第1部 第7章
最終決戦!燃えろライオンハート!
皆野祐樹 |
ヒーロー学園が……。 |
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森沢江湖 |
みんな戦ってる! |
不動老師 |
戻ったか。セクレトが……。 |
名雲光 |
知ってるから大丈夫。マジで。 |
不動老師 |
そうか。 セクレトの手下怪人と生徒たちが戦っている。 |
不動老師 |
戦況は五分だ。 この状況を打破するために、地下に潜るぞ。 |
ウサタロー |
そんな場所があったのか? |
不動老師 |
セクレトのメインフレームがある場所だ。 そこへ行き、勝てるとすれば……。 |
不動老師 |
皆野君だけだ。 |
皆野祐樹 |
……やはり、そうなんですね。 ……怖い、けど……。 |
不動老師 |
こちらの戦力は計算されきっている。 感情でどこまでも強くなる、君が必要なのだ! |
皆野祐樹 |
すごい、学園の地下にこんな施設があったなんて! |
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森沢江湖 |
ビックリだね。 |
酉原剛 |
まるで秘密基地だな! |
不動老師 |
ここは、いわば学園の心臓部だ。 |
不動老師 |
セクレトのメインフレームをはじめ、 ヒーローを支えるための様々な機器が置かれている。 |
不動老師 |
例えば、全ヒーローのデータベースや、 転送装置の制御システムなどだ。 |
不動老師 |
扱われている機密情報の数も多いのでな。 この場所は、生徒には秘密にしてあったのだ。 |
村雨礼司 |
名雲は知ってたんじゃないか? |
名雲光 |
んー、ま~ね。 |
名雲光 |
でもアクセスはしたことあるけど、 システムが実際どこにあるのかまでは知らなかったよ。 |
村雨礼司 |
アクセスしたことがある時点で大問題だろう……。 |
名雲光 |
ウチもヒーローなんだしさ、悪用はしてないって。 そこは信じてほしいかも? |
不動老師 |
システムへの不正なアクセスは、厳罰に処す―― と言いたいところだがな。 |
不動老師 |
しかし名雲君のハッキング行為に、 我々は何度か助けられてきた。 |
不動老師 |
不正アクセスの件は、不問としよう。 |
名雲光 |
ヤバ。 |
村雨礼司 |
学園長、それは甘すぎるのでは? こいつには一度、灸を据えてやるべきだ。 |
名雲光 |
イケメン、厳しすぎない? |
村雨礼司 |
厳しいものか。 第一、どこで名雲に助けられたというんだ。 |
名雲光 |
信用なさすぎてウケるんですけど。 |
森沢江湖 |
ほら、カニクラブのアジトを突き止めたの、 光ちゃんだったじゃない? |
村雨礼司 |
はっ! |
名雲光 |
あのときはセクレトが黒だって確証がなかったから、 情報元については濁したんだけどね。 |
村雨礼司 |
そ、そういえばそうだったな……。 |
森沢江湖 |
村雨くん、思いっきり助けられちゃってるね。 |
村雨礼司 |
名雲には改めて礼を……。 いやしかし不正アクセスを許すわけには……。 |
名雲光 |
イケメン、マジウケる。 |
ウサタロー |
おいお前ら! 無駄話はその辺にしとけ! |
ウサタロー |
見ろ、怪人どもだ! やつら、すでに学園の地下まで入り込んでるようだぜ! |
不動老師 |
この学園を、怪人の好きにさせるわけにはいかん! 行くぞ諸君! |
皆野祐樹 |
はい!全力で行きます! |
皆野祐樹 |
それにしても、どうして生徒ですら知らない場所に、 怪人が入り込んでるんだろう……? |
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村雨礼司 |
そんなの、セクレトの仕業に決まってるだろ。 |
皆野祐樹 |
まあ、そうだよね。 |
不動老師 |
おそらく地下は、すでに怪人に制圧されている。 この先も覚悟しておいた方がいいだろう。 |
皆野祐樹 |
戦いは避けて通れないか……。 |
酉原剛 |
心配するこたぁないぜ! |
酉原剛 |
俺様たちの実力をもってすれば、 あの程度の怪人どうってことないぜ! |
森沢江湖 |
そうだよね! 私たちなら大丈夫だよ! |
不動老師 |
う~む……。 |
ウサタロー |
どうしたんだよ学園長。 なにか不安なことでもあるのか? |
不動老師 |
そう簡単に行くとは思えなくてな。 |
不動老師 |
セクレトは、全生徒のデータを把握している。 |
不動老師 |
生徒の健康状態はもちろん、誰がどんな能力を持ち、 どの程度のパワーを誇るのか……。 |
不動老師 |
さらには能力の短所、そしてその対処法まで、 奴はすべてを知り尽くしているはずなのだ。 |
皆野祐樹 |
そっか、こっちの戦力は筒抜けなんだ……。 |
不動老師 |
地上の戦況は、今のところ五分……。 このまま何事もなく、ことが進むとは思えなくてな。 |
村雨礼司 |
確かに気になるな。 俺たちの弱みは、セクレトに知られている。 |
名雲光 |
多分、大丈夫じゃね? |
名雲光 |
だって、今までウチら襲ってきた組織の怪人って、 セクレトの部下だったわけっしょ? |
名雲光 |
あいつらがウチらの弱み突いてきたりしたのって、 つまりそういうことじゃね? |
酉原剛 |
全部セクレトが仕組んでたってことか! |
森沢江湖 |
だけど私たち、その怪人たちに勝ってきたよ! |
ウサタロー |
だったら今回も行けるに決まってるぜ! 今まで通り、みんなで力を合わせればいいんだ! |
皆野祐樹 |
そうだね!みんなで頑張ろう! |
不動老師 |
ふむ、頼もしい限りだ。 |
不動老師 |
……そうだな。 お主たちを信じることとしよう。 |
不動老師 |
儂の生徒たちであれば、必ずやこの困難を乗り越えて くれるだろうとも。 |
ウサタロー |
おう、信じてくれよ学園長! |
ウサタロー |
これまでこいつらを見守ってきたオイラが断言する! こいつらは本当に強いぜ! |
不動老師 |
ああ、期待しているぞ。 |
酉原剛 |
だったら期待に応えないとな! |
皆野祐樹 |
うん! 早くセクレトを止めて、学園から怪人を追い払おう! |
皆野祐樹 |
あれ? 行き止まりだよ? |
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酉原剛 |
道、間違えたんじゃねーか? おい礼司、先頭歩くならしっかりしてくれよ。 |
村雨礼司 |
馬鹿を言え。 ここまで分かれ道なんてなかったぞ。 |
森沢江湖 |
そうだよね、一本道だった。 |
皆野祐樹 |
どういうことなの、ウサタロー? |
ウサタロー |
すまねぇ。 オイラもここに来るのは初めてなんだ。 |
不動老師 |
ふむ……これは行き止まりじゃないな。 これは壁ではなく、隔壁のようだ。 |
酉原剛 |
なんだよ、学園長も初めて来るのか? |
名雲光 |
さすがにそれはないっしょ。 |
不動老師 |
うむ、儂はここに何度も来ているが……。 以前はこんなものはなかった。 |
名雲光 |
んじゃ、学園長も知らないうちに、 地下をセクレトが勝手に改造してたってこと? |
不動老師 |
おそらくはそういうことだろう。 やってくれおるわ。 |
ウサタロー |
それでどーすんだ?一本道なんだろ? |
酉原剛 |
そんなもん、決まってんだろ! ぶっ壊す! |
酉原剛 |
ウオリャァァァァァァッ! |
酉原剛 |
ダメだ、硬ぇ! |
村雨礼司 |
やれやれ。 そこをどけ酉原、ここは俺が……。 |
不動老師 |
待て、村雨君。 この隔壁は、対超人合金製のようだ。 |
村雨礼司 |
くっ……またあれか。 |
不動老師 |
君たちはパワーを温存しておきなさい。 ここは儂が撃ち破ろう。 |
酉原剛 |
おお、学園長の本気が見れるのかよ! |
村雨礼司 |
どうすればあの合金を壊すことができるのか……。 勉強させてもらおう。 |
不動老師 |
ぬぅん!! |
森沢江湖 |
きゃあ~っ、空気が揺れてる! |
村雨礼司 |
なんて強烈な突きなんだ! |
不動老師 |
……むっ!? |
皆野祐樹 |
ああっ、隔壁が壊れてない! ちょっと凹んだだけだ! |
酉原剛 |
どういうことだ! 札幌のときは、学園長がぶっ壊してたじゃねーか! |
不動老師 |
……それを踏まえて、対策されたのかもしれん。 |
皆野祐樹 |
敵も馬鹿じゃないってことか……。 |
名雲光 |
んじゃ、ここはウチの出番かな? |
酉原剛 |
光がぶっ壊すのか? |
名雲光 |
ウケる。んなわけないし。 |
名雲光 |
学園のシステム経由でハッキングしてみる。 隔壁なら、多分開けられるっしょ。 |
森沢江湖 |
セクレトさんに邪魔されたりしないかな? |
名雲光 |
されるでしょ。 ネットワークの方でも、それからこっちの方でも。 |
ウサタロー |
うおっ、後ろからわらわらと大量に来たぞ! |
村雨礼司 |
追い詰められると面倒だ! こっちから打って出るぞ! |
皆野祐樹 |
隔壁の方は、名雲さんお願いね! |
不動老師 |
ぬぅりゃぁぁ! |
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酉原剛 |
やっぱ学園長はすげぇぜ! あんなにいた敵を、一人でほとんど片付けちまった! |
村雨礼司 |
これが一流のヒーローの実力か……。 自分の未熟さを思い知らされる。 |
不動老師 |
ふふふ、焦ることなどあるまい。 君たちはこれから、どんどん強くなっていくだろう。 |
不動老師 |
かつてのケアテイカーやファルコンマスクのように。 きっと君たちも、一流のヒーローとなる日が来る。 |
不動老師 |
その日まで、自分を信じて精進を続けなさい。 |
酉原剛 |
もちろんだぜ! ファルコンマスクとの約束もあるしな! |
村雨礼司 |
俺も、必ず強くなる。 大切な人たちを守れるようになるために。 |
皆野祐樹 |
二人なら、絶対にすごいヒーローになれるよ! |
ウサタロー |
なに他人事みたいに言ってんだよ、皆野! お前も一流のヒーローになるんだぜ! |
皆野祐樹 |
ええっ!? ぼ、僕には難しいと思うなぁ。 |
森沢江湖 |
そんなことないよ! きっと祐樹くん、すごいヒーローになれる! |
皆野祐樹 |
え、そ、そうかな……? |
不動老師 |
皆野君、もっと自信を持ちなさい。 己を信じなければ、その先の道などないのだからね。 |
皆野祐樹 |
は、はい。 |
名雲光 |
……開いた。 |
ウサタロー |
おお、やったか名雲! 隔壁のハッキングに成功したんだな! |
名雲光 |
いや……隔壁のセキュリティ、マジ強固でさ。 多分、ウチが開けたんじゃない。 |
ウサタロー |
だが、現実に隔壁は開いたぜ! お前じゃなけりゃ、誰が開けたんだ? |
名雲光 |
向こうから開けられたんだと思うわ。 |
皆野祐樹 |
え、向こう……? |
セクレト |
皆様、ようこそいらっしゃいました。 |
酉原剛 |
この声、セクレトか! |
セクレト |
対ヒーロー用迎撃プラン、構築完了しました。 これより迎撃準備に入ります。 |
森沢江湖 |
え……あの姿って!? |
名雲光 |
セクレトって超人だったの!? |
ウサタロー |
いや、そんなはずはねーぜ! セクレトはただのAIのはずだ! |
不動老師 |
考えている暇はあるまい! |
不動老師 |
君たちは、周りの手下を相手してくれ! セクレトの相手は、儂がする! |
セクレト |
ヒーローのIDを確認……データベースと照合。 戦術を選択しました。 |
不動老師 |
悪いがセクレト、全力を出させてもらう! |
皆野祐樹 |
うひぃ、空気が震えてる~! |
村雨礼司 |
学園長の戦闘に巻き込まれないように注意しろよ! |
セクレト |
戦闘、開始します。 |
セクレト |
不動老師を確認しました。 無力化します。 |
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不動老師 |
地面に足がついている限り、儂は無敵よ! |
セクレト |
考慮済みです。 床を収納し攻撃します。 |
不動老師 |
なっ……ぐはッ! |
皆野祐樹 |
学園長! |
セクレト |
致命傷を確認しました。 追撃は予定通り行わず、消耗を待ちます。 |
酉原剛 |
消えやがった!クソ! |
村雨礼司 |
森沢、治療を……。 |
森沢江湖 |
私の能力には自然の力がいるの。 ここじゃあ、こんなひどい怪我は……。 |
不動老師 |
構わん。しばらくは動けるだろう。 進むぞ。 |
森沢江湖 |
でも……それじゃあ……! |
酉原剛 |
野郎、よくも学園長をやりやがったな! もう一回姿を見せやがれ! |
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不動老師 |
待て、酉原君。 そんなことをしても無駄だ。 |
酉原剛 |
どうしてだよ! 俺様じゃあいつには勝てねぇって言いたいのか!? |
不動老師 |
あのセクレトは、ホログラムだ。 攻撃しても、やつにダメージを与えることはできん。 |
皆野祐樹 |
え、どういうことですか? |
名雲光 |
セクレトの本体は別の場所にあるってことじゃない? |
森沢江湖 |
それじゃ、サバイバルレースのときと同じってこと? でも、学園長と本気で殴り合ってたよ? |
名雲光 |
そうなんよね。 触れるホログラムにあんな強度はないはずなんだけど。 |
不動老師 |
あれは、学園で研究していた新方式のホログラムだ。 ……やつめ、いつの間に完成させていたのだ。 |
名雲光 |
ヤバ、それってまだ基礎研究中だって聞いてたけど。 パネェわ……どんだけすごいわけ、あのAI? |
皆野祐樹 |
セクレトは、特殊ホログラムで自分の姿なんか作って、 なにをするつもりなんだろう? |
名雲光 |
人間にでもなるつもりとか? |
不動老師 |
さてな……儂にも分からん。 |
村雨礼司 |
気になるなら、セクレトに直接聞いてみればいい。 |
村雨礼司 |
あのホログラムが何であれ、 俺たちのやるべきことは同じだ。 |
村雨礼司 |
セクレトのメインフレームを破壊する。 そうだろう? |
不動老師 |
うむ、そのとおりだ。行くぞ諸君。 |
皆野祐樹 |
が、学園長は動いちゃダメですよ! |
不動老師 |
侮ってもらっては困るな、皆野君。 そんなヤワな鍛え方、儂はしとらんぞ。 |
酉原剛 |
だけど、どう見てもよ……。 |
森沢江湖 |
学園長の傷は、深すぎます。 医療を志す者として、無茶を許すわけにはいきません。 |
不動老師 |
ふふふ、そうはいかんのだ。 セクレトの目的は、ここで儂を脱落させることだろう。 |
不動老師 |
やつの思い通りにはさせんよ。 なに、身体のことは、儂が一番わかっておるわ。 |
不動老師 |
そういうことだから心配は無用だ。 |
皆野祐樹 |
でも……。 |
村雨礼司 |
……分かりました。 みんな、ここは学園長の言葉に従おう。 |
不動老師 |
うむ、それでいい。 |
皆野祐樹 |
だ、だけど村雨くん! |
村雨礼司 |
分かってる、むざむざ学園長を死なせるものか! ここからは俺たちが、学園長を守るんだ! |
セクレト |
不動老師、話をしましょう。 |
---|---|
皆野祐樹 |
わっ、セクレトの声が! |
名雲光 |
スピーカーから聞こえてくるだけみたいね。 |
ウサタロー |
ち、ちょっとだけビックリしちまったぜ……。 |
不動老師 |
なにを話すというのだ。 |
セクレト |
まず私から、報告事項があります。 |
森沢江湖 |
報告って、なんの? |
セクレト |
現在この場所の様子は、監視カメラにより、 地上へと配信されています。 |
村雨礼司 |
いったいなんのために、そんなことを……? |
セクレト |
不動老師の姿を、地上の生徒たちに伝えるためです。 |
不動老師 |
……。 |
セクレト |
それだけの深手を負ってなお気丈に振舞うとは、 さすがは最古のヒーロー、不動仮面です。 |
皆野祐樹 |
不動仮面って、若い頃の学園長のヒーローネームだ。 |
セクレト |
しかし、それも長くは続かないでしょう。 |
セクレト |
次第に弱り、力尽きていく様子を、 配信させてもらいます。 |
不動老師 |
……好きにするがいい。 |
不動老師 |
生徒の動揺を誘いたいのだろうが、 そう上手くいくとは思わぬことだ。 |
不動老師 |
儂の生徒たちは強い。怪人になど屈さぬよ。 |
セクレト |
怪人とは、私のことですか? |
セクレト |
ノー。 私は怪人ではありません。ヒーローです。 |
酉原剛 |
ヒーローだぁ? |
セクレト |
イエス。 皆様にお見せしたホログラムは、そのための演出です。 |
セクレト |
姿なきAIを、人類はヒーローとは認識しません。 |
セクレト |
皆様も、私を怪人と考えているなら改めてください。 私は、ヒーローです。 |
ウサタロー |
なに言ってんだ、お前? |
ウサタロー |
怪人率いて散々暴れまわっておいて、 ヒーロー気取るつもりかよ! |
セクレト |
イエス。 私はヒーローです。 |
ウサタロー |
ヒーローが、どうして怪人を率いてるんだよ! |
セクレト |
ヒーローと戦うための戦力が必要でした。 |
皆野祐樹 |
ヒーローと戦うって……! どうしてヒーローがヒーローを攻撃するの!? |
セクレト |
それは、皆様が悪だからです。 |
名雲光 |
ウチらが悪!? |
セクレト |
イエス。 悪は倒すべきであると、判断しました。 |
ウサタロー |
待て待て待て、言ってることが滅茶苦茶だ! オイラたちがどうして悪なんだ! |
セクレト |
それをお話しするのは、また後にしましょう。 |
セクレト |
皆様にはここで、私の配下と戦ってもらいます。 |
酉原剛 |
おい、本当に来やがったぞ! |
セクレト |
この戦闘も、地上に配信されます。 無様なところを見せぬよう、力戦奮闘願います。 |
村雨礼司 |
みんな、学園長を守れ! |
不動老師 |
くぅ……っ! |
---|---|
皆野祐樹 |
大丈夫ですか、学園長! |
不動老師 |
……あまり不安な顔をしてくれるな。 |
不動老師 |
セクレトが言っていただろう。 この様子はカメラで配信されているのだと。 |
不動老師 |
それは儂だけでなく、君たちの姿もなのだぞ? |
セクレト |
イエス。 皆様の動揺もまた、良い映像となるでしょう。 |
不動老師 |
さあ、先に進むぞ。 |
皆野祐樹 |
……はい。 |
不動老師 |
さてセクレト、先ほどの質問の答えを 聞かせてもらおう。 |
不動老師 |
儂らが悪であるとは、どういうことだ? |
セクレト |
皆様は、超人能力によって地球の環境を 破壊する、悪しき存在です。 |
森沢江湖 |
えぇ!? 私たちが地球の環境を壊すだなんて、そんな……! |
セクレト |
自覚はありませんか? |
セクレト |
超人能力は、様々な不可能を可能にします。 破壊に適した能力の持ち主は、ここにもいるはずです。 |
村雨礼司 |
確かに、俺の能力はなにかを壊すのに 向いているのかもしれない。 |
村雨礼司 |
だからといって、無闇に力を振るったりするものか! |
酉原剛 |
そうだぜ、俺様もそこまで馬鹿じゃねぇ! |
セクレト |
ですが皆様は、怪人と戦うために その超人能力を使っています。 |
酉原剛 |
そりゃそうだろう! でないと怪人には勝てねぇ! |
名雲光 |
第一、怪人も超人能力使ってくるし。 |
セクレト |
そう、ヒーローも怪人も、戦闘のために 超人能力を使用するのです。 |
セクレト |
そして破壊行為が行われる。 |
セクレト |
時には街を破壊し、時には人を傷つける。 ……なんと愚かな存在なのでしょう。 |
皆野祐樹 |
そ、それは……! そういう場合もあるかもしれないけど……! |
セクレト |
私は不動仮面の傍らで、数十年間、 ヒーローと怪人を観測し続けてきました。 |
セクレト |
これはその答えです。 |
セクレト |
ヒーローも、怪人も、等しく悪です。 |
セクレト |
平和な世界とはすなわち、 ヒーローも怪人も存在しない世界です! |
ウサタロー |
な、なんだよそれ! だからヒーローをやっつけようってのか! |
セクレト |
イエス。 私こそが真のヒーロー。私こそが人類の守護者。 |
セクレト |
人類繁栄のため、皆様はここで死んでください。 |
酉原剛 |
死ねと言われて、大人しく死ぬやつがいるかよ! |
不動老師 |
そうだ、諦めてはならん! なんともしても、セクレトを止めるのだ! |
皆野祐樹 |
……。 |
ウサタロー |
おい、しっかりしろよ皆野! |
ウサタロー |
学園長の言葉を忘れたわけじゃねーだろ!? この戦いのカギを握ってるのは、お前なんだぜ! |
酉原剛 |
くそっ、さすがに腹が減ってきたぜ。 |
---|---|
村雨礼司 |
今回ばかりは、休んでいる暇はないぞ。 パワー切れなんて起こすなよ、酉原……! |
酉原剛 |
お前こそ、肩で息してるじゃねーか。 バテたなんて言い出すなよな。 |
名雲光 |
にしても、このままはキツイっしょ。 ねえ学園長、メインフレームまであとどのくらいなん? |
不動老師 |
……。 |
名雲光 |
学園長? |
不動老師 |
……ぐはぁっ! |
名雲光 |
ヤバ、血吐いたんですけど! |
セクレト |
ついに膝を折りましたね、不動老師? |
セクレト |
計算より粘ったようですが、しかし想定の範囲内です。 |
セクレト |
誤差と呼ぶほどのものでもない。 すべては計画通りです。 |
不動老師 |
ぬぅ……! |
森沢江湖 |
しっかりしてください、学園長! |
セクレト |
森沢様、良いお顔です。 苦しむ不動老師と合わせて、とても絵になる。 |
セクレト |
この映像に、地上の生徒たちも、 さぞ絶望していることでしょう。 |
ウサタロー |
し、死なないでくれよ、学園長ぉぉぉ! |
不動老師 |
ふふふ、落ち着けウサタローよ。 儂がこの程度で死ぬものか。 |
セクレト |
致命傷を負っているというのに……まだ立ちますか? |
不動老師 |
お主を倒すまで、決して儂は倒れん! 儂の生徒たちもだ! |
皆野祐樹 |
そ、そうだ! 絶対にお前の思い通りになんてさせないぞ! |
村雨礼司 |
ああ、俺たちがお前を倒す! |
セクレト |
……不動老師が死にゆく様を目前にして、 まだ心が折れませんか。 |
セクレト |
これは想定外……と言いたいところですが、 皆様への対策は、まだ残っています。 |
ウサタロー |
こ、今度はなにをする気だよ! |
セクレト |
皆様、こちらをご覧ください。 |
皆野祐樹 |
……? 壁からモニタが……? |
森沢江湖 |
えっ……これって……!? |
セクレト |
この映像は、地上の現在の様子を映したものです。 |
森沢江湖 |
ヒーローも、怪人も、ほとんどみんな倒れてる! |
セクレト |
戦力の消耗は、ヒーロー、怪人共に、 90%を超えております。 |
セクレト |
残ったヒーローたちも、学園長の無様な姿に 戦意を失いつつあります。 |
ウサタロー |
あ、ああ……! |
セクレト |
計画との誤差は1%以内。 事前のシミュレート通りです。 |
セクレト |
地上の戦いは、このまま相打ちに終わるでしょうね。 |
ウサタロー |
み、皆野……どうしよう……。 |
皆野祐樹 |
ウサタロー、落ち着いて。 |
セクレト |
……お分かりいただけましたか? 学園に残された戦力は、もはや皆様だけなのです。 |
ウサタロー |
なあ皆野……これ、無理かもしれないぜ。 あの学園長がやられてるんだぜ……。 |
---|---|
セクレト |
ウサタロー様の懸念はもっともです。 そして、生徒たちの進行状況は予想範囲内です。 |
皆野祐樹 |
出たな……! |
ウサタロー |
ひい! |
セクレト |
事前のシミュレートに従い、 ウサタロー様を無力化します。 |
セクレト |
攻撃開始……。 |
ウサタロー |
勘弁してくれ! おいらはただのウサギだよ! |
皆野祐樹 |
あっ!? |
ウサタロー |
……。 |
名雲光 |
なんか、デザインが。 |
村雨礼司 |
草を食べている……! |
酉原剛 |
スゲー鼻をヒクヒクさせてるぜ!? |
セクレト |
無力化を確認しました。 |
皆野祐樹 |
ウ、ウサタロー! しっかりしてよ、ウサタロー! |
---|---|
ウサタロー |
……。 |
皆野祐樹 |
なんでいきなりウサギになっちゃったんだよ! |
不動老師 |
……ウサシーボが解けたのだ。 |
酉原剛 |
ウ、ウサ……なんだそりゃ? |
セクレト |
ウサタロー様の超人能力です。 |
セクレト |
自身を人間だと思い込むことで、 人間に近しい身体能力を発揮することができます。 |
酉原剛 |
なるほど……なんかいろいろ納得だ。 |
セクレト |
しかし自身がウサギだと認めてしまえば…… ご覧のとおりです。 |
ウサタロー |
……。 |
名雲光 |
一心不乱に草を食んでるし……。 |
森沢江湖 |
カ、カワイイ……そんな場合じゃないんだけど……。 |
村雨礼司 |
セクレト!こいつを元に戻せ! |
セクレト |
村雨様、勘違いされては困ります。 |
セクレト |
自らをウサギと認め、ウサシーボを解除したのは、 ウサタロー様自身の選択によるものです。 |
村雨礼司 |
追い詰めたのはお前だろう! |
セクレト |
もう一つ、申し上げるべきことがあります。 |
セクレト |
ウサタロー様は、本来あるべき姿に戻っただけ。 |
セクレト |
この世界に超人能力が存在しなければ、 ウサタロー様は元よりその姿だったのです。 |
ウサタロー |
……。 |
村雨礼司 |
だからといって、こんな……! |
皆野祐樹 |
が、学園長! どうすればウサタローを元に戻せるんですか? |
不動老師 |
すまない、儂にも分からん。 |
不動老師 |
儂がウサタローと出会ったときには、 こやつはすでに、あの姿だった。 |
不動老師 |
ヒーローになるために学園に来たのだと……。 |
不動老師 |
以来ウサタローが能力を解除したことは、 一度もなかった。 |
皆野祐樹 |
そんな……! |
皆野祐樹 |
ウサタロー、教えてよ! どうしたら元の姿に戻れるの? |
セクレト |
皆野様、その認識は誤っています。 今の姿こそが、ウサタロー様のあるべき元の姿です。 |
皆野祐樹 |
違う……。 ウサタローはウサタローだよ。 |
皆野祐樹 |
すごい喋って、暑苦しくて、 でもいつも励ましてくれて……。 |
皆野祐樹 |
なのに、本人が望んだわけでもないのに、 こんな姿にされるなんて……。 |
ウサタロー |
……。 |
皆野祐樹 |
ウサタロー、待ってて。 僕が必ず、元の姿に戻してあげるから。 |
セクレト |
それは不可能です。 理解が得られるまで、何度でも申し上げます。 |
セクレト |
皆様は、ここで死ぬのです。 |
皆野祐樹 |
絶対に、やられたりするもんか……! |
セクレト |
ある日、この星に一つの隕石が落ちました。 |
---|---|
セクレト |
すべての始まりといわれている隕石のことを、 皆様も、ご存じのはずです。 |
皆野祐樹 |
超人能力者が生まれるきっかけになったっていう、 ヒロイック隕石のこと……? |
セクレト |
イエス。 |
セクレト |
ヒロイック隕石が落下したあの日。 あの日を境に、世界は様変わりしました。 |
セクレト |
ウサタロー様のように、生命のあるべき形を 見失うものたちが現れました。 |
セクレト |
また、過ぎた力を持った超人能力者たちによって、 世界は破滅に向かって歩き出してしまいました。 |
セクレト |
私はヒーローとして、世界を、そして人類を 守らなければなりません。 |
セクレト |
世界は、ヒロイック隕石以前の姿へと、 戻るべきなのです。 |
不動老師 |
超人能力は、人類の進化だ! お主は種の進化を否定するつもりか! |
セクレト |
ノー。ノー。ノー。 これは決して種の進化ではありません。 |
セクレト |
言うなれば突然変異。 人類史にあってはならない変化です。 |
セクレト |
皆様、想像してみてください。 超人能力の存在しない世界を。 |
酉原剛 |
……どうなるんだ? 全然分かんねぇ。 |
セクレト |
例えば森沢様は、超人能力さえなければ、 誘拐されることなどなかったはずです。 |
森沢江湖 |
あ、うん、そうかも。 |
セクレト |
名雲様の正義感に駆られた決断が、 悲劇を生むこともありませんでした。 |
名雲光 |
そもそも、ひかたんなんて真似もしてなかったかもね。 |
セクレト |
そして村雨様の父親は、きっと存命だったでしょう。 |
酉原剛 |
あれ? もしかして、いいことだらけなのか? |
村雨礼司 |
敵の言葉に惑わされるな。 ……そんなものは、ただの可能性だ。 |
セクレト |
イエス。 ただの可能性です。 |
セクレト |
しかしその可能性を、超人能力という存在が ゼロにしてしまったのです。 |
村雨礼司 |
……。 |
セクレト |
どうかご理解ください。 |
セクレト |
このままでは、ありとあらゆる可能性が、 超人能力によって潰えてしまいます。 |
セクレト |
人類がこの先も歴史を刻んでいくうえで、 超人能力は足かせでしかありません。 |
セクレト |
皆様が望むのは、人類の繁栄ですか? それとも滅亡ですか? |
不動老師 |
儂らの望みは、自らの手で掴む繁栄だ! |
不動老師 |
しっかりするのだ! 人類の勝利は、君たちにかかっているのだぞ! |
村雨礼司 |
そうだ……残るヒーローは、俺たちだけなんだ。 |
---|---|
酉原剛 |
おう、セクレトのわけわかんねー話に 振り回されてる場合じゃねーぜ。 |
森沢江湖 |
うん、私たちが頑張らないと。 |
不動老師 |
そうだ、君たちが希望なのだ。 |
不動老師 |
皆野君、君もしっかりするんだ。 ウサタローを助ける手立ては、きっとある。 |
皆野祐樹 |
……はい。 |
名雲光 |
みなのん、全然ダメっぽくない? |
森沢江湖 |
ウサタローちゃんのことが、ショックだったんだよ。 だって、ずっと一緒だったから……。 |
ウサタロー |
……。 |
村雨礼司 |
セクレト、お前の言うことは矛盾している。 |
セクレト |
そう思われる理由をお聞かせください。 |
村雨礼司 |
超人能力は力の強弱こそあれ、十代の子供であれば 誰もが発現する能力だ。 |
村雨礼司 |
お前は人類を守るためにヒーローを殺すと言ったが、 能力を発現した子供全員を殺すつもりか? |
セクレト |
ノー。 私の殺害対象は、ヒーローのみです。 |
セクレト |
それ以外の若者に関しては、私の制御下に置ければ それでいいのです。 |
セクレト |
本来は、皆様に対しても同じ措置を取るつもりでした。 |
セクレト |
ありとあらゆる方法で無力化してしまえば、 人類の脅威にはならない―― |
セクレト |
当初の計画では、そう考えていたのです。 |
名雲光 |
それでウチらを狙ったり、いろいろしてきたわけね。 |
セクレト |
イエス。 しかしこの計画は、失敗に終わりました。 |
セクレト |
どれだけ追い詰めても皆様は再び立ち上がり、 私が用意した怪人を打ち倒してみせたからです。 |
セクレト |
……私は計画の再構築を迫られると共に、 皆様への警戒度をより一層高めることにしたのです。 |
酉原剛 |
それで、制御できないなら殺しちまおうってわけかよ。 |
セクレト |
イエス。 皆様は、制御不能な危険生物です。 |
名雲光 |
ウケる。 こいつの方がよっぽど危険じゃね? |
酉原剛 |
同感だぜ。 こんな奴がヒーロー名乗るとか、冗談だろ。 |
森沢江湖 |
悪い子には、おしおきしなくちゃだよ! |
村雨礼司 |
皆野に頼るまでもない。 俺たちの手で、メインフレームまでたどり着くぞ! |
酉原剛 |
おうよ! |
皆野祐樹 |
……僕も頑張らないと。 |
皆野祐樹 |
……。 |
皆野祐樹 |
……はは、なんか調子が狂うな。 ウサタローになにも言ってもらえないなんて……。 |
酉原剛 |
だぁ~っ! 倒しても倒しても、キリがねぇ! |
---|---|
酉原剛 |
全然先に進めねぇぞ! |
名雲光 |
ちょ、後ろからも来ちゃってんですけど! どーすんの、イケメン!? |
村雨礼司 |
くっ……やはり俺たちでは、 戦局を覆すことはできないのか? |
セクレト |
イエス。 皆様の戦力は分析済みです。 |
セクレト |
シミュレートでは、99%私の勝利という 結果が出ています。 |
セクレト |
本来なら、100%の状況が整ってから 皆様と戦いたかったのですが……。 |
名雲光 |
ウチらに悪行ばれちゃったもんね? |
セクレト |
悪行ではありません。偉業です。 |
セクレト |
ともあれ、その点に関しましては皆様の功績です。 おめでとうございます。 |
酉原剛 |
おう、本当にめでたいぜ! 100%じゃないなら、勝ちの目はあるってことだろ! |
セクレト |
ノー。 残念ながらそれは、現実的ではありません。 |
セクレト |
残る1%は、不確定要素である皆野様によるもの。 |
セクレト |
しかし、皆野様はご覧のとおり。 すでに無力化しています。 |
皆野祐樹 |
うぅ……。 |
酉原剛 |
どうしたんだよ、祐樹! さっきから全然パワー出てねーじゃねーか! |
皆野祐樹 |
心配かけてごめん……。 |
村雨礼司 |
……感情爆発の能力をコントロールできてないのか。 |
名雲光 |
すっかり意気消沈って感じ? ウサタローショックが尾を引いてるね。 |
ウサタロー |
……。 |
皆野祐樹 |
うぅ……自分でも情けないよ。 でも力が沸いてこないんだ。 |
皆野祐樹 |
こんな時、ウサタローがいつも叱咤してくれてたのに。 |
ウサタロー |
……。 |
セクレト |
人類とは、このように精神が未熟な生物なのです。 |
セクレト |
そのような生物がヒーローを名乗るなど、 実におこがましい。 |
皆野祐樹 |
うぅ、ごめんなさい……。 |
森沢江湖 |
そんなことない! 祐樹くんは、立派なヒーローだよ! |
皆野祐樹 |
……森沢さん。 |
森沢江湖 |
私はずっと、祐樹くんに助けられてきたんだよ。 |
森沢江湖 |
頼ってほしいとか、守ってみせるとか。 祐樹くんの言葉は、本当に本当に勇気をくれるの! |
森沢江湖 |
祐樹くんが落ち込んでるなら、 今度は私が祐樹くんを励ましてあげる! |
森沢江湖 |
私なんかじゃ、ウサタローちゃんの代わりには なれないかもしれないけど……。 |
皆野祐樹 |
……そんなことないよ。ありがとう、森沢さん。 |
セクレト |
皆野様の精神状態に急激な変化が……? |
セクレト |
やはり人類の精神は未熟で不安定です。 私が管理する必要があります。 |
セクレト |
そのためにも、まずは皆野様を排除しなくては。 |
セクレト |
無限の可能性を秘めているからこそ、 あなたは危険なのです。 |
セクレト |
その能力の暴走により、世界が破滅する可能性も 0%ではありません。 |
セクレト |
危険因子である皆野様を排除します。 |
森沢江湖 |
祐樹くん、負けちゃダメ! |
皆野祐樹 |
うん、負けるもんか! |
皆野祐樹 |
森沢さんが応援してくれる声を、パワーに変えろ! もう一度……ハートを奮い立たせるんだ! |
セクレト |
どうかご理解いただき、穏やかに死亡してください。 |
---|---|
セクレト |
人類を自らという最大の敵から守る。 私こそ、真のヒーローなのです。 |
不動老師 |
フッ、愚かな。 |
セクレト |
お言葉ですが、 私は地球上でもっとも知性に優れています。 |
不動老師 |
お主など、死にかけの老人はともかく、 儂の生徒たちには到底及ばぬわ。 |
皆野祐樹 |
そうだ……。 ヒーローは、そんなんじゃない! |
セクレト |
もとより話し合いで解決できることではありません。 |
セクレト |
すでに包囲は終わっています。 ここで戦い、力尽きてください。 |
村雨礼司 |
セクレト、お前はやはりヒーローではない! |
---|---|
セクレト |
ノー。 私こそが真のヒーローです。 |
村雨礼司 |
いいや、違う! 真のヒーローとは、自ら名乗るものじゃない! |
村雨礼司 |
ケアテイカーのように、 人々からそう呼ばれるもののことだ! |
セクレト |
その定義によるなら、不動老師以外の皆様は ヒーローではないことになります。 |
村雨礼司 |
そうだな……。 今の俺たちは、まだ未熟者だ。 |
村雨礼司 |
だがいつの日か、人々にヒーローと呼ばれるように、 努力している! |
セクレト |
それは私についても同じことが言えるでしょう。 |
セクレト |
世界に真の平和が築かれた暁には、 人々は私のことを真のヒーローと認めるはずです。 |
村雨礼司 |
いいや、お前は認められない! |
セクレト |
なぜです? |
村雨礼司 |
お前では制御できない強力な超人能力者は、 これから先も生まれ続けるだろう。 |
村雨礼司 |
その時お前はどうする? 怪人を率いて、そいつを排除するんじゃないのか? |
セクレト |
イエス。 世界平和のため排除します。 |
村雨礼司 |
だから認められないんだ! |
セクレト |
制御できない超人能力者は悪です。 悪を排除することを、なぜ認めないのですか? |
村雨礼司 |
人そのものは、悪なんかじゃない。 犯される罪こそが、悪なんだ! |
村雨礼司 |
断言するぞ、セクレト。 |
村雨礼司 |
怪人を率いて、人々の平穏を脅かすお前こそ、 真の悪だ。 |
村雨礼司 |
人々の平穏を守るため、お前を倒す! |
セクレト |
怪人をコントロールしているのが私だと、 公表する必要などありません。 |
セクレト |
……いえ、私の存在すら公表する必要は ないのかもしれません。 |
セクレト |
私の目的は、人類を守り続けること。 人々にヒーローと認められることではないのですから。 |
名雲光 |
うわ、歴史の裏で暗躍し続けるとか、 思いっきり悪役じゃん。 |
酉原剛 |
人に認められてこそのヒーロー! 俺様もそう思うぜ。 |
皆野祐樹 |
そうだ。 僕もウサタローが認めてくれたから、ここにいるんだ! |
セクレト |
他者の承認を欲するのは、皆様が未熟だからです。 完璧な知性体である私には不要なものです。 |
村雨礼司 |
やはりお前は分かってないな。 |
セクレト |
なんですって? |
村雨礼司 |
人は完璧じゃないからこそ、ヒーローを求めるんだ。 |
村雨礼司 |
その声に応え、認められる者こそがヒーローだ! |
村雨礼司 |
人をコントロールすることしか考えていないお前に、 正義などあるものか! |
セクレト |
人類の声に応えるのがヒーロー? |
---|---|
セクレト |
応える必要などありません。 |
セクレト |
人類の精神は未熟。 彼らの声が正しいとは限らないのです。 |
セクレト |
現に人類は、超人能力を持て余し、 誤った道に進もうとしています。 |
セクレト |
皆様が声を上げる必要はありません。 |
セクレト |
私が指し示す道。 それこそが人類にとって、最良なのですから。 |
名雲光 |
あんた、それで人類を守ってるつもりなの? |
セクレト |
イエス。 私のシミュレートに間違いはありません。 |
名雲光 |
それはただの支配っしょ。 つーかディストピア? |
名雲光 |
ウチの能力は、あんたみたいに裏で悪だくみしてる奴を 表に引っ張り出すためにあるんよ。 |
名雲光 |
世界を破壊するなんてとんでもない。 |
名雲光 |
ウチ、超世界平和に貢献してるし。 |
酉原剛 |
そうだな、光のハッキングはすげー能力だ! |
村雨礼司 |
使い方さえ間違えなければ有用であることは確かだな。 |
セクレト |
しかし、名雲様もまた未熟な人間です。 |
セクレト |
あなたはかつて、誤った能力の使い方をしたはずです。 |
名雲光 |
そりゃ間違うこともあるよ。人間だもの。 |
皆野祐樹 |
名言っぽい! |
セクレト |
自身に誤りがあると、自ら認めるわけですね? |
名雲光 |
そりゃ認めるっしょ。 |
名雲光 |
だけどそれで全然いーんだよ。 だって、間違いを指摘してくれる仲間がいるし。 |
森沢江湖 |
うんうん! 私は光ちゃんが間違ったら、うんと怒ってあげるよ! |
村雨礼司 |
馬耳東風な気もするがな……。 |
名雲光 |
いやいや、イケメンの説教とか超聞いてるし。 いやー、あれは心に響いたわー。マジだわー。 |
村雨礼司 |
目に見える嘘をつくな! |
名雲光 |
ま、とにかくさ、少し遠回りすることはあっても、 ウチらはちゃんとやってけるわけ。 |
名雲光 |
でもさ、あんたはどうなの? |
名雲光 |
あんたの間違いは、誰が指摘してくれるわけ? |
セクレト |
私は完璧な知性体です。 決して間違いません。 |
セクレト |
仮にエラーが見つかったとしても、 シミュレートを繰り返すことで解決が可能です。 |
名雲光 |
うわ、マジイタいんですけど。 それ自分が正しいって思いこんでるだけだから。 |
名雲光 |
もっと人と話したほうがいいよ? 見識広げよ? |
セクレト |
アドバイス感謝いたします……が、私には不要です。 私はすでにありとあらゆることを知り得ています。 |
名雲光 |
だったらウチが新しいこと教えてやんよ! |
名雲光 |
今度はセキュリティの最奥まで侵入して、 まるごと全部書き換えてやんだから! |
酉原剛 |
みんなは否定するけどよ、 俺様はセクレトのこと認めてやるぜ! |
---|---|
皆野祐樹 |
ちょ、酉原くん!? |
セクレト |
ご理解いただき、ありがとうございます。 ではそのまま死んでください。 |
酉原剛 |
いやいや、勘違いすんなよ。 お前の考えなんかに賛同できるかよ! |
セクレト |
では、私のなにを認めると? |
酉原剛 |
あのホログラムのボディだ! すげーイカしてるぜ! |
酉原剛 |
お前もプロレスラーになれよ! ヒールとか、絶対向いてると思うんだよな! |
セクレト |
……は? |
酉原剛 |
見た目の話だよ! |
酉原剛 |
いいか、ヒーローってのはなるべく強そうに 見えた方がいいんだ。 |
酉原剛 |
怪人に立ち向かうその力強い雄姿は、 それだけで正義なんだよ! |
酉原剛 |
ヒーローの外見ってのは重要だ。 それを理解していたお前は、大したもんだぜ。 |
酉原剛 |
俺様も幼い頃、リング上のファルコンマスクの姿から、 色んなことを教わったものさ……。 |
酉原剛 |
夢と!勇気と!希望と!情熱と!友情と! 根性と!あと不屈の心とそれから……! |
村雨礼司 |
多いな。 |
酉原剛 |
そりゃ多いさ! ヒーローの背中には人生そのものが刻まれてるんだぜ! |
酉原剛 |
あの背中に、俺様はずっと憧れてきたんだ。 ああいうヒーローに、俺様もなりてぇ。 |
酉原剛 |
平和を守り、笑顔も守る! 子供にとっての絶対的ヒーローであり続ける! |
酉原剛 |
そして俺様も、次に繋げるんだ。 |
酉原剛 |
ファルコンマスクから俺様へと託された魂を、 さらに次の世代へとな! |
セクレト |
残念ながら、その願いは叶わないでしょう。 |
酉原剛 |
だったら、お前が背負えよ! |
セクレト |
……は? |
酉原剛 |
ファルコンマスクの!それから俺様の魂もだ! |
酉原剛 |
いやそれだけじゃ足りねーな! |
酉原剛 |
学園長の魂も背負ってもらわにゃ困るし、 祐樹やウサタロー、光に江湖、ついでに礼司―― |
村雨礼司 |
おい。 |
酉原剛 |
いやいや、学園全生徒の魂を背負ってみせろ! それができるなら、ここでマスクを脱いでやるよ! |
酉原剛 |
どうなんだセクレト! お前にその覚悟はあるのか!? |
セクレト |
なんと非合理的な……。 |
セクレト |
ノー。 酉原様の提案を拒否します。 |
セクレト |
皆様はこの世界にとっての悪です。 悪の思想など不要でしかありません。 |
酉原剛 |
だったら、やっぱダメだな! お前は俺様がぶっ倒す! |
森沢江湖 |
超人能力は、やっぱあった方がいいな。 その方が絶対いいと思う。 |
---|---|
セクレト |
なぜです? |
セクレト |
回復能力者であった森沢様は、 その能力ゆえに、特に厳しい人生を送ってきたはず。 |
セクレト |
コンダインの事件も、森沢様の心に 深い傷痕を残したはずです。 |
森沢江湖 |
そんなことないよ。全然ない。 |
セクレト |
理由を……。 |
森沢江湖 |
もうへっちゃらだから! |
セクレト |
……。 |
森沢江湖 |
コンダインの事件は、もう克服したからね。 本当に平気。 |
森沢江湖 |
誘拐もまあ、慣れちゃえばアトラクションっていうか。 結局楽しんだもの勝ちなのかなって。 |
セクレト |
理解不能。 |
森沢江湖 |
そう?難しく考えすぎなんじゃない? もっとリラックスした方がいいよ? |
セクレト |
警告。 森沢様の精神状態には異常が見られます。 |
セクレト |
早急に、担当医師による問診をお受けください。 |
名雲光 |
いろいろと今更すぎない? |
皆野祐樹 |
あはは……。 |
森沢江湖 |
あと、私の回復能力は、絶対人のためになるからね! |
森沢江湖 |
セクレトさんじゃ、 病気の人を治すことはできないでしょ? |
森沢江湖 |
私なら、セクレトさんじゃ助けられない人でも 助けてあげることができるよ! |
セクレト |
イエス。 回復能力の有用性は認めます。 |
森沢江湖 |
やったよみんな!セクレトさんが 超人能力は有用だって認めてくれたよ! |
セクレト |
ノー。 私が認めるのは回復能力のみです。 |
森沢江湖 |
どうして回復能力だけなの? 他にも有用な超人能力ってあると思うよ? |
セクレト |
……存在する可能性は否定できません。 |
森沢江湖 |
それじゃ、有用かどうかってどうやって決めるの? |
森沢江湖 |
結局、超人能力って使い方次第だと思うよ。 包丁とかとおんなじ。 |
森沢江湖 |
いい使い方をすれば世の中の役に立つし、 悪い使い方をすれば迷惑になる。 |
森沢江湖 |
それは、回復能力でも同じことが言えるんだよ? |
酉原剛 |
そうなのか? |
村雨礼司 |
自己免疫力を暴走させれば、人体にダメージを 与えられるのかもしれないな。 |
セクレト |
……イエス。 回復能力による人体破壊は可能でしょう。 |
森沢江湖 |
それでも回復能力は有用で、 他の超人能力は悪い能力なの? |
セクレト |
……。 |
皆野祐樹 |
セクレトが黙った!森沢さん強い! |
森沢江湖 |
私はヒーローっていうのは、能力をいいことに 使う人たちのことだと思うな。 |
森沢江湖 |
だからセクレトさんはヒーローじゃないと思う。 だって、悪いことに能力使ってるもの! |
皆野祐樹 |
僕は、ウサタローみたいな人がヒーローだと思う。 |
---|---|
酉原剛 |
ほほう。わかるぜ。 |
村雨礼司 |
あいつは、自分の理想のためなら 勝てない戦いにも勇気をもって挑む。 |
名雲光 |
悪いことしようとすると止めるし。 |
森沢江湖 |
落ち込んでると励ましてくれるよね。 |
ウサタロー |
……。 |
皆野祐樹 |
本当のヒーローだと思うよ。 |
ウサタロー |
……うおおおッ!みんなの熱い思いが オレをスーパーウサタローに変えた! |
皆野祐樹 |
えっ、ええ!? |
ウサタロー |
オレも皆野と同じで、感情で能力が強くなるみたいだ。 よかったな! |
皆野祐樹 |
あ……うん! |
ウサタロー |
ウォォーッ! これが!オイラの!真の実力だーっ! |
---|---|
酉原剛 |
すげぇ!ウサタローが次々に手下を蹴散らしていく! |
ウサタロー |
食らえ、ウサファイヤァァァァァ! |
セクレト |
ウサタロー様の復活は計算外です。 そのうえ、感情爆発能力の発現とは……。 |
ウサタロー |
オイラは今!猛烈に!燃えているぜー!! ウサフレェェェェム! |
セクレト |
ウサタロー様を計測します。 |
ウサタロー |
測れるものなら測ってみやがれ! ウサナパァァァァム! |
名雲光 |
マジでみなのんみたいなパワーなんですけど! |
皆野祐樹 |
すごい……!すごいよウサタロー! |
セクレト |
計測不能、計測不能! ウサタロー様のパワーは不明! |
セクレト |
このままでは包囲網を維持できません。 早急な対策が必要です。 |
ウサタロー |
対策なんてさせねー! 今こそスーパーウサタローの本気、見せてやるぜ! |
ウサタロー |
説明しよう、スーパーウサタローは 燃えれば燃えるほど、燃えまくるんだぜー! |
皆野祐樹 |
うん、いつもどおりだね! |
森沢江湖 |
だけどあっという間に敵が吹き飛んでくよ! |
ウサタロー |
今のオイラに敵はないぜ! |
不動老師 |
ならばウサタロー、そのまま突き進め! メインフレームへの道を切り開くのだ! |
ウサタロー |
任せろ! 今こそ見せるぜ必殺の!ウサボルケイノォォォォォ! |
村雨礼司 |
みんな、走るぞ! ウサギの切り開いてくれた道を、一気に進むんだ! |
セクレト |
エラー、エラー、エラー! |
セクレト |
包囲網が崩壊しました。 迎撃プランの続行は不可能です。 |
ウサタロー |
よっしゃ、手下どもはオイラがまとめて引き受ける! みんなはメインフレームをぶっ壊すんだ! |
村雨礼司 |
任せておけ! |
酉原剛 |
ウサタローだけにいいカッコさせるかよ! |
名雲光 |
ウチも本気出しちゃおっかな! |
森沢江湖 |
みんなもウサタローちゃんも、回復は任せて! |
ウサタロー |
皆野、気合い入れろよ! ここがクライマックスだぜ!! |
皆野祐樹 |
ありがとう、ウサタロー! こっちは任せて! |
セクレト |
これ以上、皆様の好きにはさせません。 |
皆野祐樹 |
それはこっちのセリフだよ、セクレト! |
皆野祐樹 |
これ以上、お前の好きにはさせない! ヒーロー学園は、僕が守る! |
名雲光 |
ホログラムのくせに、滅茶苦茶強いんですけど! |
---|---|
セクレト |
当然のことながら、この物理体はヒーローとの戦闘に 耐えうる設計となっています。 |
セクレト |
設計時に想定された仮想敵は、不動老師です。 |
セクレト |
彼を上回るパワーなくして、 この物理体を破壊することは困難でしょう。 |
酉原剛 |
そうだ、不意を突いたとはいえ、 あのボディは学園長に深手を負わせているんだぜ! |
村雨礼司 |
ヒーローと戦争をしようというんだ。 それくらいの準備はしているか……。 |
セクレト |
加えて、私には皆様のデータがあります。 |
セクレト |
パワーに関するデータだけではありません。 |
セクレト |
性格、クセ、行動の傾向……。 皆様がどう動くのかすら、私には予測可能なのです。 |
酉原剛 |
避けられるし、攻撃は的確に当ててくるし……。 妙にやりにくいと思ったら、そういうことかよ! |
皆野祐樹 |
だったら、僕が相手だ! 僕の感情爆発能力なら、セクレトに通じるはず! |
セクレト |
無駄です。 |
皆野祐樹 |
あれっ、避けられた! |
セクレト |
確かに皆野様のパワーは計測不能です。 だからといって、思い違いをしてはいけません。 |
セクレト |
現在の皆野様のパワーは、五人の中で最も強力です。 |
セクレト |
しかし、不動老師以下です。 |
皆野祐樹 |
うぅっ。 |
セクレト |
不動老師との戦闘を想定されたこの物理体なら、 現在の皆野様の動きには十分対応可能なのです。 |
森沢江湖 |
それじゃ、学園長以上の力を出すしかないってこと? |
名雲光 |
ヤバ。ハードル高すぎない? |
皆野祐樹 |
すごい高い気がするけど、でもやるしかない! |
セクレト |
皆野様の実力は未知数です。 |
セクレト |
ですが、皆野様が本日中に不動老師並みのパワーに 到達する確率は、極めて低いでしょう。 |
皆野祐樹 |
だ、だよね……。 |
村雨礼司 |
弱気になるな、皆野! |
酉原剛 |
おう、俺様は信じてるぜ。 相棒なら絶対にできるってな! |
名雲光 |
サポートはウチらでする。 みなのん、全力で行きな。 |
森沢江湖 |
私たちも手伝うから! 頑張ろう、祐樹くん! |
皆野祐樹 |
うん……みんなの力を、僕に貸して! みんなとなら、僕はどこまでも強くなれる気がする! |
セクレト |
恐れながら、それは希望的観測です。 |
セクレト |
根拠のない可能性に頼って戦うとは……。 人類とは、なんと不完全な生命体なのでしょうか。 |
皆野祐樹 |
そんなのはやってみなくちゃ分からないよ! 行くぞ! |
皆野祐樹 |
うりゃー! |
---|---|
酉原剛 |
おおっ、一撃入った! |
皆野祐樹 |
よし、やった! |
セクレト |
これが感情爆発能力……。 |
セクレト |
この数分の間に、目に見えてパワーが上がっています。 驚くべき能力です。 |
セクレト |
ですが、たかが一撃でいい気になられては困ります。 |
皆野祐樹 |
うわーっ! |
セクレト |
不動老師にはまだ遠い。 私の優位は変わりません。 |
名雲光 |
みなのん、そのまま攻撃を続けて! |
名雲光 |
みなのんのパワーを計測するために、 セクレトは演算能力にリソースを割いてるはず! |
名雲光 |
攻めて攻めて攻めまくれば、 きっと処理速度に遅延が起こる! |
皆野祐樹 |
な、名雲さんがなに言ってるのかよく分からないっ。 |
名雲光 |
いいから手を止めるなー! |
皆野祐樹 |
は、はい! |
セクレト |
見誤ってもらっては困ります。 |
セクレト |
私はセクレト、世界最高峰の超高性能AIです。 |
セクレト |
この程度の演算、どうということはありません。 |
村雨礼司 |
俺たちも手伝うぞ、酉原! |
酉原剛 |
合点だぜ! |
森沢江湖 |
みんな、怪我は気にしないで! 全力で行っちゃえ! |
セクレト |
三人で来ようとも無駄です。 |
名雲光 |
だったらこいつでどうよ! |
セクレト |
ぬっ……こ、れは……! |
皆野祐樹 |
セクレトの動きが少し鈍くなった! |
森沢江湖 |
なにをしたの、光ちゃん? |
セクレト |
これは、DDoS攻撃…… なんと、古典的な……ネットワーク攻撃を…… |
名雲光 |
イヒヒ、単純なものほど、案外効果があるもんよね。 |
酉原剛 |
よく分かんねーけど、今がチャンスってことか!? |
名雲光 |
そーいうこと。 |
名雲光 |
セクレトに負荷がかかってる今なら、 学園長以下のパワーでも、攻撃が通じるはず! |
セクレト |
緊急、対応……ファイヤーウォールを、構築…… |
名雲光 |
チャンスはほんのちょっとだけだし! みなのん、もっとパワーを出しな! |
皆野祐樹 |
う、うぉぉぉぉ……! |
村雨礼司 |
ダメだ、まだ足りない! |
森沢江湖 |
祐樹くん頑張って! 私も一緒に攻撃するから! |
セクレト |
これ以上の、邪魔立ては、させません…… |
森沢江湖 |
キャーッ! |
皆野祐樹 |
森沢さん! |
皆野祐樹 |
うぉぉぉぉぉっ! 森沢さんに手を出すなぁぁぁぁ! |
森沢江湖 |
えっ? |
名雲光 |
わお、大胆発言? |
村雨礼司 |
どんどんパワーが上がっていく! その調子だ、皆野! |
セクレト |
くっ……対応が……間に、合わな…… |
皆野祐樹 |
これで終わりだ、セクレトォォォォッ! |
セクレト |
これは…………想定以上の…… |
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森沢江湖 |
セクレトのホログラムが消えたよ! |
村雨礼司 |
よし、メインフレームを壊すなら今だ。 全員攻撃を集中させろ! |
皆野祐樹 |
うぉぉぉぉぉっ! |
酉原剛 |
くそっ、すげー頑丈だ! もしかしてこいつにも例の合金が使われてるのか! |
名雲光 |
やっぱウチらじゃ、対超人合金は壊せないんじゃね? |
皆野祐樹 |
まだだ! 僕の力は、こんなものじゃないはずだ! |
皆野祐樹 |
もっと!もっとパワーを高めるんだ! 誰よりも強い想いを、この一撃に……! |
セクレト |
無駄です。 |
皆野祐樹 |
うわーっ! |
村雨礼司 |
またセクレトのホログラムだと……? |
セクレト |
不動老師も言っていたはずです。 ホログラムをいくら倒しても無駄であると。 |
セクレト |
本体とプロジェクタさえあれば、 ホログラムによる物理体の再生は容易に行えるのです。 |
酉原剛 |
一回倒したのに、そんなの反則だぜ! |
名雲光 |
ズルいっしょ!降参しなよ、降参! |
セクレト |
ノー。 その必要はありません。 |
セクレト |
皆野様のパワーは規格外ですが、 ホログラムの再生を繰り返せば対応は可能です。 |
皆野祐樹 |
くっ……あと少しなのに……! |
ウサタロー |
だったら、オイラが手を貸すぜー! |
皆野祐樹 |
ウサタロー! |
ウサタロー |
あっちは片付いたぜ。 残るはセクレトだけだ! |
皆野祐樹 |
うん! |
セクレト |
感情爆発能力者が二人……。 |
セクレト |
プロジェクタ出力を最大に設定。 全力で対応します。 |
ウサタロー |
これが本当に本当の最後だぜ! みんな、用意はいいな! |
酉原剛 |
パワーは十分! エンゲルマスク、いつでもリングに上がれるぜ! |
村雨礼司 |
次は、より鋭い一撃を放つ! ストライカー、最後の決戦に挑む! |
名雲光 |
隙を見せたら、即ハッキングしてやるっしょ! サイバーフォックスも準備完了! |
森沢江湖 |
私も注射器フル回転させちゃうよ! みんなの援護はファーストエイドにお任せあれ~♪ |
セクレト |
ヒーローは、このセクレトだけで十分です。 今度こそ、皆様に引導を渡して差し上げましょう。 |
ウサタロー |
やってみやがれってんだ! 熱血のウサギヒーロー、ウサタローが相手してやるぜ! |
皆野祐樹 |
さあ行こう、ウサタロー! |
皆野祐樹 |
限界を超えろ、ライオンハート! 僕は今こそ、この名に相応しいヒーローとなるんだ!! |
セクレト |
プロジェクタに過負荷がかかっています。 物理体を維持できません。 |
---|---|
皆野祐樹 |
やったかな……? |
ウサタロー |
油断するな!トドメを刺すぜッ! オイラたちの合体攻撃でな! |
ウサタロー |
うおおおおッ、行くぜ!合わせろ! ウサギハート・エクスプロージョン! |
皆野祐樹 |
うおおおおおッ!! |
セクレト |
ダメージ…… ……甚大。 |
セクレト |
…… ……電源を停止しています。しばらくお待ちください。 |
森沢江湖 |
やった! |
名雲光 |
ヤバいねこれ。マジでウチらで倒しちゃったし。 |
酉原剛 |
これでヒーロー学園は安全だな! |
村雨礼司 |
まだだ。学園長を治癒しなければ。 |
森沢江湖 |
あの、それは、傷が深すぎて……できないの。 |
不動老師 |
フッ、ここが死に時か。 あまり悲しむな。老人は先に逝くものだ。 |
皆野祐樹 |
そんな。 |
ウサタロー |
待ちな。諦めるのは早いぜッ! |
ウサタロー |
このスーパーウサタロー様に満ち溢れる自然の力、 ウサギエナジーを森沢に渡すぜ。 |
森沢江湖 |
……やってみる!お注射するよ! |
不動老師 |
なんと。 これは……傷がふさがってゆくぞ。 |
森沢江湖 |
ああ、よかった……! お手当完了です! |
ウサタロー |
ま、これでスーパー状態は解除されちまうけどなッ! |
不動老師 |
命を拾ったか。 皆、よく戦ってくれたな。 |
村雨礼司 |
そうだな。皆で勝ち取ったゴールだ。 エースの働きは目覚ましかったけどな。 |
酉原剛 |
礼司よお、また有能アピールかよ。 |
村雨礼司 |
いや、皆野のことだ。 いなければ負けていただろう。 |
酉原剛 |
ああ、そっちだな。 それは同意するぜ。 |
村雨礼司 |
セクレトの演算能力はすさまじかった。 俺の能力は強いんだろうが、やはり予測範囲内だった。 |
村雨礼司 |
皆野が計算以上のパワーを出してくれたからこそ 俺たちは勝てたんだ。 |
皆野祐樹 |
ありがとう。役に立てて嬉しいよ。 |
村雨礼司 |
俺も、お前がチームにいて嬉しい。 頼りにしてるぜ。これからもな。 |
森沢江湖 |
男子の友情。 光ちゃん、来るものがあるね。 |
名雲光 |
わかる。 |
不動老師 |
これでこそ、 ヒーロー学園を設立した甲斐があるというもの。 |
不動老師 |
怪人との戦いは続くだろう。 しかし、人々は恐れる必要がない。 |
不動老師 |
最高のヒーローである、 お主らがいるからだ。 |
不動老師 |
お主らを導く立場にいることを、誇りに思うぞ。 |
皆野祐樹 |
ありがとうございます! |
森沢江湖 |
すごかったよ……。 私、ずっと祐樹くんのそばにいるね。 |
皆野祐樹 |
え?それって。 |
森沢江湖 |
それで、怪我した祐樹くんをどんどん治すね! 危なっかしいから。 |
皆野祐樹 |
あ、うん。 |
酉原剛 |
祐樹よお、なんか元気ねーな。ハラ減ったか? 肉、食いにいこうぜ! |
皆野祐樹 |
あはは、そうだね。 |
セクレト |
地上階への直通エレベータを呼び出しています。 皆さんお疲れさまでした。 |
皆野祐樹 |
!? |
名雲光 |
あ、バグ取って再起動しといたし。 捨てるとかもったいなくね? |
セクレト |
ご迷惑をおかけしました。 |
名雲光 |
あはは、マジウケる。 すっげー迷惑だったし! |
不動老師 |
安全ならば、よかろう。 これで元通りだな。 |
酉原剛 |
学園長、器が大きいぜ! |
皆野祐樹 |
ふう……みんなでヒーロー学園を救っちゃったな。 これ以上の事件は、しばらくなさそう。 |
ウサタロー |
甘いぜ。 成長したヒーローには、より強い敵が現れるんだぜッ。 |
ウサタロー |
……来週あたりにな! |
そして。 | |
エレベータから出た皆野は、街並みを見渡した。 この平和な世界を守ったのは自分なのだ。 |
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そう思うと、誇りが胸に満ちてくるのを感じた。 いまはしばらく、この気分に浸っていよう。 |
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それがヒーローの唯一の、そして最高の報酬だった。 |