第1部 第3章
キャンプ場の悪夢
酉原剛 |
キャンプ場に来たぜ! キャンプといえば!バーベキュー! |
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村雨礼司 |
任務で来ているのを忘れるなよ。 |
名雲光 |
ザコ怪人の掃除くらいっしょ? 適当に済ませて楽しんじゃおうぜ~。 |
森沢江湖 |
……。 |
皆野祐樹 |
元気ないね?おなか痛いの? |
森沢江湖 |
ううん、そうじゃなくて……。 |
酉原剛 |
おっ、さっそく第一怪人発見! しかもまた食い物型だ! |
ウサタロー |
善良なリア充たちを脅かす怪人めッ! ウサタロー様と仲間たちが成敗してやるぜ! |
酉原剛 |
エンゲルマスクと仲間たち、な! |
皆野祐樹 |
行こう! |
村雨礼司 |
いいか、繰り返すが、俺たちは任務のために、 九州までやってきた。 |
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村雨礼司 |
決して林間学校やら課外授業に来たわけじゃない。 そのことを忘れるな。 |
名雲光 |
んで、バーベキューの材料は持ってきたん? |
酉原剛 |
任せろバッチリ用意してきた。 |
名雲光 |
やるじゃんトリ頭! |
皆野祐樹 |
すごい荷物だと思ったら、そんなの持ってきたんだ。 ……って酉原くん、これ肉しかないよ? |
ウサタロー |
本当だ!野菜がねーぞ! |
酉原剛 |
おう。なにか変か? |
ウサタロー |
おかしーだろ!野菜はどうしたんだ、野菜は! 特にニンジンがないとかありえねーぜ! |
皆野祐樹 |
野菜は用意してないの? |
酉原剛 |
ねーけど。 |
名雲光 |
ちょ、マジ?肉だけとか超ウケるんですけど。 |
酉原剛 |
そうかぁ? |
村雨礼司 |
おい、ちゃんと俺の話を聞け。 |
皆野祐樹 |
ご、ごめん村雨くん。 ほら、やっぱり野菜も用意すべきだったんだよ。 |
ウサタロー |
最低限、ニンジンは必要だったぜ! |
酉原剛 |
別にいらねーだろ。 |
村雨礼司 |
バーベキューから離れろ! |
皆野祐樹 |
ご、ごめん、ちょっと浮かれてた。 |
皆野祐樹 |
でも大丈夫だよ。任務のこともちゃんと覚えてるから。 |
酉原剛 |
おう、怪人をぶっ倒すんだろ? 俺様に任せておけ、それくらい朝飯前だぜ。 |
村雨礼司 |
本当に大丈夫なんだろうな? |
村雨礼司 |
……念のためだ。セクレト、こいつらに 今回の任務について説明してやれ。 |
セクレト |
バーベキューに野菜とかさ。 お前、それサバンナでも同じこと言えんの? |
皆野祐樹 |
へ?サバンナ? |
セクレト |
その点、酉原はわかってるな。 お前、いいバンナーになれるぜ。俺が保証する。 |
酉原剛 |
ありがとよ。バンナーってのはよくわかんねーけど。 |
村雨礼司 |
……名雲、お前また余計なことをしたな? |
名雲光 |
え、なんのこと?ウチ知らないけど。 |
村雨礼司 |
お前以外に、誰がこんなことをするんだ。 |
名雲光 |
イヒヒ、よくできてるっしょ? |
村雨礼司 |
すぐに元に戻せ。 |
セクレト |
お前ってあれだよな……。 サバンナじゃ真っ先に死ぬタイプだよな。 |
村雨礼司 |
セクレトはしばらく黙ってろ。 |
セクレト |
いいのか?すぐそこまで怪人が来てるのに。 |
村雨礼司 |
なに! |
名雲光 |
あちゃー、マジで来ちゃってるし! |
セクレト |
狩るか狩られるか。サバンナの掟は絶対だ。 覚えておけよ。 |
酉原剛 |
もちろん俺様は狩る側だ!かかってこい、怪人! |
皆野祐樹 |
森沢さん、いけそう? |
森沢江湖 |
うん、大丈夫。私も戦うよ。 |
セクレト |
やるじゃん。これならサバンナでも通じるかもな。 |
---|---|
酉原剛 |
俺様の力は、サバンナどころか世界で通じるぜ! |
村雨礼司 |
やれやれ……仕方ない。 |
村雨礼司 |
今回の任務について、俺から説明しておく。 |
村雨礼司 |
俺たちの任務は、この一帯に出没する謎の怪人を 見つけだすことだ。 |
酉原剛 |
それってさっきのやつらのことじゃないのか? |
名雲光 |
そーそー。あいつら掃除して、それで終わりっしょ? |
村雨礼司 |
それだけじゃないと、俺は考えている。 |
ウサタロー |
同感だな。もっとヤバいやつが潜んでるんだと思うぜ! |
皆野祐樹 |
キューバーンやダムデスみたいな? |
ウサタロー |
そういうことだと思うぜ! |
森沢江湖 |
ひっ! |
皆野祐樹 |
き、急にどうしたの森沢さん! |
森沢江湖 |
あ……ううん、なんでもないよ。 |
ウサタロー |
そんなに怯える必要ないだろ、森沢。 |
ウサタロー |
お前たちは、その強い怪人を倒してきたんだぜ! もっと自信を持てよ! |
森沢江湖 |
う、うん……そうだよね。 |
皆野祐樹 |
そうだよ。このチームなら大丈夫だよ。 |
酉原剛 |
どんな怪人だろうと、俺様がいれば勝利は間違いなし! |
名雲光 |
はっきり言ってウチら無敵だし。余裕だって。 |
森沢江湖 |
ありがとう、みんな。 |
ウサタロー |
まあ、どうしても不安だっていうならオイラを頼りな。 バッチリ守ってやるぜ! |
セクレト |
お前、それサバンナでも同じこと言えんの? |
ウサタロー |
それっておかしくねぇ?だって、ここ日本だぜ! |
森沢江湖 |
ふふ。頼りにしてるね、ウサタローちゃん。 |
村雨礼司 |
学園長は、俺たちを高く評価してくれている。 |
皆野祐樹 |
そうなのかな? |
酉原剛 |
そりゃそうだろ。 関西でもレースでも、俺様大活躍だったからな! |
名雲光 |
活躍したの、トリ頭だけじゃねーから。 ウチもけっこうイケてたし。 |
ウサタロー |
皆野、お前もすげーイケてたぜ! |
皆野祐樹 |
えへへ、そうかな。 |
村雨礼司 |
今回の任務は、学園長直々の指名だ。 これまでの実績を買われてのことだろう。 |
名雲光 |
ヤバ、もしかしてウチら、期待されちゃってる? |
皆野祐樹 |
だったら、期待に応えないとだよね。 |
ウサタロー |
そのとおりだぜ皆野! 期待に応えてこそのヒーローだ! |
酉原剛 |
いいじゃねーか。燃えてくるぜ、そういうの。 |
村雨礼司 |
学園長からの期待を裏切るわけにはいかない。 みんな、真面目にやれよ。 |
名雲光 |
ま、ウチはマイペースでやらせてもらうけどね。 |
村雨礼司 |
森沢も、いいな? |
森沢江湖 |
え?あ……うん。 |
セクレト |
おいお前ら、獲物を見つけたぜ。 |
ウサタロー |
怪人が現れたか。よし、今回も大活躍しようぜ! |
皆野祐樹 |
うん!行こう、狩りの時間だ! |
酉原剛 |
戦闘のあとの肉うめぇ! |
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名雲光 |
マジで肉だけバーベキューやってるし。ウケる。 |
皆野祐樹 |
酉原くん、野菜も食べないとダメだよ。 |
酉原剛 |
つっても、野菜なんか持ってきてねーぞ。 |
ウサタロー |
ニンジンねーとかありえねー……。 |
ウサタロー |
つか、キャンプやるつもりだったんなら、 食事の準備もしてきてるはずだろ! |
ウサタロー |
なんで他に食料ねーんだよ! |
皆野祐樹 |
えっと、僕と酉原くんは、テントの用意をしたんだ。 |
酉原剛 |
力仕事ならお手の物だ! |
村雨礼司 |
俺は寝袋なんかの道具担当だな。 |
皆野祐樹 |
食材は確か、森沢さんと名雲さんだったよね? |
森沢江湖 |
あっ!そ、そういえばそうだったね。 ……ごめん、すっかり忘れてた。 |
村雨礼司 |
しっかりしてくれ。森沢だけの問題じゃないんだぞ。 |
森沢江湖 |
ごめん……。 |
皆野祐樹 |
き、気にしないで森沢さん! 名雲さんがちゃんと用意してくれてるからさ! |
皆野祐樹 |
ね、名雲さん! |
名雲光 |
は? |
ウサタロー |
今の流れで「は?」じゃねーだろ……。 |
皆野祐樹 |
あの、名雲さん、食材は……? |
名雲光 |
トリ頭に任せたけど。 |
皆野祐樹 |
酉原くんに……って、どういうこと? |
名雲光 |
いや、メンドーだったからさ、トリ頭に相談したの。 そしたら「俺様に任せておけ!」って。 |
酉原剛 |
おう、任されたぜ。 |
村雨礼司 |
ということは……。 |
酉原剛 |
だから用意してきただろ、肉。 |
ウサタロー |
お前~!お前な~! |
村雨礼司 |
なんてことだ……。 |
酉原剛 |
なんだよ、いいじゃねーかよ、肉。 |
名雲光 |
ウチはまあ、頼んだ側だし?肉でいいけど? |
酉原剛 |
祐樹は、肉が嫌いなのか? |
皆野祐樹 |
好きだけどさ。 |
酉原剛 |
そうか、好きか! それを聞いて安心したぜ!ほれ肉食え! |
皆野祐樹 |
肉以外も食べたいっていうかね? |
酉原剛 |
ほらこっちも焼けたぞ!食え、ドンドン肉食え! |
皆野祐樹 |
いや、こんなに食べられないからね!? |
村雨礼司 |
まったく、加減ってものがあるだろう。 |
森沢江湖 |
……。 |
酉原剛 |
江湖も気にするなって。 ちゃ~んと俺様が、全員分の肉を用意してきたからな。 |
酉原剛 |
だからほら、遠慮せず肉食え。 |
森沢江湖 |
あ、私は大丈夫。あんまりお腹すいてないから。 |
酉原剛 |
そうか? |
ウサタロー |
オイラは肉よりニンジンが食いたい……。 |
村雨礼司 |
一食なら、肉だけでも問題ないが。 任務が終わるまで肉だけだと思うと……キツイな。 |
皆野祐樹 |
近くにお店ないのかな?探してみようよ。 |
セクレト |
お前ら、サバンナで油断は禁物だ。 くれぐれも気を付けて、探索に行けよ! |
名雲光 |
いやー、さっきの戦闘はちょっとヒヤッとしたし。 |
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酉原剛 |
俺様の活躍がなければ、江湖がやられてたぜ! |
皆野祐樹 |
森沢さん、怪我はなかった? |
森沢江湖 |
うん、大丈夫だよ。 |
酉原剛 |
江湖、戦闘中によそ見はしないほうがいいぜ? 対戦相手に失礼だからな! |
皆野祐樹 |
酉原くん、そこは「危ないから」とかって言おうよ。 |
森沢江湖 |
ごめんね、対戦相手には敬意を払わないとだね……。 |
皆野祐樹 |
森沢さんも、しっかりしてね!? |
森沢江湖 |
うん……。 |
名雲光 |
……エコちゃん、どう思う? |
酉原剛 |
調子悪そうだよな。 |
名雲光 |
だよねぇ。本人否定してるけど、どう見てもさ。 |
村雨礼司 |
セクレト、森沢の健康状態はどうなんだ? お前なら分かるんだろう? |
セクレト |
健康状態に問題はないぜ。いつ狩りに出てもOKだ。 |
村雨礼司 |
本当だろうな? |
セクレト |
サバンナはいつだって命懸けだからな。 バンナーの健康管理には、いつでも目を光らせてるぜ。 |
ウサタロー |
ここは日本だっつの! |
ウサタロー |
だけど、セクレトの言うことは信用していいぜ。 |
ウサタロー |
ヒーローが命懸けの仕事だってのは確かだ。 病気の生徒を、任務に行かせたりはしねーよ。 |
ウサタロー |
そのために、セクレトが健康状態をチェックしてる わけだからな。 |
名雲光 |
んじゃ、元気なのは本当なんだ。 |
村雨礼司 |
だったら不調の原因はなんだ? |
酉原剛 |
やっぱ腹減ってんだろ。 |
名雲光 |
いや、それはないから。 |
セクレト |
そういえば、関係あるのかは分からないが、 森沢の心拍数に乱れがあったぜ。 |
名雲光 |
それってドキドキしてるってこと? ……もしかして、恋!? |
村雨礼司 |
興奮、あるいは緊張……精神的な問題ということか。 |
皆野祐樹 |
ねえ森沢さん、やっぱり具合悪いんじゃない? 無理はしないほうがいいよ。 |
森沢江湖 |
本当に大丈夫だから。 |
皆野祐樹 |
任務は僕たちだけでも平気だからさ。 テントで少し休んでたら? |
森沢江湖 |
テ、テントはいやー! |
皆野祐樹 |
森沢さん!? |
森沢江湖 |
……あ、ごめんね、その……。 |
名雲光 |
もしかして、野宿いやだった? |
森沢江湖 |
そうじゃないの。そうじゃなくて……。 |
村雨礼司 |
なにやら事情がありそうだな。 話してくれるか、森沢? |
森沢江湖 |
……うん。 |
名雲光 |
ちょい待ち。怪人が来たみたいよ。 |
酉原剛 |
話は、こいつらを片付けてからだな! |
ウサタロー |
森沢はオイラの後ろに下がってろ! |
皆野祐樹 |
みんなで森沢さんを守るんだ!いくぞ! |
森沢江湖 |
こんなキャンプ地で、怪人に襲われたことがあるの。 |
---|---|
村雨礼司 |
誘拐か? |
森沢江湖 |
ううん。超人能力が目覚める前に。 |
森沢江湖 |
怪我をして死ぬところだったけど、 お父さんに治してもらって……。 |
森沢江湖 |
そのとき、私も命を助ける人になりたいって思ったの。 |
皆野祐樹 |
そんな過去が……。 |
皆野祐樹 |
森沢さんは、お父さんみたいな立派な人になりたいんだね。 |
森沢江湖 |
うん。 |
名雲光 |
運よく回復能力をゲットして、 大儲けするだけの人だと思ってた? |
皆野祐樹 |
そんな。 |
酉原剛 |
それより、手下が減らねえな。 本体が近いか? |
村雨礼司 |
キャンプにトラウマか……。 これで森沢の調子が悪かった理由がわかったな。 |
---|---|
森沢江湖 |
みんな、黙っててゴメンね。 |
皆野祐樹 |
謝るようなことじゃないよ。 |
名雲光 |
そそ。人に秘密にしておきたいことなんて、 誰にでもあるっしょ。 |
酉原剛 |
そうだな。むしろよく話してくれたぜ! |
森沢江湖 |
そういってもらえるなんて……。 ありがとう、みんな。 |
名雲光 |
にしても、キャンプ怖いのによく任務に参加したよね? エコちゃん偉くね?ヤバくね? |
村雨礼司 |
別に偉くはないだろう。 |
村雨礼司 |
その程度で任務を放棄する人間に、 ヒーローなど務まらないんだからな。 |
皆野祐樹 |
村雨くん、そんな言い方はないよ! |
森沢江湖 |
ううん、いいの。村雨くんの言う通り。 |
森沢江湖 |
ヒーローになって、怪人と戦おうと思ってる人が、 子供の頃の思い出にいつまで怯えてちゃダメ。 |
森沢江湖 |
怖い思い出は、克服しなくちゃ。 だって私は、ヒーローになるんだから。 |
村雨礼司 |
フン、それくらいの気概は見せてもらわないとな。 |
皆野祐樹 |
そんなふうに考えてたんだ。 やっぱり、森沢さんは偉いよ。 |
森沢江湖 |
今はまだ、克服できてないけどね。 |
ウサタロー |
よし、話はだいたい分かった! だったら特訓しかないぜ、森沢! |
森沢江湖 |
と、特訓? |
ウサタロー |
そうだぜ!特訓で弱点を克服するんだー! |
酉原剛 |
王道って感じでいいじゃねーか! 俺様も手伝うぜ! |
村雨礼司 |
俺も協力しよう。 |
森沢江湖 |
村雨くんまで……いいの? |
村雨礼司 |
仲間を助けるのは、当たり前のことだ。 |
皆野祐樹 |
そうだよね! みんなで森沢さんをサポートしよう! |
名雲光 |
いいよー、ウチも超頑張るし。 |
名雲光 |
んで、具体的にはどーするの? |
ウサタロー |
それは……これから考えるぜ。 |
名雲光 |
ノープランとか、ウケる。 |
セクレト |
おいお前ら、気をつけろ。怪人どもが近付いてくるぜ。 |
皆野祐樹 |
ゆっくり考えてるヒマもないね。 |
村雨礼司 |
それは仕方ないだろうな。 具体的なことは、怪人を片付けてから考えよう。 |
名雲光 |
エコちゃんは無理しなくていいからね? |
酉原剛 |
この俺様が二人分活躍してやるから、安心してろ! |
森沢江湖 |
ううん、私も戦う! ここで逃げてたら、いつまでたっても克服できないよ! |
ウサタロー |
それじゃ改めて、作戦会議だ! |
---|---|
ウサタロー |
どうやって森沢のトラウマを克服させればいいと思う? お前らの意見を聞かせてくれ! |
森沢江湖 |
みんな、よろしくね。 |
名雲光 |
ウケる。あのウサギ、仕切る側に逃げたし。 |
ウサタロー |
に、逃げてねーぞ! 別にいい方法思いつかなかったわけじゃねーからな! |
名雲光 |
はい、はい。 |
ウサタロー |
勘違いするなよなー! |
酉原剛 |
おう、意見いいか。俺様にいい考えがある! |
酉原剛 |
肉を食おうぜ! 腹が一杯になりゃ、だいたいの問題は解決するしな! |
皆野祐樹 |
ああ、うん、やっぱ酉原くんならそうなるよね。 |
村雨礼司 |
却下だな。それで解決するのはお前だけだ。 |
名雲光 |
そそ。エコちゃんはさ~、女の子なんだから。 そこんとこ考えてくんない? |
酉原剛 |
んじゃ、どうすりゃいいんだ? |
名雲光 |
スイーツ食べ放題に行くっしょ。 |
皆野祐樹 |
それって酉原くんの意見と同じだよね!? |
名雲光 |
全然違うし。女の子は、甘いものに癒されるの! |
森沢江湖 |
スイーツかぁ。いいね。 |
皆野祐樹 |
いいんだ!? |
森沢江湖 |
でも今はスイーツちょっとダメかも。 最近また太ももが……ゴニョゴニョ。 |
名雲光 |
エコちゃん、まーたそんなこと気にしてるし! 大丈夫だって前から言ってるっしょ? |
ウサタロー |
気にするのそこか?ここキャンプ地だぞ? スイーツ食べ放題の店なんてどこにもないからな? |
皆野祐樹 |
む、村雨くんは、いいアイディアないかな? |
村雨礼司 |
そうだな……。 身体を鍛えるというのはどうだ? |
村雨礼司 |
健常な精神は、健常な肉体に宿るという。 身体を鍛えれば、自然と心も強くなるかもな。 |
酉原剛 |
お、わかるぜ!俺様なんかまさにそれだからな! |
名雲光 |
ヤバくない?それって根性論でしょ? ウチは共感できないな。 |
森沢江湖 |
でも、いいかも! |
名雲光 |
お、エコちゃん食いついた? |
森沢江湖 |
ダイエットに……じゃなかった。 すっごい心によさそう。うん。 |
村雨礼司 |
そうか。 それじゃ軽いところから始めてみよう。 |
村雨礼司 |
まず腕立て伏せ、腹筋、背筋を百回ずつ。 これを三セットやってから、次に―― |
森沢江湖 |
皆野くん、いいアイディアないかな。 |
村雨礼司 |
諦め早いな。 |
皆野祐樹 |
僕のアイディアかぁ。 ごめん、まだ何も考えついてないんだ。 |
ウサタロー |
おいおい、ちゃんと考えとけよ。 |
名雲光 |
お前が言うなっつの。 |
村雨礼司 |
おい、また怪人だ。 よかったな皆野、今のうちにじっくり考えておけよ。 |
皆野祐樹 |
考えてるヒマあるのかな……。 |
名雲光 |
エコちゃん、やっぱり動きに硬さがあるよね。 |
---|---|
森沢江湖 |
もっと動かなくちゃって意識はしてるんだけど、 どうしてもダメなの……。 |
名雲光 |
ま、焦らずいこーよ。 |
ウサタロー |
どうだ皆野、何か思いついたか? |
ウサタロー |
ヒーローたるもの、気の利いた一言で 仲間をバシッと叱咤激励できねーとダメだぜ! |
村雨礼司 |
考える時間は十分あったはずだ。期待してるぞ。 |
皆野祐樹 |
ち、ちょっと、ハードル上げないでよ。 |
森沢江湖 |
お願い皆野くん!私どうしたらいいかな! |
皆野祐樹 |
う、うん、僕に任せて! |
皆野祐樹 |
……あ、やっぱり、もうちょっと待って。 |
ウサタロー |
バシッと決めろよ、皆野ー! |
酉原剛 |
まあ、いいアイディアなんて簡単には出てこないわな。 |
名雲光 |
簡単に解決する問題なら、エコちゃんもこんなに 悩んでないだろうしね。 |
森沢江湖 |
ごめんね、みんな。 |
ウサタロー |
いいってことよ。 オイラたちももうちょっと考えてみようぜ。 |
名雲光 |
だね。 |
セクレト |
あのさぁ。お前ら、ちょっといいかな。 |
酉原剛 |
なんだセクレト。いいアイディアでもあるのか? |
セクレト |
さっきからずっと聞いてたけど、考え方甘くない? そんなんでサバンナでやってけると思ってんの? |
酉原剛 |
そうか? |
セクレト |
森沢にはもっと厳しく接するべきだろ。 |
皆野祐樹 |
具体的にはどうするの? |
セクレト |
心を鬼にして、あえて森沢一人で戦わせるとかな。 |
森沢江湖 |
えーっ。 |
セクレト |
それくらいしないと、いいバンナーにはなれないぜ? |
村雨礼司 |
荒療治が過ぎる。賛成できないな。 |
セクレト |
ホントお前ら、サバンナなめてるよな~。 |
皆野祐樹 |
なめてるわけじゃないけど。 でも厳しく接すればいいってものでもないよ。 |
皆野祐樹 |
怪人が怖いって感覚、僕もすごく分かる。 子供のときは、みんなも同じだったと思う。 |
皆野祐樹 |
その怖かった怪人と戦うのって、すごく勇気がいるよ。 目の前に立つだけで精いっぱいだったりするんだ。 |
皆野祐樹 |
そうやって精いっぱい頑張ってる人を、 後ろから突き飛ばすようなこと、僕はしたくない。 |
皆野祐樹 |
頑張れって、応援してあげたいんだ! |
セクレト |
それサバンナで―― |
ウサタロー |
だから、ここサバンナじゃねーから! |
ウサタロー |
皆野、お前いいこと言ったぜ! オイラも同じ気持ちだ! |
名雲光 |
もちろんウチらもだよ。 |
森沢江湖 |
皆野くん、みんな……ありがと。 |
村雨礼司 |
森沢の動き、少しずつだがよくなってきている。 |
---|---|
森沢江湖 |
え、そうかな? |
村雨礼司 |
この調子なら、そう時間をかけずに克服できるか? |
名雲光 |
さすがエコちゃん、自力で克服しちゃう? |
皆野祐樹 |
結局僕たち、なにもせずに終わりそうだね。 協力するなんて言っておいてさ。 |
森沢江湖 |
そんなことない! みんなの応援、すっごく勇気もらえるんだから。 |
皆野祐樹 |
そ、そうかな。えへへ。 |
村雨礼司 |
おい、あまり浮かれるなよ。 こういうのは治りかけの時期が一番大切なんだ。 |
森沢江湖 |
そ、そうだね。 |
酉原剛 |
あ~、江湖が元気になってきたの見たら、 なんか腹減ってきたぜ。 |
酉原剛 |
そろそろメシに……ん? |
酉原剛 |
……なあ、なんか焦げ臭くねーか? |
皆野祐樹 |
え?何の臭いもしないけど……? |
ウサタロー |
いきなりどうした? |
酉原剛 |
変だな……確かに臭うぜ。なにかが燃える臭いだ。 |
村雨礼司 |
こんなひらけたキャンプ地で、なにが燃えるって? |
酉原剛 |
焦げ臭さの中に微かに混じった、この香ばしさ……。 この臭いには……肉だ!肉の臭いがする! |
ウサタロー |
そんなものねーって。 腹減りすぎて、鼻がおかしくなったんじゃないか? |
皆野祐樹 |
いや、ちょっと待って! |
皆野祐樹 |
みんな、あれ見てよ! あっちから黒い煙が上がってるよ! |
村雨礼司 |
火事か……? |
ウサタロー |
そいつは大変だぜ! みんな、今すぐ現場に急行するんだ! |
セクレト |
あ~あ~言わんこっちゃない。 サバンナなめんなって、散々忠告してやったのに。 |
ウサタロー |
今はお前の相手してられねーぜ! |
セクレト |
あのな、あれ、お前らのだよ。 |
皆野祐樹 |
え、僕たちの?なにが? |
セクレト |
だから、あの黒い煙。 あの下にあるの、お前らのテントだぜ。 |
名雲光 |
ちょマジ!? |
皆野祐樹 |
言われてみれば確かに、テントはあっちだったような! |
酉原剛 |
つまりこの香ばしい臭いは、俺の肉が焼けてる臭い! |
村雨礼司 |
肉だけですめばいいがな。 |
名雲光 |
荷物まで燃えるのはマジヤバいって! 替えの下着なくなっちゃう! |
森沢江湖 |
……。 |
皆野祐樹 |
森沢さん、大丈夫? また顔色が悪くなってきてるよ? |
森沢江湖 |
う、うん……大丈夫。 |
村雨礼司 |
とにかく、急いでテントに戻るぞ! |
酉原剛 |
くそっ、こんなときにまた怪人かよ! そこをどけ!今はそれどころじゃねーんだよ! |
コンダイン |
ようやくのお戻りですネ。 ヒーロー学園の生徒諸君。 |
---|---|
村雨礼司 |
お前が怪人の本体か。 |
森沢江湖 |
……いやぁ!あ、あの人イヤ! |
皆野祐樹 |
あっ、森に行くと危ないよ! |
名雲光 |
まさか……エコちゃんを殺しかけた怪人、本人!? |
コンダイン |
そうですネ。 いまは超人能力者を誘拐しています。 |
酉原剛 |
やらせるか! |
コンダイン |
フフフ、あなたがたの能力は調べています。 |
コンダイン |
キャンプ地の食料はすべて燃やしました。 エンゲルマスクは遠からずパワー切れですネ。 |
酉原剛 |
くそ、マジかよ。 |
コンダイン |
さて、お次はどなたを無力化して差し上げますかネ。 |
---|---|
村雨礼司 |
……みんな、ここは退くぞ。 |
酉原剛 |
おい、冗談だろう。目の前に怪人がいるんだぜ? |
村雨礼司 |
やつの話を聞いていなかったのか? このまま戦い続れば、お前はパワー切れするんだぞ。 |
酉原剛 |
怪人から逃げるヒーローがどこにいるんだよ! そんなの俺様のプライドが許さねぇ! |
コンダイン |
おや、まずはエンゲルマスクがお相手ですか? |
コンダイン |
あなたのパワー切れはもはや時間の問題。 始末するのは最後にしようと思っていたのですがネ。 |
セクレト |
警告します。 酉原様はすでに、大量のパワーを消費しています。 |
セクレト |
このまま怪人と戦うのは危険です。 |
皆野祐樹 |
あれ、元に戻ってる……? |
酉原剛 |
俺様をなめるな、セクレト! パワーが切れる前に倒せばいいんだろ! |
皆野祐樹 |
ダメだってば、ここは村雨くんの指示に従おう! |
名雲光 |
あーもう、トリ頭ってばちゃんと状況見よ? 逃げ一択っしょ、ここは。 |
コンダイン |
ヒーローが逃亡の相談とは、嘆かわしいですネ。 |
酉原剛 |
うるせぇ!俺様は逃げねぇぞ! |
ウサタロー |
落ち着けっての! 今はお前のプライドより大切なことがあんだろ! |
酉原剛 |
なんだよ、大切なもんって。 |
皆野祐樹 |
森沢さんだよ。 |
皆野祐樹 |
自分を襲った怪人を見て、パニック起こしてた。 一人にしておいたら危ないよ。 |
ウサタロー |
そうだぜ。今は仲間を守ることの方が大事だろ。 |
酉原剛 |
……そうだったな。 |
酉原剛 |
俺様としたことが、熱くなりすぎたようだ。 すぐに江湖を追いかけようぜ! |
コンダイン |
おや、相手をしてくれないんですかネ? |
酉原剛 |
口惜しいが、ここは俺様の負けだ! あとで再戦に来るから、そのときは覚悟しておけよ! |
コンダイン |
それは楽しみですネ。 |
村雨礼司 |
いいから、行くぞ。 |
酉原剛 |
分かってるっての! セクレト、江湖の居場所を教えてくれ! |
セクレト |
かしこまりました。森沢様の反応を追跡します。 |
皆野祐樹 |
やっぱり元に戻ってる。 |
名雲光 |
ま、遊んでる余裕もなくなったしね。 |
村雨礼司 |
任務中に遊ぶのも、セクレトをいじるのも、 やめてもらいたいものだがな。 |
名雲光 |
イケメンってホント真面目だよねー。ウケるわ。 |
セクレト |
みなさま、ご注意を。 前方に怪人の反応を確認しました。 |
皆野祐樹 |
やっぱり、あのまま逃がしてはくれないよね! |
皆野祐樹 |
相手、手下だけだったね。 てっきり本体が追いかけてくるかと思ってた。 |
---|---|
名雲光 |
手下だけならウチらの敵じゃないし。 これなら楽勝っしょ。 |
ウサタロー |
いや、楽観的に考えるな!今回の敵は狡猾だぞ! |
ウサタロー |
今の戦いで、酉原はかなりのパワーを 無駄に消費させられたはずだぜ! |
酉原剛 |
すまねぇ、そのとおりだ。 まだ戦えるが、このままじゃまずい。 |
皆野祐樹 |
酉原くんの身体、だいぶ縮んじゃったね。 |
酉原剛 |
マジで腹減ったぜ……。 |
ウサタロー |
それだけじゃねー! |
ウサタロー |
森沢との合流を妨害するのも、敵の狙いだろう。 今の戦いで、だいぶ時間をロスしちまった! |
セクレト |
森沢様の反応、遠ざかっています。 |
名雲光 |
エコちゃん、まだ無事でいてくれるといいんだけど。 |
セクレト |
怪人の狙いは、みなさまの戦力を一人ずつ 削いでいくことにあると考えられます。 |
酉原剛 |
俺様と江湖は、敵の思惑通りにやられちまったわけか。 |
皆野祐樹 |
ということは、次は僕たちが狙われるかもってこと? |
セクレト |
その可能性は高いです。 |
名雲光 |
敵の思惑……ん?んん? |
皆野祐樹 |
どうかしたの、名雲さん? |
名雲光 |
んー……いや、なんでもない。 |
ウサタロー |
とにかく、これ以上の戦力ダウンはヤベー。 やられないように注意しろよ! |
村雨礼司 |
……みんな、すまない。 |
皆野祐樹 |
え、村雨くん、急にどうしたの? |
酉原剛 |
どうしてお前が謝るんだ? 謝らなきゃいけないのは、俺様の方だろ。 |
村雨礼司 |
いや、テントを襲撃される可能性は十分にあった。 なにかしらの対策を打つべきだったんだ。 |
村雨礼司 |
森沢のこともそうだ。 |
村雨礼司 |
あいつが抱えているトラウマについて知りながら、 十分なサポートができなかった。 |
村雨礼司 |
挙句、怪人にその隙を突かれてこの窮地。 |
村雨礼司 |
俺の力が足りないばかりに……。 みんな、本当にすまない。 |
ウサタロー |
なに一人で熱くなってんだよ、村雨! |
皆野祐樹 |
村雨くん一人の責任なんかじゃない。 テントのことも森沢さんのことも、全員の問題だよ。 |
村雨礼司 |
だが、それでは俺の気がすまない。 |
名雲光 |
イケメン、責任感強すぎっしょ。 そういうの、マジいらないんだよね。 |
ウサタロー |
オイラたちが今すべきことは、ここからどうやって 怪人をぶっ倒すか考えることだろ! |
村雨礼司 |
……ああ、そのとおりだな。 |
皆野祐樹 |
それじゃ、先を急ごう! 森沢さんに早く追いつくんだ! |
酉原剛 |
くそっ、今の戦闘で、またパワーを使っちまった。 |
---|---|
村雨礼司 |
森沢にはまだ追いつけないのか? |
セクレト |
森沢様との距離、変わっていません。 |
ウサタロー |
ぬぁぁぁっ、手下どもが邪魔すぎるぜー! |
皆野祐樹 |
あのさ、提案があるんだけどいいかな。 森沢さんを追う前に、まず、食料を探さない? |
酉原剛 |
メシか!俺様は嬉しいが……それはまずくないか? |
名雲光 |
怪人より先に、エコちゃん見つけなきゃでしょ。 |
皆野祐樹 |
でも今の戦力じゃ、邪魔をしてくる手下たちを 振り払うことは難しいよ。 |
皆野祐樹 |
だから先に、酉原くんを復活させるんだ。 |
皆野祐樹 |
それからフルパワーで手下たちをやっつけて、 一気に森沢さんに追いつく。 |
ウサタロー |
急がば回れってわけだな! |
村雨礼司 |
提案としては悪くない。 |
村雨礼司 |
だがその食料を、どうやって見つける? あまり時間はかけられないぞ。 |
皆野祐樹 |
食べ物ならあるよ、僕たちの周りに。 |
皆野祐樹 |
だってここは森だよ? 食べられるものがたくさんあるはずだよ。 |
皆野祐樹 |
例えばほら、このキノコとか! |
酉原剛 |
いや、いやいやいや! なんかすげー色してるぞ!食べられるのかそれ? |
皆野祐樹 |
セクレト、このキノコ食べれないかな? |
セクレト |
ハラタケ目テングタケ科テングタケ属、タマゴタケ。 摂取可能です。 |
名雲光 |
マジか! |
セクレト |
この季節、九州の山林に生息する植物の情報は、 すべて提供可能です。 |
皆野祐樹 |
あとは手当たり次第に採って、セクレトに確認して、 酉原くんに食べてもらう! |
村雨礼司 |
なんてむちゃくちゃな……。 |
酉原剛 |
う、うおおおっ!やってやろうじゃねーか! |
酉原剛 |
祐樹が示してくれたエンゲルマスク復活の道筋! 俺様はそれに賭けるぞ! |
村雨礼司 |
本気か、酉原!? |
酉原剛 |
男に二言はない! |
皆野祐樹 |
ありがとう、酉原くん!それじゃ集めてくるね! |
名雲光 |
アハハ、超ヤバい!ウチも協力する! ヤバいやつたくさん持ってきたげるからね! |
酉原剛 |
す、少しは手加減してくれよ! |
酉原剛 |
面倒かけるが、礼司も頼む。 贅沢は言わねぇから、俺様に協力してくれ! |
村雨礼司 |
……わかった。 |
村雨礼司 |
だったら俺も、お前たちに賭けよう! そうと決まれば、あとは時間との勝負だな! |
酉原剛 |
おう、ドンドン持ってこい! この森の恵み、全部俺様が平らげてやるぜ! |
皆野祐樹 |
どうにか怪人は追い払えたね。 |
---|---|
皆野祐樹 |
酉原くんには食事に集中してもらったけど……。 どうなったかな? |
皆野祐樹 |
パワー回復、うまくいってるといいんだけど。 |
村雨礼司 |
たとえパワー回復がうまくいかなくても、 酉原が元気ならそれでいい……。 |
村雨礼司 |
不思議と今は、そんな優しい気持ちでいっぱいだ。 |
名雲光 |
ヤバいキノコとかけっこう用意したしね。 |
皆野祐樹 |
二人とも、そんなキツいの採ってきたの!? |
名雲光 |
手当たり次第に集めろって言ったのはそっちだし。 |
村雨礼司 |
それに、皆野が持ってきたものも十分キツかったぞ。 |
皆野祐樹 |
そうかな……食べられそうなの選んだつもりだけど。 |
名雲光 |
ともかく、セクレトの安全チェックがあったとはいえ、 あれを食うなんて、トリ頭の勇気パネェわ。 |
ウサタロー |
お、無事に戻ってきたみたいだな。 |
皆野祐樹 |
酉原くんの様子はどう? |
ウサタロー |
酉原の食事なら、終わったぜ。 みんなの用意したもの、本当に全部平らげやがった。 |
酉原剛 |
……。 |
名雲光 |
ヤバ、無反応だし。生きてるの、これ? |
ウサタロー |
さっきまで苦しそうに呻いてたな。 |
皆野祐樹 |
大丈夫なのそれ!? |
村雨礼司 |
やらせたお前がそれを言うのか。 |
セクレト |
ご安心ください。 酉原様が摂取したものは、すべて食用です。 |
セクレト |
健康状態に問題はありません。 |
酉原剛 |
……。 |
皆野祐樹 |
問題がないようには見えない……。 |
村雨礼司 |
セクレト、森沢の居場所はちゃんと把握しているな? |
セクレト |
いつでも追跡を再開できます。 |
村雨礼司 |
森沢の無事を考えると、これ以上時間は割けない。 |
皆野祐樹 |
そうだね。すぐにでも出発しないと。 |
ウサタロー |
おい、目を覚ませ酉原! 森沢を助けられるかは、お前にかかってるんだぞ! |
酉原剛 |
……う、うう。 |
名雲光 |
反応した! |
酉原剛 |
う……うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ! 俺様、大復活っ!! |
皆野祐樹 |
と、酉原くんが立った!調子はどう? |
酉原剛 |
渋かったり苦かったり、味覚的に苦しめられたが、 みんなのおかげで腹は一杯だ!感謝するぜ! |
酉原剛 |
全身の筋肉にパワーがみなぎる! エンゲルマスク、いつでもリングに上がれるぞ! |
村雨礼司 |
よし、だったらすぐに出発だ。 セクレト、ここから森沢のところまで、何分だ? |
セクレト |
五分と予測されます。 |
酉原剛 |
そんなに待たせるものか! 三分で江湖のところに行こうぜ! |
皆野祐樹 |
やっと見つけた! |
---|---|
森沢江湖 |
やめて、もうダメなの。 あの怪人を見ただけで、足が震えて……。 |
ウサタロー |
森沢、お前はヒーローだろう! 戦え!戦って過去を乗り越えるんだ! |
ウサタロー |
仲間はボロボロになってもお前を助けようとしてる! その心意気に応えてやるのが、ヒーローだぜッ! |
森沢江湖 |
……うん。 |
名雲光 |
ヤバい。エコちゃん成長しちゃう? |
村雨礼司 |
茶化すなよ。 |
皆野祐樹 |
つらいと思うけど、一緒に頑張ろう。 |
森沢江湖 |
私、戦うよ。 みんなと一緒に! |
酉原剛 |
まかせろよ。 食い物さえあれば無敵だ! |
森沢江湖 |
みんな、迷惑かけてごめんね。 あの怪人見ても逃げ出さないように、頑張るから。 |
---|---|
名雲光 |
でも、怖いんでしょ? |
森沢江湖 |
うう、思い出しただけで足がガクガクするよ~。 |
ウサタロー |
ヒーローが怪人怖がってどーすんだ! 根性みせろよ、森沢! |
名雲光 |
根性論はやめろっつの。 |
森沢江湖 |
うーん、どうやって克服したらいいんだろ。 |
皆野祐樹 |
あの、それなんだけどさ。 別に怖いのを克服しなくてもいいんじゃない? |
ウサタロー |
おいおい、ヒーローがそんな弱気じゃダメだぜ! |
皆野祐樹 |
さっきも言ったけど、怪人が怖いっていうのは 僕もすごく分かる。 |
皆野祐樹 |
というか、今でも怪人と戦うのは怖いよ。 |
酉原剛 |
そうなのか? スゲー戦ってるから気付かなかったわ。 |
名雲光 |
んじゃ、怖がりながら戦ってるわけ? |
皆野祐樹 |
うん、そうだよ。 |
名雲光 |
ウケる。 |
ウサタロー |
だけど、お前は立派にヒーローやってるぜ? |
皆野祐樹 |
みんなを信頼してるからね。 |
皆野祐樹 |
酉原くんも、村雨くんも、名雲さんも、森沢さんも、 みんな頼りになるから。 |
皆野祐樹 |
危なくなっても、きっとみんなが助けてくれる。 そう信じてるから、怖くても立ち向かえるんだ。 |
酉原剛 |
おいおい、照れるじゃねーか。 |
ウサタロー |
オイラだって頼りになるぜ! |
皆野祐樹 |
うん、もちろんウサタローのことも信頼してるよ。 |
村雨礼司 |
怖いなら怖いままでもいい、か。 今はそれでもいいのかもな。 |
皆野祐樹 |
その代わり、逃げずに僕たちを頼ってほしい。 森沢さんのこと、絶対に守ってみせるからさ! |
森沢江湖 |
う、うん。 |
名雲光 |
アハ、カッコいいじゃん。 |
酉原剛 |
おう、頼れ頼れ! |
酉原剛 |
俺様も、みんなに助けられたばかりだ! 今度は俺様が、全力で江湖を守る番だな! |
森沢江湖 |
わかった。 怖くなったら、みんなに抱きつくようにするね! |
皆野祐樹 |
だ、抱きっ!?それはどうかな……。 |
セクレト |
怪人の反応を確認しました。 みなさま、ご注意ください。 |
村雨礼司 |
来たか……。 |
森沢江湖 |
大丈夫。手下が相手なら、平気だよ。 |
皆野祐樹 |
そうだね、問題はコンダインだけだ。 まずは手下をやっつけて、テントまで戻ろう! |
村雨礼司 |
敵はまた俺たちの戦力を分断しようとしてくるはずだ。 気をつけてかかれ! |
森沢江湖 |
大変、みんな怪我してる! |
---|---|
皆野祐樹 |
本当だ。いつの間にか、すり傷だらけだ。 |
ウサタロー |
怪人と戦いまくってるからな。 そりゃ怪我もするだろ。 |
森沢江湖 |
待ってて、すぐに治すから。 |
名雲光 |
ありがと、マジ助かるわー。 女子的には、あんまお肌に傷つくりたくないしね。 |
森沢江湖 |
そうだよね、うんうん。 |
皆野祐樹 |
これくらいの傷なら、僕は大丈夫だよ。 |
酉原剛 |
俺様も平気だぜ。男的には、傷は勲章だしな。 |
森沢江湖 |
ダメだよ、ちゃんと見せて。 |
皆野祐樹 |
ほ、本当になんともないよ? |
森沢江湖 |
……むむっ、これはひどい怪我だ。 傷口からバイ菌が入って、大変なことになっている! |
皆野祐樹 |
ええっ!? |
森沢江湖 |
すぐに手術の準備を。 どうしてこんなになるまで放っておいたんだね! |
皆野祐樹 |
冗談だよね!? |
森沢江湖 |
はい、冗談です。 |
森沢江湖 |
でも、怪我の具合を自分で決めないでほしいの。 |
森沢江湖 |
放っておいたら大変な場合だってあるし、 それに、いつ治療ができるか分からないんだよ? |
ウサタロー |
確かにな。特にヒーローの場合、 任務中の負傷を治療するのは難しい。 |
ウサタロー |
治療が遅れたせいで引退したヒーローも、 中にはいるからな。 |
名雲光 |
同じチームにエコちゃんがいるウチらって、 マジラッキーだよね。 |
村雨礼司 |
だが、森沢に頼りすぎるのもよくないだろう。 |
村雨礼司 |
回復能力者は希少なんだぞ。 誰もが怪我を治してもらえるわけじゃない。 |
皆野祐樹 |
これから先、森沢さんがいない状況での任務だって あるかもしれないもんね。 |
森沢江湖 |
ううん、そこは頼って! |
森沢江湖 |
私、必ず駆けつけるよ。みんなを治すために。 |
森沢江湖 |
みんなっていうのは、ここにいるみんなじゃなくて。 学園の……ううん、日本中のみんなのこと! |
森沢江湖 |
そういうヒーローになりたくて、私は学園に入ったの! |
村雨礼司 |
すべての負傷者を救う、か……。 |
酉原剛 |
それが実現できたら、マジ最高だろ。 |
皆野祐樹 |
そうだね、みんなが幸せになれるよ。 すごいこと考えてるんだな、森沢さんは。 |
森沢江湖 |
今はまだ全然だけどね。 |
森沢江湖 |
だから、いつまでも怖がってちゃダメ! 今すぐは無理だけど、私頑張って克服するから! |
ウサタロー |
その意気だ、森沢! |
酉原剛 |
おう、気合い入れろ、気合い! |
森沢江湖 |
分かった、気合いだね!むん! |
皆野祐樹 |
僕たち、正しい方向に進んでるのかな? |
---|---|
酉原剛 |
おいおい、怖いこと言うなよ! まさか道に迷ったなんて言い出さないだろうな? |
ウサタロー |
多分、酉原はすでに道が分からなくなってるぜ。 |
酉原剛 |
前のやつについていってるだけだぜ。 |
皆野祐樹 |
戦っては走ってを繰り返してるとさ、こう、 方向感覚ぐちゃぐちゃくにならない? |
名雲光 |
森の中だしね。ちょっとわかるかも。 |
村雨礼司 |
安心しろ。方角なら、セクレトが把握している。 |
セクレト |
イエス。 現在はテントの座標へナビゲートしています。 |
皆野祐樹 |
セクレトがいてくれて、本当に助かったよ。 |
酉原剛 |
こうも木に視界を塞がれると、不安にもなるわな。 |
名雲光 |
近くに怪人が潜んでいても、分からないしね。 |
手下A |
そうだナ。 |
名雲光 |
うっそ。 |
手下A |
これでも食らうんだナ! |
名雲光 |
キャー! |
村雨礼司 |
大丈夫か名雲! |
手下B |
こっちにもいるんだナ。 |
村雨礼司 |
なっ……しまった! |
皆野祐樹 |
うわあっ! |
酉原剛 |
礼司、祐樹! |
手下A |
奇襲成功なんだナ。 ここまでの戦いの疲れが、出始めているんだナ。 |
手下B |
ここで一気に戦力を削らせてもらうんだナ。 |
村雨礼司 |
くそっ……待ち伏せされていたか……。 |
ウサタロー |
しっかりしろみんな! おい酉原、お前の出番だぜ! |
酉原剛 |
もちろんだ! この俺様がいる限り、お前らの好きにはさせねぇぞ! |
森沢江湖 |
私だっているんだから! |
手下A |
エンゲルマスクが復活してるのは驚いたけどナ。 ファーストエイドは怖くないんだナ。 |
森沢江湖 |
そ、そんなことないよ! |
手下A |
エンゲルマスクは、数で抑え込むんだナ。 |
酉原剛 |
うぬっ! |
手下A |
ファーストエイドは回復の邪魔だけしておけば、 十分なんだナ。 |
手下B |
残りで、他の三人を叩きのめすんだナ。 |
酉原剛 |
ウオオーッ!そこをどけ!やらせはしねぇぞ! |
手下A |
コンダイン様が出るまでもない。 ここで片付けてやるんだナ! |
森沢江湖 |
まだ私がいるってば! |
手下B |
傷を治すのだけが取り柄の回復能力者が、 この状況でなにをしようって言うんだナ? |
森沢江湖 |
みんなを守る! |
森沢江湖 |
みんなが私を守るって言ってくれたように、 私もみんなを守るの! |
ウサタロー |
やれんのか、森沢! |
森沢江湖 |
やれるやれないじゃなくて、やるの! |
酉原剛 |
そいつはいいな! だったら頼りにしてるぜ、ファーストエイド! |
森沢江湖 |
それじゃ、行くよ! |
ウサタロー |
よーし、怪人をやっつけたぜ! よくやった森沢ー! |
---|---|
森沢江湖 |
みんな大丈夫?すぐに回復するからね。 |
皆野祐樹 |
すごかったよ、森沢さん! |
森沢江湖 |
フフ、みんなが励ましてくれたおかげだよ。 |
名雲光 |
最後は結局根性論だったかー。エコちゃんヤバいわ。 |
森沢江湖 |
気合いなんだよ!気合い! |
村雨礼司 |
なにはともあれ、お前のおかげで助かったぞ、森沢。 |
森沢江湖 |
どういたしまして! |
村雨礼司 |
それじゃここで一度休憩にしよう。 体力を回復させてから、テントに戻るぞ。 |
皆野祐樹 |
……テントまで戻ってきたけど、誰もいないね。 |
酉原剛 |
ここはもう用済みってことか。 コンダインのやつ、どこに行ったんだ? |
名雲光 |
慌てなくても、まだ近くにいるっしょ。 |
ウサタロー |
また奇襲されちゃたまらない。 警戒は怠らないようにしようぜ! |
皆野祐樹 |
うん、任せておいて! |
森沢江湖 |
荷物、本当に全部燃やされちゃったんだね。 |
村雨礼司 |
肉の香ばしい臭いが、まだ漂ってるな。 |
酉原剛 |
この肉、食えねぇかな? |
村雨礼司 |
やめとけ。そこにあるのは肉じゃなくて、 かつて肉であったもの、だ。 |
酉原剛 |
ほぼ黒焦げだもんなー。 |
名雲光 |
にしてもさー、「食料燃やした」とか言いながら、 なんでウチらの荷物まで燃やすかなー。 |
皆野祐樹 |
お菓子とか飴とか入ってるかもしれなかったからかな? |
ウサタロー |
可能性のあるものは、全部焼いたってことだろう。 |
名雲光 |
は~、マジテンション下がるわ。 メイク用品とかさ、乙女の荷物には色々あんのに。 |
名雲光 |
アイツ、マジ乙女の敵だわ。 エコちゃんもそう思わない? |
森沢江湖 |
うん。お気に入りの目覚まし時計とか入ってたのに。 |
皆野祐樹 |
目覚まし時計なんて持ってきてたの? |
森沢江湖 |
持ってきたっていうか、入ってたっていうか……。 |
皆野祐樹 |
あ~、かなり動揺してたみたいだもんね。 |
村雨礼司 |
燃やされたものについて悔しがっても仕方ない。 そろそろ動くぞ。 |
ウサタロー |
コンダインを追いかけようぜ! 名雲の言うとおり、まだ遠くには行ってないはずだ! |
酉原剛 |
だったら、あいつらに聞いてみようぜ。 |
皆野祐樹 |
手下たちか……。まだ僕たちには気付いてないみたい。 |
ウサタロー |
だったらさっきのお返しだ! 奇襲を仕掛けてやれー! |
村雨礼司 |
敵は近いぞ。 |
---|---|
皆野祐樹 |
いた! |
コンダイン |
ふう。ここまでは計画通りですネ。 |
名雲光 |
計画……。 |
コンダイン |
あなた方はおびき出されたのですよ。 |
コンダイン |
皆野さんを捕らえるよう指示が出ていますのでネ。 |
名雲光 |
アンタも組織の怪人ってわけ? ウケるんだけど。 |
村雨礼司 |
貴様らがなにを計画していようと関係ない。 世の秩序を乱す害悪め。 |
皆野祐樹 |
森沢さんのトラウマを利用するなんて許せない! |
森沢江湖 |
あっ、もう大丈夫。 元気元気~。 |
コンダイン |
威勢はいいですが、私に勝てますかネ? |
酉原剛 |
うおおお!突撃だぜ! |
コンダイン |
フフフ、それにしても久しぶりですネ、森沢さん。 私のこと、覚えてますかネ? |
---|---|
森沢江湖 |
……覚えてるよ。 キャンプ場を襲った怪人でしょ。 |
コンダイン |
そう、私はあの日、キャンプ場を襲いましたネ。 |
コンダイン |
当時、森沢さんはまだ幼い子供。 もちろん私の狙いは、あなたではありませんでしたネ。 |
森沢江湖 |
襲われたのは、隣のテントだったと思う。 |
コンダイン |
そのとおり。あの場には、別の回復能力者がいたネ。 |
森沢江湖 |
……。 |
ウサタロー |
森沢、もうやめろ! 怪人の話に付き合う必要なんかねー! |
コンダイン |
私はその人物を誘拐しようとしましてネ。 ところが、あろうことか彼は激しく抵抗したのです。 |
コンダイン |
だから見せしめに暴れてやりましてネ! |
コンダイン |
罪もない子供が傷つけられるのを見て、 彼はすぐに抵抗をやめましたネェ~! |
コンダイン |
その子供が森沢さん、あなただったというわけですネ! |
森沢江湖 |
そんな言葉で、私はもう動揺しないから! |
森沢江湖 |
あのキャンプ場に、今の私がいれたらなって思う。 私なら、みんなを助けられたのにって! |
コンダイン |
おや?フフフ、言うようになりましたネ。 |
ウサタロー |
森沢、成長したじゃねーか! |
酉原剛 |
にしても、十年前から超人能力者の誘拐なんか やってたのかよ!極悪人じゃねーか! |
村雨礼司 |
お前が唾棄すべき邪悪だということはよく分かった。 |
村雨礼司 |
もうその口を閉じろ! そして正義の裁きを受けるがいい! |
コンダイン |
フフフ、ストライカーお得意の水弾攻撃ですネ。 言ったはずです、あなた方の能力は調べてあると! |
コンダイン |
ダイコンソード! |
村雨礼司 |
なにっ、俺の水弾を真っ二つに斬っただと!? |
皆野祐樹 |
あの両手に持った大根、刀だったの!? |
コンダイン |
フフフ、我が二刀に斬れぬものなし。 今のうちに念仏でも唱えておくといいですネ。 |
コンダイン |
……あ、皆野さんはけっこうですよ? 生かしておいてあげますからネ? |
皆野祐樹 |
怪人に負けたりなんかするもんか! |
森沢江湖 |
私、コンダインに勝ちたい! 皆野くん、力を貸して! |
皆野祐樹 |
うん、力を合わせて、コンダインをやっつけよう! |
酉原剛 |
ウオオオッ、俺様の攻撃を受けてみやがれー! |
---|---|
コンダイン |
エンゲルマスクが健在とは、想定外でしたネ。 |
酉原剛 |
俺様には、頼りになる仲間が多いんでな! |
コンダイン |
フフフ、甘いですネ。 |
コンダイン |
想定外なのはあくまで、この場にいることだけ。 あなたのことも対策済みなんですけどネ! |
酉原剛 |
その巨体で、高くジャンプしただと!? |
コンダイン |
ボディプレスを食らうといいですネ! |
酉原剛 |
ぐわーっ! |
皆野祐樹 |
酉原くん、大丈夫!? |
酉原剛 |
なかなかいいボディプレスだったが……、 これくらいの攻撃で、俺様は倒れやしないぜ! |
コンダイン |
フフフ、その強がり、いつまで続きますかネ。 |
名雲光 |
……やっぱおかしいわ。 |
森沢江湖 |
え、なにがおかしいの? |
名雲光 |
なんであいつ、ウチらのことあんなに詳しいの? |
名雲光 |
エコちゃんのトラウマとか、トリ頭の無力化とか。 詳しすぎだし、段取りよすぎ。 |
皆野祐樹 |
そういえば……! |
村雨礼司 |
おびき出したとも言っていたな。 俺たちが九州に来るよう、誰かが仕向けたのか? |
森沢江湖 |
え、それって……。 |
名雲光 |
学園内に、敵がいるのかも。 |
酉原剛 |
マジかよ! |
ウサタロー |
おい、ちょっと待て! |
ウサタロー |
お前らにこの任務を与えたのは、学園長だぞ! まさか学園長を疑う気か!? |
ウサタロー |
そんなわけあるかー! |
村雨礼司 |
それが学園長かはともかく、 内通者がいる可能性は高いな……。 |
名雲光 |
アハ。学園長が敵とか、ヤバすぎでしょ。 |
ウサタロー |
名雲ー!冗談でも怒るぞー! |
コンダイン |
フフフ、あなたがたの学園長――不動老師のことは、 私もよく知ってましてネ。 |
コンダイン |
彼のこと、少し話しましょうかネ? |
ウサタロー |
ふざけんなー!食らえ怒りのウサキーック! |
コンダイン |
ペシッと。 |
ウサタロー |
あうん。 |
村雨礼司 |
少しは落ち着け、ウサギ。 怪人の口先三寸に踊らされてどうする。 |
皆野祐樹 |
今は、コンダインをやっつけることを考えよう! |
名雲光 |
だね……あんま話すのもヤバいかもだし。 この話はここまで!はい終了! |
酉原剛 |
お前が話題振ったんだろーが! |
酉原剛 |
だが、こいつは強敵だ。 戦いに集中しようってのには、賛成だな! |
皆野祐樹 |
それじゃみんな、行くよ! |
コンダイン |
フフフ、諦めの悪い人たちですネ! |
コンダイン |
さて……こんなものですかネ。 |
---|---|
コンダイン |
みなさん、もう戦うのはやめませんかネ? |
皆野祐樹 |
えっ、降参? もう悪さしないって約束してくれるなら、やめるけど。 |
コンダイン |
この私が降参などするわけがありませんネ。 |
コンダイン |
あなたがたのデータは十分取れましたネ。 なのでこれ以上戦っても、私としては意味がない。 |
酉原剛 |
言ってくれるじゃねーか! |
コンダイン |
ボディプレス! |
酉原剛 |
ぐわーっ! |
村雨礼司 |
やらせるものか! |
コンダイン |
ダイコンソード! |
村雨礼司 |
くっ……! |
コンダイン |
あなたは厄介そうなので、念入りに潰しておきますネ。 |
名雲光 |
キャー! |
皆野祐樹 |
みんな……! |
コンダイン |
さて、あとは皆野さんを捕えるだけですネ。 |
皆野祐樹 |
そう簡単に捕まってたまるか! |
コンダイン |
残念ですがネ……皆野さん。 あなたの実力は、他のお三方よりも低い。 |
コンダイン |
レア能力の持ち主とはいえ、この程度の能力を、 なぜ組織は欲するのか……。 |
コンダイン |
理解に苦しみますネ! |
皆野祐樹 |
うわーっ! |
森沢江湖 |
皆野くん、みんな! 待ってて、すぐに回復するから! |
コンダイン |
あなたにもう用はありません。 ですから大人しくしていてもらえませんかネ? |
森沢江湖 |
私はもう、あなたを恐れたりしない! |
コンダイン |
……フゥ、仕方ないですネ。 では、彼を痛めつけることにしますかネ。 |
ウサタロー |
うぎゅっ。 |
森沢江湖 |
ウサタローちゃん! |
コンダイン |
私に従ってください。 従ってくれないなら、彼を握りつぶします。 |
森沢江湖 |
や、やめて! |
ウサタロー |
オ、オイラなら大丈夫だ。 だからこんなやつの言うこと聞くな! |
コンダイン |
あなたは黙っていてくれませんかネ? |
ウサタロー |
ギャー! |
皆野祐樹 |
ウ、ウサタローを……離せ! |
コンダイン |
皆野さん、あなたも大人しくしてくれませんかネ。 彼がどうなってもいいんですかネ? |
皆野祐樹 |
怪人なんかに、従うものか! |
コンダイン |
残念ですネ。では彼は……。 |
皆野祐樹 |
ウサタローだって、やらせるものか! |
コンダイン |
こっ……この炎は!? なんというパワー……これが皆野さんの、真の力!? |
皆野祐樹 |
食らえーっ! |
コンダイン |
なんという想定外の炎……今のは危なかったですネ。 ……ハッ、しまった!? |
ウサタロー |
助かったぜ、皆野! |
森沢江湖 |
よかった、ウサタローちゃん! |
ウサタロー |
それにしても今の力、すげーじゃねーか! |
皆野祐樹 |
うん……分かってきた気がする。 |
皆野祐樹 |
感情を爆発させる僕の能力……。 仲間を守るためなら、上手く使いこなせるかも! |
コンダイン |
調子に乗らないことですネェ……! |
ウサタロー |
その感覚を忘れるな!行け皆野ー! |
皆野祐樹 |
うん、これで終わらせるよ! |
コンダイン |
む、無念ですネ~! |
---|---|
ウサタロー |
よくやったぜ、お前たちの勝利だ! |
皆野祐樹 |
今回も、なんとか勝てたね……。 |
酉原剛 |
祐樹も、自分の力の使い方が分かってきたみてーだな! それでこそ、俺様の相棒だぜ! |
村雨礼司 |
感情をパワーに変える力か。確かに強力だったな。 |
村雨礼司 |
……希少な能力者が、このチームに二人か。 今後も怪人に狙われることになるかもな。 |
皆野祐樹 |
え、えぇ~?それは辛いな……。 どうにかならないかな? |
森沢江湖 |
大丈夫。意外とすぐ慣れるよ? |
皆野祐樹 |
なにに!? |
酉原剛 |
どうにかするなら、例の怪人の組織とかってのを、 ぶっ潰すしかねーだろうな。 |
ウサタロー |
怪人の組織か……。そんなものが本当にあるのか? |
皆野祐樹 |
探すにしても、足掛かりもないしなぁ。 |
名雲光 |
……それなんだけどさ。 |
名雲光 |
足掛かりって言えるか分かんないけど、 怪人組織のヒントになるものは、あると思う。 |
ウサタロー |
マジかよ! |
名雲光 |
エコちゃんがコンダインに襲われたの、いつだっけ? |
森沢江湖 |
小さいときだよ。具体的には……十年前かな? |
皆野祐樹 |
それがどうかしたの……って、あれっ? |
名雲光 |
みなのんは気付いたみたいね。 |
酉原剛 |
ん、なんだ?説明してくれよ? |
皆野祐樹 |
超人能力って、若者だけが持つ力なんだよ。 |
村雨礼司 |
正確には十代前半で発現し、 二十代前半に失われていくとされているな。 |
ウサタロー |
だからヒーローも怪人も、若者しかいないんだぜ。 |
酉原剛 |
学園長はどうなるんだ? |
皆野祐樹 |
学園長は、鍛え続ける限り能力を保持できるっていう 特殊能力の持ち主らしいよ。 |
村雨礼司 |
言ってしまえば、学園長は特別。 あるいは例外ってやつだ。 |
名雲光 |
そういう例外がない限り、超人能力者の寿命は、 およそ十年しかないわけ。 |
酉原剛 |
つまりコンダインは、十代前半のときに江湖を 襲ったってことか。凶悪なやつだな! |
森沢江湖 |
……それって多分おかしい。 私を襲った怪人は、大人だったと思う。 |
酉原剛 |
いや、それこそおかしいだろ。 十年前に大人なら、今はもう能力消えてるはずだぜ! |
皆野祐樹 |
つまり、コンダインも「例外」だったとか? |
名雲光 |
ウチは、もう一つの可能性を疑ってる。 別の「例外」が、コンダインを生み出したのかも。 |
森沢江湖 |
……怪人を生み出す特殊能力者がいるってこと? 本当にそんな超人が存在するの? |
ウサタロー |
分かんねーけど、調べてみる価値はあるんじゃねーか? ただ手をこまねくより、よっぽどマシだぜ。 |
皆野祐樹 |
そうだね……みんなで調べてみよう! |