第1部 第2章
大洞窟サバイバルレース
不動老師 |
今回の体育の授業だが、 ここ、中部地方某所の大洞窟で行う。 |
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皆野祐樹 |
広い洞窟だなあ。 |
不動老師 |
内容はサバイバルレース! 洞窟の出口まで戦いながら走れ! |
皆野祐樹 |
体育……ですよね? |
酉原剛 |
いつもこんなもんだぜ。 強くなれるし、戦ったあとのメシはうまい! |
森沢江湖 |
あまり怪我しないでね? |
不動老師 |
今回は、一般の超人能力者の参加も受け付けた。 優秀な成績なら我が校に編入だ。 |
ウサタロー |
どういうことなんだぜッ!? |
不動老師 |
強いもの、そして速いものは儂が面倒を見る! |
不動老師 |
普通の学校にも能力者はいるからな。 腕自慢をリクルートしたいのだ。 |
村雨礼司 |
なるほど。 怪人たちの活動が活発化しているらしいからな。 |
不動老師 |
ではスタート! |
酉原剛 |
おらおら、どんどん行くぜぇ! |
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ウサタロー |
酉原は元気だなあ。 |
皆野祐樹 |
あのさ、学園長は「戦いながら」って言ってたけど あれってどういうこと? |
村雨礼司 |
妨害役がいるんだ。 それを超人能力で排除しながら進む。 |
皆野祐樹 |
でも、怪我人が出ちゃうよね? |
森沢江湖 |
セクレトさんが洞窟のなかに 敵っぽいものを立体映像で出すのよ。 |
名雲光 |
さすがに生徒同士で殴り合いとかできないっしょ。 |
皆野祐樹 |
じゃあ、敵をすり抜けちゃわないように 気をつけないといけないかな。 |
名雲光 |
セクレトちゃんの立体映像は触れるんだよ。 だから心配しないでOK。 |
皆野祐樹 |
ええ? それって映像? |
名雲光 |
こっちの脳になんか情報を送ってるのかもね。 そのへんどーなの? |
セクレト |
詳細な技術情報は カスタマーサポートにお問い合わせください。 |
名雲光 |
返事、来たことないじゃん。 |
セクレト |
多忙なもので、恐縮です。 |
村雨礼司 |
妨害役は、まあ見ればわかる。 そろそろスピードを上げるべきだな。 |
皆野祐樹 |
よーし! あ、あれかな?妨害役。 |
ダムデス |
ゴゴゴゴ~。 ゴゴッゴゴゴゴ~♪ |
ウサタロー |
すごい勢いで生徒が殴り倒されてるぜ……。 |
酉原剛 |
今回はいつもと違って強そうじゃねーか。 腕が鳴るぜ! |
村雨礼司 |
いや、あれは参加者だったような……。 |
ウサタロー |
じゃあルール違反だ! おいお前、反則負けだぜッ! |
ダムデス |
……怪人にルールなど不要! |
森沢江湖 |
……ん? |
ダムデス |
学園に潜り込むチャンスを狙っていたが、 おあつらえ向きのイベントをやってくれたものだな! |
セクレト |
……洞窟全域にダムデス選手の 手下怪人が確認されました。 |
ダムデス |
ゴゴゴゴ! お前たち全員を叩きのめし、一位になってやる! |
村雨礼司 |
なんだと? |
皆野祐樹 |
怪人だったなんて……。 |
村雨礼司 |
俺は最初から怪しいと思っていたぞ。 |
森沢江湖 |
確かに見た目は悪そうだったけど、 それで決めつけたらダメよ。 |
村雨礼司 |
実際に悪事を始めただろうが! |
名雲光 |
入口は閉じられちゃったし、 もう進むしかないねー。 |
皆野祐樹 |
ただでさえ体育は苦手なのに……。 |
皆野祐樹 |
本当のサバイバルになっちゃうなんて 予想外だよ……。 |
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セクレト |
まさに予想外!学園生徒はすでに18%が脱落し、 救護テントは野戦病院のようなありさまだッ! |
村雨礼司 |
な、なんだ? |
セクレト |
序盤トップはダムデス選手! |
セクレト |
怪人の正体を現し、 岩肌から手下を次々と生み出しているゥ! |
セクレト |
それを追う第二グループは、学園のマスコット! ウ・サ・タ・ローと仲間たちだああああ! |
セクレト |
誰が生き残るのか!一瞬たりとも目が離せないッ! |
酉原剛 |
ノリノリだな。 |
村雨礼司 |
怪人の仕業なのか? |
名雲光 |
あはは、ウチでーす。 ウケるっしょ? |
皆野祐樹 |
な、なんで? |
名雲光 |
セクレトちゃんをハッキングしたんだよねー。 面白そうだから。 |
森沢江湖 |
すごいすごい!実況みたい! |
名雲光 |
さすがにAIは複雑なんだけどさ。 キャラ変えくらいなら、できるようになったよ。 |
名雲光 |
レースが始まる前にセットしといたんだよね。 |
村雨礼司 |
意味のないことを……。 |
ウサタロー |
オイラと仲間たちかあ。 いいじゃねーか! |
皆野祐樹 |
ひとまとめにされちゃった。 |
酉原剛 |
そのあとも延々順位を読み上げてるからな。 短くしたんじゃねーのか。 |
村雨礼司 |
いまは非常事態なんだぞ。 それがわかっているのか? |
名雲光 |
イケメンは固ってーなあ。 みなのんのほうが、よっぽどわかってるよ? |
皆野祐樹 |
え、僕? |
村雨礼司 |
なにがわかっているというんだ。 |
酉原剛 |
そういや、あまり慌ててないよな。 逃げるってわけでもねーしよ。 |
皆野祐樹 |
あー、その。 怪人が出て、みんなが戦ってるんだよね。 |
村雨礼司 |
そうだ。 |
皆野祐樹 |
つまり出動してるときと同じだから そんなに慌てることないかなって。 |
ウサタロー |
なるほどだぜッ! キューバーンのときと一緒だな! |
森沢江湖 |
みんな強いし、大丈夫だよ。 信じてるからね~。 |
酉原剛 |
それに、このレースで上位に食い込めば かなり評価も上がるんじゃねーのか。 |
名雲光 |
トリ頭がそんなこと気にするなんて珍しいじゃん。 |
酉原剛 |
俺様、体育しかできねーからな。 この教科で、できるだけ点数稼がねーと! |
皆野祐樹 |
酉原くんは、すでに最高点だと思うけど……。 |
森沢江湖 |
数学とか地理の点数までカバーはできないよ? |
酉原剛 |
えっ。 |
村雨礼司 |
成績表はそういう風にはできていない。 |
酉原剛 |
マジかよ……。 |
セクレト |
依然としてトップはダムデス選手ゥ! この不動のポジションを崩せる奴はいないのか!? |
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ダムデス |
ゴゴゴゴ! いるわけがない! |
村雨礼司 |
追い抜いたら後ろから襲われることになるからな。 この位置をキープだ。 |
ウサタロー |
了解だぜッ! |
ダムデス |
俺様についてこられる奴らがいること自体、 ちょっとばかり驚きだがな!ゴゴッ! |
森沢江湖 |
あのー、ちょっといいですか? |
ダムデス |
ゴゴゴゴ。 構わんぞ。 |
森沢江湖 |
そのゴゴゴゴっていうの、笑い声でいいんですか? |
名雲光 |
ああーやっぱ? ウチも気になってたんですけど! |
ダムデス |
あ、ああ。 そうだ。 |
森沢江湖 |
岩っぽい超人能力だってわかってから 考えて練習したんですか? |
ダムデス |
うん。 |
森沢江湖 |
すごいすごい!努力家ですね! 私も、キメ台詞とかいろいろ考えてるんです。 |
ウサタロー |
なあ森沢、そこはあまり 聞かないほうがいいような気がするぜッ? |
森沢江湖 |
だって、すごいじゃない? ゴゴゴを笑い声にするなんて、普通は……。 |
ダムデス |
や、やかましい! いでよ手下怪人!こいつらから始末だ! |
酉原剛 |
変なこと言うから、敵を増やされちまったぞ。 |
森沢江湖 |
変かな? |
皆野祐樹 |
実は僕も、キャラ立てについては いろいろ考えてるんだよね。 |
森沢江湖 |
だよねだよね。 「お注射しちゃいます♪」とか……。 |
村雨礼司 |
俺は、一人で敵を倒したときには 「試合終了だ」と言っている。 |
ダムデス |
お前ら……結構……。 |
ウサタロー |
ゴゴゴ笑い、オイラもいいと思うぜ! |
ウサタロー |
怪人だから倒しちゃうけどな! |
森沢江湖 |
ビジュアルに合わせるの、参考にします! |
ダムデス |
ゴ……ゴゴゴゴゴゴ! その意気やよし! |
ダムデス |
俺様からトップを奪えるものなら 奪ってみるがいい! |
名雲光 |
あーあ。 怪人を元気にしてどうすんの。ウケる。 |
酉原剛 |
「食卓から事件現場に登場!」……とかか? うおお、難しいぜ。 |
名雲光 |
あんたも!? |
皆野祐樹 |
いや、これはヒーローとしては大事なポイントだよ。 名雲さんも考えないと。 |
名雲光 |
めんどくせー。 |
セクレト |
参考までにお教えしますと。 |
名雲光 |
うわっ、急に戻った。 |
セクレト |
キャラ立ちとヒーローとしての成功には、 明確な相関関係があります。 |
名雲光 |
そ、そうなの? |
セクレト |
そういうわけでッ!この洞窟から出たとき、 ちゃんとキャラは立っているのか!? |
セクレト |
そちらにも注目だぁッ! |
セクレト |
さあ!レースは最初の難関 迷路ゾーンに突入だ! |
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セクレト |
強さと速さだけではなく、頭脳も試されるッ! |
皆野祐樹 |
あ、これ知ってる。 |
ウサタロー |
どうした、皆野? |
皆野祐樹 |
壁に右手をつけて、離さないように進めば 必ず出られるんだよね。 |
酉原剛 |
なんだそれ……魔法か? 祐樹は魔法使いなのか? |
名雲光 |
古典じゃね? |
村雨礼司 |
その案でいこう。 時間はとってしまいそうだが……。 |
森沢江湖 |
ダムデスさんの後ろをついていくのはどうかな? |
村雨礼司 |
奴はきっと道を間違える。 見た目、頭脳タイプではないからな。 |
森沢江湖 |
見た目で判断するのはよくないですよ! |
ダムデス |
岩の壁で道をふさぐとは、小癪な! ゴゴゴゴ!ロックナックル! |
ダムデス |
なんだ?また壁か。 しかし問題ない!ロックナックル! |
ダムデス |
ロックナックル! ロックナックル! |
セクレト |
ダムデス選手、迷路を破壊ィ! 圧倒的な強さは、いかなる頭脳をも凌ぐ! |
セクレト |
まったく速度が緩まない! このまま出口まで独走なのか!? |
村雨礼司 |
……な? |
森沢江湖 |
たまたまですよ! |
皆野祐樹 |
珍しく、いいこと言えたと思ったんだけどなあ。 |
酉原剛 |
ダムデスがルールを守らないだけだから あんま気にすんなよ。 |
村雨礼司 |
アイディアはよかった。 状況に合わなかっただけだ。 |
皆野祐樹 |
へへへ……。 |
酉原剛 |
俺様だって、もっと食えたら壁を壊すくらいできるぜ? |
村雨礼司 |
できるのか? |
酉原剛 |
俺様のパワーは、食えば食うほど強くなる! |
酉原剛 |
……でも、胃袋の容量には限界があるんだよな。 悲しい話だぜ。 |
名雲光 |
結局ダメなのかよ。 |
酉原剛 |
大食いも鍛えてるから、今後に期待してくれ! |
ウサタロー |
みんな、ダムデスが行っちまうぜ! 急ごう! |
村雨礼司 |
後続のために、手下を減らしながら進むぞ。 |
皆野祐樹 |
うん! |
村雨礼司 |
そろそろ洞窟の外でも、 誰かが異変に気付いているはずだ。 |
村雨礼司 |
レースは中止になり、上級生が助けに来るはず。 |
森沢江湖 |
学園長が来てくれるといいね! |
酉原剛 |
えー、あの爺さんが来たら それだけで終わっちまうぜ? |
酉原剛 |
このまま続行でいいんじゃねーのか? |
村雨礼司 |
そういうわけにもいかないだろう。 怪我人が出ているんだぞ。 |
皆野祐樹 |
そうだね……山のなかだから、 森沢さんが、あとでまとめて治せるかな? |
森沢江湖 |
大丈夫だよ~。 |
ダムデス |
ゴゴゴゴゴ! しぶといやつらだな! |
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皆野祐樹 |
セクレト! まだレース続行なの!? |
セクレト |
学園生徒の青春のごとく駆け抜けるこのレース! 止まりません、誰にも止められないのです! |
皆野祐樹 |
そんなバカな!? |
村雨礼司 |
名雲、セクレトに余計な手を出すなと言っただろう! |
名雲光 |
判断ルーチンとか、ウチいじってないし! |
セクレト |
トップ集団から実況に疑問が呈された! しかし残念!これは学園長の指示です! |
不動老師 |
我が学園の生徒たちであれば、 この程度の試練は問題ない。続行だ。 |
セクレト |
イケメン村雨礼司から学園長に、 直接通話のリクエストだ! |
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セクレト |
これは波乱の予感! 学園長はどう出る……応答!応答したァ! |
村雨礼司 |
どういうことなんだ、学園長! |
不動老師 |
村雨君、君はヒーローだろう。 |
村雨礼司 |
ああ、そうだ。 |
不動老師 |
ならば怪人が出現したとき、どうする。 助けてもらうのかね? |
村雨礼司 |
くっ……しかし。 |
不動老師 |
状況は、最初からセクレトを通じて すべて把握している。 |
不動老師 |
あえての続行だ。 まずは自分たちの力で対処したまえ。 |
ダムデス |
ゴゴゴゴ! 大人に見捨てられちまったか、悲しいな! |
森沢江湖 |
いえ、そうじゃありませんよ? |
ウサタロー |
学園長は、オイラたちを信じて お前の相手を任せてくれたんだぜッ! |
ダムデス |
あ、そういう話か。 |
不動老師 |
生徒たちを鍛えるという意味でも有難い話だ。 ダムデス選手のご協力に感謝する。 |
酉原剛 |
……だってよ。 |
ダムデス |
ふざけやがって、俺様が怖くないのか!? 絶対に生徒を全滅させて、それで一位になってやる! |
皆野祐樹 |
そんなことはさせないぞ。 先にゴールするのは僕ら……。 |
皆野祐樹 |
……僕らの誰かが、少なくとも……。 |
ウサタロー |
どうした皆野!歯切れが悪いな! |
皆野祐樹 |
走るの、苦手なんだよねえ。 |
村雨礼司 |
最低限の身体能力は確保しておけ。 周りの足を引っ張るんじゃない。 |
皆野祐樹 |
そうは言ってもさ。 |
森沢江湖 |
大丈夫だよ~。 |
森沢江湖 |
もう、レースというか、 ゴールまでにダムデスさんを倒す競技になってるから。 |
名雲光 |
それもそーだよね。 |
セクレト |
トップ集団より後ろは、手下怪人に手間取っているゥ! かなりの遅れだ! |
セクレト |
もはや勝負はトップ集団に託された! |
村雨礼司 |
……なにも問題はない。 ダムデスを追い、ゴールまでに倒す。 |
不動老師 |
フフフ、頑張ってくれたまえ。 では、見守らせてもらうぞ。 |
ダムデス |
ゴゴゴゴゴゴ! ゴバァー! |
ウサタロー |
口から水が! |
皆野祐樹 |
あれは怒りのゴゴゴ……かなあ? |
名雲光 |
無理にキャラ作ったりするから 分かりづらくなってね? |
酉原剛 |
ダム怪人の表現なんだなあ。 |
ダムデス |
解説するな! 体でわからせてやるぞ! |
皆野祐樹 |
うわー、また来た! |
手下 |
ここから先は通さないぞ! |
---|---|
ウサタロー |
どれだけ来ても、オイラ達は止められないゼ! |
手下 |
どれだけ? |
手下 |
僕が最初じゃないのか? |
酉原剛 |
山ほど来てるぞ。 もう倒したけどよ。 |
手下 |
そ、そんな。 |
皆野祐樹 |
怪人になった人の手下召喚能力って、 こういう感じなの? |
名雲光 |
普通、ある程度の情報は与えられて出てくるけどね? |
ウサタロー |
個性は怪人本体に似た感じになるぜ! |
村雨礼司 |
すでに大量に倒されているというのは、 士気にかかわる情報だからな。 |
森沢江湖 |
教えずに戦わせるの? ひどくない!? |
村雨礼司 |
怪人にとって、召喚する手下はただの捨て駒だ。 こいつも、俺たちの体力を削るだけの存在だ。 |
手下 |
なん……だと……。 |
村雨礼司 |
哀れだな。 死ね。 |
手下 |
うわあ! |
皆野祐樹 |
あっ、待って待って。 もう彼はいいんじゃない? |
村雨礼司 |
邪魔をするな! 怪人は悪だ。すべて倒す! |
皆野祐樹 |
でも、もう、やる気なさそうだし。 戦わなくてもいいよね。 |
手下 |
お前……。 |
セクレト |
皆野選手、怪人と心温まる交流! ハートウォーミーング! |
皆野祐樹 |
……えっと。本体が倒されたら、手下はどうなるの? |
ウサタロー |
消えるぜ。 |
村雨礼司 |
そもそも、本物の生き物ですらないんだ。 情けをかけてどうする。 |
手下 |
……。 |
皆野祐樹 |
それでも、悪いことをまだしてない人を 倒すべきじゃないよ。 |
名雲光 |
みなのん、目がマジだね。 |
皆野祐樹 |
ヒーローは……。 |
ウサタロー |
そうだな!ヒーローはそんなことしないぜッ! |
村雨礼司 |
チッ、いいだろう。 だが奴が後続の生徒に被害を与えたら……。 |
皆野祐樹 |
そんなことにはならないよ。 そうだよね? |
手下 |
……僕はどこかへ行くよ。 邪魔はしない。 |
酉原剛 |
お?そうか。 じゃーなー。 |
森沢江湖 |
皆野くん、戦わずに怪人を……。 そんなこと、できるんだ。 |
皆野祐樹 |
話してわかる人でよかったよ。 さあ、行こう。 |
皆野祐樹 |
遅い僕に合わせてもらってるから けっこう離されちゃったよ。 |
セクレト |
感動ッ!感動のエピソードです! ……ハッ!?不肖セクレト、実況のアイディアが! |
セクレト |
選手の幼少期からの人生をドラマ仕立てにして……。 親しい人や家族からのコメントを……。 |
村雨礼司 |
やめろ! |
酉原剛 |
お前、放送してるわけじゃねーだろ! |
村雨礼司 |
まったく、どんなサポートAIだ! |
村雨礼司 |
ハア、ハア……。 |
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皆野祐樹 |
ぜはー。 |
酉原剛 |
けっこう疲れてきてるな。 まだまだ先は長いんだぜ? |
皆野祐樹 |
訊いてなかったけど、 このコースってどのくらい長いの? |
酉原剛 |
長さは知らないけどよー。 前にやったときは五時間くらい走ったか? |
皆野祐樹 |
ええ……。 |
森沢江湖 |
そんな絶望的な顔しないで! 倒れたらお薬打ってあげるね。 |
皆野祐樹 |
みんな、これ平気なの? 自信なくすなあ。 |
名雲光 |
ウチは、ダルいから途中でリタイヤしたよ。 |
酉原剛 |
ずっりー。 |
名雲光 |
あとでハッキングで点数書き換えたし。 これが賢い体育の……。 |
セクレト |
不正! 発覚ゥ! |
名雲光 |
あー! |
セクレト |
前回のスコアが補正された結果、 名雲選手は今後二週間、毎日体育の補習となったァ! |
名雲光 |
ウケる。 |
皆野祐樹 |
ウケるの? |
名雲光 |
あとで補習を無効にしちゃえばいーし。 |
村雨礼司 |
鍛えておいたほうがいい。 今回のように、サボれない事態への備えなんだぞ。 |
名雲光 |
イケメンはマジで真面目よねー。 |
皆野祐樹 |
森沢さんは前回とか、どうしたの? |
森沢江湖 |
疲れてきたら、自分で回復してたよ。 |
酉原剛 |
いいな!回復能力! |
森沢江湖 |
でも速いわけじゃないから、 順位はけっこう悪かったな。 |
酉原剛 |
ちなみに俺様だが、腹が減りすぎて ゴール直前でリタイヤしてた。 |
酉原剛 |
トップ集団だったのにな。 あれは惜しかったぜ! |
皆野祐樹 |
だ、大丈夫? 今回も倒れたりしない? |
酉原剛 |
大丈夫だ。学習したからな。 スタート前に目いっぱい食った! |
村雨礼司 |
普通、それはダメな行動なんだが……。 まあ酉原なら大丈夫か。 |
ウサタロー |
村雨は前回一位だし、余裕っぽいな。 |
村雨礼司 |
ヒーローたるもの、完走くらいは当然だ。 俺は給水ポイントをショートカットできるしな。 |
皆野祐樹 |
みんな能力をうまく使ってるんだね。 すごいなあ。 |
ウサタロー |
皆野は気持ちで強くなれるだろ? 気合を入れて走れば、大丈夫だぜ! |
森沢江湖 |
そうだよ。それに、友達と一緒に走ってると 一人よりも辛くないよ。 |
森沢江湖 |
一緒に頑張ろうね! |
皆野祐樹 |
これってマラソン大会とかでよく聞く……。 ゴール前でダッシュされたり……。 |
ウサタロー |
どんだけ体育にトラウマ抱えてるんだよッ! さっさと行こうぜ! |
皆野祐樹 |
う、うん。 |
セクレト |
次の難関はヌルヌルゾーン! |
---|---|
森沢江湖 |
いやぁ! ヌルヌルだけは! |
ウサタロー |
前のレースでは、そんなのなかったぜ? |
セクレト |
洞窟は、いつまでも同じ姿ではない! 自然は生きているのだッ! |
セクレト |
新たに発生した割れ目から地下水が漏出! それをたっぷり含んだ菌類がコースを覆う! |
セクレト |
足を降ろす場所を間違えた瞬間! ヌルヌルのネトネトだあああ! |
森沢江湖 |
ヤダヤダ、ヌルヌルやめてください! |
ダムデス |
ゴゴゴゴ! いいことを聞いたぞ! |
ダムデス |
放水モード! |
ダムデス |
ゴバー。 ゴバアアアア……。 |
村雨礼司 |
あいつ、なにをしている!? |
セクレト |
おおっと、先頭のダムデス選手が! 口から……大量の水を……。 |
名雲光 |
うえええ。 |
ダムデス |
ゴババババ! ヌルヌルゾーンを広げてやる! |
森沢江湖 |
ヤダヤダ、ヌルヌルやめてください! |
皆野祐樹 |
うーん、困ったな。 コース全体がヌルヌルになっちゃったよ。 |
皆野祐樹 |
もう滑っていくしか……。 |
森沢江湖 |
絶対イヤ! |
名雲光 |
ウチも遠慮するわー。 そんな姿を見られたくもないし。 |
酉原剛 |
こういうのって、パワーじゃどうにもならねーよな。 |
ウサタロー |
皆野!感情の爆発でどうにかならないかッ!? |
皆野祐樹 |
無理。 |
名雲光 |
ハッキングも無力だよー。 |
村雨礼司 |
俺に任せろ。 |
森沢江湖 |
村雨くん、おんぶしてくれるの? |
村雨礼司 |
しない。 |
森沢江湖 |
してよー! |
村雨礼司 |
俺の能力は、空気中から水を集める。 集め続けると、どうなるか……。 |
皆野祐樹 |
あっ、そうか! 湿度がどこまでも下がる! |
村雨礼司 |
集めた水は、まとめて別のところに流そう。 皆野も協力しろ。水を炎で温めるんだ。 |
皆野祐樹 |
わかった! |
名雲光 |
イケメン、除湿機能もあるんだ。 |
村雨礼司 |
エアコンみたいに言うんじゃない。 |
酉原剛 |
おー、ヌルヌルがどんどんパリパリになっていくぜ。 礼司って便利だな。 |
名雲光 |
雨の日の洗濯物とか、頼もう。 |
村雨礼司 |
乾燥機でもない! |
皆野祐樹 |
超人能力って、戦うこと以外にも いろいろ使えるんだね。 |
村雨礼司 |
まあな。 これがチームを組むことの利点だ。 |
名雲光 |
乾きすぎてお肌が心配になってくるんだけど。 |
村雨礼司 |
生き物の水分を直接奪うことはない。安心しろ。 |
酉原剛 |
それができたら、かなり強いよな。 |
名雲光 |
ロボ怪人とか出てくるだけじゃね? |
森沢江湖 |
うーん、おかしいな。 後ろのほうが静かね。 |
---|---|
セクレト |
あえてお教えしましょう! ダムデス選手に倒された生徒たちが誘拐されています! |
名雲光 |
ウケる。 |
村雨礼司 |
ウケてる場合か! |
セクレト |
選手がどんどん減っていくゥ!実況は楽ですね。 |
森沢江湖 |
本当に授業中止じゃなくて大丈夫? |
酉原剛 |
大丈夫だろ。洞窟だから出口は一個しかねえ! そこで怪人を倒せば一網打尽だ! |
皆野祐樹 |
そ、そうか! 酉原くん、冴えてる! |
酉原剛 |
肉、食ってるからな! |
村雨礼司 |
その案を採用しよう。怪人より先にゴールするぞ。 |
ウサタロー |
誘拐か……邪悪だぜッ。 |
---|---|
名雲光 |
なんか最近、さらう系の怪人多くね? |
村雨礼司 |
純粋な戦闘系の超人能力者は、 誘拐しても使い道がないはずだが……。 |
ウサタロー |
どーせ身代金要求だぜ! 許せないぜ! |
村雨礼司 |
そうか。 それならありそうな話だな。 |
酉原剛 |
出られない状態で誘拐っていってもよ。 縛ったりして無力化してるだけだろ? |
皆野祐樹 |
こう言っちゃなんだけど、手下怪人だよね。 みんなほんとに負けてるのかなあ。 |
森沢江湖 |
私たちが倒し損ねた手下の人が、 けっこう後ろに流れてるよ。 |
名雲光 |
一度にかかってこられると、 わりとヤバいかもね。 |
村雨礼司 |
俺たちは位置取りとスピードに救われている。 遅れないことが重要だ。 |
ダムデス |
ゴゴゴゴゴ……。 ここまでは、なんとかついてきたようだがな。 |
ダムデス |
俺様の体力は、ダムの水のように無尽蔵だ。 いずれお前たちは力尽きる! |
酉原剛 |
ダムの水は無尽蔵じゃないぞ。 |
皆野祐樹 |
夏場の節水とか、大事だよね。 |
ダムデス |
そ、そうだな。 |
ウサタロー |
やいやいやい! 生徒を誘拐してどうするつもりなんだ! |
ダムデス |
教える義理はないぞ。 止めたければ、俺様を倒して手下を消滅させることだ! |
森沢江湖 |
は~。 なんだか新鮮。 |
酉原剛 |
なんでだ? |
森沢江湖 |
いつもさらわれてばっかりだったから。 さらわれる人を助けるのって初めてなの。 |
皆野祐樹 |
それは、大変だったね。 |
村雨礼司 |
プレッシャーを正しく感じているのか? 俺たちが失敗したら……。 |
酉原剛 |
学園長が出てきちまう。 台無しだ。 |
名雲光 |
そしたら全員スコア0とか言い出しそう。 ヤバいよー。 |
酉原剛 |
俺様は体育で成績が悪いと、もうダメだ。 |
ウサタロー |
そんなことにはならないぜ! オイラも、仲間もついてるからなッ! |
ダムデス |
ゴゴゴゴ。 超人能力者に仲間などいない! |
ダムデス |
あるのは、力による支配だけだ。 |
ダムデス |
一位になって、クラス全員の誘拐を成功させて、 それを証明してやろう! |
皆野祐樹 |
そんなこと! 君の手下は……君のために戦ってるんだぞ。 |
ダムデス |
あんなものは、道具でしかない。 俺様の能力の一部ではないか。 |
名雲光 |
超人能力で召喚されたヤツには、 意識も記憶もあるんだよ! |
名雲光 |
お前、マジふざけんな! |
皆野祐樹 |
ゆ、許せない! |
酉原剛 |
しかしよー。そろそろ腹が減ってきちまった。 |
---|---|
森沢江湖 |
体がなんだかしぼんできてるね? |
酉原剛 |
ドーピングってわけじゃねーけどよ。 栄養剤とか出せねえか? |
森沢江湖 |
私の能力はそういうのじゃなくて、 まわりの自然から、生命力をちょっとずつもらうの。 |
森沢江湖 |
それを「お注射しちゃいます♪」ってするのよ。 |
酉原剛 |
つまり、腹は膨れないのか。 |
森沢江湖 |
たぶん……。 |
酉原剛 |
まいったぜ。 そのへんのキノコでも食うか。 |
村雨礼司 |
やめろ! 素人がキノコを採取して食べるな! |
村雨礼司 |
ほぼ自殺だぞ。 |
ウサタロー |
そ、そんなに? オイラは食べていいやつとか、なんとなくわかるぜ。 |
名雲光 |
さすがウサタローちゃん。 マジでウサギっぽいんですけど。 |
皆野祐樹 |
食べられるやつとか、あるの? |
ウサタロー |
ないぜ。 このへんのは全部ヤバそうな感じだ。 |
ウサタロー |
あまり胞子も吸い込まないほうが……あれ? 皆野がなんか、トロンとしてないか? |
皆野祐樹 |
ハハハ、そんなバカな。 みんながちょっと緑色になってきただけじゃないか。 |
村雨礼司 |
ど、どうした? みんなどこへ行った? |
皆野祐樹 |
いまなら光合成できる気がする~。 |
名雲光 |
ヤバい。 このへんって……。 |
セクレト |
イエエエエェス! 幻覚キノコゾーン! |
セクレト |
まともにコースをたどることさえできません! さあ、どう切り抜ける!? |
皆野祐樹 |
えー、ちゃんと歩けてるよー。 根っこ生えてきたけどー。 |
酉原剛 |
すごいごちそうの山じゃねーか! 学園長、気が利いてるな! |
ウサタロー |
これはまずいんだぜッ! |
森沢江湖 |
お、お注射! |
皆野祐樹 |
はっ、ここは? |
森沢江湖 |
とりあえず、全員回復しないと……。 |
村雨礼司 |
孤独だ……俺は孤独だ……。 |
森沢江湖 |
お注射! |
村雨礼司 |
ん?なにをボンヤリ突っ立っているんだ。 レース中だぞ! |
ウサタロー |
村雨、覚えてないのか。 |
皆野祐樹 |
森沢さんが回復してくれてるけど、 このあたりでは幻覚が見えるみたい。 |
皆野祐樹 |
あまり息をしないで! |
村雨礼司 |
なんだと!? 了解したが、俺はなにか醜態をさらしていたか? |
ウサタロー |
別に……。 |
名雲光 |
うー、クラクラする。 |
酉原剛 |
食えないメシは酷だぜー。 |
村雨礼司 |
みんな回復したか。 これは、ダムデスに追いつくチャンスだな。 |
皆野祐樹 |
そ、そうだね! |
セクレト |
ところが残念!ダムデス選手には胞子が効かない! やはり岩だからでしょうかー。 |
皆野祐樹 |
そんなあ。 |
村雨礼司 |
まだ追いつけないとは……! |
名雲光 |
はー、やっぱ体育ってダルいわ。 マジでみなのんに同意。 |
---|---|
皆野祐樹 |
僕はダルいとは言ってないけど。 |
皆野祐樹 |
苦手なだけだよ。 |
名雲光 |
ウチはインドア派なんだよー。 エアコンのない場所に長くいると死ぬ。 |
ウサタロー |
まあそう言わず、頑張ろうぜ! 向いてない感じの皆野も森沢も、よくやってる! |
森沢江湖 |
私は、なるべく体育は真面目にやってるよ? |
名雲光 |
なんでよー。 体なんか勝手に育つって。マジで。 |
森沢江湖 |
それが、最近育ちすぎというか。 生命のエネルギーに満ち溢れすぎというか。 |
名雲光 |
それって……。 |
酉原剛 |
太ったんだな。 そういやドーナツがどうとか言ってたか。 |
森沢江湖 |
ううっ。 あれから、また、ロールケーキのブームが。 |
酉原剛 |
別にいいじゃねーか。 体重なんて、増えたり減ったりするもんだ。 |
名雲光 |
トリ頭は特にねー。 |
酉原剛 |
なんだよ。 なんか刺々しいな。 |
名雲光 |
あのさー、トリ頭くらい元がでかいと 十キロ増えたり減ったりするのってすぐでしょ? |
名雲光 |
ウチらはそうもいかないんだよねー。 |
森沢江湖 |
百グラムに命を燃やしてるんです! |
酉原剛 |
へー、そうなのか。 大変だな。 |
名雲光 |
まあ、エコちゃんはそのくらいがいいと思うよ? 頑張る必要ないって。 |
森沢江湖 |
えー、でもー。 |
名雲光 |
みなのんも、そう思うっしょ? |
皆野祐樹 |
そうだね。モデル体型みたいなのって、 かなりのダイエットが必要だからね。 |
森沢江湖 |
そ、そう? |
皆野祐樹 |
ダイエットなんて成長期にやることじゃないよ。 |
名雲光 |
そんなに簡単でもないけどねー。マジで。 でもエコちゃんに関しては同意。 |
森沢江湖 |
酉原くんはどう思うの? |
酉原剛 |
仲間が太ってようが痩せてようが 頼りになればそれでいいだろ。 |
森沢江湖 |
太ってないもん! |
酉原剛 |
なんだよもー。 |
ウサタロー |
ここはオイラがフォローするぜ! |
ウサタロー |
森沢は太ってない! ふくよかだ! |
森沢江湖 |
……うわーん! |
皆野祐樹 |
ウサタロー、それは……。 |
ウサタロー |
失敗したぜ! でもヒーローは諦めない! |
村雨礼司 |
お前ら、少しは真面目に走れ! 無駄口ばかりじゃないか! |
皆野祐樹 |
(村雨君、ナイス!) |
森沢江湖 |
走るよ。走りますよー。 脱水で倒れるまで走ってやるー! |
ウサタロー |
ほどほどにな! |
村雨礼司 |
ちなみに俺も、ダイエットはしなくていい派だ。 |
皆野祐樹 |
だよね。 |
村雨礼司 |
運動して筋肉をつければ、体重は増えてしまうしな。 ……これは森沢には聞かせないほうがいいか。 |
村雨礼司 |
……おかしいな。ダムデスが見えてこない。 |
---|---|
酉原剛 |
けっこうペース上げてるのにな。 あいつ、かなり速いのか? |
名雲光 |
あの体型で?ウケる。 |
村雨礼司 |
そうは思えない。 これは……。 |
皆野祐樹 |
道を間違えた!? |
村雨礼司 |
というよりも、間違えさせられた。あいつ…… 能力を使ってコースを変え始めたんじゃないか? |
セクレト |
気づいたァ~!ハンサムにしてクレバー! 村雨選手の推理がさえわたる! |
名雲光 |
おいー。 |
酉原剛 |
知ってたなら言えよ。 |
セクレト |
現在の方針は、「自力でなんとか」です。 お忘れですか? |
皆野祐樹 |
ああー、そうか。 |
ウサタロー |
さっき、岩の色が変なところがあったぜ。 あそこまで引き返して、岩を崩してみよう! |
酉原剛 |
それくらいなら、俺様のパワーで壊せるだろ。 |
手下A | ガガガガッ! そうはいかない! |
手下B | ダムデス様がお前たちを このルートに送り込んだのは……。 |
手下A | 僕らがまとめて襲いかかることを可能にするためだ! |
皆野祐樹 |
後ろから……! |
酉原剛 |
おいおい、けっこうな数だな。 これはちょっと食い応えがありそうだ。 |
手下B | ダムデス様の目的のため、お前たちを倒す! |
手下A | 倒して縛って、出口まで運ぶ! |
森沢江湖 |
そ、そのあとは? |
手下B | そういえば知らないな。 |
手下B | まあ、ダムデス様から別途指示があるだろう。 |
村雨礼司 |
ただでさえ時間を無駄にしてしまったんだ。 急いで倒させてもらうぞ。 |
村雨礼司 |
手加減は期待するな。 |
手下A | 何時間も走ってボロボロなのに、 よくそこまで言えたもんだ。 |
村雨礼司 |
俺はな、サッカーをしているときと、 怪人と戦ってるときには、まるで疲れを感じない。 |
村雨礼司 |
お前らは社会の害悪だ! 消滅させて、世界を元に戻してやる! |
セクレト |
さあ、第二グループが分かれ道まで引き返すには 相当な数の手下を倒さなければならない! |
セクレト |
果たしてそれは可能なのか? その答えはCMのあとで明かされる! |
森沢江湖 |
えっ、CMに入っちゃう? |
名雲光 |
ないない。ないからねー。 はあ、変なところを変えちゃったかな。 |
皆野祐樹 |
走って追いつくだけのつもりだったのに、 みんな、いろいろ考えるものだね……。 |
皆野祐樹 |
僕も、もっと頑張らないとな。 |
ウサタロー |
所詮は小細工だぜ! 皆野、お前は自分の道を走るだけでいいんだぜ! |
セクレト |
残り少ない生徒たちが大健闘ゥ! いよいよ障害物ゾーンに差し掛かったァ! |
---|---|
ダムデス |
ゴゴゴゴ?うわ、ちょ、棘丸太!? |
セクレト |
ダムデス選手がちょっと削れたあァ!! |
名雲光 |
マジで? |
皆野祐樹 |
障害物が死ぬやつなんですけど。 |
不動老師 |
フフフフ。 |
ウサタロー |
不動学園長、厳しいぜ……。 でもこれを乗り越えてこそヒーローだろ! |
森沢江湖 |
う、うん! |
村雨礼司 |
大丈夫だ。怪人の後ろをついていけばいい。 あいつがまき散らす手下にさえ耐えれば追いつける。 |
名雲光 |
イケメン冴えてる~。 |
村雨礼司 |
当然だ。 |
ウサタロー |
障害物ゾーン……死ぬやつか……。 |
---|---|
村雨礼司 |
さっきも言ったが、 ダムデスが全部の障害物に当たって、壊している。 |
村雨礼司 |
ここで追い越すことはできないが、 後ろについていけば安全だ。 |
村雨礼司 |
さらにダムデスの体力も削れる。 |
酉原剛 |
いいことだらけだな! |
ダムデス |
ゴゴゴゴ。 そう思うか? |
森沢江湖 |
あ、ダムデスさんの削れた破片が……。 |
皆野祐樹 |
怪人に変わっていく! |
ダムデス |
悪のボス怪人を名乗るからには、 このくらいの芸当は必要だろう? |
ダムデス |
お前たちの戦いはさらに激しくなるぞ。 安全とは笑わせてくれる!ゴゴゴゴ! |
村雨礼司 |
くっ……。 |
ウサタロー |
村雨、熱くなるなよ。 ここで挑発に乗って飛び出しちゃダメだ! |
ウサタロー |
学園長の障害物と手下怪人、 両方を相手にすることになってしまうぞ! |
村雨礼司 |
わかってる! 指示は俺が出す! |
皆野祐樹 |
うん。頼むよ。 けっこう疲れてるけど、村雨くんの指示で飛び出すよ。 |
村雨礼司 |
あ、ああ。 |
皆野祐樹 |
頼りにしてるからね。 |
村雨礼司 |
当然だ。 タイミングが来る前に倒れるなよ。 |
森沢江湖 |
おお~。 |
名雲光 |
イケメンあしらいがうまくなってる。 ウケる。 |
皆野祐樹 |
え? 僕は思ったことをそのまま言ってるだけだよ。 |
名雲光 |
あーなるほどねー。 天然か。 |
名雲光 |
嫌いじゃないわ。 |
皆野祐樹 |
よくわかんないけど、倒れないようにするよ。 |
ウサタロー |
いまは耐えるときだぜ! |
酉原剛 |
我慢といえば、かなり腹が減った。 |
名雲光 |
マジな話、トリ頭さあ。 その超人能力なら、携帯食とか持ってるでしょ? |
酉原剛 |
ああ。持ってるぜ。 でも俺様はな……。 |
名雲光 |
なによ。 |
酉原剛 |
ゲームとかで、回復アイテムを最後までとっとく…… そんなタイプなんだぜ! |
森沢江湖 |
すごくわかる! |
酉原剛 |
だから、まずはそのあたりで手に入るもので 腹を満たしたい。 |
村雨礼司 |
どこに食べ物があるというんだ。 さっさとそのチョコバーを食え。 |
酉原剛 |
でもなー。 最後のやつだからなー。 |
村雨礼司 |
体型に見合わず、細かい奴だな! |
酉原剛 |
体型は関係ねーだろ! |
森沢江湖 |
そうだそうだ! |
皆野祐樹 |
あの、いまは耐えるところなんで……。 |
酉原剛 |
おっ、そうだな。 ボス前までとっとくぜ! |
村雨礼司 |
はあ……真面目にやっているのは 俺と皆野だけか。 |
セクレト |
ダムデス選手、強い!速い! 障害物を破壊しながら、後続を引き離す! |
---|---|
皆野祐樹 |
うそー……。 |
名雲光 |
タフすぎる。 マジで。 |
酉原剛 |
また見えなくなっちまったなあ。 |
皆野祐樹 |
キツい……この洞窟、なんでこんなに広いの? どう考えても五時間どころじゃないしさー。 |
ウサタロー |
弱音を吐くなよ、皆野。 クラスメイトがみんな、さらわれちまうぞ! |
皆野祐樹 |
あ、うん。 ごめん……体力が削れると、つい弱気になって。 |
酉原剛 |
でも変だよな。 祐樹の言うこともわかるぜ。 |
酉原剛 |
これだけでかかったら、 小学校の地理の教科書に載ってそうなもんだよな。 |
村雨礼司 |
俺も、この場所のことは編入するまで知らなかった。 不自然ではあるな。 |
名雲光 |
あーそれね。 噂なんだけど。 |
森沢江湖 |
光ちゃん、なにか知ってるの? |
名雲光 |
不動仮面の時代に、謎の怪人が掘ったって噂だよ。 |
名雲光 |
たくさんの超人能力者をここに閉じ込めて 皆殺しにしようとしたんだって。 |
ウサタロー |
なんだって!? |
名雲光 |
不動仮面がみんなを助け出したんだけど 洞窟を作った怪人は見つからなかったとか。 |
皆野祐樹 |
本当に!? |
名雲光 |
だから噂だって。 |
村雨礼司 |
信じられないな。超人能力者の皆殺し? そんなことをして、なんになる。 |
皆野祐樹 |
こんな洞窟を作るほどすごい能力も知らないなあ。 不動学園長でも、これはできないよね。 |
ウサタロー |
無理だと思うぜ! |
不動老師 |
むっ。誰かが儂の話をしているのか? |
セクレト |
重要ではありませんので、無視するのがよろしいかと。 |
不動老師 |
そうか。フフフ……。 儂がいてくれたら、という話をしているのであろう。 |
名雲光 |
なんか、ヒーローと怪人の区別なしに さらったり倒してた奴がいたとか……。 |
名雲光 |
そんな、 マジで超すごい大魔王みたいなのがいたらしーよ。 |
村雨礼司 |
荒唐無稽だ。 |
皆野祐樹 |
名雲さんのことは信用してるけど それはちょっと。 |
名雲光 |
ウチも信じてるわけじゃないし! そんな話もあるよってだけだって! |
森沢江湖 |
こ、殺されるの……!? |
村雨礼司 |
森沢が真に受けてるじゃないか! 変な話をするから! |
森沢江湖 |
殺されるのイヤ!絶対イヤ! |
酉原剛 |
そりゃそうだわな。 俺もだ。 |
村雨礼司 |
大丈夫だ、森沢。 超人能力者を狩るものなんていないんだ。 |
名雲光 |
……。 |
名雲光 |
うん。これはないわー。 怪しいサイトの適当な話だからさ。 |
名雲光 |
安心して無視していいよー。ね? |
森沢江湖 |
う、うん……。 |
皆野祐樹 |
壊された障害物が、ずっと続いてるね。 後ろのほうは、ほんとに大丈夫なのかな。 |
---|---|
セクレト |
私の実況を聞きたいようですね! ではお教えしましょう!背後の様子を! |
皆野祐樹 |
あ、お願いします。 |
セクレト |
ダムデス選手の生み出した手下怪人の一部が造反! 一部の生徒が解放されて、戦闘が再開されています! |
村雨礼司 |
なんだと!? いったいなぜ、そんなことが起きるんだ? |
セクレト |
皆野様が助けた怪人が、仲間に話をしたようです。 いやあ、いいことをしていると、いいことがある! |
セクレト |
これから、手下怪人の生涯をドラマ仕立てで……。 |
名雲光 |
あ、それはいいから。マジで。 ストップストップ、と。 |
セクレト |
まァとにかく!解放された生徒たちと 残りの手下怪人は、なかなかいい勝負です! |
セクレト |
レースの勝敗に絡むのは厳しいでしょうが、 ダムデス選手が倒されれば、自力で出てくるでしょう! |
皆野祐樹 |
お、おお~……? |
ウサタロー |
やったな皆野! お前の気持ちが、あいつに届いたんだぜ! |
皆野祐樹 |
なんだろう、これ。 すごく、嬉しい。 |
皆野祐樹 |
もしかしたら、キューバーンに勝った時より 嬉しいかもしれない! |
名雲光 |
みなのんはいい奴だねー。 |
村雨礼司 |
……状況はよくなったようだな。 そして、これは俺にはできなかったことだ。 |
酉原剛 |
人徳で戦うってのもアリだな! さすが、俺のタッグパートナーだぜ! |
森沢江湖 |
すごい……私も、皆野くんみたいに 強くなくても、人を救える人になりたいな。 |
皆野祐樹 |
ありがとう。 ……あはは。まあ、強くないけど。 |
ウサタロー |
そこは別にいいんだぜ! ヒーローは強さじゃない! |
酉原剛 |
そうか? |
村雨礼司 |
俺も、そこには異論がある。 だが、この話はあとでもいいだろう。 |
村雨礼司 |
いまは、皆野……。 よくやったな。 |
皆野祐樹 |
うん! |
村雨礼司 |
だが、スタンドプレーが偶然形になっただけだ。 今後も俺があんなことを許すとは思うな。 |
皆野祐樹 |
あ……うん。 |
森沢江湖 |
なんで?うまくいったじゃない! |
村雨礼司 |
怪人は悪だ。それが本性だ。 絶対的な力でねじ伏せることでしか、対抗できない。 |
村雨礼司 |
話し合う、わかってもらう…… そんなことは無駄だ。いずれ、お前たちにもわかる。 |
皆野祐樹 |
村雨君……。 |
村雨礼司 |
しゃべりすぎた。 行くぞ。 |
セクレト |
デレッテ~♪ デレレレー♪ |
---|---|
酉原剛 |
なんだよ。急に歌いだして。 |
酉原剛 |
ああ、しかも行き止まりじゃねーか! また道を逸らされちまったか? |
村雨礼司 |
いや、待て。 よく見ると行き止まりに岩の扉のようなものがあるぞ。 |
セクレト |
障害物ゾーンの最後を飾る、ラストオブ障害物! それはクイズです! |
森沢江湖 |
ええっ? それって障害物じゃないよね。 |
名雲光 |
そこそこウケる。 歌ってたあれ、クイズコーナーのジングルなわけ? |
セクレト |
御名答!あ、でも まだ問題を出してないので通せません!アハハハハ! |
村雨礼司 |
…… …………! |
ウサタロー |
村雨、イライラするなよ。 |
村雨礼司 |
ダムデスはどこだ! まさかクイズに正解したわけじゃないだろう! |
セクレト |
それがまさかの正解でした。 |
名雲光 |
は? |
セクレト |
彼はジャンルセレクトで「ダム」を選びましてね。 日本で最大の堤高を誇るダムは?という問題で……。 |
名雲光 |
く、黒部ダム。 |
セクレト |
そうです!でもいま、ネットで検索しましたよね。 |
名雲光 |
バレてる! |
セクレト |
ここからは検索禁止です。 さあジャンルを選んでください! |
酉原剛 |
お前、実況者じゃなくて司会者になってるぞ。 で、どんなのがあるんだよ。 |
セクレト |
「会いたくて会えない」「届かぬ想い」 そして「日本文学」です。 |
ウサタロー |
二つほどジャンルじゃないぜ!? |
村雨礼司 |
まいったな……どれも詳しくない。 |
森沢江湖 |
私も……もっと恋愛経験があれば! |
名雲光 |
そういう問題じゃないっしょ? |
皆野祐樹 |
あ、じゃあ僕が決めていいかな。「日本文学」で。 |
森沢江湖 |
おー。 |
セクレト |
では出題します。ジャジャン! |
村雨礼司 |
……。 |
酉原剛 |
イラつくなって。 |
セクレト |
文豪、太宰治の…… 自殺未遂の回数は? |
皆野祐樹 |
文学、関係なかった! |
セクレト |
成功したものは含みません。 |
名雲光 |
妙に親切! |
村雨礼司 |
滅茶苦茶だな……。 ただのゴシップじゃないか。それも昔の。 |
皆野祐樹 |
フフフ。でも知ってる。 四回だっ! |
セクレト |
正解!お見事です。 では、オープンザドア! |
ウサタロー |
助かった。 よく知ってたな、皆野。 |
皆野祐樹 |
太宰治は共感できて、よく読んでるんだよね。 |
皆野祐樹 |
恥の多い生涯を送ってきたもので……。 |
森沢江湖 |
? そうなの? |
ウサタロー |
わかんないけど、たぶん文豪ギャグだぜ! 笑ってあげるのがヒーローってもん……。 |
皆野祐樹 |
うわああ! いいから! |
森沢江湖 |
はあ、はあっ……まだ走るの? |
---|---|
名雲光 |
脇腹痛い。ヤバい。 |
森沢江湖 |
胸が痛い。スポブラなのに……。 |
名雲光 |
マジで。 |
村雨礼司 |
追いつくぞ。気を引き締めろ。 |
酉原剛 |
さっさと片付けてメシにしようぜ! |
ダムデス |
ゴゴゴ。ついレースに夢中になっていたが本題だ。 ライオンハート、お前を誘拐するぞ。 |
皆野祐樹 |
僕? 森沢さんじゃなくて? |
ダムデス |
お前の感情で増幅される超人能力はとても珍しいのだ。 我々の組織で活用してやろう。 |
名雲光 |
組織……? |
皆野祐樹 |
あ、もちろんお断りします。 |
ダムデス |
では力づくだ。 |
名雲光 |
ちょ待ってよ。 組織って? |
---|---|
ダムデス |
秘密の組織だから教えられんな! |
村雨礼司 |
怪人の組織だと? 怪人といえば単独犯ばかりのはずだ。 |
ダムデス |
秘密だから教えられんと言っている! |
ダムデス |
とにかく、感情でパワーが爆発する生徒だけは 逃がすなと言われているのだ! |
ダムデス |
回復能力者に負けず劣らずのレア能力だそうだからな! |
酉原剛 |
けっこうしゃべってるぞ、お前。 頭悪いだろ。 |
ダムデス |
ゴゴゴゴ!うるせー! このゴール前で、全員倒してさらってくれる! |
村雨礼司 |
ふざけるな……と、言いたいところだが、 ダムデスの奴、なにか細工をしてるな。 |
森沢江湖 |
ひとまわり大きくなってるし、 まわりの地面が光ってる! |
セクレト |
これぞ、これぞダムデスの秘策! パワークリスタルを二箇所に配置し、大地の力を得る! |
セクレト |
先にクリスタルを破壊しなければ、 生徒たちに勝ち目はありません! |
セクレト |
果たして、そのことに気づけるか!? |
森沢江湖 |
ありがとう。セクレトさん。 |
ダムデス |
お前なあ!なんでバラすんだ! |
不動老師 |
自力でと言っておいただろう! |
セクレト |
あー、システム内に矛盾が発生していました。 実況を中止し、処理します。 |
酉原剛 |
なんにせよ助かった! このへんに力の源があるんだな。 |
ウサタロー |
ダムデスはオイラがひきつけておくぜッ! その間に、クリスタルを壊せ! |
ウサタロー |
たぶん手下に守らせてるから、それを追えばいい! |
皆野祐樹 |
ウサタロー、大丈夫? |
ウサタロー |
正面から戦ったりしないぜ。 時間を稼ぐだけだ。 |
ウサタロー |
キューバーンのときとは、ちょっとオイラも違うぜ。 チームプレー、だろ? |
村雨礼司 |
助かる! さあ行くぞ! |
皆野祐樹 |
ダムデスの足元から光の線が伸びてる…… こっちだ! |
森沢江湖 |
すごく、すごく心配なんだけど…… 本当に大丈夫なの? |
名雲光 |
ウサタローちゃんは、ウサギなのに喋れる能力でしょ。 マジで強くはないよ。 |
村雨礼司 |
わかっているが、手下を倒すのにも戦力は必要だ。 少なくとも、あいつは素早い。 |
酉原剛 |
ウサタローに長くは任せられねえ。 さっさと済ませないとな! |
ウサタロー |
酉原!チョコバー食えよ。 |
酉原剛 |
おっと!そうだった! |
酉原剛 |
パワー全開だぜえ! |
森沢江湖 |
クリスタル一個目、はっけーん! お注射しちゃいますよ! |
---|---|
酉原剛 |
おお! 注射器で壊しちまったのか? |
森沢江湖 |
自然のエネルギーじゃ無理だから、 村雨くんの能力との合体技だよ! |
村雨礼司 |
空気中から集めた水を、森沢のシリンジに詰めた。 圧縮もかけているから、固いものを破砕できる。 |
村雨礼司 |
これがチームプレー、だな。 俺の超人能力だけでは、圧縮した水を蹴るまでだ。 |
森沢江湖 |
えへへ。 |
皆野祐樹 |
超人能力って、 組み合わせるとすごい力を発揮するんだね。 |
村雨礼司 |
そうだ。 だからこそ扱いは慎重にしなければならない。 |
村雨礼司 |
そしてチーム内での意志の統一も重要だ。 まさかダムデスと交渉するつもりじゃないよな、皆野。 |
皆野祐樹 |
あ、実は……。 クリスタルを壊せば話し合えるかなとは、思ってた。 |
村雨礼司 |
ダメだ。やつは怪人で、しかも謎の組織の一員だ。 倒して、組織のことを吐かせる必要がある。 |
名雲光 |
イケメンは頑固すぎるよ。 あいつ結構、口ユルいじゃん。 |
名雲光 |
適当に乗せればいろいろ喋るって。 たぶん。 |
村雨礼司 |
捕まえたほうが確実だ。 |
皆野祐樹 |
うーん、それはそうなんだけど……。 |
酉原剛 |
俺様も、あいつとは戦ってみたいぜ。 パワー型には興味あるんだよな。 |
酉原剛 |
どっちが強いか、確かめてみたくなるだろ! |
森沢江湖 |
少しの怪我なら、私が治しちゃえるよ。 戦わないと解決しないなら、それもアリだよ。 |
名雲光 |
エコちゃん、それけっこう危ない考えかたかもよ? マジな話さ、死んじゃったら治せないっしょ。 |
森沢江湖 |
あ、うん……。 |
皆野祐樹 |
じゃあ、戦うけど、 死ぬような怪我をさせるのはナシで。 |
村雨礼司 |
甘すぎる。 怪人に情けをかけるなんて、バカのすることだ。 |
皆野祐樹 |
これが僕の条件だよ。 ヒーローは殺し屋じゃない。 |
酉原剛 |
礼司も折れろよ。 そんなに心配しなくても、本気出せるって。 |
酉原剛 |
あいつ、頑丈そうだからな。 |
村雨礼司 |
……今回だけだ。 次も同じじゃないぞ。 |
皆野祐樹 |
うん。 そのときにはまた考えるよ。 |
村雨礼司 |
まったく、世話の焼ける仲間だ。 妙なこだわりばかり持っている。 |
名雲光 |
お互い様でしょ。 |
村雨礼司 |
あったぞ! パワークリスタルの二つめだ。 |
---|---|
森沢江湖 |
うふふ~、キラキラして綺麗ね? お注射してほしい?してほしいの? |
村雨礼司 |
なにをしてるんだ。 |
森沢江湖 |
えへへ、キャラの模索をね。 |
酉原剛 |
ナースキャラで立ってるじゃねーか。 セクレトのバカ話を気にしてるのか? |
名雲光 |
みんな、それなりだよねえ? このチームだと、薄いのは……みなのんかな。 |
皆野祐樹 |
……ですよねぇー! |
皆野祐樹 |
もっとオラオラ系にしたほうがいいかな? それともメガネを装備してクールに? |
森沢江湖 |
うーん……。 |
名雲光 |
どっちも微妙……。 |
酉原剛 |
クールキャラは礼司がいるじゃねーかよ。 カブりはよくないぜ。 |
村雨礼司 |
俺は別に、キャラを作ってるわけじゃないぞ。 |
森沢江湖 |
それだよ! |
皆野祐樹 |
ど、どれ? 僕を導いて! |
森沢江湖 |
無理にキャラ立てしなくても、皆野くんは やさしい男の子でいいんだよ! |
皆野祐樹 |
そ、そう? |
ウサタロー |
もうちょっと覇気が欲しい。 |
森沢江湖 |
もう!まぜっかえさないで! |
森沢江湖 |
手下の人を説得できたのは、皆野くんの……その、 誠実で、優しいキャラがあったからじゃない? |
酉原剛 |
これ正面切って言うの、けっこう恥ずかしいぞ。 江湖に感謝しとけよな、祐樹。 |
森沢江湖 |
うー、解説もいらなかったよ。 |
皆野祐樹 |
あ、うわああ…… ありがとうね、森沢さん。 |
酉原剛 |
注射しようぜ、注射。 |
森沢江湖 |
そ、そうだね!えいっ! |
皆野祐樹 |
ぎゃー! |
村雨礼司 |
皆野に注射してどうする! パワークリスタルを破壊しろ! |
森沢江湖 |
ごめんごめん、間違えちゃった! |
名雲光 |
動揺しすぎー。 |
ダムデス |
ちょこまかと、うざったいウサギめ! 観念して、死ね! |
ウサタロー |
ハアハア……まだか? もう持たねーぞ! |
村雨礼司 |
待たせたな!ミッション完了だ! 離脱してくれ! |
ウサタロー |
助かったぜ! |
森沢江湖 |
ウサタローちゃん、お注射する? うふふふふふ……。 |
ウサタロー |
えっ、なに? 怖いんだぜ。 |
村雨礼司 |
模索中のキャラだそうだ。 気にしないでやってくれ。 |
ウサタロー |
なんとか一発ももらわずに逃げられたから、 注射はいらないんだぜ。 |
森沢江湖 |
よかったー! あっ、ここは残念とか言うところかな……。 |
ダムデス |
お前ら、いつの間にパワークリスタルを! そういえばもう光ってないし! |
酉原剛 |
本当にウサタローに釣られてたんだな。 いい仕事したぜ。 |
皆野祐樹 |
さあ、ここからは僕らの番だ! |
ダムデス |
ゴゴゴゴゴ! ゴゴ……ゴゴゴ……! |
---|---|
酉原剛 |
さすがに倒れてくれなきゃおかしいぜ! 何発撃ち込んだ? |
村雨礼司 |
数えてないな。 倒れるまでやるだけだ。 |
ダムデス |
ゴ……ゴ……。 |
皆野祐樹 |
あ……。 |
名雲光 |
崩れた、ね? |
皆野祐樹 |
だ、大丈夫かな。 |
森沢江湖 |
瓦礫の中に普通サイズのダムデスさんがいるよ! 掘り出してお注射すれば元通り! |
不動老師 |
それはこちらでやっておこう。 |
ウサタロー |
学園長! |
不動老師 |
儂が出るまでもなかった……な? みんな、よく頑張った。 |
皆野祐樹 |
へとへとですよぉ……。 |
不動老師 |
ダムデスは、こちらで拘束し尋問しよう。 謎の組織についてわかったことがあれば、知らせる。 |
皆野祐樹 |
はい! |
不動老師 |
ダムデスが倒されたことで手下たちも消え、 クラスメイトはみなレースに戻ったようだ。 |
酉原剛 |
あ、ゴールラインを越えてたのか!? 俺様、何位だった? |
不動老師 |
ここにいる生徒は、みんな一位でいいじゃろう。 スコアはそうつけておく。 |
セクレト |
熾烈な六位争いが始まった! |
セクレト |
これ以上順位を落としてたまるか、 そんな気迫が目に見えるようだァ! |
不動老師 |
そうだな……森沢君は、 ゴールやリタイアした生徒の治療にまわってくれ。 |
森沢江湖 |
終わるまでは、まだ結構かかりそうですね。 |
不動老師 |
六位が到着するまでは休憩してかまわない。 他のお主らは、次の授業だ。 |
皆野祐樹 |
……え? |
村雨礼司 |
どうした皆野。 ゴール順に次の授業が始まるのは、いつものことだ。 |
名雲光 |
遅いと欠席になっちゃうんだよね。 だからリタイヤ推奨。 |
酉原剛 |
まあ寝るけどな! 弁当食いながら寝る! |
不動老師 |
ちなみに科目は数学だ。 |
皆野祐樹 |
そ、それは……僕も起きてられない可能性が。 |
村雨礼司 |
だらしのない奴だ。 |
名雲光 |
なんでよ? 数学、マジで楽しいのに。 |
皆野祐樹 |
面目ない。 |
ウサタロー |
俺は巣穴で寝るぜ! 生徒じゃないから普通の授業はうけなくていいんだぜ。 |
皆野祐樹 |
いいなあ。 |
森沢江湖 |
あらあら、元気ないですね。 お注射します?しちゃいます?うふふふふふ。 |
皆野祐樹 |
それ怖いよ! 森沢さんも、元のキャラに戻って! |
森沢江湖 |
うーん、難しいな。 あ、お注射はしていく? |
皆野祐樹 |
いや、いいよ。がんばって起きてるから。 |
ウサタロー |
なんだ?回復してもらえばいいじゃないか。 |
皆野祐樹 |
これは内緒なんだけどさ、ウサタロー。 |
ウサタロー |
おう。 |
皆野祐樹 |
森沢さんに注射されるの、なんだかすごくよくて…… 癖になっちゃいそうな、自分が怖いんだ。 |
皆野祐樹 |
これは彼女だからなのか、 それとも僕はそういう性癖なのか……。 |
ウサタロー |
せ、青春だな!皆野! |