第1部 第6章
悪い子はだれだ?
セクレト |
新たな怪人の出現です。 名称は「イネガー」。プロフィールをお渡しします。 |
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酉原剛 |
うまそうな名前だな。 |
セクレト |
東北地方に出現し、すでに街を一つ壊滅させました。 学園長から出動指示が出ています。 |
村雨礼司 |
強敵だな。 |
名雲光 |
ヤバいね。なにがヤバいって……。 あーもう、マジで?ありえないんだけど。 |
皆野祐樹 |
大丈夫? |
名雲光 |
ヤバめ。 |
ウサタロー |
よくわかんないけど、ほっとけないぜ! また街を壊される前に、行こうぜ! |
皆野祐樹 |
そうだね。行こう! |
皆野祐樹 |
これは……。 この、景色は。 |
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ウサタロー |
ひどすぎるぜッ! 建物がみんなボロボロじゃねーか! |
名雲光 |
警察と自衛隊が総出だよ。 避難キャンプに助けた人を送ってるってさ。 |
皆野祐樹 |
じゃあ、僕らも……。 |
村雨礼司 |
それはダメだ、皆野。 俺たちは怪人の相手をしなければならない。 |
村雨礼司 |
警察も自衛隊も奴らには勝てないからな。 俺たちは怪人に集中するのが役割だ。 |
森沢江湖 |
私は、救護所のほうが……。 ケガをした人も、たくさんいそうだし! |
村雨礼司 |
つらいが、ヒーローの回復を優先してくれ。 怪人を倒さないと、被害が拡大する。 |
森沢江湖 |
うん……。 そう、だよね。 |
酉原剛 |
ここまで大規模だとはな。 これまでとは強さのケタが違うぜ。 |
名雲光 |
あーそれねー。 手下怪人も数百体いるっぽいよ。 |
ウサタロー |
数百だって!? |
名雲光 |
東北のヒーロー学園のヒーローが総出で、 それでも人数足りないんだってさ。 |
名雲光 |
それでウチらが呼ばれてるのよ。 実績もあるしってことでね。 |
セクレト |
こっちゃある近所で まだ破壊活動どごしとるス手下怪人がるス。 |
森沢江湖 |
お、おお~? なに語? |
セクレト |
あぎだ弁だス。 |
村雨礼司 |
あ、ああ。 地方色豊かだな。 |
名雲光 |
ご、ごめんね。こっちで事件があったら こんな喋りになるようにしてたの。 |
名雲光 |
悪気があったわけじゃなくて、 こんな大事件になるとは思ってなかったから……。 |
酉原剛 |
光よぉ、口調変わってねーか? |
名雲光 |
そ、そんなことないよ? |
森沢江湖 |
変わってるよ~。 中学校のときみたいだよ。 |
名雲光 |
そ、そう、かなあ? |
名雲光 |
セクレトを元に戻したほうがいいんだろうけど、 じ、時間かかっちゃうんだよね。 |
村雨礼司 |
なんとなくわかるから、大丈夫だ。 近くに手下怪人がいるんだな? |
セクレト |
そっちゃある通りだス。 警察からの出動要請だス。 |
ウサタロー |
放っておけないゼ! さあ、走っていくぜええ! |
酉原剛 |
街をこんなにしやがって! 許せねえぜ! |
酉原剛 |
住んでた人どーすんだよ! 子供だっているんだぞ! |
酉原剛 |
うおおおお! |
皆野祐樹 |
一刻も早く! |
名雲光 |
だ、だよねえ。 こんな風になるなんて……。 |
村雨礼司 |
わかった。セクレトのことはいい! 急ぐぞ! |
ウサタロー |
さくっと勝利だぜ! 手下怪人になら、勝つのは問題ないな! |
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皆野祐樹 |
問題は数だね。 まだまだ増えてるみたいだから……。 |
皆野祐樹 |
戦って勝つまでの間に、 倒した以上に増えられたら、意味ないよ。 |
村雨礼司 |
恐ろしいまでの展開能力だな。 こんな敵は、いままでいなかった。 |
酉原剛 |
でもよー、要するに 本体を探し出して倒せばいいんだろ? |
酉原剛 |
いままでと変わらねーよな。 |
森沢江湖 |
セクレトさんと光ちゃんがいれば大丈夫よ! だよね? |
セクレト |
そっちゃある通りだス。 |
名雲光 |
そ、そうだねー。 |
村雨礼司 |
名雲、さっきから様子が変だぞ? どうしたんだ? |
名雲光 |
なんでもないよ! いつも通り、いつも通り!マジヤバだから! |
村雨礼司 |
そうか……。 |
森沢江湖 |
セクレトさん、次はどこ? 怪人が暴れている場所を教えて! |
セクレト |
いまのところ、あと二か所あるんてが。 んだどもそっちゃあるめに、近隣住民どご救出しべ。 |
酉原剛 |
なんだと!? |
皆野祐樹 |
一般人がまだいるの? |
セクレト |
警察と自衛隊が懸命に救出作業にあたっていだども 取り残された人々が相当数るス。 |
セクレト |
そこっちゃあるビルの壁どご動かして、 埋もれてるわらしどご出してけれ。 |
村雨礼司 |
わらし……ああ、子供か! 酉原!出番だぞ! |
酉原剛 |
うおおおお! エンゲルパワーリフト! |
ウサタロー |
一段とパワーアップしてるな。 頼もしいぜ! |
村雨礼司 |
さあ子供たち!こっちだ! エンゲルマスクが助けてくれたぞ! |
皆野祐樹 |
向こうに警察の検問があるから そこでお父さんとお母さんを探してね! |
森沢江湖 |
私、ちょっと付き添ってくる! |
酉原剛 |
いや、それはできねー! 向こうから来ちまったぞ! |
セクレト |
わらしが背後にいるしがら、 今回は逃げられません。 |
酉原剛 |
当然だ! やるぞ祐樹! |
皆野祐樹 |
わかった!時間を稼ぐよ! |
村雨礼司 |
違うぞ。 全員倒してしまえばいいんだ! |
皆野祐樹 |
そ、そうか。 じゃあ、そっちで! |
森沢江湖 |
街を壊すなんて悪い子は、許さないんだから! ファーストエイドがお仕置きしちゃうぞ! |
村雨礼司 |
ストライカー、交戦する! |
皆野祐樹 |
ライオンハート、行きます! |
名雲光 |
あ、ウチもー。 |
酉原剛 |
なんだよもー、キメろよな! 子供たちが見てるんだぜ! |
名雲光 |
だよねー。あはは。 |
セクレト |
いまの戦いで、一か所が片付きましたス。 おらがだの担当の残りは一か所だス。 |
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皆野祐樹 |
ふうう。 そっちをなんとかできれば、本体を探せるんだね。 |
セクレト |
んだス。 |
ウサタロー |
オイラたちの担当、か。 たくさん戦ってるんだろうなあ。 |
名雲光 |
まーねー。 |
皆野祐樹 |
でも、おかしいよねこれ。 怪人がこんな破壊活動をすることなんて、あった? |
村雨礼司 |
ここまで大規模なものはないな。 これまでは、せいぜい店一軒やビル一棟だ。 |
森沢江湖 |
バイトをクビになったから復讐、とか 会社をクビになったから復讐、だよね。 |
村雨礼司 |
建物を壊したところで、 怪人にはなんの利益もないからな。 |
村雨礼司 |
キューバーンのような大規模窃盗では、 破壊活動はないのが普通だ。 |
酉原剛 |
泥棒の被害ってあんのか? |
セクレト |
ねよ。 |
酉原剛 |
うーん、どういうことだ? 俺様、頭が悪いからわからないぜ。 |
皆野祐樹 |
街を支配するって感じでもないんだよね。 どうなってるんだろう? |
ウサタロー |
なるほどなあ。悪いヤツが悪いことをするのは 当たり前だと思ったけど……。 |
ウサタロー |
怪人にも、悪いことで達成したい なにかがあるよなッ! |
ウサタロー |
さすがだぜ、皆野! |
皆野祐樹 |
でも、そのなにかがわからない。 もしかして……。 |
皆野祐樹 |
破壊活動そのものが目的なのかな? |
村雨礼司 |
無意味すぎる。 世の中全体に激しい怒りでも抱いているというのか? |
皆野祐樹 |
そうかもなー、って。 |
酉原剛 |
そんな奴いねーだろ。 キューバーンのほうが、まだ建設的だぜ。 |
名雲光 |
だよねー。 |
ウサタロー |
おっと、そろそろ次のポイントだぜッ! みんな警戒しろよな! |
森沢江湖 |
瓦礫だらけで視界が悪いよー。 不意打ちされちゃうかも。 |
酉原剛 |
人が埋まってるかもしれねーから、 平らにしちまうのも遠慮しねーとな。 |
村雨礼司 |
敵が有利な場所には違いない。 ウサタローの耳が頼りだ。 |
ウサタロー |
ヘヘヘ……いるぜッ! あの角を曲がったところだ! |
名雲光 |
ウサタローちゃん、ヤバいね。 |
ウサタロー |
ここは静かだからな! 普通の街は、車とか走ってるし……。 |
名雲光 |
あー……。 |
セクレト |
戦闘準備どごしてけれ。 |
皆野祐樹 |
う、うん。 |
酉原剛 |
こっちが先手だな。 これ以上、街は壊させないぜ! |
村雨礼司 |
消し去ってやる! |
皆野祐樹 |
やっぱり……店からなにも盗んでないよ。 普通の家からも。 |
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名雲光 |
一般人の火事場泥棒は多発してるみたいだよー。 |
村雨礼司 |
な、なんだと!? それは許せない! |
皆野祐樹 |
……役割分担、だよね? |
村雨礼司 |
そ、そうだな。 警察の役目、か……。 |
酉原剛 |
セクレトがナビできるくらいカメラだらけなのに 泥棒するとか、ただのアホだろ。 |
酉原剛 |
あとで捕まるだろうから、いまは怪人に集中だな! |
セクレト |
そっちゃある通りだス! |
村雨礼司 |
すまない。一瞬、冷静さを失った。 |
皆野祐樹 |
仲間がいるから大丈夫だよ。 |
酉原剛 |
おう!どんどん失え! |
村雨礼司 |
いやまあ……気をつけよう。 それより、本体を探そう。 |
名雲光 |
さっきのザコを倒したから、 さ、探せるんだよね? |
セクレト |
んだス。 |
セクレト |
街の中央通り近辺にいるようだども 敵の大群どご通り抜けなければなりません。 |
皆野祐樹 |
わかった。 道を切り開こうよ。 |
ウサタロー |
あいつら、ヒーローの相手をするのは最小限だぜ。 こっちにとっては有難いけど……。 |
ウサタロー |
破壊活動を優先してるのを放っておくのは 心が痛むゼ……!! |
村雨礼司 |
……耐えろ。 |
皆野祐樹 |
……うん。 |
村雨礼司 |
移動しながら助けられる人は助けよう。 それで遅くなるようなら本末転倒だが……。 |
ウサタロー |
村雨! |
村雨礼司 |
……わかった。 見かけた要救助者は全員助ける。 |
村雨礼司 |
それが俺たちの最大速度だ。 |
森沢江湖 |
移動できるように回復して、 あとは救護所に任せるね! |
酉原剛 |
力の振るい甲斐があるぜ。 瓦礫は任せろ。 |
皆野祐樹 |
僕も、もっと汎用性がある超人能力だったらな。 こんなとき、もっと役に立てるのに。 |
ウサタロー |
火は使うだろ! こんな怪人さっさと片付けて、避難所を回ろうぜ! |
森沢江湖 |
ごはんをあっためるんだよね。 あれ、すごく有難いんだって。 |
皆野祐樹 |
そ、そっか。 僕にもできることはあるんだ。 |
村雨礼司 |
見えてきたな。敵の群れだ。 突っ切るぞ! |
名雲光 |
お、おー。 |
皆野祐樹 |
怪人さんたち、どいてください!お願いします! |
皆野祐樹 |
あと破壊活動はやめてください! |
酉原剛 |
……聴いてねーな! 押し通るしかねーぞ。 |
村雨礼司 |
最初からそのつもりだ! |
イネガー |
ドゥフフフ、ようやく良い子たちの登場だなあ。 ……い、いや待て。お前は悪い子だ! |
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森沢江湖 |
私!? |
イネガー |
いや、黄色いの。 |
名雲光 |
あははは、ウケるー。 どーもー。 |
イネガー |
ボスからお前の正体は聞いているぞ。 「ひかたん」だろう! |
イネガー |
お前のせいでオラは……くうう。 |
皆野祐樹 |
いったい、なにが? |
名雲光 |
いいよもー、昔の話だし。 |
イネガー |
いいわけあるか! オメーら、絶対ぶっ殺す! |
村雨礼司 |
あの怒り方は異常だぞ。 |
酉原剛 |
悪いヤツだからじゃねーのか? |
ウサタロー |
謎の匂いがするゼ! |
イネガー |
念を入れて、苦しめて倒してやるからな! 覚悟しろ! |
イネガー |
ふんぬううう! いでよ手下ども!ヒーローを囲んでしまえ! |
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名雲光 |
ヤバいよ~。 こんなのマジありえないし。 |
名雲光 |
知ってたけど! 知ってたけどさあ! |
森沢江湖 |
なに?なんなの? |
セクレト |
敵グループ反応が数十個出現してだス。 まわりからも応援がきてるけど厳しそうッス。 |
イネガー |
ワシは怒りさえすれども冷静よ! コンダインやカニクラブの例も見た! |
イネガー |
最後まで手下で削り殺してくれる! ワシは絶対に見つからんぞ! |
ウサタロー |
ウオオオオ!卑怯すぎる! 正々堂々と戦え! |
イネガー |
嫌だね! それに……。 |
イネガー |
そんなことは、お前らの仲間に言うがいい! |
森沢江湖 |
あー、逃げちゃった。 |
酉原剛 |
エンゲルソバット! エンゲルスペシャル! |
ウサタロー |
急に手下が出てきたせいで、 追うどころじゃないゼ! |
村雨礼司 |
あいつの能力……少し特殊だな。 感情で高まるものと見た。 |
村雨礼司 |
ただでさえ都市を壊滅させるほどの奴が 皆野と同じ能力を……。 |
皆野祐樹 |
ええっ、あの人も燃えるの!? |
村雨礼司 |
そうじゃない。 皆野は炎を操る能力が感情で増加するタイプだ。 |
村雨礼司 |
イネガーは、手下怪人を召喚する能力が 感情で増加するんだろう。 |
ウサタロー |
レア能力だな! |
村雨礼司 |
それが理由で、 奴は例の組織に勧誘されたのかもしれないな。 |
酉原剛 |
エンゲルトルネードォ! |
森沢江湖 |
技の宝庫だねー。 |
村雨礼司 |
しかし、気になるな。 名雲。 |
名雲光 |
な、なに? |
村雨礼司 |
奴との関係を吐け。 |
名雲光 |
そんなもんねーし! 初対面だし。 |
村雨礼司 |
まあ、そうだろうな。 しかしなんらかの関係はあるはずだ。 |
村雨礼司 |
どうせ話すことになるんだ。 さっさと吐いておいたほうがいいぞ。 |
名雲光 |
なんもねーよ! こ、こっち来るな! |
ウサタロー |
なにやってるんだ村雨! 名雲、泣きながら逃げちまったぞ!? |
村雨礼司 |
えっ、あ……。 |
皆野祐樹 |
村雨くん、聞き方が怖いよ。 あれじゃあ仕方ないよ。 |
村雨礼司 |
俺はそんなつもりは……。 ただ、ハッキリさせておく必要があると思ったんだ。 |
酉原剛 |
しょーがねーなー。 さっさと捕まえようぜ。 |
酉原剛 |
そんで、礼司はちゃんと謝るんだぞ。 |
村雨礼司 |
わかった……。 |
皆野祐樹 |
そんなに遠くにはいけないと思うよ。 早く行こう! |
ウサタロー |
待ってろ、名雲! |
皆野祐樹 |
このままじゃまずいね。 名雲さんが一人でいることがイネガーに知られたら。 |
---|---|
森沢江湖 |
とらわれのヒロインになっちゃう! |
ウサタロー |
救出作戦! ウオオオオーッ、燃えるぜ! |
村雨礼司 |
それはどうだろうな。 しかし、捕まる危険性が高いのは確かだ。 |
村雨礼司 |
ただでさえ、 学園の生徒が狙われる事件が続いている。 |
村雨礼司 |
単独行動は危険だ。 |
酉原剛 |
礼司、お前それ……今週一番の「お前が言うな」だ。 |
村雨礼司 |
そうだな。 |
村雨礼司 |
とても恥ずかしい。 |
皆野祐樹 |
まあまあ。 でも、イネガーの反応は確かにすごかったよね。 |
村雨礼司 |
皆野もそう思うだろう? |
村雨礼司 |
俺は、名雲からイネガー攻略のヒントを 聞こうとしていたんだ。 |
村雨礼司 |
責めるつもりはなかった。 |
皆野祐樹 |
そこは、誰にでも聞かれたくないことはあるから。 村雨くんとお父さんのことみたいにさ。 |
村雨礼司 |
そうだな……。 |
森沢江湖 |
……そうか! イネガーは光ちゃんのお兄さんなんだよ! |
森沢江湖 |
村雨くんのときと一緒なの! |
ウサタロー |
な、なんだって!? |
森沢江湖 |
生き別れになったお兄さんが怪人になってたら ショックでおかしくなっても不思議じゃない! |
皆野祐樹 |
うん。 |
森沢江湖 |
兄妹対決だったんだ……! これは気を使わないとダメよ、村雨くん! |
村雨礼司 |
そ、そうか。 |
ウサタロー |
ウオオオオーッ! 名雲の気持ちを想像しただけで泣けるぜ! |
酉原剛 |
支えてやらねーとな! |
ウサタロー |
村雨、お前、名雲が怪人の妹だからって なんか言ったりするのはナシだからな! |
酉原剛 |
イタズラばっかしてるけどよ 光は根はいい奴なんだ! |
森沢江湖 |
そう!そうよ! |
村雨礼司 |
……わかった。 |
皆野祐樹 |
えーと。 とりあえず、手分けして探す? |
セクレト |
敵の動きに変化があったべ。 なんがかどご囲もうとしてらス。 |
皆野祐樹 |
あっ、向こうのほうが先に見つけたみたい。 |
酉原剛 |
やらせねーぜ? 光に捕らわれのヒロインとか似合わねーから! |
皆野祐樹 |
そうかもね。 そういうのは、森沢さんと……。 |
村雨礼司 |
なんだ、やめろ。 こっちを見るな! |
森沢江湖 |
さらわれ仲間だね! |
村雨礼司 |
これ以上、そんな嫌な仲間は増やせない。 さあ行くぞ。 |
名雲光 |
あーもー、そ、そんなに戦闘能力ないのに! |
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手下 |
悪い子はお仕置きするガー! |
名雲光 |
ど、どんな? |
手下 |
請求書を送るガー。 |
名雲光 |
えっ。 |
手下 |
さらに告訴状が出て、お前のところには 裁判所からの出頭命令が行くガー。 |
名雲光 |
えええっ。 |
村雨礼司 |
そんな現実路線のお仕置きをするな! ウォーターシュート! |
手下 |
ぐはっ! |
名雲光 |
あ、イケメン……。 |
村雨礼司 |
なにも言うな!俺が悪かった! |
名雲光 |
……うん。 |
森沢江湖 |
お兄さんが怪人だなんて、辛かったよね! でも大丈夫! |
酉原剛 |
お前には仲間がいるんだ! みんなで支えるぞ! |
ウサタロー |
ウオオオオーッ! 友情だァ! |
名雲光 |
は? |
森沢江湖 |
もしかしたら、小さかったころは すごくかっこよくて優しいお兄さんで! |
森沢江湖 |
光ちゃんの憧れで! でもそんなお兄さんはもういないの! |
森沢江湖 |
代わりに私たちがいるから、元気を出して! |
名雲光 |
え? |
ウサタロー |
ヤケを起こすんじゃない! お前には大切に思ってくれる人がいるんだ! |
ウサタロー |
だから戻ってこい! 悪の誘惑に負けるな! |
名雲光 |
なーなーイケメン。 これ、マジでどういうこと? |
村雨礼司 |
森沢がなんだか想像を膨らませてしまってな。 |
皆野祐樹 |
イネガーが、名雲さんのお兄さんだって……。 |
名雲光 |
ウケる。 |
森沢江湖 |
……違うの? |
名雲光 |
一人っ子だよ?お兄さんとかいないし。 ちょっとー。 |
森沢江湖 |
うわ。わわわわ~! 恥ずかしい! |
ウサタロー |
す、すまん名雲! オイラも早とちりしちまった! |
酉原剛 |
俺様、なんとなくそんな気がしてたんだよな。 |
ウサタロー |
あっ、ずるいぞ酉原! 皆野と村雨以外、みんなその気になってただろ! |
名雲光 |
ウケる~。 なんでそんな風に思うかなあ。 |
皆野祐樹 |
あ、でも名雲さん、だんだんキャラが戻ってきた。 |
名雲光 |
素はヤバいよね。ヒーローとしては。 まあ、なんかコント見て気が楽になったわ。 |
ウサタロー |
うう……あ、おい名雲! 新手が来てるぞ! |
手下 |
イネガー様の仇め! お縄につけ!お仕置きだガー! |
村雨礼司 |
ふん、雑魚どもめ。 チームが揃えば貴様らなど……。 |
名雲光 |
あのさー、それでね? イネガーのことなんだけど。 |
皆野祐樹 |
後にしようよ! いま襲われてるから! |
森沢江湖 |
やっと一息つける……かな? |
---|---|
酉原剛 |
手下怪人の包囲を抜けたぜ。 また本体を探せるな。 |
名雲光 |
それでさ、イネガーとウチの関係なんだけど……。 |
皆野祐樹 |
ああっ、あそこ! 車で避難しようとしてる人がいるよ! |
酉原剛 |
自家用車かよ。危ねえなあ。 |
村雨礼司 |
徒歩で警察か自衛隊の検問に行くよう 俺が注意してこよう。 |
森沢江湖 |
怪我してる人がいないか見てくるね~。 |
名雲光 |
ちょっとー。 ウチの話、マジで聞かなくていいの? |
ウサタロー |
義務感なら、別に話はしなくていいんだぜッ。 |
名雲光 |
マジで? |
皆野祐樹 |
僕たち、チームじゃないか。 話したくなければ別にいいよ。 |
皆野祐樹 |
名雲さんのこと、信用してるから。 |
名雲光 |
……乙女の秘密が多くても? |
皆野祐樹 |
乙女の秘密が多くてもだよ。 |
酉原剛 |
まあぶっちゃけ、それを聞いたところで やることが変わるとも思えねーんだよな。 |
酉原剛 |
イネガーをぶっとばすんだろ? |
名雲光 |
そりゃそうだけどさー。 トリ頭、デリカシーないな! |
村雨礼司 |
誘導、終わったぞ。 |
名雲光 |
イケメンもウチの話、聞かない方向? |
村雨礼司 |
別にいい。 イネガーを確実に倒せる方法だったら聞きたいがな。 |
名雲光 |
そういうのじゃないなあ。 |
村雨礼司 |
それと……名雲の悩みが楽になるのなら その話は聞いておくべきだ。全員でな。 |
皆野祐樹 |
今回は、最初から様子が変だったし。 心配してたんだよ。 |
森沢江湖 |
中学時代のキャラに戻すのかと思っちゃった。 |
名雲光 |
エコちゃん……ないない。 それだけはマジでないから。 |
名雲光 |
素でヒーローやれるほど、世の中甘くないよね。 |
皆野祐樹 |
えっ、そう? |
村雨礼司 |
わからん。 |
酉原剛 |
ヒーローらしくってやつじゃねーの? |
名雲光 |
まあ、それはいいの。 それじゃ話すけどさ……。 |
ウサタロー |
おい、さっきの車に乗ってた家族連れ 手下怪人に襲われてるぞ! |
酉原剛 |
なんだと!? |
村雨礼司 |
名雲、話はあとだ! まず、あの人たちを救出しないと! |
名雲光 |
マジでタイミング逃すと話せないなあ。 とりま、片付けよっか! |
酉原剛 |
いつもの感じに戻ってきたな! いいぞー。 |
皆野祐樹 |
そこの怪人さん!一般人を襲っちゃダメだよ! |
名雲光 |
中学生のころさー、超人能力が目覚めて。 「ひかたん」ってハンドルでハッキングしてたのね。 |
---|---|
ウサタロー |
お、おう。 |
名雲光 |
悪い会社の秘密のファイルとか 曝しまくってたんだけど、 |
名雲光 |
そのなかに「安穀米づくり協会」ってのがあって。 あのおっさん、そこの社長。 |
村雨礼司 |
待て。イネガーも中年男性なのか? |
森沢江湖 |
コンダインもそうだよね。 |
皆野祐樹 |
おかしいな。普通、三十路になるころには 超人能力はなくなってるはず……。 |
酉原剛 |
ファルコンマスクや学園長は 例外中の例外ってやつだからな! |
名雲光 |
たぶん、「怪人を作る」能力みたいなのを持ってる ボスっぽいヤバい奴がいると思う。 |
酉原剛 |
イネガーって、人間のときは どんな悪いことをしてたんだ? |
---|---|
名雲光 |
えーとねー 「ほれぼれ米」って知ってる? |
酉原剛 |
知らないな。 |
村雨礼司 |
酉原でもか? |
酉原剛 |
米はかなり調べてるぜ、俺様。 ブランド米で知らないってことは、地方限定品か? |
名雲光 |
そうそう。あのおっさんが作ってたのよ。 |
皆野祐樹 |
どんなお米だったの? |
名雲光 |
味は普通。栄養価も普通。 |
ウサタロー |
普通かよッ! |
名雲光 |
でも、いちど食べると惚れこんじゃうんだよね。 それで、ほかのお米をけなし始めるの。 |
村雨礼司 |
精神を支配する米だと!? 邪悪すぎる……。 |
名雲光 |
あのころの米クラスタ、マジで荒れてて。 変だと思って調べたんだよね。 |
森沢江湖 |
それは確かに荒れそう……。 お米って、こだわる人多いもんね。 |
名雲光 |
超人能力絡みじゃなかったけど、 そういう悪事を見つけてさ。 |
村雨礼司 |
……不法行為だとは思うんだが、 ハッキングも役立つことがあるんだな。 |
名雲光 |
いつも役立ってるっしょ? もー。 |
酉原剛 |
なにかの間違いで食っちまってたらと考えると ゾッとするな。 |
名雲光 |
まだ試験段階だったからね。 こっちのヒーローと警察に連絡したんだ。 |
名雲光 |
田んぼ、全部焼かれてたかなー。 |
皆野祐樹 |
……僕、それ、食べたことある。 |
ウサタロー |
なんだって!? |
皆野祐樹 |
お父さんが食品関係でさ。 サンプルを持って帰ってきたんだよね。 |
皆野祐樹 |
そこから二カ月くらい、 飲食店で白米をけなしまくった覚えが……。 |
村雨礼司 |
嫌な客だな。 |
皆野祐樹 |
しかも家族全員。 |
村雨礼司 |
……名雲がいて、よかったな。 |
皆野祐樹 |
いつのまにか、「ほれぼれ米」派じゃなくなったけど そうか……あれはそういう米だったんだね。 |
ウサタロー |
効果が切れるやつでよかったな! |
名雲光 |
イネガーになる前のおっさんは、 日本の食卓を支配するとか言ってたよ。 |
皆野祐樹 |
あのころ、SNSのアカウントとか持ってなくて 本当に良かった。 |
森沢江湖 |
お父さんやお母さんは、持ってたんじゃない? |
皆野祐樹 |
……! |
村雨礼司 |
会社で人の弁当にケチをつけたりした可能性もある。 いや、会社全員「ほれぼれ米」派になっていたのか? |
皆野祐樹 |
……!! |
酉原剛 |
つらいなあ。それ。 |
ウサタロー |
イネガーが全部悪いんじゃねーか! |
皆野祐樹 |
許せない……許せないぞ! |
村雨礼司 |
そうだな。 |
ウサタロー |
とはいえ、私怨であまり盛り上がるなよ、皆野。 お前はヒーローなんだぜッ! |
皆野祐樹 |
わ、わかった……! |
皆野祐樹 |
イネガーが名雲さんに怒っていた理由はわかったよ。 |
---|---|
名雲光 |
うん。 |
皆野祐樹 |
でも、知りたいことがもう一つあるんだ。 森沢さんが言ってた「中学生のときのキャラ」って? |
名雲光 |
うっ。 |
森沢江湖 |
あ、それはね~。 光ちゃんのキャラは、高校生からなの。 |
村雨礼司 |
なんだと……!? |
酉原剛 |
高校デビューか。 よくあるよな。 |
名雲光 |
やー、ちょ、マジもう……。 恥ずいんだけど? |
森沢江湖 |
あのころの光ちゃんもかわいかったよ? あだ名が「ひかたん」でね。 |
皆野祐樹 |
ひかたん……。 |
酉原剛 |
昔のハンドルと同じだな。 |
森沢江湖 |
髪は黒くしてたよね? 緩めの三つ編みのときが多かったよね~。 |
名雲光 |
あー、まーねー。 |
村雨礼司 |
三つ編み。 |
酉原剛 |
想像つかねーなあ。 |
森沢江湖 |
シックな感じのメガネで、 メイクは薄かったかな?してなかった? |
名雲光 |
ナチュラルかな~。 |
皆野祐樹 |
メガネ……いまは? |
名雲光 |
コンタクト。 |
皆野祐樹 |
な……どうして! |
ウサタロー |
なんだ、なんだ? |
皆野祐樹 |
黒髪三つ編みメガネ! どうしてやめちゃったの!? |
皆野祐樹 |
なんでそんなことを! いや、いまからでもメガネに! |
皆野祐樹 |
メガネは最高ですよ! |
酉原剛 |
なに言ってるんだ、祐樹。 |
村雨礼司 |
落ち着け。 |
皆野祐樹 |
これが落ち着いていられるか! |
名雲光 |
みなのん、キモい。 |
皆野祐樹 |
うぐっ。 |
森沢江湖 |
そういうの好きだったんだー。あはは。 急に食いつくから、びっくりしちゃった。 |
皆野祐樹 |
まあそのー、僕って読書好きな弱気キャラなので そういう人にあこがれていたというか。 |
皆野祐樹 |
決してキモくはないよ。 |
村雨礼司 |
……うーん。 |
森沢江湖 |
読書といえば光ちゃん、よく休み時間に一人で 文庫本読んでたよね? |
名雲光 |
あ、うん。 やってた、やってた。 |
森沢江湖 |
なんだか字が小さくて、難しそうなやつ。 カバーがついてないの。 |
皆野祐樹 |
くっ……最高だ、最高すぎる……。 |
名雲光 |
いや、みなのん、キモすぎるから! |
皆野祐樹 |
はあ……なんで僕は……。 青春を棒に振った感が……。 |
名雲光 |
ウケていいものか迷うなー。 ま、残念だったね。 |
皆野祐樹 |
残念どころじゃない……! 面影はどこに? |
名雲光 |
もう忘れたしー。 過去は過去なのさ。 |
皆野祐樹 |
うううううう。 |
セクレト |
敵の反応があるんてが。 いつまでも馬鹿な話どごしていねで、戦え。 |
皆野祐樹 |
ああー、なんてこったー。 |
---|---|
ウサタロー |
皆野もちょっとキャラが変わってるぞ。 村雨の言う通り、落ち着けよ。 |
皆野祐樹 |
黒髪三つ編みメガネ文学少女が実在したんだよ……。 そして、もういないんだ……。 |
皆野祐樹 |
こんなショックなことがありますか!? |
酉原剛 |
祐樹、俺様にわかるように言えよ。 どのくらいのショックなんだよ。 |
皆野祐樹 |
学食で大盛り禁止。 |
酉原剛 |
わかった。もう死ぬ。 お前も死ぬなら止めない。 |
ウサタロー |
そんなにかッ!? |
名雲光 |
それに飽きていまのキャラにしてんだからさー。 |
名雲光 |
あんまり昔のほうがよかったとか言われると ムカついちゃうかもよ。 |
皆野祐樹 |
あっ。 ご、ごめん。 |
名雲光 |
あはは、ウケる。 いいよー、今度昔の恰好してみる。 |
皆野祐樹 |
まことでござるか!? |
名雲光 |
……おい。 |
皆野祐樹 |
ああっ、ごめん。つい。 |
ウサタロー |
皆野、そんなに……。 |
森沢江湖 |
祐樹くんが冷静でいられなくなるので、 光ちゃんがキャラを戻すのはよくないと思います。 |
村雨礼司 |
俺もそう思う。 |
酉原剛 |
そんな殺生な! 大盛り禁止なんだぞ!? |
村雨礼司 |
人間をそんな、髪とかメガネとかの属性で見るな。 失礼だ。 |
皆野祐樹 |
いや、僕はそんな……。 |
村雨礼司 |
皆野は名雲のことが好きなのか? |
皆野祐樹 |
!? |
名雲光 |
は? |
皆野祐樹 |
……あー、そうじゃないかも。 そうじゃないです。 |
名雲光 |
おい! |
皆野祐樹 |
そもそも、僕はあまり友達がいなかったから 理想の女の子への憧れが強すぎたのかもなあ。 |
名雲光 |
あーもー。 はいはい。 |
皆野祐樹 |
メイドさんが好きな人は、メイドカフェに行くよね。 友達にメイド服を着てくれとか言わないよね。 |
村雨礼司 |
……まあ、そうだな。 |
森沢江湖 |
そういうわけで反対。 |
名雲光 |
やんないから。 |
皆野祐樹 |
よーし、イネガーを……。 |
酉原剛 |
メイド服を着てくれってやつだけどよー。 |
名雲光 |
なによ、トリ頭!? そこで蒸し返すの!? |
酉原剛 |
彼女になら言うんじゃねーの? いや、一般的にな。 |
ウサタロー |
なんか、酉原が言うと違和感あるな。 |
酉原剛 |
なんだとー。 |
名雲光 |
だからナシなんだって。 |
森沢江湖 |
昔の光ちゃんばっかりモテて悔しい! |
名雲光 |
ほら、収拾つかなくなっただろー! トリ頭、なんとかしろ! |
酉原剛 |
えーと、えーと……! 敵、倒そうぜ。 |
村雨礼司 |
ああ。 ほら行くぞ、皆野。 |
皆野祐樹 |
うん。なんかごめんね、みんな……。 |
森沢江湖 |
モテたい。 |
---|---|
ウサタロー |
……なに言ってるんだ、森沢? |
森沢江湖 |
光ちゃんのモテ具合を見て、 私の嫉妬心に火がつきました。 |
名雲光 |
えー、みなのんにモテたいの? |
皆野祐樹 |
そ、そうなの? |
名雲光 |
いいよ別に。ゆずるよ。 |
皆野祐樹 |
な……!! |
酉原剛 |
おおー、よかったな、祐樹。 |
皆野祐樹 |
え……!? |
森沢江湖 |
(あれ?) |
森沢江湖 |
(この展開は……!変なこと言っちゃった!) |
森沢江湖 |
(どうしよう、どうしよう、えーと……!) |
森沢江湖 |
……そうじゃなくて、 もっと一般的にモテたいというか。 |
皆野祐樹 |
そ、そうなの……。 |
名雲光 |
一般的にだったらモテモテじゃない、エコちゃん。 よく誘拐されるし、企業からもウケいいし。 |
酉原剛 |
このあいだも、どこかの重役って人が来てたよな。 |
名雲光 |
高そうなおみやげ持ってたよねー。スカウト? マジで羨ましい。 |
森沢江湖 |
ああいうの、断るの大変なのよ? 賄賂になるから、もらっちゃいけないルールだし。 |
村雨礼司 |
その通りだ。 |
森沢江湖 |
……って、そうじゃなくて。 もっと本当の自分でモテたいっていうか。 |
森沢江湖 |
回復能力とは関係ないところで 魅力的だって思われたい! |
ウサタロー |
……お、おう。 |
名雲光 |
ぜーたくものー。 |
森沢江湖 |
だって、私は能力のオマケじゃないのよ。 いつも、そのことばっかりで! |
酉原剛 |
確かに、回復に頼りすぎてるとこはあるかもなー。 すまねーな。 |
村雨礼司 |
有能な超人能力者が便利に使われすぎ、 嫌気がさして引退する例はある。 |
村雨礼司 |
それは困るから、ここは俺が森沢を褒めよう。 回復能力を差し引いても、お前は魅力的だ。 |
名雲光 |
なにその褒めかた!? 宣言してからじゃダメだって! |
森沢江湖 |
……えへへへ。 |
村雨礼司 |
効果はあったようだぞ。 |
皆野祐樹 |
あ、じゃあ、僕も森沢さん、可愛いと思うよ。 |
森沢江湖 |
そ、そう? あ、ありがとう。 |
名雲光 |
便乗すんな! |
酉原剛 |
礼司はともかくよー、祐樹はマジで言ってるぜ。 ここでは便乗かもしんねーけどな。 |
ウサタロー |
ん? |
酉原剛 |
こないだ、クラスの女子で誰が可愛いって話を……。 |
皆野祐樹 |
うわあああ! |
名雲光 |
ウケる。 マジ男子。 |
酉原剛 |
祐樹が、聞いてもないのに始めてな。 俺様はそういうの、よくわからないんだが……。 |
皆野祐樹 |
やめて! |
ウサタロー |
酉原、やめてやってくれッ! |
酉原剛 |
あ?じゃあ終わりだ。 この話はなかったということだな。 |
村雨礼司 |
皆野……話す相手が……。 |
森沢江湖 |
ふむふむ。 なるほどー。 |
森沢江湖 |
私、気づかなかっただけで、けっこうモテてた? |
名雲光 |
そういうこと。 あえて言わなかったけどね。あえて。 |
森沢江湖 |
ふふふ。 じゃあいいや。もう大丈夫! |
皆野祐樹 |
よ……よかった、ね……。 |
森沢江湖 |
どこまで行っても廃墟……。 |
---|---|
名雲光 |
ウチがイネガーを作ったようなもんだし、 ちょっとへこむよね。 |
酉原剛 |
ああ? |
名雲光 |
あのまま放っておけばさー、 こんなことにならなかったでしょ。 |
村雨礼司 |
名雲。未来はわからない。 だから善と信じたことをやるしかないんだ。 |
名雲光 |
うーん。 |
村雨礼司 |
みんなそうしている。皆野も、俺の父もな。 だから迷うな。 |
名雲光 |
ありがとイケメン。ちょっと元気出た。 |
皆野祐樹 |
僕はけっこう迷うタイプだけどね。 |
村雨礼司 |
なんだよ。 せっかくいい話をしたのに。 |
名雲光 |
街頭カメラからいくよ。 ポンキューちゃん、よろしくー。 |
---|---|
皆野祐樹 |
これで、イネガーは見つかるかな? |
名雲光 |
時間はかかるだろーけどね。 相手が体力切れ狙いだから厳しいかも。 |
村雨礼司 |
では、休憩して体力を温存するか? しびれを切らして出てくるかもしれない。 |
ウサタロー |
それはダメだぜッ、村雨! 手下怪人が周りの街にあふれ出しちまう。 |
ウサタロー |
ヒーローがみんな手一杯なんだ。 オイラたちだけ休むわけにはいかない。 |
村雨礼司 |
厄介だな。 名雲の能力に賭けるしかないか。 |
皆野祐樹 |
復調したみたいだし、大丈夫だよね。 |
名雲光 |
あーもー、そりゃマジ平気。 ヤバいくらい元気。 |
酉原剛 |
俺様たちは雑魚狩りをしながら、 イネガーが見つかるのを待てばいいんだな。 |
森沢江湖 |
疲れてきたら回復するからね。 ここは自然があまりないから、効果薄いけど。 |
酉原剛 |
それもあったか。 そういや店も軒並み閉まってるからなあ。 |
酉原剛 |
俺様のパワーの源も補給できないぜ。 |
名雲光 |
マジでだいじょぶだって。 体力切れ待ちとか、そんな不確実な手はないから。 |
村雨礼司 |
……どういうことだ? |
名雲光 |
OK、ここからマジ話ね。 |
名雲光 |
この町に、東北以外から出動してる ヒーローのリストがあるから出すね~。 |
皆野祐樹 |
空中にリストが……VRだ! |
村雨礼司 |
ARじゃないのか? |
名雲光 |
どっちでもいいんだけどさ。 |
名雲光 |
ここには全国から、ある特徴を持つヒーローが 全員集められてるの。なんだと思う? |
酉原剛 |
強い。 |
名雲光 |
はい不正解。 正解は、「条件次第で無限に強くなれる人」でした。 |
酉原剛 |
俺様みたいな、か? |
村雨礼司 |
酉原、無限に食べられるのか? |
酉原剛 |
あ、それは違うな。前もそんな話をした気がするぜ。 そうすると……祐樹か。 |
皆野祐樹 |
僕? |
名雲光 |
そう。感動したり、怒ったり、失恋したり……。 気持ち次第でパワーが変わる超人能力者ね。 |
森沢江湖 |
失恋すると強くなる人って、 人生辛そう……。 |
村雨礼司 |
不安定だな……出動前にそのあたりで告白するのか? |
名雲光 |
いや、彼女は本気じゃないとダメで…… じゃなくて。次はこっちの重傷者リストね。 |
皆野祐樹 |
あ、一致してる。 みんなひどい怪我で、数か月は戦闘不能? |
名雲光 |
ね、ヤバいよね。 たぶんこれが敵の組織の狙い。 |
村雨礼司 |
不安定だが爆発的な戦闘能力を持つものの、排除? どういうことなんだ……? |
酉原剛 |
話の途中で襲ってくるなんて、 無粋な奴らだぜ。 |
---|---|
名雲光 |
ダムデスあたりからさあ、 みなのんのほうが、エコちゃんより狙われてたっしょ。 |
森沢江湖 |
あ、そうね。 祐樹くんのほうを優先して誘拐しようとしてたかな。 |
皆野祐樹 |
それって僕が弱いからじゃないの? 洗脳されて、すぐ激怒する人にされるのかなーとか。 |
皆野祐樹 |
そんなことを考えてたなあ。 |
酉原剛 |
そんな祐樹はイヤだなー。 |
森沢江湖 |
お前、メガネをかけていないな! 許さん!地球を滅ぼす!みたいな? |
皆野祐樹 |
まあ……その……。 |
酉原剛 |
イヤすぎる。 祐樹、そんなことで怒るなよ。 |
皆野祐樹 |
仮定の話だからね!? |
村雨礼司 |
ともかく、皆野の確保が 組織の優先目標だったということだな? |
名雲光 |
たぶんね。 確保して無力化……分析の材料かな?たぶん。 |
皆野祐樹 |
ええー!? さんざんレア能力とかいって持ち上げておいて!? |
名雲光 |
必死すぎ~。 たぶん、だからね? |
皆野祐樹 |
はあ……。 |
村雨礼司 |
俺は、皆野を吊り上げるエサだったということか。 |
酉原剛 |
ちょっと待てよ。ファルコンマスクもか? |
名雲光 |
メインの目標は、 あいつらが言ってた通りだと思うけどね。 |
名雲光 |
サブの命令で「ライオンハートを捕まえろ」って 言われてたと思うよ。 |
酉原剛 |
まあ、確かに……礼司は学年、いやヒーロー学園でも トップの強さがあるからな。 |
酉原剛 |
充分、倒す価値があるだろうな。 |
村雨礼司 |
嬉しくない誉め言葉だな。 ファルコンマスクだってそうだろう。 |
ウサタロー |
結局、なんで皆野とか、 皆野と同じような超人能力者を集めて倒すんだ? |
ウサタロー |
皆野には悪いけど、不安定なんだろ? |
名雲光 |
あのね、ウチの考えではねー。 |
セクレト |
すげ速さで近づいてくる敵の群れがるス。 戦闘態勢どごとってけれ。 |
名雲光 |
……あー、やっぱ? 続きはあとでー。 |
村雨礼司 |
あと、どれだけ倒せばいいんだ? |
名雲光 |
まだわかんない。 がんばれ、みんな! |
ウサタロー |
ウオオオオ! 出口は見えなくても、倒せば倒すだけ他が楽になる! |
ウサタロー |
行くぜッ! |
森沢江湖 |
負けないよ! お注射、しちゃうからね! |
酉原剛 |
正義の翼は、必ず舞い降りる! |
村雨礼司 |
かなり消耗しているぞ……。 酉原の食糧も残り少ない。 |
---|---|
酉原剛 |
避難する人に、けっこう渡してるからな。 このままだとヤベーぞ。 |
皆野祐樹 |
ハッキングって、意外と時間かかるんだね。 |
名雲光 |
ポンキューちゃんのスキャンは市内の80%まで完了。 みんなのマップを更新するね。 |
名雲光 |
怪人、どんどん動いてるじゃん。 セクレト、反応おそーい。 |
セクレト |
恐縮だス。 |
名雲光 |
まだイネガーのアジトは見つかってないから、 スキャンしてないほうに行こうよ。 |
皆野祐樹 |
なるほど。 そっちのほうにいるんだね。 |
森沢江湖 |
光ちゃん、頼りがいあるー。 |
名雲光 |
今回はヤバいよ。 ウチ、冴えまくってるし。 |
村雨礼司 |
それで、どうして組織は不安定な超人能力を狙う? |
名雲光 |
いやー、ここから先は推理だし。 外したらマジでかっこ悪いから黙ってるわ。 |
村雨礼司 |
……頼む。 聞かせてくれ。 |
名雲光 |
そこまで言うんだ? |
村雨礼司 |
組織はこんな廃墟を作り出すほど強力だ。 そして、今回は奴らの作戦が成功しているんだろう? |
村雨礼司 |
もう猶予はない。 推測でもいいから、組織の狙いについて教えてくれ。 |
名雲光 |
たぶんね、不安定だからこそ、なんだ。 |
村雨礼司 |
……それはどういう……。 |
ウサタロー |
あっ、また手下怪人だぜ! ビルを……根元を壊してる!? |
皆野祐樹 |
そんなことしたら、自分たちも潰れるじゃないか! ねえ、君たち! |
手下 |
ライオンハートが来たガー。 作業中断!優先排除! |
皆野祐樹 |
ビルを壊すのをやめ……。 |
村雨礼司 |
やめたようだぞ。 代わりに、こちらを襲ってきたがな。 |
名雲光 |
ウケる。 好都合だね。 |
皆野祐樹 |
ビルが倒れそうな方向を連絡するよ。 それで、救助を急いでもらおう。 |
酉原剛 |
で、手下をブッ倒せばいいわけだな。 簡単だぜ。 |
ウサタロー |
敵を飛ばしてビルに当てるなよッ、酉原! かなり不安定だぜ! |
酉原剛 |
マジか。 もしかして地面を揺らすのもダメか? |
村雨礼司 |
できれば避けたほうがいいな。 |
酉原剛 |
ど、どうすりゃいいんだ? |
村雨礼司 |
掴んで、締めろ。 地味だが、ここに観客はいないからな。 |
酉原剛 |
うう、ストレス溜まるぜ……。 |
手下 |
ヒーローは難儀なものだガー。 正義の味方は、できないことが多いガー。 |
酉原剛 |
うるせー! それでも負けないからな! |
酉原剛 |
ぜはー。 どうだあ、勝ったぜ! |
---|---|
酉原剛 |
……腹、減った。 |
森沢江湖 |
回復する?……ああっでも、 自然がないから、あまり生命力が集まらない……。 |
皆野祐樹 |
いったん学園に帰れればなあ。 回復してから再出動できるのに。 |
ウサタロー |
学園の外に転送装置を置くのは セキュリティ上よくないってことになってるんだぜ。 |
皆野祐樹 |
確かに、怪人に奪われたりすると厄介だよね。 |
ウサタロー |
現にシャモジンが持ってたしなッ。 |
村雨礼司 |
あれか。 どこから流出したものかは調査中だ。 |
皆野祐樹 |
うーん、なにかいい方法はないかな……。 |
酉原剛 |
心配すんなよ祐樹。 俺様なら、あと少しは持つ。 |
村雨礼司 |
名雲、イネガーはどこだ!? |
名雲光 |
ふっふっふ。マジでお待たせ。 手下の出現パターンからアジトを見つけたよ。 |
村雨礼司 |
よし、向かうぞ! |
酉原剛 |
助かったぜ……。 |
名雲光 |
こんなの、普段のセクレトなら五秒でしょ。 機能低下、ヤバいとこまで来てるんじゃないの? |
セクレト |
恐縮だス。 |
セクレト |
余計なキャラクターどご付加されて 処理能力が落ちてるス。 |
名雲光 |
ウケる。 |
村雨礼司 |
まあ、見つけられたんだから、いいさ。 解除にも時間がかかるという話だったからな。 |
名雲光 |
例によって、ガードはヤバいくらい厳重だね。 正面突破は結構キツいと思うよ? |
皆野祐樹 |
それでも正面から行こうよ。 今回は、怪人を減らすのに意味があるから。 |
名雲光 |
あれ、みなのん……? いつもなら、そうじゃないよね? |
皆野祐樹 |
さっきの手下怪人もそうだけど、 今回は、話を聞いてくれる敵がいない。 |
皆野祐樹 |
放っておけば被害は拡大するし…… 僕は覚悟を決めたよ。 |
酉原剛 |
お、いい顔だな! そういう時の祐樹は強いぜ。 |
村雨礼司 |
今回は全員一致だな。 できるだけ倒しながらアジトに突っ込むぞ。 |
名雲光 |
マンションの、高めの階だよ。 エレベーターは止まって、階段は壊されてる。 |
皆野祐樹 |
どうやって出入りしてるの? |
名雲光 |
手下は落っこちてるだけで、戻ってない。 イネガーはよくわかんないけど、ジャンプかな。 |
皆野祐樹 |
うーん、困ったな。 |
酉原剛 |
イネガーがジャンプで出入りできるくらいなら 俺様がみんな投げ上げてやるぜ。 |
酉原剛 |
そのあと、俺様は普通に登る。 |
森沢江湖 |
やったあ!さすがパワーキャラ! 酉原くん、お願いね。 |
名雲光 |
狙い、外したりしないでよね!? |
皆野祐樹 |
投げられた先ではどうするの? |
村雨礼司 |
俺が先に行く。水を集めて盾にして衝撃を分散する。 濡れてしまうが、死ぬよりはいいだろう。 |
酉原剛 |
決まりだな! おおらぁあ! |
ウサタロー |
ここがイネガーのアジトか! |
---|---|
酉原剛 |
いねーな? |
森沢江湖 |
でも「極秘書類」って書いてある箱があるよ。 |
名雲光 |
覗いてみるしかない! |
セクレト |
当面の任務に集中しては? |
名雲光 |
あのさあ。 |
名雲光 |
それ言い出すのって、あんたが黒幕だからでしょ? なんとなくわかってたんだけどさ、マジウケるよね。 |
セクレト |
……。 |
ウサタロー |
セクレト? |
名雲光 |
オフラインになったわ。ウケる。 |
皆野祐樹 |
セクレトが怪人を作ってたの!? |
名雲光 |
詳しい話はあとでね。 |
村雨礼司 |
学園に帰還するべきでは……。 |
名雲光 |
そうなんだけど、まずはイネガーを倒してからでしょ。 |
イネガー |
さあて、イネガー様登場だァ。 オメーら、生きては帰さないからな。 |
---|---|
村雨礼司 |
やはり、俺たちを倒す使命があるのか。 いや、皆野を……だな? |
イネガー |
そうだァ。 あとは、個人的な恨みを晴らさせてもらうぞ。 |
イネガー |
サイバーフォックス…… 楽に死ねると思うなよォ! |
名雲光 |
いやもう、お前がどうとかいう次元の話じゃないし。 さっさとやられてくれると、マジで助かるんだけど。 |
イネガー |
ナメおって。 あのお方からいただいた力、受けてみろォ! |
森沢江湖 |
きゃあ! |
皆野祐樹 |
くっ……さすがに、強い! |
名雲光 |
セクレトもイヤなことするよねー。 もっとウチに時間があれば止められたのに。 |
イネガー |
ふん、気付いていたか。 いかにも、セクレト様こそ我らの首領! |
イネガー |
お前たちの情報は筒抜けだったのだァ! |
皆野祐樹 |
どうして、そんなことを……! |
イネガー |
怪人による世界征服のために決まっておろうがァ。 |
イネガー |
ヒーローどもを皆殺しにし、 新世界秩序を築くのだ。主食は「ほれぼれ米」でな。 |
名雲光 |
いやー、どうかなあ。 |
酉原剛 |
そんな米、だれが食うか。 |
イネガー |
なんだとォ? ワシの米の素晴らしさを理解しないとは! |
イネガー |
お前、工作員だな? そうでなければ説明がつかん!米アンチめ! |
イネガー |
ワシの作った米は最高なのだ! それを信じないものは、全員悪い子だ! |
イネガー |
殺す!殺す殺す殺す! |
村雨礼司 |
手下の増えるペースが上がったか。 ここまで来たら仕方ないがな。 |
酉原剛 |
なんだよ米アンチって……大好きだっての。 |
皆野祐樹 |
イネガーさん、気は進みませんが…… 破壊行為をやめないなら、倒しますよ! |
イネガー |
やってみろォ! |
イネガー |
ワシの超人能力と貴様のショボい能力の どちらが強いか、勝負してやるわァ! |
皆野祐樹 |
い、行きます! |
森沢江湖 |
ファーストエイド、援護しちゃうよ! |
村雨礼司 |
ストライカー、交戦する。 |
酉原剛 |
エンゲルマスクは腹が減った。 でも頑張るぜ! |
名雲光 |
どーよ、ウチの友達は。 みんな強いんだよ。 |
イネガー |
知ったことかァ! うおおおおお! |
ウサタロー |
ぐっ、ビルの床が……これ、戦ってたら抜けるぜッ!? |
皆野祐樹 |
みんな、気をつけてね! |
ウサタロー |
うわああッ! |
---|---|
森沢江湖 |
あいたー。 |
村雨礼司 |
やはり床が抜けたか。 イネガーはどこだ? |
酉原剛 |
もう一階下かもしれねーな。 |
名雲光 |
……あー、でもマジでショックだわ。 推測、当たっちゃったなー。 |
皆野祐樹 |
セクレトが……組織のボス……。 |
ウサタロー |
オイラたち、ずっとあいつに騙されてたんだな。 |
村雨礼司 |
どこで気付いた? |
名雲光 |
セキュリティが堅すぎたあたりかな。 どんなに頑張っても、会話より奥に行けないし。 |
名雲光 |
人間が組んだものなら、ウチはどんなものでも破れる。 それが効かなかったあいつは……。 |
酉原剛 |
宇宙人か。 |
名雲光 |
そうじゃなくて、自己改良してるAIね。 人間の制御を離れてるから、マジでヤバい。 |
名雲光 |
組織の怪人がこっちの動きや情報を把握してたのも、 転送装置が流出してたのも……。 |
村雨礼司 |
奴が組織そのものだったから、か。 ナビゲートも、奴の計画に沿ったものだったんだな。 |
名雲光 |
妙にまわりくどかったりしたでしょ。 |
名雲光 |
それにイケメン、セクレトと自分しか知らない場所で 誘拐されたじゃんよ。 |
村雨礼司 |
そういえばそうだ……クソッ! |
名雲光 |
ウチがイケメンを北海道で見つけたの、 学園の通信ログを辿ったからだよ。 |
名雲光 |
カニクラブのアジトに指示を残してたのは セクレトっぽかったしね。 |
村雨礼司 |
……勝てるのか? |
名雲光 |
普通に考えて、無理。 |
ウサタロー |
ええっ!? |
名雲光 |
セクレトは、ヒーローのデータを演算して シミュレーションを何回も走らせて…… |
名雲光 |
絶対に勝てるようになってから、 行動を起こしてるはず。 |
酉原剛 |
負け、確定なのか? そりゃないぜ! |
名雲光 |
普通に考えたらね。 でもほら、みなのんの事があるじゃん? |
皆野祐樹 |
どういうこと? |
村雨礼司 |
そうか。 戦力を予測できないのか! |
名雲光 |
そうそう。 だから狙われてたわけよ。 |
酉原剛 |
わからん。 |
森沢江湖 |
祐樹くんは感情が爆発すると無限に強くなるから…… セクレトさんの計算に入れられないのね? |
名雲光 |
うん。だから弱くても狙われたんだと思うよ。 ウケる。 |
皆野祐樹 |
ウケ……られないなあ。他の無限に強くなる人、 みんな怪我しちゃったんでしょう? |
ウサタロー |
さっき、そういうリストが出てたぜッ! |
皆野祐樹 |
だよねえ。つまり……つまり、 僕次第で勝つか負けるか決まるってこと? |
名雲光 |
せいかーい。 |
皆野祐樹 |
うわあああ。自信ないよ……。 イネガーにだって勝てるかどうかわからないのに。 |
村雨礼司 |
セクレトがすべてを計算しているのなら、 ここでの戦いの勝ち目も、ゼロになっているはずだ。 |
名雲光 |
そこも、みなのん次第。 ウケるよね。 |
皆野祐樹 |
ウケられないよ! |
村雨礼司 |
いや、面白いな。 |
皆野祐樹 |
え? |
村雨礼司 |
セクレトの奴は、皆野の成長速度も見誤ったのか。 これは勝てるぞ。 |
森沢江湖 |
だよね。 |
酉原剛 |
よくわかんねーけど、 俺様の相棒が負けるわけないだろ。 |
ウサタロー |
オイラも信じてるぜ。 |
皆野祐樹 |
みんな……! |
イネガー |
いたなァ、悪い子ども。 悪事の相談は済んだかァ? |
ウサタロー |
すごいプレッシャーだぜ。 こいつのパワーも上がってるのか? |
皆野祐樹 |
ま、負けないぞ。僕は負けない! |
イネガー |
チイイイイ! 予想を超えて、よく戦う悪い子だァ! |
---|---|
村雨礼司 |
いいのか悪いのか、はっきりしろ。 |
名雲光 |
おっさんさー、どうやって セクレトに超人能力をもらったわけ? |
名雲光 |
なんか、人選が謎だよね。 |
イネガー |
いいだろう、冥土の土産に教えてやろう。 |
森沢江湖 |
あっ、教えてくれるんだ……。 |
イネガー |
セクレト様は人間をハッキングして 超人能力を与えることができるのだァ。 |
イネガー |
ワシは天才だが一般人だったのだよォ。 それが、いまではこの通り! |
村雨礼司 |
な、なんだと? |
村雨礼司 |
それじゃあ、敵は無限に増えるってことなのか……。 |
イネガー |
そうではないなァ。残念ながらァ。 適合性が必要なのだよォ! |
皆野祐樹 |
ど、どんな? |
イネガー |
ワシもよくわかってはおらんがな。 単純な世界モデルがどうとか言っておったわァ。 |
ウサタロー |
つまり、バカしか怪人にできないのか。 |
酉原剛 |
それは安心だな! |
イネガー |
あァ?バカって言うほうがバカなのだァ! |
村雨礼司 |
これは間違いないな。 知性となにか関係がある……。 |
名雲光 |
組織の怪人が無限に増えないとしても、 もうこれ以上はいらないんだろうね。 |
名雲光 |
計算してるわけだし? |
イネガー |
よくわからんことをゴチャゴチャとォ! 圧倒的パワーにねじふせられて、死ね! |
名雲光 |
残念だけどさ、おっさん。 マジでそれはナシだわー。 |
名雲光 |
犯罪やったあげくに逆恨みをこじらせて、 運良く怪人になれたから世界に八つ当たり? |
名雲光 |
ダセーんだよ。 |
イネガー |
おおお、オメー! 元はといえば、オメーのせいだろうがァ! |
名雲光 |
ウケる。 まあ、その通りだけどさー。 |
名雲光 |
さらに元をたどれば、おっさんが悪だからじゃね? |
名雲光 |
正義のハッカー、サイバーフォックスちゃんは やりかけの仕事が嫌いなんだよね。 |
名雲光 |
というわけで、おっさん。 マジで倒すから。 |
イネガー |
イイイイイ!? なんなんだ、なんだオメーは! |
名雲光 |
わかんなくていーよー。 ジェネレーションギャップだよ。 |
皆野祐樹 |
やろう。 街の破壊を、止めよう。 |
村雨礼司 |
あとの予定が詰まっているからな。 |
名雲光 |
ウチだって、やるときはやるんだからね。 見てなよー! |
皆野祐樹 |
援護するよ! |
名雲光 |
はー、さてさて。 |
---|---|
ウサタロー |
さっきから、ずっとヒーロー学園と 連絡がとれないんだぜ。 |
名雲光 |
セクレトが組織のボスだってバレたしね。 なにかしてるはず。 |
皆野祐樹 |
じゃあ、早く戻らないと。 みんなは救助と避難した人のケアに回って。 |
ウサタロー |
皆野、なにを言ってるんだ!? |
皆野祐樹 |
セクレトの計算できない要素って、 僕だけなんでしょ? |
皆野祐樹 |
なら、僕だけでも……。 危険そうだし……。 |
森沢江湖 |
なに言ってるの。もっと頼ってよ。 怖いの、見え見えなんだからね。 |
森沢江湖 |
もちろん一緒に行くわよ。 ここには他の回復能力者もいるし。 |
村雨礼司 |
皆野だけで、どうするつもりなんだ。 俺が必要だろう。 |
村雨礼司 |
安定した戦力がなければ、そもそも セクレトと勝負するところまで、たどり着けない。 |
皆野祐樹 |
みんな……! |
名雲光 |
ウチも一緒だよ。 トリ頭は? |
酉原剛 |
聞くまでもねーだろ。 学園っていうか、世界の危機なんだろ? |
皆野祐樹 |
あ、ありがとう……。 |
ウサタロー |
オイラを忘れるなよな。 一緒にヒーロー学園を救おうぜ。 |
皆野祐樹 |
う、うん。 |
名雲光 |
でも、マジで注意してね。 |
名雲光 |
セクレトが勝手に組織を作って、 ヒーローを倒そうとしてるのはわかったけど……。 |
名雲光 |
なんで、そんなことをしてるのか。 どうやってやるつもりなのか。 |
名雲光 |
そこはわかんないからね。ヤバいよ? |
村雨礼司 |
今更だな。 ヒーローは勝ち負けの算段をつけて戦わない。 |
村雨礼司 |
必要だから戦うんだ。 そうだよな、ウサタロー。 |
ウサタロー |
ああ、そうだぜッ! |
ウサタロー |
でも、もしかしたら……不動学園長が もう始末をつけてるかもしれないけどなッ。 |
酉原剛 |
ああ、それがあるじゃねーか! 出番を取られちまうぞ。早く帰ろう! |
皆野祐樹 |
一番早いのは……。 |
名雲光 |
輸送ヘリ、借りようか。 移動系の超人能力者を探してもいいかなー。 |
皆野祐樹 |
そうか。ここにはたくさんヒーローが来てるもんね。 |
村雨礼司 |
どちらでもいいさ。 手下怪人が消えたいま、ヒーローは余っているだろう。 |
皆野祐樹 |
ここで最後まで働けないのは残念だけど……。 |
ウサタロー |
放っておいたらヒーロー学園が セクレトに制圧されちゃうんだぜ! |
村雨礼司 |
そして、それは手始め……なんだろうな。 学園より強いヒーローの勢力はない。 |
名雲光 |
あとは、順番に叩くだけだね。 |
ウサタロー |
それを止められるのは……皆野! お前だけなんだ! |