村雨礼司 |
嵐山、本当か? 本当に思い当たるものはなにもないのか? |
村雨礼司 |
なにかあるんじゃないのか? クロタウロスの怒りには、相応の理由があるはずだ。 |
名雲光 |
ちょい待ち。 イケメンてば、失礼なこと聞きすぎだから。 |
名雲光 |
もうちょい女の子に優しくしな? そーしないとモテないよ? |
村雨礼司 |
俺は別に厳しく当たってるつもりは……! |
森沢江湖 |
ちょっと言い方キツイかな~。 |
村雨礼司 |
ぐぬっ……。 |
酉原剛 |
まあ落ち着けよ。 瑠璃も分かんねーって言ってんだからよ。 |
酉原剛 |
それに、世界を滅ぼしたいと思うことぐらい、 誰にだってあるだろ? |
皆野祐樹 |
酉原くん、そんな物騒なこと考えたことあるの!? |
酉原剛 |
何度もあるぜ。 |
酉原剛 |
お気に入りの限定メニューが終わったときとか、 体脂肪率が二桁になったときとか。 |
酉原剛 |
ショックすぎて、世界なんて滅んじまえばいいのに~ って思うことあるだろ? |
森沢江湖 |
そうだね……あるね。 ケーキバイキングに行ってはしゃぎすぎたあととかね。 |
嵐山瑠璃 |
あら、そういうお話でいいのでしたら……。 |
村雨礼司 |
いいわけないし、しなくていい。 |
嵐山瑠璃 |
まあ怖い。冗談ですのに。 |
嵐山瑠璃 |
ともかく、本当に心当たりはありませんわ。 理由も分からず狙われるのは気味が悪いですわね。 |
ウサタロー |
確かにな。 理由を知りたいところだが……困ったもんだぜ。 |
名雲光 |
あれ~? なにこれ、どーなってんの? |
---|---|
森沢江湖 |
どうしたの、光ちゃん? |
名雲光 |
今、ヒーロー学園のデータベース調べてたんだけど、 ラッシーの名前、偽名じゃん? |
嵐山瑠璃 |
ラッシーって私のことですの? |
村雨礼司 |
生徒のデータベースへのアクセスは、 禁止されているはずだが? |
名雲光 |
いや~、本人も気付いてない怪人に狙われる理由が、 なにかあるんじゃないかと思ってさ。 |
名雲光 |
チョビ~ッとだけデータベース覗き込んでみたの。 |
村雨礼司 |
こいつはまた……。 |
森沢江湖 |
っていうかちょっと待って! 今、瑠璃ちゃんの名前は偽名って言った? |
森沢江湖 |
瑠璃ちゃんの名前って、嵐山瑠璃なんじゃないの!? |
名雲光 |
違うみたいよ。 戸籍データと一致しないし。 |
森沢江湖 |
ええ~っ!? |
嵐山瑠璃 |
あらあら、まあまあ。 ……これは困りましたわね。 |
名雲光 |
てか、ラッシーの個人情報、全部閲覧不可じゃん。 セクレト、閲覧許可ちょーだい? |
セクレト |
ノー。 それは個人情報保護の原則に反します。 |
皆野祐樹 |
個人情報が保護されてるのは当たり前だけど……。 でも、名前すら偽名ってどういうこと? |
セクレト |
嵐山様のデータには閲覧制限と偽装が施されています。 |
セクレト |
これは嵐山様の個人的な事情によるもので、 本人の了承なく開示することはできなくなっています。 |
皆野祐樹 |
隠さなきゃいけない何かがあるってこと……? |
嵐山瑠璃 |
…………。 |
皆野祐樹 |
ハッ……! も、もしかして嵐山さん! |
皆野祐樹 |
僕たちのこと、騙してたとか? 実はヒーロー学園に潜入した敵のスパイだったとか!? |
皆野祐樹 |
目をギラッと光らせながら、 「フッ、バレましたわね」とか言っちゃう展開に!? |
森沢江湖 |
ちょっと落ち着こ、祐樹くん。 |
皆野祐樹 |
ご、ごめんなさい。 |
嵐山瑠璃 |
フフ、安心なさって。 別に皆様を騙したりなんかしてませんから。 |
嵐山瑠璃 |
確かに嵐山瑠璃は偽名ですけど、 学園長にはちゃんと許可はいただいてますし。 |
嵐山瑠璃 |
私はヒーロー学園の生徒で、名前は嵐山瑠璃。 これからもそういう認識で問題ありませんわ。 |
森沢江湖 |
そっかー、それなら問題ないね。 ……ないのかなぁ? |
皆野祐樹 |
学園長もそれで納得してるの? |
嵐山瑠璃 |
すべて私に一任してくださっています。 それよりも皆様、敵が参りましたわよ? |
村雨礼司 |
それで、どういうことなんだ? |
---|---|
村雨礼司 |
今さら嵐山が味方かどうかなんて疑わないが、 隠し事をしているのはなぜだ? |
嵐山瑠璃 |
そうですわね。 個人情報を隠している理由くらいはお答えしますわ。 |
嵐山瑠璃 |
実は私のこの名前、キャラクターネームですの。 |
名雲光 |
はい? キャラクターネーム……? |
嵐山瑠璃 |
ほら、ゲームで自分のキャラに名前をつけるでしょ? あれと同じですわ。 |
嵐山瑠璃 |
ユーザーネームが嵐山瑠璃で、 キャラクターネームがプリンセス・テフテフですの。 |
酉原剛 |
なるほど、スマホのアプリとかと同じか……。 って、全然わからん。 |
森沢江湖 |
分かるように説明して~。 |
嵐山瑠璃 |
私の超人能力は、夢を実体化してヒーローになる、 というものですの。 |
嵐山瑠璃 |
つまり、この身体はただの幻。 まさにゲームのような架空の存在。 |
嵐山瑠璃 |
そしてその幻につけた名前が、嵐山瑠璃。 |
森沢江湖 |
じゃあ、本当の瑠璃ちゃんは別の場所にいるってこと? |
嵐山瑠璃 |
そういうことになりますわね。 |
嵐山瑠璃 |
本当の私自身は、ただの人間。 だから個人情報は伏せさせてもらってますの。 |
村雨礼司 |
なるほど……。 なんとなくは理解した。 |
酉原剛 |
けど、スゲー能力だよな。 戦っても本当の自分にはダメージないってことだろ? |
酉原剛 |
ってことはだぜ。 もしかしてクロタウロスにやられても問題ねーのか? |
皆野祐樹 |
ゲームみたいにコンティニューできちゃう? |
嵐山瑠璃 |
それがそうでもなくて。 この幻の身体が死ぬと、本体も死んでしまうの。 |
皆野祐樹 |
そうなんだ。 まあ、ゲームとは違うってことだね。 |
森沢江湖 |
それじゃ、やられそうになったら幻を消すとか、 瞬間移動するとかは? |
嵐山瑠璃 |
それもできませんの。 世の中、そううまくはできてませんのよ。 |
ウサタロー |
それができてりゃ、 サッサとクロタウロスから逃げてるわな。 |
嵐山瑠璃 |
そういうことなので、 やっぱり怪人さんのしつこさには困ってしまいますわ。 |
森沢江湖 |
安心して! 瑠璃ちゃんのことは私たちがしっかり守るから! |
皆野祐樹 |
ヘリコプターが来るまで、 僕たちがしっかり時間を稼いでみせるよ! |
森沢江湖 |
夢の実体化か~。 なんかそれ聞いて、すごい納得しちゃった。 |
---|---|
嵐山瑠璃 |
あら、なにか気になることでも? |
森沢江湖 |
瑠璃ちゃんってすっごいフワフワしてるっていうか、 メルヘンっぽいっていうか……。 |
森沢江湖 |
お化粧とかオシャレじゃどうにもならなそうな 雰囲気あるな~って前から思ってたの。 |
名雲光 |
分かる。 ちょっと現実離れした感じなんよね。 |
森沢江湖 |
ホント夢っぽいかわいさなの。 すごい納得。 |
嵐山瑠璃 |
ウフフ、かわいいだなんて。 褒めてくださってありがとうございます。 |
ウサタロー |
おい、あんまり気を抜くなよ! 前のほうから手下怪人の声が聞こえてくるぜ! |
手下怪人 |
ヤラレターッ! |
ウサタロー |
ほら現れた! と思ったら、やられてるじゃねーか。 |
皆野祐樹 |
誰か応援に来てくれたのかな? |
スピードスター |
む、おまえたちは名古屋のときの……? こんなところでなにをしているんだ? |
皆野祐樹 |
ああ~、スピードスターだ! |
酉原剛 |
ってことはアクアマリンちゃんもいるのか!? |
アクアマリン |
まさかとは思いますが、 クロタウロスと関わっているのですか? |
皆野祐樹 |
うん、実はそのまさかだったりして。 あ、でも無茶なことはしてないから安心して! |
スピードスター |
誰がおまえたちの心配など……。 |
ウサタロー |
最初は冷静で話も通じたんだけどよ、 途中からいきなり怒り狂っちまって大変だったんだ。 |
嵐山瑠璃 |
理由はよく分からないんですけど、 私が狙われてるみたいで。 |
ウサタロー |
悪いけど、あとは頼んだぜ! オイラたちの代わりにクロタウロスを倒してくれ! |
スピードスター |
言われなくてもそのつもりだが。 |
スピードスター |
おい、やつと話したのか? まさかとは思うが、余計なことは聞いてないだろうな! |
皆野祐樹 |
えーと、話したけど。 余計なことって、例えばどんなこと? |
スピードスター |
どんなことでもだ。 やつらとは、一切なにも喋るな。 |
村雨礼司 |
やはり俺たちが未来のことを知るのはまずいのか? |
スピードスター |
余計な詮索もするな。 おまえたちは、その女の心配でもしていろ! |
皆野祐樹 |
あっという間に行っちゃった。 |
酉原剛 |
ちぇっ。 相変わらず感じの悪いやつだぜ! |
ウサタロー |
だけど、頼りになるやつらだ。 |
ウサタロー |
クロタウロスのことはあの二人に任せて、 オイラたちはヘリポートに急ごう! |
皆野祐樹 |
見て! 向こうで戦闘が始まったみたいだよ! |
---|---|
酉原剛 |
派手にやってるじゃねーか。 くっそ~、俺様もあっちに加わりてーぜ。 |
名雲光 |
トリ頭が行ってもスピスタの足引っ張るだけでしょ。 |
酉原剛 |
俺様だったらクロタウロスはもちろん、 スピードスターだって叩きのめしてやれるぜ! |
名雲光 |
いやいや、スピスタ叩きのめしちゃダメでしょ。 |
ウサタロー |
スピードスターの実力は本物だ。 あいつなら問題なくクロタウロスを倒してくれるだろ。 |
ウサタロー |
だが、万が一ということはある。 オイラたちは今のうちにヘリコプターで脱出だ! |
森沢江湖 |
スピードスターさんたちが敵を引きつけてくれるから、 安全にヘリポートまで行けるね。 |
手下怪人 |
待テ-! |
森沢江湖 |
わっ、手下怪人さんだ! スピードスターさんのところに行ったんじゃないの? |
村雨礼司 |
クロタウロスの狙いは、あくまで嵐山ってことだろ。 |
名雲光 |
そりゃそーだわ。 やっぱ手下怪人の相手はしなくちゃダメか~。 |
皆野祐樹 |
クロタウロスが来ないだけでも助かるよ。 手下怪人だけなら僕たちでも倒せるし。 |
ウサタロー |
さあ、さっさと先に進むぞ! 手下怪人に追いつかれて囲まれたら厄介だ! |
嵐山瑠璃 |
本当にすみません。 私のせいで、皆様にはご苦労をおかけしますわ。 |
森沢江湖 |
謝んなくていいってば~。 |
村雨礼司 |
仲間を助けるのは当然のことだ。 ……と言ってやりたいところだがな。 |
村雨礼司 |
その仲間に隠し事をされているというのは、 正直あまりいい気分がしない。 |
森沢江湖 |
そんな言い方ないよ村雨くん。 瑠璃ちゃんは、ちゃんと事情話してくれたでしょ? |
嵐山瑠璃 |
いいんです。 村雨様のおっしゃることも、ごもっともですから。 |
嵐山瑠璃 |
クラスメイトにも本名言えないなんて、 けっこう怪しいですよね。 |
村雨礼司 |
そういうことだ。 |
嵐山瑠璃 |
私も自覚はしてるんです。 けれどごめんなさい、どうしても話せない訳があって。 |
酉原剛 |
無理に聞き出そうなんて思わないぜ! ……礼司以外は。 |
村雨礼司 |
悪かったな! |
村雨礼司 |
だって、気になるだろ。 |
村雨礼司 |
教えられないってことはつまり、 俺たちは信用されてないってことなんだからな。 |
嵐山瑠璃 |
…………。 |
嵐山瑠璃 |
実は私、学校に通ったことがありませんの。 |
---|---|
酉原剛 |
なに言ってんだよ。 ちゃんとヒーロー学園に通ってるじゃねーか。 |
名雲光 |
トリ頭ってばマジウケる。 この場合は、ラッシーの本体のほうの話でしょ。 |
森沢江湖 |
学校に通ったことがないって、 もしかして病気とか……? |
嵐山瑠璃 |
ええ、小さい頃から入院してばかりで……。 |
嵐山瑠璃 |
今も私の本体は入院したまま。 ベッドからまともに動くこともできませんわ。 |
嵐山瑠璃 |
殺そうと思えば、誰でも私を殺せるでしょうね。 私の本体さえ分かっていれば。 |
ウサタロー |
プリンセス・テフテフを倒したければ、 本体を狙えというわけか。 |
嵐山瑠璃 |
だから私は素性を隠す必要がありますの。 自分自身を守るために。 |
村雨礼司 |
そういうことだったのか……。 |
セクレト |
情報が漏洩するあらゆる可能性を消す。 そのためにデータベースを閲覧不可としたのです。 |
名雲光 |
ハッキングされたら大変だもんね。 |
村雨礼司 |
こいつがやったみたいにな。 |
名雲光 |
エヘ☆ |
村雨礼司 |
事情はよく分かった。 辛いことを告白させてしまってすまなかった。 |
嵐山瑠璃 |
いいえ、かまいませんわ。 |
森沢江湖 |
そっか~。 それじゃお見舞いにも行けないんだ。 |
皆野祐樹 |
僕たちも本当の嵐山さんとは 会わないほうがいいってことだもんね。 |
嵐山瑠璃 |
そんなお気遣いは無用ですわ。 だって私はここにいるんですもの。 |
嵐山瑠璃 |
皆様と一緒に学園生活を送れて、 私、けっこう幸せですのよ? |
酉原剛 |
すげー健気なこと言うじゃねーか! 泣かせる話だぜ! |
嵐山瑠璃 |
フフ、そんなことないですわ。 だって私、普通にヒーロー活動楽しんでますから。 |
嵐山瑠璃 |
謝ってばかりですけど、 今だって実は、内心すごく楽しんでますの。 |
皆野祐樹 |
殺されそうになってるのに~!? |
嵐山瑠璃 |
さすがに一人だったら、 泣いちゃってたかもしれませんわね。 |
嵐山瑠璃 |
けれど私には、頼もしいクラスメイトが一緒ですから。 心強いし、とっても楽しいんです。 |
ウサタロー |
いいこと言うじゃねーか、嵐山! |
ウサタロー |
仲間同士助け合い、支え合う! ヒーローとしてとても大切なことだぜ! |
嵐山瑠璃 |
そういうことですので皆様、 どうかこれからも私に力を貸してくださいね! |
アクアマリン |
みなさん、ご無事ですか? |
---|---|
皆野祐樹 |
あっ、アクアマリン! もしかして僕たちのこと心配して来てくれたの? |
アクアマリン |
まあ、心配は心配ですね。 別の心配ですが。 |
皆野祐樹 |
えっと、なんのこと? |
アクアマリン |
みなさんは、知りたがりですから。 「好奇心は猫を殺す」って聞いたことあります? |
皆野祐樹 |
あ、これもしかして、遠回しに釘刺されてる? |
アクアマリン |
余計なことは知らないほうがいいということです。 |
アクアマリン |
そこにいるプリンセス・テフテフの秘密を 知らないほうがいいように。 |
嵐山瑠璃 |
あら、私のことご存知なんですか? |
アクアマリン |
……秘密があるということだけですけどね。 |
アクアマリン |
ちなみにみなさん、 彼女のことは聞いてませんよね? |
村雨礼司 |
秘密を明かせない事情までは聞いたがな。 |
アクアマリン |
それならセーフですね。 |
ウサタロー |
その先を聞いちまうとどうなるんだ? |
アクアマリン |
殺さなくてはいけなくなります。 |
皆野祐樹 |
ええ~っ!? |
アクアマリン |
これは脅しと受け取ってもらってけっこうです。 |
アクアマリン |
好奇心旺盛な猫は殺します。 みなさん、くれぐれも気をつけてください。 |
村雨礼司 |
ずいぶん上から偉そうに言ってくれるじゃないか! おまえ、何様のつもりだ! |
名雲光 |
いや~、どうかな~。 イケメンがそれ言っちゃう? |
酉原剛 |
礼司も相当だぜ? 人の振り見てフランケンシュタイナーって言うぜ? |
村雨礼司 |
お、俺が言いたいのは、ヒーロー同士協力しあったら いいんじゃないかってことだ! |
村雨礼司 |
なにも説明せずに命令ばかり……。 少しは俺たちを信用してくれてもいいんじゃないのか? |
アクアマリン |
…………。 |
アクアマリン |
言いたいことは分かります。 |
アクアマリン |
信用できる者と協力しあったほうが、 私たちの任務も上手くでしょう。 |
アクアマリン |
そしてみなさんならば、信用できるかもしれない。 私自身はそう思い始めているのですが……。 |
酉原剛 |
だったら協力しようぜ。 俺様たちはいつでも歓迎だ! |
アクアマリン |
彼が、首を縦に振ってくれないんですよね。 |
酉原剛 |
彼って……スピードスターのことか? |
アクアマリン |
なかなかの頑固者なんです、彼。 |
酉原剛 |
やっぱスピードスターのやつ、 一回叩きのめしてやったほうがいいんじゃねーか? |
名雲光 |
いやいやいや。ダメに決まってるっしょ……。 |
スピードスター |
誰が頑固者だって? |
---|---|
皆野祐樹 |
あっ、スピードスター! |
アクアマリン |
私のよく知るヒーローのことですよ。 あなたもよく知っていますよ? |
スピードスター |
そうか、まったく心当たりがないな。 |
森沢江湖 |
これは確かに頑固そうかも……。 |
皆野祐樹 |
え、えーと、ちょっといいかな。 クロタウロスのほうはどうなったの? |
皆野祐樹 |
もしかして、もう倒しちゃった? やっぱスピードスターはすごいなぁ! |
スピードスター |
いや、まだ倒してはいない。 |
ウサタロー |
そうなのか? ガネゴールドのときはあっという間だったのに。 |
スピードスター |
ガネゴールドなど大した怪人じゃないさ。 |
皆野祐樹 |
クロタウロスは大した怪人ってことなのかな。 |
スピードスター |
ああ、ガネゴールドよりはな。 特にあの怪力はなかなかのものだ。 |
スピードスター |
そうだな……ここにいる全員の力を 合計したのと同じくらいの怪力だ。 |
皆野祐樹 |
え~っ、ここにいる全員でかかっても クロタウロスには勝てないかもしれないってこと? |
スピードスター |
いや、全員でかかればいけるだろう。 合計値ならこちらが少し上だ。 |
村雨礼司 |
……ん? もしかして、俺たちに手伝えと言ってるのか? |
スピードスター |
まさか。 超変身できないおまえたちなど、ただの足手まといだ。 |
酉原剛 |
足手まといかどうか、試してみろよ! |
スピードスター |
無駄だと言っているのだがな……。 だが、そんなにやってみたいなら好きにするといい。 |
名雲光 |
止めないんだ。 あんなに関わるなって言ってたのに。 |
皆野祐樹 |
う~ん。 やっぱり、僕たちも一緒に戦えって言ってる? |
スピードスター |
言ってない。 だが、おまえたちが戦うというなら俺は別に止め―― |
酉原剛 |
だーっ!回りくどいやつだな! |
酉原剛 |
ハッキリ言えよ、一人じゃ倒せないんだろ! 俺様たちに協力してほしくて来たんじゃねーのか!? |
村雨礼司 |
情けないやつだ。 それでも現役最強なのか、スピードスター? |
スピードスター |
ぐっ……! |
皆野祐樹 |
ま、まあまあまあ。 僕たちでよければ喜んで協力するからさ。ね? |
スピードスター |
た、頼む……。 |
・ | |
・ | |
・ | |
ウサタロー |
うおっ! 今の爆発、すぐ近くだったぜ! |
スピードスター |
あそこはヘリポートだ。 おまえたちのヘリは、すでに破壊されてしまった。 |
ウサタロー |
なんだって! |
スピードスター |
想定を遥かに超えるパワーだ。 俺一人では、やつを足止めすることもできなかった。 |
村雨礼司 |
クロタウロスが、こっちに来るんだな!? |
スピードスター |
おまえたちの協力が必要だ。 全員でクロタウロスを迎え撃つ! |
酉原剛 |
上等だ、やってやろうじゃねーか! |
クロタウロス |
ここにいたか。 ちょこまかと逃げ隠れしおって! |
---|---|
クロタウロス |
スピードスター……それにアクアマリン! ようやく落ち着いて話ができるなぁ! |
アクアマリン |
あなたが落ち着いているようには見えませんが。 |
クロタウロス |
当たり前だろう! これが落ち着いていられるか! |
スピードスター |
クロタウロス、考え直せ! おまえのやろうとしていることは間違っている! |
クロタウロス |
貴様の話を、この俺が聞くと思うか? |
クロタウロス |
貴様とプリンセス・テフテフのせいで、 世界中の人々がどれだけ苦しんだと思ってるんだ! |
スピードスター |
くそっ……! |
嵐山瑠璃 |
あの~、ちょっとよろしいかしら? |
嵐山瑠璃 |
私が世界中の人々を苦しめたというのは、 どういうことなんでしょうか? |
クロタウロス |
プリンセス・テフテフ! そこにいたか! |
クロタウロス |
もう逃がさんぞ。 今度こそ貴様を殺してやる……! |
皆野祐樹 |
後ろに下がって! 前に出たら危ないよ、嵐山さん! |
クロタウロス |
そこをどけぃ、ライオンハート! |
酉原剛 |
俺様たちもいるぜ! 全員で瑠璃を守るんだ! |
嵐山瑠璃 |
待って、酉原さん。 無闇に動いてはダメ。 |
酉原剛 |
そうかもしれねぇけど、 そういうわけにもいかねーだろうよ! |
嵐山瑠璃 |
皆野さんも危ないですわ。 私の前には立たなくても大丈夫です。 |
皆野祐樹 |
あ、嵐山さん……? |
クロタウロス |
プリンセス・テフテフ……。 どうやら覚悟はできたようだな! |
嵐山瑠璃 |
私は逃げも隠れもしませんわ。 というか、できそうにありませんし。 |
スピードスター |
やめろ、プリンセス・テフテフ! おまえはさっさと逃げるんだ! |
嵐山瑠璃 |
もう逃げ場はないと思いますけど。 |
嵐山瑠璃 |
けれど、このまま殺されるつもりもありません。 訳も分からず死ぬのなんて、嫌ですもの。 |
クロタウロス |
それのなにが問題なんだ! 世界中の人々は貴様らのせいで―― |
嵐山瑠璃 |
あなたの言う世界中の人々は、 訳も分からず死んでしまったのかもしれませんね。 |
クロタウロス |
! |
嵐山瑠璃 |
けれど、そうかもしれないからこそ、 私はどういうことなのか知りたいんです。 |
嵐山瑠璃 |
私と…… そちらのスピードスターさんも関係あるのでしょうか? |
嵐山瑠璃 |
私たちがなにをしたのか。 あなたの口から説明してはもらえませんか……? |
嵐山瑠璃 |
教えてください、クロタウロスさん。 |
---|---|
嵐山瑠璃 |
私のこと、世界を滅ぼす魔女だって言いましたよね? あれはどういう意味なんですか? |
クロタウロス |
いいだろう。 そんなに知りたければ教えてやろう。 |
スピードスター |
やめろ! おまえは知らなくていいことだ! |
クロタウロス |
おまえは黙っていろ、スピードスター! |
アクアマリン |
さて、あちらが言い争っているうちに、 作戦を立てましょう。 |
酉原剛 |
おう、なんでもやってやるぜ! |
皆野祐樹 |
僕たちは二人のサポートをすればいいのかな? |
森沢江湖 |
サポートなら任せておいてよ。 回復は得意だから。 |
アクアマリン |
みなさんは、自由に動いてください。 |
森沢江湖 |
え、それだけ? |
アクアマリン |
戦闘力の合計値は、こちらのほうが上ですので。 一斉にかかれば勝てるはずです。 |
ウサタロー |
作戦っていうか、ただの力押しじゃねーか! |
村雨礼司 |
もっとこう、連携とかそういうのはないのか? |
アクアマリン |
私、みなさんのことあまり詳しくないですしね。 連携は難しいと思いますよ。 |
村雨礼司 |
まあ……そうだな。 |
アクアマリン |
悠長に作戦を練っている時間もないでしょうし、 ここは各自得意なスタイルで戦うのがいいと思います。 |
名雲光 |
そうはいうけどさ、 ウチら、あっちの攻撃当たったらヤバくね? |
アクアマリン |
ヤバいと思いますよ。 |
名雲光 |
どうすればいい? できればウチ、生きて帰りたいんだけど。 |
アクアマリン |
私たち二人で、 できるかぎり敵の注意を引きつけます。 |
アクアマリン |
みなさんは敵の隙を狙うといいんじゃないでしょうか。 |
アクアマリン |
それでもみなさんに 攻撃が向いてしまうこともあるでしょう。 |
アクアマリン |
そのときは……まあ、頑張って回避してください。 |
酉原剛 |
雑すぎんだろ! |
スピードスター |
やめろ、彼女にはなにも教えるな! やめないというなら、力尽くでも阻止させてもらうぞ! |
クロタウロス |
望むところだ! この俺を止められるか、やってみるといい! |
アクアマリン |
そろそろ時間切れですね。 それではみなさん、作戦どおりにお願いします。 |
皆野祐樹 |
作戦なんてあったかな。 |
アクアマリン |
戦いはいつでも臨機応変です。 みなさんもヒーローならやってみせてください。 |
ウサタロー |
要するに場当たり的に戦えってことじゃねーか! |
クロタウロス |
二人だけでは俺に勝てないと踏んで、 ライオンハートたちを取り込んだか……。 |
---|---|
スピードスター |
おまえを止めるため、必要だと判断したまでだ。 |
クロタウロス |
敵対するというのなら、容赦はせん。 貴様らもそれでいいんだな? |
皆野祐樹 |
一番いいのは、戦わないことだよ。 |
クロタウロス |
プリンセス・テフテフを差し出してくれるなら、 戦わずにすむぞ。 |
皆野祐樹 |
それは絶対にできない! |
皆野祐樹 |
クロタウロスが嵐山さんを襲うというなら、 僕たちは、君と戦う! |
クロタウロス |
そうか、残念だ。 |
クロタウロス |
俺が手を引くことは絶対にない。 ならば貴様ら全員ここで倒させてもらうぞ! |
酉原剛 |
これはなかなかヤベーな。 分かっちゃいたが、めちゃくちゃ強いぜ、アイツ! |
名雲光 |
しかもめっちゃタフだし。 クロタウロス倒せる気がしないんですけど。 |
アクアマリン |
あれでも元ヒーローですからね。 それも、皆から尊敬される立派なヒーローです。 |
アクアマリン |
彼は毎日欠かすことなく身体を鍛えていました。 それが、そのまま怪人の能力に反映されているんです。 |
森沢江湖 |
そっか~。 クロタウロスさん、真面目にヒーローやってたんだね。 |
皆野祐樹 |
改心したっていうのは本当だったんだ。 でも、そんな真面目なヒーローがどうして……? |
アクアマリン |
環境が、彼をそうさせてしまったんです。 ヒーローではいられないような過酷な環境が。 |
クロタウロス |
そうだ! ヒーローのままでは、仲間を守ることはできなかった! |
クロタウロス |
この圧倒的な怪人の力! この力が、俺にはどうしても必要だったのだ! |
村雨礼司 |
おまえは間違っているぞ、クロタウロス! たとえ怪人化した理由が仲間のためだったとしてもだ! |
村雨礼司 |
おまえは、仲間を守るために得た力で、 人を殺すつもりなのか! |
クロタウロス |
そうだ、俺は人を……その女を殺す。 仲間や死んでいった者たちのためにもな。 |
クロタウロス |
それが、俺がヒーローとして選んだ道だ。 |
村雨礼司 |
なにがヒーローとして選んだ道だ! ふざけるな! |
アクアマリン |
……あまり彼を責めないであげてください。 |
村雨礼司 |
どういう意味だ? |
アクアマリン |
彼があの道を選んでしまったのは……、 私たちのせいなんです。 |
スピードスター |
もうやめろ、クロタウロス! |
---|---|
クロタウロス |
やめろとはなんだ、スピードスター! これは貴様らが始めたことだろう! |
クロタウロス |
貴様とプリンセス・テフテフが『奴』を目覚めさせた! それがすべてだろうが……! |
嵐山瑠璃 |
『奴』……? |
クロタウロス |
だから俺はプリンセス・テフテフを殺す! もちろん貴様も殺す! |
クロタウロス |
そして世界を救う! 俺の手で、未来を取り戻すんだ……! |
スピードスター |
それは違う! おまえは大きな誤解をしている! |
スピードスター |
彼女を殺してもなにも変わらない! そんなことをしても未来は取り戻せないんだ! |
クロタウロス |
今さらなにを言うか。 では、未来を失ったまま打ち震えていろというのか? |
クロタウロス |
絶望し、失望し、 この怪人の身体のまま朽ちるまで戦い続けろと……? |
クロタウロス |
……お断りだ。 |
クロタウロス |
俺は未来を諦めない。 わずかにでも希望があるなら、それに縋ってみせる。 |
クロタウロス |
今俺の前には、プリンセス・テフテフがいる。 やつを殺せばなにかが変わるはずだ。 |
スピードスター |
そうじゃないんだ……! 頼む、俺の話を聞いてくれ、クロタウロス! |
クロタウロス |
今さらなにを言うか! 俺はもう二度と、おまえを信じたりしない! |
クロタウロス |
俺や、みんなを裏切った、おまえの言うことはな……! |
皆野祐樹 |
そうか……。 クロタウロスとスピードスターは仲間だったんだ。 |
アクアマリン |
ええ、そのとおりです。 私たちは、任務のため共に戦う仲間でした。 |
アクアマリン |
光正様が取り返しのつかない失敗をするまでは……。 |
スピードスター |
余計なことを言うな、藍……! |
嵐山瑠璃 |
あの~、『奴』とか未来とか、 よく分からないことばかり言わないでくれませんか? |
嵐山瑠璃 |
ちゃんと私にも分かるように、 具体的な説明をしてほしいんですけど。 |
クロタウロス |
おっと、それはすまないことをした。 そこの堅物が邪魔ばかりしてくるものでな。 |
スピードスター |
やめろ、聞くなァ! |
クロタウロス |
俺は未来から来たんだ。 貴様らが破壊した未来からな……。 |
嵐山瑠璃 |
それでは、私が世界を滅ぼすのは未来……? |
クロタウロス |
そう。 そうして『奴』というのは―― |
スピードスター |
いい加減にしろ、クロタウロス! |
スピードスター |
それ以上は絶対に許さん! おまえを殺してでも止めてやる……! |
スピードスター |
ウオーッ! |
---|---|
クロタウロス |
デリャーッ! |
皆野祐樹 |
くっ……戦いがどんどん激しくなってく! |
村雨礼司 |
二人の邪魔にならないようにするだけで精一杯だ! これ以上はついていけないぞ! |
名雲光 |
やっぱウチらじゃ力不足だったみたいね~。 |
ウサタロー |
けど、まだ決め手に欠けるぜ! オイラたちも一緒に戦わないと! |
名雲光 |
例の超変身ってのができるヒーローが もう一人いればいいんだけどね~。 |
酉原剛 |
それだぜ、光! |
名雲光 |
え、どれ? |
酉原剛 |
俺様たちも超変身すりゃいいんだ! そうすりゃあっという間に勝負がつくぜ! |
森沢江湖 |
酉原くん、天才かも。 |
村雨礼司 |
そんな簡単にできるものじゃないと思うが……。 |
村雨礼司 |
というか、そもそも教えてくれないだろ。 余計なことに首を突っ込むなとか言われるのがオチだ。 |
森沢江湖 |
けど、共闘してるわけだし。 もしかしたら教えてくれるかもよ? |
名雲光 |
ん~、ワンチャンあるなら聞いてみたいかも? こんな乱闘、ウチのキャラじゃないしね。 |
アクアマリン |
彼は、絶対ダメだって言うと思いますよ。 |
名雲光 |
あー、やっぱそう? |
アクアマリン |
でも、私は教えてしまっていいと思ってます。 |
酉原剛 |
やったぜ、アクアマリンちゃん! |
アクアマリン |
ですが、今は無理です。 超変身の習得にはけっこう時間がかかるので。 |
皆野祐樹 |
やっぱりそううまくはいかないか~。 |
アクアマリン |
この戦いが終わったら、 超変身の習得に協力するとお約束しますよ。 |
アクアマリン |
ですから今は、力を合わせて なんとかクロタウロスを倒しましょう。 |
皆野祐樹 |
うん、分かった! |
ウサタロー |
だけどよ、どうやって倒す? オイラたちの戦闘力じゃ決め手に欠けるぜ? |
アクアマリン |
そうですね……。 では、こういうのはどうでしょう? |
村雨礼司 |
なにかいい案があるのか? |
アクアマリン |
気合いと根性で、頑張って戦いましょう。 |
森沢江湖 |
やっぱり雑だった~! |
酉原剛 |
だけど、そっちのほうが俺様には分かりやすいぜ! |
村雨礼司 |
そうだな……。 より強くなるための試練とでも考えるか。 |
皆野祐樹 |
これを乗り越えれば超変身できるようになるんだよね! そう考えればやる気も出てくるよ! |
名雲光 |
あーもう、脳筋ばっかでマジつらいわ。 ま、ウチも頑張らせてもらうけど。 |
森沢江湖 |
よ~し、それじゃみんな、頑張っちゃおう! |
ウサタロー |
こいつで決めようぜ! 全員の力を合わせて、クロタウロスを倒すんだ! |
スピードスター |
これで、終わりだーっ! |
---|---|
クロタウロス |
グワーッ! |
クロタウロス |
くそっ……プリンセス・テフテフを目前にして 敗れ去るとは……無念だ。 |
クロタウロス |
おまえの勝ちだ、スピードスター。 あとは好きにしろ。 |
スピードスター |
…………。 |
皆野祐樹 |
ちょっと待ってスピードスター! まさか、クロタウロスのこと殺したりしないよね? |
皆野祐樹 |
昔の仲間と殺し合いなんて、絶対にダメだよ! |
スピードスター |
……分かってるさ。 こいつは元いた時代に送り返す。 |
皆野祐樹 |
あっ、もういなくなっちゃった! 色々聞きたいことがあったのに! |
嵐山瑠璃 |
せめて『奴』というのが誰のことなのか、 聞いておきたかったですわ……。 |
スピードスター |
今日のことは、どうか忘れてくれ。 俺たちのことも含めてな。 |
スピードスター |
時空の穴が絡んだ事件にも、なるべく関わるな。 あとは、俺たちだけでなんとかする。 |
アクアマリン |
もう無理だと思いますよ、光正様。 遠ざけるには、彼らは色々なことを知ってしまった。 |
スピードスター |
なんてことを言いだすんだ、藍! |
アクアマリン |
それに、守るべきタイムラインはすでに滅茶苦茶です。 二人でどうにかできるレベルじゃありません。 |
スピードスター |
だからといって、彼らを巻き込むのは……。 |
アクアマリン |
光正様のプライドが、許しませんか? |
スピードスター |
そうじゃない! |
スピードスター |
この事態を引き起こしたのは俺だ。 だからこの責任は、俺が取らなくてはいけないんだ! |
アクアマリン |
助けてもらえばいいじゃないですか。 それとも、助けを求めるのはカッコ悪いと思ってます? |
スピードスター |
…………。 |
アクアマリン |
光正様って、けっこう子供ですよね。 |
スピードスター |
ぐっ……! |
アクアマリン |
あ~っ、逃げた! 自分に都合が悪くなったからって、アイツ……! |
アクアマリン |
マジふざけんな、光正! あ~もう、信じらんない!! |
森沢江湖 |
あ、あの~、あんまり興奮せず……。 |
アクアマリン |
すみません、取り乱しました。 |
名雲光 |
もしかして、そっちが素なの? そっちのままでよくない? |
アクアマリン |
なんのことですかね。 さっぱり分かりません。 |
酉原剛 |
あんなやつのことはどうでもいいって! |
酉原剛 |
それよりほら! 超変身!超変身! |
アクアマリン |
ええ。 もちろん忘れてませんとも。 |
アクアマリン |
アクアマリンこと、磐城藍。 みなさんに超変身を授けましょう。 |