第1部 第1章
怪人現る!出動せよヒーロー!
50年前、日本に落下した 通称「ヒロイック隕石」 | |
隕石落下からすぐに、日本中、やがては世界中で…… 少年少女たちに超人能力が発現するようになった。 |
|
突如現れた超人能力者たちにより世界は変わり 人々の暮らしはより豊かなものになった。 |
|
しかし、超人能力を悪用するもの…… 「怪人」と呼ばれるものたちもまた、現れた。 |
|
怪人を倒す超人能力者を人々は“ヒーロー”と呼んだ。 | |
この物語は、若きヒーローと怪人たちの 熾烈な戦いの記録である。 |
|
キューバーン |
そういうわけでな!この銀行のカネはみーんな 怪人キューバーン様がいただくで! |
---|---|
皆野祐樹 |
わ、悪い人だ! 超人能力を悪用する人……怪人! |
キューバーン |
お、そこのお前、よう知っとるな! 超人能力者は世の中の勝ち組や! |
キューバーン |
警察も軍隊も、ワシには敵わん! 怪人として、好きなだけ悪いことができるんや! |
皆野祐樹 |
え、えーと……。 |
キューバーン |
ま、ワシを止められるとしたら同じ超人能力者の ヒーローくらいやな。お前、ヒーローか? |
皆野祐樹 |
あ、その……。 |
キューバーン |
当然違うわな! 一般人はおとなしく見とれや! |
皆野祐樹 |
このままじゃ銀行が……でも、僕の能力じゃ……。 本物のヒーローを待つしか……。 |
ウサタロー |
待たせたな!悪はこのオイラが許さねえぜッ! ウサタロー見参だ! |
皆野祐樹 |
ヒーロー!? |
キューバーン |
……ウサギやん。 |
ウサタロー |
馬鹿にするな!ウサギだってヒーローになれるんだ! |
キューバーン |
アホか。勝てるわけないやろ。 |
ウサタロー |
ヒーローは打算で動かない! 悪とは戦うんだ!行くぜッ! |
皆野祐樹 |
(ああ……!!) |
キューバーン |
じゃあ蛸手八連撃! |
ウサタロー |
ぐああああッ!? |
キューバーン |
弱すぎやろ。 |
ウサタロー |
うう……オイラはヒーローだ。 ヒーローは負けないんだ……ぜ……。 |
キューバーン |
あーもう。死ぬか? |
皆野祐樹 |
ま、待って! |
キューバーン |
今度はなんや? |
皆野祐樹 |
あの、邪魔します。僕はえーと、皆野祐樹。 能力は……手が光る、だけ。 |
キューバーン |
……また弱いヤツかいな。 |
皆野祐樹 |
(あああ、足が震える…… でも、ウサタローを放っておけない!) |
皆野祐樹 |
弱くても、ヒーローを、それを目指す決意を! 踏みにじることは許さないぞ! |
皆野祐樹 |
(体が熱い……なんだ、これ?) |
キューバーン |
急に炎が出てきたやと!? |
不動老師 |
そこまでだ。 |
キューバーン |
げえっ、不動老師!? ヒーロー学園の学園長……!! |
キューバーン |
普通は10年で能力消えるっちゅーのに 50年前から現役続けとるバケモンやないか! |
不動老師 |
これ以上暴れるのであれば、 儂が相手になるぞ。 |
キューバーン |
勝てへんやろ!? ここは一旦ズラかるでぇ~! |
ウサタロー |
逃げ足の早い奴だぜ……。 |
不動老師 |
二人とも大丈夫かね? |
ウサタロー |
へへへ……すまねえな。学園長。 |
皆野祐樹 |
無事でよかったよ。 |
ウサタロー |
皆野、おかげで助かったぜ。 ヒーローネームはなんだ? |
皆野祐樹 |
ないよ?一般人だから。 |
不動老師 |
その件だが、皆野君、 ヒーロー学園に編入し、本格的に活動する気はないか? |
不動老師 |
超人能力は驚異の力だ。 ただし、使いかたを誤りやすい。 |
ウサタロー |
いい気になると、キューバーンみたいに 怪人になっちまうんだぜッ! |
不動老師 |
若き超人能力者を育て導き、 立派なヒーローとして活躍してもらう。 |
不動老師 |
それが儂の設立したヒーロー学園の目的なのだ。 皆野君、君はその生徒にふさわしい。 |
皆野祐樹 |
えっ、でも、僕は弱くて……。 |
皆野祐樹 |
ヒーロー学園って、全国にある超人能力者養成校の トップじゃないですか……! |
ウサタロー |
分校はけっこうあるぜッ。富山ヒーロー学園とか 長崎ヒーロー学園とか。 |
不動老師 |
うむ。最初のヒーロー学園設立から50年。 全国に根を張るまでは長かった……。 |
皆野祐樹 |
その最初のヒーロー学園ですよね。 すごい現役ヒーローばっかりいる学校ですよ!? |
皆野祐樹 |
恐れ多いというか、なんというか……。 とても、僕なんかじゃあ……。 |
不動老師 |
立派に戦ったではないか。 それに、これは儂の持論だが……。 |
不動老師 |
ヒーローは能力が優れているからなれる、 というものではない。心持ちが重要なのだ。 |
不動老師 |
先ほどの皆野君の台詞、儂の心に響いたぞ。 素晴らしかった。 |
ウサタロー |
じゃあさ、オイラが名前をつけてやるよ。 皆野は正義の心のヒーロー「ライオンハート」だ! |
皆野祐樹 |
ライオンハート……。 僕は、本当にヒーローになれるんですか? |
不動老師 |
もちろんだとも。 |
皆野祐樹 |
……お世話になります! |
ウサタロー |
よろしくな、皆野! |
ウサタロー |
学園にようこそ、皆野! これで晴れてヒーローだぜ! |
---|---|
皆野祐樹 |
うまくやれるかな……。 |
キューバーン |
無理やで。 |
皆野祐樹 |
あっ! |
キューバーン |
復讐に来たったわ!ここで死んだらんかい! |
皆野祐樹 |
ま、待って。 |
ウサタロー |
どうやって入ってきたんだよ!? |
キューバーン |
換気ダクトや。タコはすごい細いところも通れんねん。 |
森沢江湖 |
騒がしいけど、誰か怪我したの? 治しちゃうよ~? |
キューバーン |
……は?回復能力者か? |
森沢江湖 |
あっ、はい。森沢江湖です。 |
キューバーン |
この子、さらうわ。そのほうが金になるしな。 |
森沢江湖 |
えっ、なに?触手気持ち悪いです! きゃあ! |
キューバーン |
ほなな~。復讐は今度や! |
皆野祐樹 |
……え?誰? |
ウサタロー |
クラスメイトだぜッ!助けないと! おいセクレト!あいつどこへ逃げた? |
セクレト |
森沢様の反応を追跡します。 関西地方に反応があります。 |
ウサタロー |
よし行くぜ皆野! 他のクラスメイトも出動するはずだぜ! |
皆野祐樹 |
そんな急に……。 また新しい人が……人なの? |
ウサタロー |
あとで説明するぜ!転送装置へ急げ! |
ウサタロー |
よし、関西地方に到着したな! |
---|---|
皆野祐樹 |
あれっ?ついさっきまで学園にいたのに。 |
ウサタロー |
怪人は、いつどこに現れるか分からないからな。 |
ウサタロー |
ヒーローはこうやって、 転送装置で一気に移動できるようになってるんだ! |
皆野祐樹 |
そうなんだ、すごいなー。 |
ウサタロー |
それじゃさっそくキューバーンを追うぞ。 セクレト、サポートを頼む! |
セクレト |
お任せください。 森沢様の反応を再追跡します。 |
皆野祐樹 |
あ、さっきの……。 この……人?もヒーローなの? |
ウサタロー |
セクレトは、学園が開発したスーパーAIなんだぜ! |
セクレト |
健康管理から個人情報まで、 ヒーローのみなさまを事細かにサポートしています。 |
セクレト |
もちろん、皆野様の活動もサポートします。 以後お見知りおきを。 |
皆野祐樹 |
あ、うん。こちらこそよろしく。 |
セクレト |
……追跡結果が出ました。 森沢様の反応、北に向かって移動中です。 |
ウサタロー |
逃げられると厄介だな。 おい皆野、すぐに仕掛けるぞ! |
皆野祐樹 |
ち、ちょっと待って! まだ心の準備が……。 |
ウサタロー |
なにのんきなこと言ってんだよー! キューバーンに逃げられちまうだろ! |
皆野祐樹 |
そんなこと言われたって……。 |
皆野祐樹 |
まだ不安なんだよ。 本当に僕なんかにヒーローが務まるのかってさ。 |
ウサタロー |
務まるって!自信持てよ! |
セクレト |
お一人が不安なのでしたら、 他のヒーローとチームを組むのはいかがでしょうか? |
ウサタロー |
そうだな、そうしろ! |
皆野祐樹 |
そうか、出動したのは僕だけじゃないんだよね。 |
酉原剛 |
だったら、俺とタッグを組まないか! |
皆野祐樹 |
うわっ、ビックリした! |
皆野祐樹 |
えっと、君も学園の生徒? |
酉原剛 |
そうさ。 俺様は酉原剛ってんだ。よろしくな! |
皆野祐樹 |
えっと、僕の名前は―― |
酉原剛 |
皆野祐樹だろ? |
皆野祐樹 |
僕のこと、知ってるの? |
酉原剛 |
有名人だぜ。 たった一人で怪人を止めたスゲー奴がいるってな。 |
皆野祐樹 |
す、すごいだなんて……。 |
酉原剛 |
だけどよ、俺様だって負けてねーぜ! |
ウサタロー |
こいつは食べれば食べるほど強くなる能力の持ち主だ。 頼りになること間違いなしだぜ。 |
酉原剛 |
どんな怪人が相手だろうと、KOしてみせるぜ! |
皆野祐樹 |
頼もしいな。よろしくね、酉原くん。 |
セクレト |
敵が接近しています。ご注意ください。 |
ウサタロー |
おっと。二人とも準備はいいな! |
酉原剛 |
いつでもOKだ! |
皆野祐樹 |
うわわ、もう来ちゃったの!? |
皆野祐樹 |
よかった、なんとか勝てた……。 |
---|---|
ウサタロー |
さすがは皆野!オイラが見込んだ男だ! |
酉原剛 |
ナイスファイトだったぜ祐樹! ほれ、戦いの後は腹が減るだろ!肉食え! |
皆野祐樹 |
ハハハ。ありがとう二人とも。 |
酉原剛 |
やっぱ俺様と祐樹のタッグは最強だな。 このまま一気にキューバーンを倒しちまおうぜ! |
皆野祐樹 |
えっ、僕たちだけで倒せるのかな? |
酉原剛 |
当たり前だろ! さっさと倒して、んでもって肉食いに行こうぜ! |
村雨礼司 |
おい待て、そこの二人。 勝手な行動は控えてもらおうか。 |
酉原剛 |
勝手な行動ってなんだよ? |
村雨礼司 |
周りを無視して、勝手に突っ走るなと言っているんだ。 |
酉原剛 |
なんだよ、面倒くせーな。 |
皆野祐樹 |
えっと、誰……? |
セクレト |
クラスメイトの村雨礼司様です。 |
皆野祐樹 |
村雨くんっていうんだ。僕は―― |
村雨礼司 |
皆野祐樹だろう。 キューバーンに単身立ち向かった話は知っている。 |
皆野祐樹 |
僕って本当に有名なんだ……。 |
村雨礼司 |
有名……か。 皆野、思い違いをするなよ。 |
皆野祐樹 |
え? |
村雨礼司 |
おまえは一人で怪人に立ち向かうべきじゃなかった。 |
皆野祐樹 |
ど、どういうこと? |
村雨礼司 |
助けを呼んで、ヒーローの到着を待つべきだったんだ。 |
皆野祐樹 |
それは……。 |
ウサタロー |
おい、ふざけんな! 皆野はオイラを助けてくれたんだぞ! |
ウサタロー |
それを間違ったことみたいに言うなよ! |
村雨礼司 |
結果がよかったからそう言えるだけだ。 |
村雨礼司 |
……皆野、今後は無謀な行動は控えるんだな。 |
皆野祐樹 |
え、うん……。 |
ウサタロー |
なにが無謀だー! あれは勇気ある行動って言うんだー! |
村雨礼司 |
フン、どっちでもいいさ。 とにかく、勝手な真似だけはするなよ。 |
皆野祐樹 |
……なんか、おっかない人だったね。 |
酉原剛 |
腹が減って機嫌が悪かったんじゃないか? |
ウサタロー |
村雨のやつ、ちょっと強いからって偉そうによー! |
ウサタロー |
おい皆野! あんなやつの言うこと、気にしなくていいからな! |
皆野祐樹 |
村雨くんって、強いの? |
ウサタロー |
ああ。学園長が一目置くくらいにはな。 |
セクレト |
村雨様は、空気中の水分を集める能力の使い手です。 その実力は、一年生の中でも屈指のものでしょう。 |
皆野祐樹 |
へー、すごいね! それじゃ、村雨くんもチームに誘ってみようか? |
ウサタロー |
は?本気で言ってんのかよ! |
酉原剛 |
面白いな!俺様はいいと思うぜ! |
ウサタロー |
どうせ断られるって! |
皆野祐樹 |
その時はその時だよ。 それじゃ僕、村雨くんに聞いてくるね! |
ウサタロー |
にしても、なんか意外だぜ。 |
---|---|
村雨礼司 |
なにがだ。 |
ウサタロー |
おまえがあっさりチームに加わったことがだよ! |
酉原剛 |
そんな驚くようなことでもないだろ? |
皆野祐樹 |
でも本当、村雨くんが仲間になってくれてよかったよ。 |
村雨礼司 |
礼を言われるようなことじゃない。 ヒーロー同士、協調しあうのは当然のことだ。 |
村雨礼司 |
それに、どうもお前たちは危険だ。 俺が直接目を光らせておいた方がいいと判断した。 |
皆野祐樹 |
ええっ、別に危ないことなんてしないよ!? |
酉原剛 |
おう、ヒーローの俺様がそんなことするかよ。 ……なあ、それより腹減らね?肉食いに行こうぜ。 |
村雨礼司 |
そうやって勝手な真似をする危険性があるんだよ。 |
酉原剛 |
でも礼司も腹減ってるだろ? |
皆野祐樹 |
ハハハ……。 |
名雲光 |
ウケるんですけど。 |
皆野祐樹 |
うわっと……君は? |
セクレト |
クラスメイトの名雲光様ですね。 |
ウサタロー |
名雲はケータイからマスコットを呼び出す、 ちょっと変わった能力の持ち主だぜ。 |
名雲光 |
みんな、ヨロシクね♪ マスコットのほうはポンキューちゃんだよー。 |
酉原剛 |
ギャルだ。 |
村雨礼司 |
ギャルだな。 |
名雲光 |
それよりさー。こんな時に肉の話とかヤバくない? |
酉原剛 |
肉より魚の方がよかったか? |
皆野祐樹 |
そうじゃないよね、酉原くん! |
名雲光 |
トリ頭、マジウケる。 |
酉原剛 |
ト、トリ頭!? |
村雨礼司 |
自分の目的を忘れるとは、呆れたやつだ。 俺たちは、森沢江湖の救出に来たんだろう。 |
酉原剛 |
おお。そういえばそうだったな! |
名雲光 |
イケメン、分かってんじゃん! |
村雨礼司 |
……その呼び名、やめてくれないか? |
名雲光 |
なんで?イケメンはイケメンじゃん? |
村雨礼司 |
…………。 |
名雲光 |
んで、エコちゃん助ける話だけどさ、 今がチャンスだよ? |
皆野祐樹 |
え?それってどういう意味? |
名雲光 |
キューバーンとエコちゃん、 今なら別々の場所にいるっぽいんだよね~。 |
皆野祐樹 |
本当に?だったら、すぐ助けに行こうよ! |
ウサタロー |
けど、なんでそんなことが名雲に分かるんだ? それもお前の能力か? |
名雲光 |
ん~……詳しいことは、ナイショってことで。 |
ウサタロー |
なんだそりゃ。 |
名雲光 |
乙女には秘密が多いのだ。 |
村雨礼司 |
……こいつの言うことを、信用していいのか? |
皆野祐樹 |
僕は信じるよ。 |
村雨礼司 |
根拠のない情報を信じるべきじゃないと思うがな。 |
皆野祐樹 |
大丈夫だよ。だって名雲さんは仲間なんだから! |
ウサタロー |
ウオオーッ、そのとおりだ皆野! 仲間を信じてこそのヒーローってもんだぜー! |
名雲光 |
アハハ、マジウケるー! |
村雨礼司 |
……やれやれ。大丈夫なのか、このチーム? |
セクレト |
この先の倉庫に、森沢様の反応を確認。 周囲の生命反応はゼロです。 |
---|---|
名雲光 |
ほら、ウチの言ったとおりっしょ? |
村雨礼司 |
本当にキューバーンはいないんだろうな? |
皆野祐樹 |
外からじゃよく分からないね。 |
酉原剛 |
近付きゃ分かるって。さっさと行こうぜ。 |
村雨礼司 |
おい、先に言っておくぞ。 森沢を見つけても、すぐには助けるなよ。 |
皆野祐樹 |
そんなこと言わずに、早く助けてあげようよ。 |
ウサタロー |
そうだぜ、可哀想だろ! 森沢のやつ、きっと泣きながら助けを待ってるぜ! |
村雨礼司 |
いいから、俺に従え。 近くにキューバーンが隠れてるかもしれないだろ。 |
酉原剛 |
……ん?おい、あれ見てみろよ。 倉庫の中に、トラックが入っていくぜ。 |
名雲光 |
あのトラックで、エコちゃん運ぶつもりじゃね? |
皆野祐樹 |
た、大変だ!すぐに助けに行かないと! |
ウサタロー |
ウオオーッ、待ってろ森沢!俺も行くぜー! |
村雨礼司 |
おい待て皆野!俺の話を聞いてたのか! |
森沢江湖 |
……あ、トラックが入ってきた。 |
森沢江湖 |
あのー、私これからどうなるんですか? |
手下A |
知らんわ。俺らただの運搬係やし。 |
手下B |
下っ端には、情報もろくに渡されんのや。 |
手下A |
せめて仕事内容くらい、教えてほしいもんやわ。 |
手下B |
ほんまにな。 |
森沢江湖 |
ふーん。大変なんですね。 |
手下A |
姉ちゃんに同情されてもなぁ。 |
森沢江湖 |
……ところで、キューバーンはどこに? |
手下A |
だから、知らんて。 てゆうか姉ちゃん、今の自分の状況、分かっとる? |
森沢江湖 |
まあ、それはもちろん。 |
手下B |
その割には、落ち着きすぎとちゃう? |
森沢江湖 |
慣れてるもので。 |
手下B |
なんやそれ。 |
手下A |
あー、なんか調子狂うわ。 なんかトラブルの一つでも起こったりせんかな。 |
手下B |
ヒーローが登場したりな。 |
手下A |
はは、おもろいわそれ。 |
皆野祐樹 |
森沢さん!助けに来たよ! |
手下A |
ってほんまに来たー!? |
ウサタロー |
よっしゃ、間に合ったみたいだぜ! |
皆野祐樹 |
森沢さん、もう大丈夫だからね! |
森沢江湖 |
う、うん! |
名雲光 |
エコちゃんはウチに任せておいてー。 |
酉原剛 |
んじゃ俺様は、敵の相手だ。かかってきな! |
皆野祐樹 |
あの、もうやめましょう。 森沢さんは助けたし、これ以上は無意味ですよ。 |
手下A |
やめるわけあるかアホ!覚悟せんかい! |
皆野祐樹 |
ですよねー! |
村雨礼司 |
ええい、こうなったら仕方ない。一気に片づけるぞ! |
森沢江湖 |
私、よくさらわれるんです。 ヒーロー学園に入るまでは週二くらいで。 |
---|---|
皆野祐樹 |
そうなの!? |
村雨礼司 |
回復能力者は莫大な金を生み出すんだ。 |
名雲光 |
スポーツチームとの専属契約とかね~。 エコちゃんも大変なんよ。 |
村雨礼司 |
契約はともかく、 誘拐して能力使用を強制するのは犯罪だ。 |
森沢江湖 |
本当はみんな助けたいんだけど。 |
村雨礼司 |
キューバーンは、また森沢を襲うだろう。 放置することはできない。 |
皆野祐樹 |
うん、僕もそう思う。 |
酉原剛 |
行こうぜ! |
皆野祐樹 |
セクレト。 キューバーンのいるところを教えてくれる? |
---|---|
セクレト |
キューバーンの所在地は不明です。 |
酉原剛 |
なんだ、分からないのか? 江湖の居場所は知ってたじゃねーか。 |
ウサタロー |
森沢の場合は特別だぜ。 こいつは回復能力者用の発信機を持ってるからな。 |
森沢江湖 |
うん、私がさらわれると、位置情報が発信されるの。 |
セクレト |
イエス。 森沢様の追跡は、その信号を辿って行いました。 |
皆野祐樹 |
なにそれすごいね! |
村雨礼司 |
狙われることが多いからか。 まるで回復能力者用の防犯ブザーだな。 |
森沢江湖 |
この発信機のおかげで、さらわれても すぐに助けてもらえるんだよ。 |
ウサタロー |
ちょっと便利な生活グッズみたいに言うなよ! |
酉原剛 |
それで、これからどーするんだ? |
酉原剛 |
セクレトが役に立たねーってことは分かったが、 どうやってキューバーンを探す? |
セクレト |
大変申し訳ございません。 |
皆野祐樹 |
だ、大丈夫、セクレトは悪くないよ! |
名雲光 |
AIにフォロー入れちゃってるし。 |
森沢江湖 |
フフ、皆野くんって、優しいんだね。 |
ウサタロー |
そういや、森沢はどうなんだ? |
森沢江湖 |
え、なにが? |
ウサタロー |
捕まってる間、キューバーンからなにか聞いてないか? |
森沢江湖 |
うーん……気になることは言ってなかったかな。 いつもと同じ感じだったよ。 |
皆野祐樹 |
いつもと同じって? |
森沢江湖 |
金銭目当ての、よくいる誘拐犯って感じ。 |
名雲光 |
いやいや、誘拐犯そんないないから。 エコちゃんマジパナいわ。 |
セクレト |
提案がございます。 |
酉原剛 |
お、役に立つのかセクレト? |
セクレト |
付近で、タコヤキ怪人の姿が確認されました。 彼らを追ってみてはいかがでしょうか。 |
森沢江湖 |
タコヤキって、あの手下さん? |
皆野祐樹 |
怪人の居場所は分からないんじゃなかったの? |
セクレト |
商店街で暴れていると、通報がありました。 |
酉原剛 |
あいつら、別のとこで事件起こしやがったのか! おのれ許せん! |
村雨礼司 |
キューバーンも現れたのか? |
セクレト |
通報の内容からは、判別不能です。 |
ウサタロー |
キューバーンがいようがいなかろうが、 重大な手掛かりであることには違いないぜ! |
皆野祐樹 |
そうだね。みんな、すぐに商店街に向かおう! |
皆野祐樹 |
キューバーンは見当たらないね。 |
---|---|
ウサタロー |
そう決めつけるのはまだ早いぜ! 商店街にはまだまだ怪人がいるみたいだからな! |
酉原剛 |
それじゃタコヤキどもを片付けつつ、探してみようぜ。 |
森沢江湖 |
商店街の人たちも困ってるみたい。 |
村雨礼司 |
もちろん、怪人はすべて排斥する。 だがその前に、名雲に聞いておきたいことがある。 |
名雲光 |
お、なにかなイケメン?彼氏なら今いないけど? |
村雨礼司 |
そんなことを聞く気はまったくない。 |
名雲光 |
真顔だし。ウケる。 |
村雨礼司 |
聞きたいのは、森沢を助けたときのことだ。 |
村雨礼司 |
森沢とキューバーンが別の場所にいることを、 おまえはどうやって知ったんだ? |
名雲光 |
ああ、その話ね。 |
ウサタロー |
また乙女の秘密だーってはぐらかされるんじゃないか? |
名雲光 |
ポンキューちゃんで、近くの監視カメラを ハッキングしたら、二人が別れる瞬間が映ってたの。 |
ウサタロー |
ってあっさり教えるのかよ!乙女の秘密はどうした! |
名雲光 |
ただのノリですけど? |
酉原剛 |
ハッキングってなんだ?美味いのか? |
セクレト |
食べ物ではありません。 外部からネットワークに侵入する技術のことです。 |
名雲光 |
そ。ウチの超人能力なんだよ♪ |
森沢江湖 |
光ちゃん、そんなこともできるんだ。 |
名雲光 |
ふっふーん、イケてるっしょー。 セクレトにだって侵入できちゃうんだよ♪ |
セクレト |
警告。名雲様からのアクセスは許可されていません。 |
ウサタロー |
絶対するなよ!絶対だぞー! |
名雲光 |
イヒヒ、分かってるってば。 |
村雨礼司 |
……まさか、そんな能力を隠し持っていたとはな。 |
村雨礼司 |
おい名雲。 くれぐれも、その能力を間違ったことには使うなよ? |
名雲光 |
イケメン、頭固すぎない?大丈夫だってば。 |
皆野祐樹 |
ねえ名雲さん。 その能力で、キューバーンを探すことはできないの? |
名雲光 |
あ~、それね。 |
名雲光 |
できるなら、ウチもそうしたいんだけどさ。 そこまで便利な能力じゃないんよ。 |
皆野祐樹 |
まあ、そんな都合よくいくわけないよね。 |
名雲光 |
期待させちゃってゴメンね~。 |
酉原剛 |
気にするなって! 怪人の一人や二人、俺様が見つけてみせるさ! |
皆野祐樹 |
そうだね、みんなで探そう! |
村雨礼司 |
よし、それじゃ行くぞ。 全員、俺の指示に従って動け! |
村雨礼司 |
ここも外れか。 |
---|---|
皆野祐樹 |
次はどこ探そうか? |
酉原剛 |
俺様が思うに、キューバーンはレストランにいるな。 |
皆野祐樹 |
レストラン?なんで? |
酉原剛 |
そろそろ腹が減る頃合いだろ? |
ウサタロー |
おまえがメシ食いたいだけじゃねーか! |
酉原剛 |
だけどよ、メシ食わねーと戦えねーだろ。 |
酉原剛 |
昔の偉い人だって言ってたぜ! 腹が減っては戦がデスバレーボムってな! |
皆野祐樹 |
「できぬ」だよね、酉原くん。 |
酉原剛 |
俺は戦えねーぜ。 食ったものをパワーに変える能力だからな。 |
皆野祐樹 |
そういえば酉原くんの身体、さっきより縮んでる? |
酉原剛 |
戦えば戦うほど、パワーを消費するからな。 だから戦った分だけ肉食ってんだよ。(ムシャムシャ) |
森沢江湖 |
本当に食べた分だけ大きくなった! |
名雲光 |
トリ頭、マジヤバすぎ! |
酉原剛 |
だからみんなも肉食おうぜ! 特に祐樹は身体細すぎだろ!ほら遠慮せず食え! |
皆野祐樹 |
だ、大丈夫!お腹いっぱいだから! |
酉原剛 |
一杯食わねーと、立派なヒーローになれないぞ? |
ウサタロー |
そこまで極端なのは、酉原くらいだと思うぜ。 |
村雨礼司 |
おい、無駄話はそこまでにしろ。 今は怪人を片付ける方が先だろう。 |
皆野祐樹 |
う、うん、ごめん。 |
酉原剛 |
だから、レストラン探そうぜって言ってるじゃねーか。 キューバーンのやつ、絶対メシ食ってるって。 |
村雨礼司 |
……いや。 おそらくだが、この商店街にキューバーンはいない。 |
ウサタロー |
どうしてそう思うんだ? |
村雨礼司 |
タコヤキどもの行動がバラバラすぎる。 ボスがいれば、もう少し統制が取れているはずだ。 |
皆野祐樹 |
確かに、みんな自由に暴れてるね。 |
名雲光 |
んじゃ、別の場所に行く? |
森沢江湖 |
ちょっと待って! その前に、商店街の人たちを助けてあげないと。 |
村雨礼司 |
当たり前だ。怪人を見逃したりするものか。 |
村雨礼司 |
キューバーン探しは一旦中止だ。 まずは全力で、商店街から怪人を排除する! |
酉原剛 |
分かりやすくていいな! そういうことなら、この俺様に任せておけ! |
森沢江湖 |
それじゃ私たちは、商店街の人たちを助けるね! |
ウサタロー |
ウオオーッ!やってやるぜー! 皆野、おまえも気合い入れろよ! |
皆野祐樹 |
う、うん。僕も頑張って戦うよ。 |
森沢江湖 |
?皆野くん、どうかしたの? |
皆野祐樹 |
なんでもないよ、うん。一緒に頑張ろう、森沢さん! |
手下 |
あーもう。 ほんま調子乗りすぎやろ、ヒーローども。 |
---|---|
手下 |
ここは盗るもん盗って、さっさと逃げるが勝ちやな。 |
手下 |
てなことで、サクッと宝石屋襲っとこか。 |
皆野祐樹 |
ち、ちょっと待って! |
手下 |
うわー、もう来よったでヒーローが。 なんや自分、邪魔する気か? |
皆野祐樹 |
わ、悪いことはしないほうがいいと思います! |
手下 |
……はい? |
皆野祐樹 |
えっと、だから、犯罪行為はやめてほしいんだ。 このまま帰ってもらえないかな? |
手下 |
そんなん言われて、はいそうですかと帰ると思うか? |
皆野祐樹 |
思わないけど。 |
手下 |
もー、なんやねん。 ヒーローのくせにナヨっとした奴やなー。 |
皆野祐樹 |
話し合いで解決できたら、それが一番いいかなーって。 |
手下 |
アホか! 話し合いで済むならヒーローなんざいらんわ! |
皆野祐樹 |
そうなのかなぁ。 |
手下 |
おまえいい加減に――ぐえっ。 |
酉原剛 |
仲間を傷つけるやつは、この俺様が許さ~ん! |
皆野祐樹 |
と、酉原くん! |
ウサタロー |
助けに来たぜ、皆野! オイラが来たからには、もう大丈夫だぞ! |
森沢江湖 |
皆野くん、怪我はなかった!? |
皆野祐樹 |
な、なんともないけど。 |
森沢江湖 |
本当に? てっきりタコヤキさんに襲われてたのかと。 |
皆野祐樹 |
ちょっと話をしてただけだよ。 |
酉原剛 |
話してたって、怪人とか? |
皆野祐樹 |
うん。このまま帰ってほしいって、説得してみたんだ。 |
森沢江湖 |
ええ~? |
皆野祐樹 |
悪さをする前なら、説得できるかもと思って。 |
皆野祐樹 |
……「アホか!」って怒鳴られたけど。 |
ウサタロー |
そりゃそうなるだろ! なにやってんだよ皆野ー! |
森沢江湖 |
アハハ、皆野くんらしくはあるけどね。 |
村雨礼司 |
おい、こんなところでなに立ち話をしてる? 残ったタコヤキどもを見失うぞ。 |
名雲光 |
あいつら、お金が目的だったみたい。 みんなから奪ったお金を集めて、逃げてくよ! |
酉原剛 |
なんだよ、商店街でなにしてんのかと思ったら、 ただの強盗だったのか? |
村雨礼司 |
このまま逃がすつもりはない。 ここで決着をつけるぞ! |
酉原剛 |
おう、任せとけ! |
ウサタロー |
皆野、気合い入れ直せ! ヒーローなら、街の平和は守らないとダメだぜ! |
皆野祐樹 |
う、うん、そうだね。 奪われたものは、必ず取り返そう! |
セクレト |
キューバーンの所在地はまだ掴めません。 しかし手下たちが街の至る所で強盗を働いています。 |
---|---|
皆野祐樹 |
街中で暴れてるの?どうして? |
名雲光 |
えーとさ。 超人能力者が悪い怪人になるじゃん? |
皆野祐樹 |
うん。 |
名雲光 |
したら、手下をいっぱい作れるようになるんだよね。 便利さに気づいたんじゃね? |
酉原剛 |
手当たり次第かよ。 |
ウサタロー |
ウオオオーッ、許せないぜ! 皆野、止めるんだ! |
皆野祐樹 |
うん! |
村雨礼司 |
手下を倒していけば、その先に奴がいるはずだ。 しっかりついてこいよ。 |
皆野祐樹 |
わかった! |
ウサタロー |
いいか皆野。 ヒーローってのは、ハートで戦うもんだ! |
---|---|
ウサタロー |
怪人がどうこうってのは、ひとまず置いとけ。 まずお前は、自分のハートと向きあうんだ。 |
皆野祐樹 |
ハート……よくわかんない。 |
ウサタロー |
今はそれでもいいぜ。 |
ウサタロー |
とにかくお前はヒーローに相応しいハートを持ってる。 それはオイラが保証するから、しっかり覚えとけ。 |
皆野祐樹 |
う、うん、わかった。 |
セクレト |
間もなくタコヤキ怪人と接敵します。 戦闘に備えてください。 |
ウサタロー |
よし、行こうぜ皆野! |
皆野祐樹 |
うん! |
森沢江湖 |
みんな、タコヤキさんたちを見つけたよ! 街のみんなを襲ってる! |
酉原剛 |
ウオオーッ!やらせねーぞー! |
手下 |
おうおう、来よったなヒーローども。 これでもくらわんかい! |
酉原剛 |
ふんっ。その程度の攻撃、俺様には効かないぜ! |
手下 |
やるやないけ。 |
皆野祐樹 |
大丈夫、酉原くん!? |
酉原剛 |
問題ねぇ。それより、こいつらは俺様が引き受ける。 その間に、街のみんなを避難させてくれ! |
森沢江湖 |
わかった。こっちは任せて。 |
皆野祐樹 |
僕は、酉原くんの方を手伝うよ! |
酉原剛 |
ありがとよ、祐樹。 |
酉原剛 |
だけどこっちは大丈夫だ。 おまえも江湖と一緒に、みんなを避難させてくれ。 |
皆野祐樹 |
本当に大丈夫? |
酉原剛 |
俺様の肉体は、そんなヤワじゃねぇ。 |
酉原剛 |
ここまで鍛え上げたのは、みんなを守るためだ。 安心して、ここは任せてくれ! |
手下 |
一人で大丈夫とは、ずいぶん余裕やんけ。 こっちは大勢いるんやで? |
酉原剛 |
おう、かかってこい! |
ウサタロー |
ここはあいつ一人で大丈夫だ。 オイラたちは、みんなを避難させよう! |
皆野祐樹 |
酉原くん、すごい気合だったね。 |
ウサタロー |
なんつーか、迷いがないな。 |
ウサタロー |
きっと酉原の中には、強い信念があるんだ。 みんなを守ってみせるっていうな。 |
皆野祐樹 |
(僕は、どうなんだろう……?) |
森沢江湖 |
こっちは避難終わったよ。皆野くんの方はどう? |
皆野祐樹 |
うん。こっちも終わった! |
ウサタロー |
よし、それじゃ次にやるべきことは一つだ! 分かってるな、皆野! |
皆野祐樹 |
うん、酉原くんの手助けに行こう! |
酉原剛 |
よし、ここは片付いたな! |
---|---|
森沢江湖 |
酉原くん、怪我はない? |
酉原剛 |
レスラーをなめてもらっちゃ困るぜ! このとおりピンピンしてらぁ! |
皆野祐樹 |
あ、でもだいぶ縮んでる? |
酉原剛 |
肉を食えば、まだまだいけるさ!(ムシャムシャ) |
ウサタロー |
さあ、他のところに行こうぜ! 怪人はまだまだいるはずだ! |
森沢江湖 |
うん、そうだね。 |
酉原剛 |
他のやつらも全部まとめて、俺様が相手してやるぜ! |
皆野祐樹 |
それじゃ、僕たちも移動しようか。 |
名雲光 |
おーい、ちょっと待って~。 |
ウサタロー |
ん、名雲じゃねーか。どうしたんだ? |
名雲光 |
イケメンのやつがヤバいの。手貸して! |
皆野祐樹 |
え、村雨くんが!?わかった、急いで行こう! |
男 |
う、うう……。 |
村雨礼司 |
フン。 |
皆野祐樹 |
村雨くん、大丈夫!?って……大丈夫そうだね。 |
村雨礼司 |
皆野か。そんなに慌ててどうした? |
皆野祐樹 |
村雨くんが大変だって、名雲さんが……。 |
名雲光 |
マジ大変なんだって。ほらあれ見てよ! |
男 |
くそっ……。 |
皆野祐樹 |
あれって、あの怪我した男の人? |
皆野祐樹 |
あの、どうしたんですか? |
男 |
どうしたもこうしたも、お前の仲間にやられたんだよ! |
皆野祐樹 |
仲間って……? |
名雲光 |
イケメンだよ。こいつ、一般人攻撃しちゃったの! |
皆野祐樹 |
ええっ!? |
村雨礼司 |
ただの脅しだ。当てちゃいない。 その怪我は、そいつが勝手に転んでできたものだ。 |
ウサタロー |
おいおい村雨! ヒーローが一般人攻撃しちゃまずいぜ! |
村雨礼司 |
早とちりするな。そいつは怪人の襲撃に紛れて、 窃盗を働いていた火事場泥棒だ。 |
名雲光 |
それは本当。ウチも見たし。 |
村雨礼司 |
俺はただ、犯罪者を懲らしめてやっただけだ。 |
村雨礼司 |
怪人も、犯罪者も、等しく街の平和を破壊する悪だ。 |
村雨礼司 |
俺はヒーローとして、すべての悪を断罪する。 それのどこに問題があるんだ? |
ウサタロー |
それが村雨のヒーロー像ってわけか。 |
皆野祐樹 |
だからって、超人能力を一般人に向けちゃダメだよ! |
村雨礼司 |
一般人じゃない。犯罪者だ。 |
名雲光 |
だからってやりすぎだし。 |
村雨礼司 |
皆野、覚えておけ。 街の平和を脅かすのは、怪人だけじゃない。 |
村雨礼司 |
犯罪者もまた、平和を脅かすんだ。 |
皆野祐樹 |
そ、そうかもしれないけど……。 |
セクレト |
警告。タコヤキ怪人が接近中です。 戦闘に備えてください。 |
ウサタロー |
おい、仲間同士でにらみ合ってる場合じゃねーぜ! |
村雨礼司 |
言われるまでもない。 |
名雲光 |
あーもう、しゃーないな! |
皆野祐樹 |
……うん。今は怪人と戦おう! |
名雲光 |
エコちゃん、こっちこっち~! |
---|---|
森沢江湖 |
セクレトさんに呼ばれて来たけど、なにがあったの? |
皆野祐樹 |
この人の怪我を、治してあげてほしいんだ。 |
男 |
くそ……。 |
森沢江湖 |
むむ、これはひどい怪我だ!骨が飛び出してる! |
名雲光 |
飛び出してないし。なにそのキャラ付け? |
森沢江湖 |
だがこの私が来たからには、もう大丈夫。 どんな怪我も、たちどころに治してみせよう! |
森沢江湖 |
えい!痛いの痛いの飛んでけー! |
ウサタロー |
おお、すごい勢いで傷が塞がっていくな。 |
皆野祐樹 |
森沢さんがいてくれて、本当によかったよ。 |
名雲光 |
……そういえば、イケメンいなくね? |
ウサタロー |
村雨なら、さっきの戦闘のあと、すぐいなくなったぜ。 |
名雲光 |
マジウケるわ。 |
森沢江湖 |
?村雨くんがどうかしたの? |
名雲光 |
あー、なんでもない。マジなんでもないから。 |
森沢江湖 |
? |
名雲光 |
えーっと……あ、そーだ! ウチ、こいつ警察に連れてくから! |
男 |
見逃してくれよ。 |
名雲光 |
ウチも悪いやつは嫌いなの。絶対見逃さねーから。 さっきのことなら、治してチャラってことで。 |
男 |
ちくしょう……。 |
名雲光 |
んじゃ、そういうことで! |
森沢江湖 |
光ちゃん、なんか慌ててたね。 |
ウサタロー |
まあ、ちょっと面倒なことがあってな。 |
森沢江湖 |
ふーん? |
皆野祐樹 |
ねえ森沢さん、ちょっと聞いていいかな? |
森沢江湖 |
なに? |
皆野祐樹 |
森沢さんは、どうしてヒーローになろうと思ったの? |
森沢江湖 |
ヒーローになろうと思った理由? 私は、一人でも多くの命を救いたいと思ったからかな。 |
ウサタロー |
やっぱ、回復能力があったからか? |
森沢江湖 |
きっかけは別だよ。 |
森沢江湖 |
お医者さんでもよかったんだけど、ヒーローの方が 活躍の場が広かったから、こっちにしたの。 |
皆野祐樹 |
そっか。みんな、いろんな事考えてるんだね。 |
森沢江湖 |
皆野くんは? |
皆野祐樹 |
え、僕? |
森沢江湖 |
皆野くんは、どうしてヒーローになろうと思ったの? |
皆野祐樹 |
僕は…………。 |
森沢江湖 |
? |
セクレト |
お話し中のところ失礼します。 皆野様、森沢様、救援要請です。 |
セクレト |
怪人に囲まれ、孤立した一般人がいるとのこと。 |
セクレト |
一般人の中には、けが人も確認されています。 至急、救援に向かってください。 |
ウサタロー |
そうだ、話してる場合じゃねーぜ! 行くぞ二人とも! |
森沢江湖 |
わかりました!すぐに向かいます! |
森沢江湖 |
皆野くん、顔色悪いけど大丈夫? |
皆野祐樹 |
うん、大丈夫。行こう、森沢さん! |
セクレト |
皆様、次の地点に移動願います。 |
---|---|
セクレト |
なお各地に現れた手下は、次の地点で最後となります。 |
酉原剛 |
いよーっし、肉補充!まだまだ戦えるぜ! |
村雨礼司 |
最後まで気を抜くなよ。 |
酉原剛 |
言われるまでもねーぜ。 |
名雲光 |
ねえセクレト、これまでの手下の出現パターンから、 キューバーンの居場所探れたりしない? |
セクレト |
可能です。 データを解析しますので、少々お待ちください。 |
名雲光 |
よろしくね~。 |
名雲光 |
あと、そこのイケメン!やりすぎんのなしだからね! |
村雨礼司 |
フン。 |
皆野祐樹 |
……よし、次で最後か。 |
ウサタロー |
なんかスッキリした顔してるな、皆野! |
皆野祐樹 |
うん、これが正解か分からないけど、 多分、自分のハートと向き合えたと思う。 |
皆野祐樹 |
森沢さん、さっきの話だけど。 |
森沢江湖 |
うん? |
皆野祐樹 |
どうしてヒーローになろうと思ったのかって話。 |
皆野祐樹 |
……正直な話、僕はヒーローになりたいなんて、 思ったことなかったんだ。 |
森沢江湖 |
そうなの? |
皆野祐樹 |
能力も弱かったしね。 憧れこそすれ、手の届かない存在だと思ってた。 |
皆野祐樹 |
だからみんなみたいに、こうなりたい、こうしたい っていうのが、僕にはなかった。 |
ウサタロー |
そんなことは、ないはずだぜ。 |
皆野祐樹 |
うん。 |
皆野祐樹 |
ヒーローとしてどうなりたいっていうのは、 僕にはなかった。 |
皆野祐樹 |
だけど僕は、困っている人がいたら助けたい。 |
皆野祐樹 |
ヒーローじゃないときから、ずっとそう思ってたんだ。 |
ウサタロー |
そうだぜ! だから皆野は、オイラを助けてくれたんだろ? |
皆野祐樹 |
うん! |
皆野祐樹 |
僕は、困ってる人のために戦う。 そういうヒーローになりたい。なってみせる! |
森沢江湖 |
うん。とっても皆野くんらしくて、 かっこいい理由だと思うよ! |
皆野祐樹 |
えへへ……。 |
ウサタロー |
これで皆野も、本当の意味でヒーロー一年生だ! これから頑張っていこうぜ! |
森沢江湖 |
私も一緒に頑張るからね! |
皆野祐樹 |
うん! |
酉原剛 |
お、気合入ってんじゃねーか、祐樹。肉食うか? |
皆野祐樹 |
食べる! |
名雲光 |
本当に食べたし。元気すぎてマジウケる。 |
村雨礼司 |
勝手な真似だけはしないでくれよ? |
セクレト |
間もなくタコヤキ怪人と接敵します。 戦闘に備えてください。 |
皆野祐樹 |
それじゃみんな、行こう! |
セクレト |
手下たちの出現パターンから キューバーンの所在地を解析中です。 |
---|---|
名雲光 |
ヤバい。 |
セクレト |
恐縮です。 |
森沢江湖 |
すごいね。通じてるんだ? |
名雲光 |
「ヤバい」の意味って4096個くらいあるのに。 ヤバいわー。 |
皆野祐樹 |
確かに、文脈を読み取らないと返事できないよね。 高性能だなあ。 |
名雲光 |
ウチの能力でいじってみたいなー。 今度いい?セクレトちゃん。 |
セクレト |
いいえ。 |
村雨礼司 |
余計なことをするなよ。 |
名雲光 |
なによー、イケメンは真面目すぎっしょ。 |
酉原剛 |
喧嘩してるとこ悪ぃけどよ、敵が来てるぜ! |
酉原剛 |
キューバーンのアジトが見つかる前に、 メシ食いに行こうぜ! |
---|---|
ウサタロー |
酉原はずっと食ってんだろ! |
酉原剛 |
この肉はノーカウントだ! |
酉原剛 |
つか、キューバーンのアジトに行ったら、 それこそメシ食ってる暇ないだろ? |
皆野祐樹 |
あー、うん、確かにそうかも。 |
酉原剛 |
だから今行こうぜ、メシ。 |
森沢江湖 |
わ、私は大丈夫だから! |
酉原剛 |
おお? |
名雲光 |
どしたのエコちゃん、急に大声なんか出して。 |
名雲光 |
……もしかしてダイエット中だった? |
森沢江湖 |
ち、違うの。 |
ウサタロー |
なにが違うんだ? |
森沢江湖 |
悪いのはね、セールをやってたドーナツ屋さんなの。 あれはダメだよ。ついたくさん買っちゃうもん。 |
酉原剛 |
甘いものの食べすぎはよくねーな。 それじゃ良質な筋肉は作れねーぞ。 |
皆野祐樹 |
そういう話じゃないと思うよ? |
森沢江湖 |
うう、いっそ筋肉になってくれれば……。 |
名雲光 |
うーん、エコちゃん別に太ってなくね? |
皆野祐樹 |
(うんうん) |
森沢江湖 |
そんなことない。太ももとか超ヤバいんだから。 |
名雲光 |
ヤバくねーって。 |
森沢江湖 |
ううう、光ちゃんに言われるとちょっと傷つくよ。 |
森沢江湖 |
光ちゃん、足も腰もすっごい細いよね。 私も光ちゃんみたいなスタイルになりたいな……。 |
名雲光 |
や、褒めてくれるのは嬉しいけどさ。 謙遜しなくていいよ。エコちゃんも超かわいいって。 |
皆野祐樹 |
(うんうん) |
名雲光 |
ほら、抱きしめたるから。元気だしな。 |
森沢江湖 |
うう。ありがとう光ちゃん。 |
名雲光 |
……ん?(ムニュ) |
森沢江湖 |
?どうかしたの、光ちゃ……って、キャ! ちょっと光ちゃん、変なところ触らないでよ。 |
名雲光 |
……パネェ。(ムニュムニュ) |
ウサタロー |
なにがだ? |
名雲光 |
エコちゃんマジパネェわー……。 |
森沢江湖 |
どこ行くの、光ちゃん? |
村雨礼司 |
おい酉原。残念なお報せだ。 食事に行っている暇はなさそうだぞ。 |
酉原剛 |
なんだって? って、またタコヤキが沸いてきてるじゃねーか! |
村雨礼司 |
キューバーンを倒すまで、延々沸き続けるのかもな。 |
酉原剛 |
んじゃ、メシはキューバーン倒してからか。 |
ウサタロー |
仕方ねーな! 行くぞ皆野、タコヤキを蹴散らしてやろうぜ! |
皆野祐樹 |
…………。 |
ウサタロー |
おーい、皆野? |
皆野祐樹 |
(森沢さんのなにがどれくらいパネェんだろう?) |
セクレト |
解析が完了しました。 キューバーンの所在地は、この地点だと推測されます。 |
---|---|
ウサタロー |
ついにこのときが来たな! |
名雲光 |
ここまでマジで長かったわー。 |
酉原剛 |
それで、キューバーンのアジトはどこなんだ? |
村雨礼司 |
む、この場所は……。 |
皆野祐樹 |
あれ?これって市街地のど真ん中じゃない? |
森沢江湖 |
うん、そうだと思う。 |
酉原剛 |
市街地だって? おいおい、そんな場所に怪人のアジトがあるのかよ! |
ウサタロー |
てっきりオイラ、アジトは廃工場みたいなところに あるものだと思ってたぜ! |
名雲光 |
思い込みの裏をかかれたんじゃね? |
酉原剛 |
なるほど、そいつは盲点だった! |
皆野祐樹 |
あと気になるのは、タコヤキたちはどうやって、 こんな市街地の中を移動していったんだろう? |
酉原剛 |
あんな怪しい恰好したやつらがビルから出入りしたら、 すぐに見つかるだろうな。 |
森沢江湖 |
フッフッフ、甘いぞ諸君。 敵は、地下に張り巡らされた下水道を使ったのだよ! |
ウサタロー |
な、なんだってー! |
皆野祐樹 |
でもその場合、タコヤキ怪人すごい臭いそうだね……。 |
名雲光 |
いや、忘れてるかもだけど、怪人も人間だし。 |
名雲光 |
普通に人間の姿で移動して、 襲う寸前に怪人の姿に変身してんじゃね? |
皆野祐樹 |
それは分からないね……。 |
村雨礼司 |
頭の悪い会話はそれくらいにしておけ。 |
ウサタロー |
なんだと! |
村雨礼司 |
そろそろ出発するぞ。 あとはこの場所に直接行ってから確かめる。 |
皆野祐樹 |
うん、そうだね。 |
セクレト |
皆様、お待ちください。 |
皆野祐樹 |
どうしたの、セクレト? |
セクレト |
ただいま、タコヤキ怪人の反応を確認しました。 こちらに向かってきます。 |
皆野祐樹 |
本当に次から次に出てくるね。 |
酉原剛 |
なあ、どうするんだ? |
村雨礼司 |
放っておけば、近隣の市街地に被害が出る。 当然、一匹残らず倒していくぞ。 |
酉原剛 |
そうだろうと思ったぜ! |
皆野祐樹 |
……着いたよ。 |
---|---|
酉原剛 |
え、ここか? |
皆野祐樹 |
うん。セクレトの解析が正しければ、 キューバーンのアジトはこの場所だよ。 |
名雲光 |
うは、マジウケるわ。 |
ウサタロー |
たこ焼き屋じゃねーかここ!まんまかよ! |
皆野祐樹 |
木を隠すなら森の中、ってことなのかな? |
ウサタロー |
そうか?本当にそうなのか? |
酉原剛 |
つーか、たこ焼き食いてぇ!食おうぜ! |
森沢江湖 |
私、買ってくるね。 |
村雨礼司 |
おい、そこの二人、勝手なことをするな! |
酉原剛 |
なんだよ、たこ焼き買うぐらいいいじゃねーか。 |
村雨礼司 |
怪人のアジトで買うやつがあるか! |
名雲光 |
そうだぞーエコちゃん。ダイエット中なんしょ? |
森沢江湖 |
た、たこ焼きは別腹なんだよ光ちゃんっ。 |
名雲光 |
お腹は別でも体重は一緒なんだよなー。 |
村雨礼司 |
違う! 敵の罠である可能性を考えろと言っているんだ! |
酉原剛 |
食い物を目の前にして我慢しろだなんて、拷問だぜ! |
店員?(手下) | へい、らっしゃい。 |
森沢江湖 |
あ、店員さんが出てきたよ。 |
店員?(手下) | お客さん、たこ焼きをお求めで? |
村雨礼司 |
いや、俺たちは客じゃない。 |
店員?(手下) | うちのタコ焼きは美味しいで。 一口食えば、美味さのあまり昇天すること請け合いや。 |
村雨礼司 |
客じゃないと言ってるだろう。 |
店員?(手下) | そう言わんと。 ほれ、一口サービスしたるで。 |
村雨礼司 |
だから、違うと言ってるんだ! |
店員?(手下) | 遠慮せんと。ほれ一口…… |
手下 |
一口…………喰らえやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! |
村雨礼司 |
うわっ!? |
皆野祐樹 |
あっ!タコヤキ怪人だ! |
手下 |
あー惜しいわー。兄さん避けたらあかんて。 これ喰らってくれんと天国逝かせられへんやん。 |
村雨礼司 |
ということは、やはりここが敵のアジトか! |
手下 |
ふふふ、とうとうばれてしもーたか。 せやで。ここがキューバーン様のアジトや。 |
酉原剛 |
そっちから正体明かしてくれるとは、話が早いぜ。 タコヤキども、覚悟はできているか? |
手下 |
アホぬかせ。ここをどこだと思とる。 覚悟するのはそっちやで! |
皆野祐樹 |
うわっ、店の奥から大量のタコヤキ怪人が! |
手下 |
さーて、じっくり調理したるでー。 |
名雲光 |
そっちは調理済みのくせに、ウケるわー。 |
森沢江湖 |
みんな、油断しちゃダメだよ! |
ウサタロー |
さあ戦闘だ、皆野! ヒーローなら、この程度でビビっちゃダメだぜ! |
皆野祐樹 |
び、ビビったりするもんか! 行くよ、みんな! |
皆野祐樹 |
よし、だいたい倒したぞ! 残るタコヤキは一体だ! |
---|---|
手下 |
ふふふ、夢見たらあかんでヒーロー! |
手下 |
ここはキューバーン様のアジトなんやで! これでタネ切れなわけないやろ! |
村雨礼司 |
くそっ、また奥から新しいタコヤキどもが……! |
森沢江湖 |
戦う前と同じ状態になっちゃった! |
名雲光 |
むしろ数増えてるかも? |
酉原剛 |
俺様は腹が減ってきたぞ。 |
名雲光 |
どうしよう、これじゃキリがないよ! |
手下 |
せやで、ここは無限タコヤキ地獄やで! さっさと諦めて降参せーや。 |
名雲光 |
降参したらどーなんの? |
手下 |
たこ焼きの具にして美味しくいただいたるわ! |
名雲光 |
超ホラーじゃん! |
手下 |
あ、でもな、そっちの注射器の姉ちゃんだけは 特別に許したるわ。 |
森沢江湖 |
私が降参したらどうなるの? |
手下 |
売り払ったるに決まっとるわ!がははは! |
森沢江湖 |
そうだと思った! |
ウサタロー |
みんな、敵の言葉に惑わされるな! 無限だなんて、嘘っぱちに決まってるんだぜ! |
手下 |
いや、ほんま無限やて。証明したろか? |
酉原剛 |
へっ、好きにすればいいさ! |
酉原剛 |
敵の数がどれだけ多くても、俺様のやることは同じだ。 すべての攻撃を受け止め、仲間を守る! |
ウサタロー |
かっこいいこと言うじゃねーか酉原……! |
手下 |
いやいや、諦めーや。 |
村雨礼司 |
フン、ウサギや酉原に心配されるまでもない。 平和を乱す悪は、全員俺が倒してやるとも。 |
名雲光 |
ま、諦めろだとか無限だだとか、 普通に考えたら、ただの強がりっしょ。 |
手下 |
つ、強がりなんかじゃないで! |
名雲光 |
動揺してるし。ウケるよね。 |
森沢江湖 |
みんなの怪我は、私が治すから安心して! 思いっきり戦ってくれて大丈夫だよ! |
皆野祐樹 |
(みんなすごいや。全然物怖じしてない!) |
皆野祐樹 |
(そうだ、僕もこれくらいでビビってちゃダメだ!) |
皆野祐樹 |
ぼ、僕も全力で戦うよ! かかってこい、タコヤキ怪人! |
ウサタロー |
いいぞおまえたち!それでこそヒーローだぜ! ウオオーッ!オイラも燃えてきたー! |
手下 |
あーもう、やけくそや! タコヤキの怖さ、思い知らせてやるでー! |
キューバーン |
よくここまで……って! 女の子、もう自由の身やんか!? |
---|---|
森沢江湖 |
は~い! |
キューバーン |
手下、使えんなあ……。 まあええわ。全員倒したる! |
皆野祐樹 |
よかったら、復讐はなにも生まないので 悪事をやめてくれると……。 |
キューバーン |
うっさいわボケ! ワシと戦えや! |
酉原剛 |
出たな怪人!エンゲルマスクがお前を倒す! |
村雨礼司 |
ストライカー、戦闘開始だ。 |
名雲光 |
サイバーフォックスは後ろから見てるよ~。 ダメ? |
森沢江湖 |
ファーストエイド、援護しますよ~。 |
ウサタロー |
よし皆野、お前の名前を叫べ! |
皆野祐樹 |
僕は、僕はライオンハート! ……悪と戦う、ヒーローだ!……こんな感じ? |
キューバーン |
てゆーか、はー、また自分かいな。 |
---|---|
キューバーン |
なーにがライオンハートやっちゅーねん。 弱いくせに、こんなとこまで来よってからに……。 |
皆野祐樹 |
悪事をやめてくれれば、僕もう帰りますけど。 |
キューバーン |
うっさいわボケ! 自分なぁ、ほんまいい加減にせーよ! |
キューバーン |
強盗の邪魔はするし、回復能力者の誘拐は邪魔するし、 ワシの手下は倒してくれるし……。 |
キューバーン |
なにしてくれてんのや!邪魔ばっかしよって! |
キューバーン |
あーもー。最近の若者は、ほんまにもー! |
ウサタロー |
邪魔されて当然のことしかやってねーだろ! |
皆野祐樹 |
誰かを困らせるようなことは、やっちゃダメだよ! |
キューバーン |
うっさいわ!うっさいわ! |
キューバーン |
ワシは超人能力者やで? |
キューバーン |
人より優れた能力持ってるゆーことはな、 好きに振舞ってええっちゅーことなんや! |
名雲光 |
ヤバいわ、こいつ。 |
キューバーン |
そっちの姉ちゃん!自分も自分やで! |
森沢江湖 |
え、私ですか? |
キューバーン |
せめて取引が終わるまでじっとしててくれな! ワシんとこに一円も入ってこんやろ! |
森沢江湖 |
私はじっとしてたよ? |
酉原剛 |
俺様たちが、速攻で助け出しただけだからな。 |
キューバーン |
いや、そうだとしてもやで? そこは仲間から逃げ回ってくれんと。 |
森沢江湖 |
えー……? |
キューバーン |
人として、他人の都合も考えられるようにならんと。 でないと立派な大人にはなれへんで? |
名雲光 |
それ、ジコチューで間違った大人が言っちゃう? |
村雨礼司 |
フン、怪人の都合など知ったことか。 |
村雨礼司 |
黙って話を聞いていたが、やはり怪人は悪だ。 世の中の平和のため、ここでおまえを倒させてもらう。 |
村雨礼司 |
……それとも、まだ説得してみるか? |
皆野祐樹 |
僕の話がまったく通用しそうにないってことは、 よくわかったよ。 |
ウサタロー |
自分のことしか考えてねーもんな、こいつ。 |
村雨礼司 |
そういうことだ。覚悟しろ、キューバーン! |
キューバーン |
なーにが「倒させてもらう」や。 |
キューバーン |
できるもんならやってみーや! 倒れるのがどっちか、ワシがじっくり教えたるわ! |
皆野祐樹 |
ええーい! |
---|---|
キューバーン |
ほい。 |
酉原剛 |
俺様の攻撃を食らえー! |
キューバーン |
ほほい。 |
村雨礼司 |
これならどうだ! |
キューバーン |
ほほほのほい。 |
ウサタロー |
なんてやつだ! 三人の攻撃を、立て続けにさばきやがった! |
森沢江湖 |
さすがは八本足のタコさん! |
キューバーン |
フッフッフ、これがワシの実力や! 舐めとったら怪我するで、ヒーローども! |
名雲光 |
ヤバ。確かにちょっと舐めてたかも。 |
名雲光 |
こうなったら、ウチも攻撃に加勢するし。 行け、ポンキューちゃん! |
キューバーン |
おっと、やらせへんでー! タコヤキミサイルー! |
名雲光 |
ちょ、マジ!? |
皆野祐樹 |
頭からたこ焼きが飛んでったー! |
酉原剛 |
美味そうな攻撃だな。 |
名雲光 |
いや、美味しくないし!フツーに痛いから! |
キューバーン |
ワッハッハ、どうしたヒーローども! ワシを倒すんじゃなかったんかい! |
村雨礼司 |
言われなくても倒してやるとも。 調子に乗るなよ、怪人! |
キューバーン |
いや、調子に乗っとるんは自分たちの方とちゃう? |
キューバーン |
ちょ~っと強い能力持ったくらいで、 「俺はヒーローだ!」とか言い出してみたりな。 |
キューバーン |
いやー、恥ずかしいわー。若気の至りだわー。 |
皆野祐樹 |
すっごい調子に乗ってる……。 |
村雨礼司 |
言わせておけば! |
皆野祐樹 |
ちょ、敵の挑発に乗っちゃダメだよ、村雨くん! |
キューバーン |
ほい、ほほい♪ 攻撃が荒くなっとるで、イケメンの兄ちゃん! |
キューバーン |
悔しいんか?ん?悔しいんか? 今どんな気持ちか、聞かせてくれへん? |
村雨礼司 |
いい加減に……! |
キューバーン |
隙だらけやで自分!ほい、これでしまいや! |
村雨礼司 |
しまっ……! |
酉原剛 |
むぅん!!俺様の仲間を傷つけさせはしねぇ! |
キューバーン |
ほう。今の一撃、よく受け止めたもんやわ。 |
酉原剛 |
大丈夫か、礼司? 熱くなるなんて、おまえらしくねーぞ。 |
村雨礼司 |
……フン、余計なことを。 |
酉原剛 |
余計なもんか。仲間助けるのは当たり前のことだろ。 |
名雲光 |
みんな、そろそろ反撃しよ! ウチ、やられっぱなしって嫌いなんよね! |
キューバーン |
自分らの実力じゃ、ワシに反撃は無理とちゃうかなー。 |
酉原剛 |
いやいや、そんなことねーぜ。 |
酉原剛 |
ちょうどウォーミングアップが終わったところだ! ここから俺様の本気を見せてやるぜ! |
酉原剛 |
おまえもそうだろ、礼司? |
村雨礼司 |
フン、当たり前だろう。 |
ウサタロー |
あいつらに負けてらんねーぞ、皆野! おまえも本気で行くんだー! |
皆野祐樹 |
僕はずっと全力だったけどね!? |
キューバーン |
ま、ボチボチやな。 |
---|---|
酉原剛 |
くそ、まだ涼しい顔してやがるぜ! |
村雨礼司 |
俺たちの攻撃が通じてないのか……? |
キューバーン |
いや、だからボチボチやで。ボチボチ効いとる。 |
キューバーン |
イケメンとレスラーはいい線行っとるんやないか? |
キューバーン |
ギャルは能力よう使いこなしてるし、 回復能力者も敵に回すと厄介やで、ほんま。 |
名雲光 |
ハハ、ヤバい。めっちゃ上から言われてるし。 |
キューバーン |
ライオンハートは弱いけどな。やっぱお前ザコやわ。 |
皆野祐樹 |
うう……。 |
ウサタロー |
言い返せ!なんでもいいから言い返せ皆野! 実力で負けても、ハートは負けちゃダメだぜ! |
キューバーン |
お、そうや。いいこと思いついたで。 |
キューバーン |
おまえら、ワシの手下にならへんか。 |
キューバーン |
タコヤキどもより有能そうやわ。 回復能力者もおるし、ワシらすごいことになるで? |
村雨礼司 |
俺たちはヒーローだ! 怪人になど、成り下がるものか! |
キューバーン |
怪人も倒せん役立たずがヒーロー名乗るんか? おまえら全員、ヒーロー失格やで。 |
村雨礼司 |
この……っ! |
皆野祐樹 |
落ち着いて、村雨くん。挑発に乗っちゃダメだよ。 |
村雨礼司 |
すまん、同じミスを繰り返すところだった。 |
皆野祐樹 |
キューバーンが強いのは事実だよ。 怪人は許せないのかもしれないけど、それは認めよう? |
村雨礼司 |
……そうだな、認める。 今の俺の実力では、やつに勝つことはできない。 |
酉原剛 |
俺様の肉体も磨きが足りなかったぜ。 |
名雲光 |
ウチのポンキューちゃんも、もっと強くしなきゃだね。 |
森沢江湖 |
でもそれを認めちゃったら……私たち勝てないんじゃ? |
皆野祐樹 |
いや、勝つんだ。みんなで勝とう。 |
皆野祐樹 |
一人一人の力で敵わなくても、全員の力を合わせれば、 きっとキューバーンを倒せるよ! |
村雨礼司 |
……そうだな。俺たちは即席とはいえ、チームだ。 ここは協力し合うべきだな。 |
酉原剛 |
よっしゃ!それじゃ俺たちのツープラトン…… いや、ファイブプラトンをお見舞いしてやろうぜ! |
キューバーン |
なんや、悪巧みしてそうな顔やな。 なにするつもりか知らんが、かかってきーや。 |
キューバーン |
なにしてもワシには敵わんてこと、思い知らせたるわ! |
ウサタロー |
思い知るのはお前の方だぜ! みんなの実力、キューバーンに見せてやるんだぜ! |
皆野祐樹 |
それじゃ行くよ、みんな! |
キューバーン |
ぐわあああああっ! |
---|---|
皆野祐樹 |
や、やった……のかな? |
ウサタロー |
ああ、やったんだ!オイラたちの勝ちだ! |
酉原剛 |
やっぱり俺様は最強だぜ! |
村雨礼司 |
フン、当然の結果だな。 |
名雲光 |
もしかしてウチら、超ヤバくない? |
皆野祐樹 |
やった!怪人を倒したぞ! |
森沢江湖 |
皆野くんのおかげだね! |
皆野祐樹 |
え、そんな……みんなが協力してくれたおかげだよ。 |
ウサタロー |
胸を張っていいんだぜ、皆野。 おまえはもう立派なヒーローだ! |
皆野祐樹 |
そ、そうかな。えへへ……。 |
ウサタロー |
ただし、まだまだ全然弱いけどな! これからオイラが鍛えてやるから、覚悟しとけよ! |
皆野祐樹 |
あはは、そうだよねー……。 |
村雨礼司 |
さあ、怪人も倒したことだ。学園に戻るぞ。 |
酉原剛 |
その前にメシ食ってかねーか? |
名雲光 |
あーパス。ウチは早く帰ってシャワー浴びたいし。 |
森沢江湖 |
そだねー、ボロボロだもんね私たち。 |
皆野祐樹 |
それじゃセクレト。学園に転送してもらっていいかな。 |
ウサタロー |
無理だぜ? |
皆野祐樹 |
へ? |
セクレト |
転送装置は、学園から別の地点に行くためのものです。 別地点から学園への移動は、想定されておりません。 |
名雲光 |
は?んじゃどうやって帰んの!? |
セクレト |
新幹線の利用など、いかがでしょうか。 |
村雨礼司 |
つまり自力で帰れということか。 |
酉原剛 |
マジかよ面倒くせー……。 |
皆野祐樹 |
まあ、仕方ないよ。 それじゃみんな、気を取り直して帰ろうか。 |
ウサタロー |
学園に着いたぜ! |
皆野祐樹 |
最初はどうなることかと思ったけど、 ちゃんと戻ってこられて本当によかったよ……。 |
不動老師 |
よくぞ無事に戻ってきた、一年生諸君! |
皆野祐樹 |
が、学園長! |
不動老師 |
報告はすでに受けている。 |
不動老師 |
森沢君の救出だけでなく、怪人まで倒してみせるとは。 |
不動老師 |
本当によくやってくれた。期待以上の活躍だ! |
村雨礼司 |
ヒーローとして当然のことをしたまでだ。 |
酉原剛 |
俺様の実力はこんなものじゃねーぜ。 これからも期待しててくれよな! |
名雲光 |
ま、これくらいラクショーっしょ? |
森沢江湖 |
私はみんなに迷惑かけただけだけど……。 |
不動老師 |
森沢君の活躍も、ちゃんと儂の耳に届いているぞ。 |
森沢江湖 |
あ、ありがとうございます! |
ウサタロー |
お前も喜べ、皆野!学園長に褒められたんだぜ! |
皆野祐樹 |
いや、僕なんてまだまだだし……。 |
不動老師 |
自分の力量に納得がいかないなら、鍛えることだ。 この学園は、そのための場所なのだからな。 |
皆野祐樹 |
は、はい! |
不動老師 |
日に日に怪人の動きも活発になってきている。 この国には、より多くのヒーローが必要なのだ。 |
不動老師 |
精進したまえ、皆野君。 一日でも早く、立派なヒーローになるために! |
ウサタロー |
そうだぜ!これからビシバシ鍛えてやるからな! |
皆野祐樹 |
分かりました!がんばります! |