第2部 第6章
ニュー・エラ
ウサタロー |
みんな、着いたぞ! 出島ソラは今、ここにいるらしい! |
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酉原剛 |
ここって埼玉のスーパーなアリーナだよな? ソラ先輩はこんなところで何してるんだ? |
皆野祐樹 |
確か、時空の穴から現れた 不動仮面の相手をしてるって……。 |
不動老師 (通信) |
うむ、過去の儂『不動仮面』は今、 このアリーナの地下施設を占拠しておってな。 |
名雲光 |
お、ご本人登場。 |
不動老師 (通信) |
こちらから接触を図ってみたところ、 出島君と嵐山君を交渉人にせよと指名があったのだ。 |
森沢江湖 |
それじゃここには今、瑠璃ちゃんも来てるってこと? |
セクレト |
イエス。 両名はすでに地下施設に入っております。 |
スピードスター |
なんだと! プリンセス・テフテフまで来てるのか!? |
磐城藍 |
それは少し気になりますね。 不動仮面は、なぜその二人を呼んだのでしょう? |
村雨礼司 |
俺たちも地下施設に向かうぞ。 外で二人の帰りを待つ必要もないだろ? |
セクレト |
では、あちらの二名と合流することをオススメします。 |
衛守カブト |
む、おぬしたちは……。 |
衛守アギト |
よう、奇遇じゃん。 こんなところで何やってんだ? |
森沢江湖 |
あれ? あの二人、どこかで見たことあるような……? |
名雲光 |
ほら、あれっしょ。 いつもラッシーにつきまとってるストーカー。 |
衛守カブト |
拙者たちは御嬢の護衛だ! 間違ってもストーカーではござらぬ! |
森沢江湖 |
そっか、瑠璃ちゃんの護衛さんか~。 でも、護衛の人がこんなところにいていいの? |
衛守カブト |
不動仮面より、護衛はまかりならんと言われてな。 こうして外で留守番していたのでござる。 |
衛守アギト |
オレたち衛守家は、そこそこ有名人だからね~。 名指しで拒否られちまったよ。 |
皆野祐樹 |
そっかー。 僕たち中に入るつもりだけど、一緒に来る? |
衛守アギト |
うーん、しかしなぁ……。 不動仮面は、交渉するだけだから大人しくしてろって。 |
セクレト |
アリーナ内部より戦闘反応を確認。 出島様と嵐山様が襲撃を受けているようです。 |
衛守アギト |
え、話が違くね!? つか、呼んどいて襲うとかひどくね!? |
衛守カブト |
すわ、御嬢の一大事! 待っててくだされ、すぐにお助けいたしますぞ! |
ウサタロー |
オイラたちも行こうぜ! 出島と嵐山を助けだすんだ! |
不動老師 (通信) |
ついでと言ってはなんだが、 過去の儂も倒して送り返しておいてくれ。 |
皆野祐樹 |
え、不動仮面を……? いいのかなぁ、そんなことしちゃって。 |
ウサタロー |
みんな、気をつけろよ! 敵はどこから襲ってくるか分かんねーからな! |
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磐城藍 |
そうですね。 できる限り慎重に進んでいきましょう。 |
酉原剛 |
にしてもよ、アリーナの地下ってけっこう広いんだな。 俺様たちはどこに向かえばいいんだ? |
名雲光 |
そんなの学園長に聞けば一発っしょ。 だって今回の相手は、過去の学園長なんよ? |
皆野祐樹 |
そうか、学園長は今回の出来事を、 過去の出来事として経験してるはずなんだ! |
名雲光 |
つーことで、学園長がどこにいるのかとか、 これからどうなるのかとかいろいろ教えてくんない? |
不動老師 (通信) |
うむ……そのことなんだが、 過去の儂が現れて以来、記憶がひどく曖昧でな。 |
不動老師 (通信) |
過去にアリーナを占拠したことがあるかと聞かれれば、 そういうことをした覚えはある。 |
不動老師 (通信) |
それから、諸君とよく似たヒーローたちと 戦ったこともあるような気もするな。 |
酉原剛 |
マジかよ。 それってどっちが勝ったんだ? |
不動老師 (通信) |
儂が全員殴り倒して、世界を救った。 |
酉原剛 |
雑な記憶だな。 |
不動老師 (通信) |
だから曖昧だと言っておるだろう。 ちなみにその後、儂は急な腹痛で過去に戻った。 |
セクレト |
不動仮面のデータに、 そのような活動記録はありませんが? |
不動老師 (通信) |
うむ、実は儂にも覚えがない。 矛盾しとるが、未来に飛ばされた記憶などないのだ。 |
森沢江湖 |
が、学園長、とうとうボケて……? |
不動老師 (通信) |
なんじゃと! 儂はまだボケておらんぞ! |
スピードスター |
心配する必要はない。 それは同時空に重複存在が現れたことによる副作用だ。 |
磐城藍 |
ざっくり言うなら、過去の不動仮面が現れた影響で、 あなたの記憶に変化が起きてるんです。 |
磐城藍 |
これからも過去の不動仮面の行動次第で、 あなたの記憶は変化し続けるでしょう。 |
スピードスター |
やつを送り返すまでは、 その状態が続くと考えた方がいい。 |
不動老師 (通信) |
むぅ、今の儂の記憶は当てにならんということか。 |
名雲光 |
それってボケてんのと一緒じゃね? |
不動老師 (通信) |
なんじゃと! |
皆野祐樹 |
うーん、これってわりとヒーロー学園の危機じゃない? |
村雨礼司 |
学園長に致命的な変化が起きたらと考えると、 後のことを考えるのが恐ろしいな。 |
ウサタロー |
冗談じゃねー! さっさと不動仮面を過去に送り返そうぜ! |
皆野祐樹 |
あのさ、みんなちょっといいかな? ひとつ気になってることがあってさ。 |
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皆野祐樹 |
さっきから襲いかかってくる人たちなんだけど……。 |
村雨礼司 |
どうした? 手下怪人のことが気にかかるのか? |
皆野祐樹 |
いや、これ多分違うよ。 お揃いのコスチューム着てるけど、手下怪人じゃない。 |
酉原剛 |
はあ? 手下怪人じゃなければ、なんだっていうんだ? |
皆野祐樹 |
人間かも? |
森沢江湖 |
え~!? でも、ただの人間ってことはないでしょ? |
酉原剛 |
そのとおりだぜ! こいつらは超人能力だって使ってるじゃねーか! |
皆野祐樹 |
でもさ、考えてもみてよ。 この人たちが本当に手下怪人だったとしたら……。 |
村雨礼司 |
……不動仮面が怪人化して呼び出した、 ということになるのか。 |
不動老師 (通信) |
儂は怪人化などしておらんぞ。多分。 |
皆野祐樹 |
うん、だから、なにかおかしいなと思って……。 |
酉原剛 |
おいおいおい。 手下怪人じゃなけりゃ、こいつらいったい何者なんだ? |
名雲光 |
セクレト、こいつらの顔を照会してみて。 そうすれば答えが分かるかも。 |
セクレト |
かしこまりました。 |
セクレト |
……照会完了。 一致するデータが見つかりました。 |
村雨礼司 |
セクレトのデータベースにデータが!? それじゃ、こいつらの正体は! |
セクレト |
彼らは、不動仮面と同じ時代に活躍した ヒーローたちです。 |
森沢江湖 |
え~っ!? |
酉原剛 |
こいつら全員ヒーローなのか!? ヒーローが、どうしてこんなことをするんだよ! |
手下怪人? |
うっ……。 |
村雨礼司 |
おい、お前意識があるな? 答えろ、お前たちの目的はなんだ? |
手下怪人? |
お、俺たちは……。 我らが首領、不動仮面の掲げる大義のために……。 |
森沢江湖 |
無理はしちゃダメだよ! とりあえず治療するからジッとしてて! |
手下怪人? |
お前たちは……ここにいてはいけない。 今すぐに帰るんだ……。 |
ウサタロー |
オイラたちを追い返そうとしてる……? |
スピードスター |
俺たちに先に進まれては困る。 そういうことなのかもな。 |
衛守カブト |
気に食わんな……。 こやつら、なんのために拙者らを妨害する? |
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衛守アギト |
お嬢ちゃんたちのことは、 そっちから招き入れたのにな。 |
皆野祐樹 |
嵐山さんと出島先輩に用がある……ってことだよね。 |
衛守カブト |
だが不動仮面は、過去からやってきた人間なのだろう? 御嬢と面識などあるとは思えぬが。 |
皆野祐樹 |
…………。 |
森沢江湖 |
ちょっと二人に連絡してみない? セクレトさん、通信できる? |
セクレト |
イエス。 お二人と繋ぎます。 |
嵐山瑠璃 (通信) |
あら、この通信は森沢さん? |
衛守カブト |
御嬢、ご無事ですか! |
嵐山瑠璃 (通信) |
その声はカブト? みなさんお揃いで、どうかしましたの? |
名雲光 |
モジャモジャ先輩もいるー? |
出島ソラ (通信) |
……モジャモジャって、もしかしてボクのこと? 一応、一緒にいるけど。 |
森沢江湖 |
よかった、二人は一緒みたいだね。 |
衛守アギト |
お嬢ちゃん、今すぐ外に出ようぜ! なにか様子がおかしい! |
名雲光 |
なんか敵がさ、ウチらに帰れって言いながら 襲いかかってくんのよね。 |
森沢江湖 |
だけど二人は、不動仮面に招き入れられたんだよね? そっちはどんな感じなの? |
嵐山瑠璃 (通信) |
みなさん陰鬱な表情で、一言も喋らずに 襲いかかってくる感じですわね。 |
酉原剛 |
なんだよ、ずいぶん対応が違うんだな。 |
皆野祐樹 |
これってもしかして……。 |
スピードスター |
お前もそう思うか、ライオンハート。 |
皆野祐樹 |
確信はないけど……。 スピードスターも僕と同じ考えなんだね? |
スピードスター |
まあな。 |
森沢江湖 |
なんだか祐樹くんがインテリジェンスな顔に……。 |
衛守カブト |
どういうことでござる? なにか心当たりでも? |
皆野祐樹 |
ごめん、今はちょっと話せない。 |
衛守アギト |
もったいぶらないで教えてくれよ。 お嬢ちゃんの身が危ないんだ! |
磐城藍 |
話はそこまでです。 敵の新手が来ましたよ! |
衛守アギト |
だけどよ! |
磐城藍 |
皆野さんの話がどうであれ、 私たちのやるべきことに変わりはありません。 |
衛守カブト |
御嬢を、あとついでに出島ソラを救出する! |
磐城藍 |
そういうことです! それでは、行きましょう! |
衛守カブト |
さあ、敵は片付いたぞ! |
---|---|
衛守アギト |
皆野、教えてくれよ。 こいつらの狙いは一体なんなんだ? |
皆野祐樹 |
えーっと、それは……。 |
スピードスター |
セクレト、通信をすべて切れ。 |
セクレト |
イエス。 |
スピードスター |
ライオンハートは言いづらいだろうから、 代わりに俺が答えよう。 |
スピードスター |
不動仮面は、ここで始末しようとしているんだ。 ダークマターとプリンセス・テフテフの二人を……な。 |
皆野祐樹 |
うん……そうだと思う。 |
村雨礼司 |
……不動仮面が、あの二人を? それは、やはり未来を救うためなのか? |
スピードスター |
ああ、そういうことなんだろう。 取り返しがつかなくなる前に終わらせるつもりなんだ。 |
名雲光 |
つまりクロタウロスと同じことしようとしてるわけね。 今度は二人まとめてだけど。 |
衛守カブト |
待て、なんの話だ! 未来のために御嬢を始末するだと……!? |
衛守アギト |
出島ソラのほうはどうでもいいけどよ! 未来とお嬢ちゃんにどんな関わりがあるってんだ! |
スピードスター |
それは……。 |
名雲光 |
まー、そのへんはいろいろあんのよ。 ウチも詳しくは知らないんだけどさ。 |
磐城藍 |
話せる範囲のことは、後で私から説明しましょう。 |
酉原剛 |
いや、ちょっと待ってくれよ。 未来から来たクロタウロスが瑠璃を狙ったのは分かる。 |
酉原剛 |
けどよ、過去から来た不動仮面が、 どうして瑠璃とソラ先輩を始末しようとしてるんだ? |
ウサタロー |
そうだな。 未来のことなんか知らねーはずだろ。 |
スピードスター |
エターナルと接触していたとしたら? 不動仮面は、やつの御眼鏡に適う能力者だろうしな。 |
村雨礼司 |
未来の破滅を知り、救うために立ち上がったか。 可能性は十分にあるな。 |
ウサタロー |
いいや、オイラは納得いかねぇ! |
皆野祐樹 |
僕もそこが信じられなくて……。 |
ウサタロー |
こうなったら直接会ってみるしかねーぜ! そんで不動仮面の考えてることを聞くんだ! |
皆野祐樹 |
うん、不動仮面に会いに行こう! |
??? |
ハ~ハッハッハッハ! |
---|---|
皆野祐樹 |
え、この笑い声はいったい!? |
??? |
俺を呼ぶものがある……大地の轟きと、人の嘆きが! |
皆野祐樹 |
この声って、もしかして……!? |
不動仮面 (放送) |
ハ~ハッハッハ! 不動仮面、館内放送にて推参! |
酉原剛 |
って、なんだ声だけかよ! |
ウサタロー |
いやでも伝説のヒーローの生声だぞ。 スゲーじゃねえか。 |
名雲光 |
生声ねぇ? 学園長の声なんていっつも聞いてるじゃん。 |
森沢江湖 |
でも、すっごい若々しいよ。 年齢と一緒に声も変わるものなんだね。 |
不動仮面 (放送) |
あのー、ちょっといいかね君たち。 お兄さんの話を聞いてくれたまえ。 |
森沢江湖 |
はーい! |
不動仮面 (放送) |
お、いい返事だぞ~。 ファーストエイドちゃんはいい子だなぁ。 |
森沢江湖 |
えへへ……。 なんかちょっと照れるかも。 |
森沢江湖 |
やっぱりいつもの学園長とは違う感じがするね! |
名雲光 |
浮かれてる場合じゃないでしょ。 つか、なんでファーストエイドの名前知ってんの? |
不動仮面 (放送) |
なに、この時代のことを調べたときにね。 君の名前も知ってるぞ、サイバーフォックスちゃん。 |
名雲光 |
うひ。 ウチはちょっと苦手かも。 |
不動仮面 (放送) |
さて、いい子の諸君に提案だ。 このままみんなで、仲良くお帰り願えないかな? |
不動仮面 (放送) |
ここから先に起こることは、 君たちにとってはあまりに辛いことだろう。 |
スピードスター |
……やはり、そうなのか? |
不動仮面 (放送) |
そうだ。 |
不動仮面 (放送) |
ライオンハート君とスピードスター君の推測は、 おおむね正しい。 |
衛守カブト |
おい、御嬢を始末するとはどういうことでござる! 御嬢がいったい何をしたというのだ! |
不動仮面 (放送) |
それを俺の口から言うのはフェアじゃないかな。 ……が、衛守家の二人には本当に悪いと思ってるよ。 |
ウサタロー |
やいやい、不動仮面! 寄ってたかって二人をイジメるたぁ、どういうことだ! |
ウサタロー |
オイラの知ってる不動仮面は、 そんな卑怯なヒーローじゃないぜ! |
不動仮面 (放送) |
卑怯は百も承知さ。 でも、俺がやるしかないと思ったんだ。 |
ウサタロー |
ウオオオッ、見損なったぜ不動仮面! どうしてそんなことを……! |
不動仮面 (放送) |
誤解があったら困るから、ひとつ断わっておく。 |
---|---|
不動仮面 (放送) |
俺は別にエターナルの手下ってわけじゃない。 奴と話したうえで、俺は奴と敵対すると決めたんだ。 |
不動仮面 (放送) |
一緒にこの時代に送り込まれた仲間たちも、 俺に賛同してくれている。 |
不動仮面 (放送) |
俺たちは、世界を救うために戦っているのさ。 |
皆野祐樹 |
だからって、ヒーロー同士で戦うなんて……! |
不動仮面 (放送) |
その通りだな。 特に、同じ時代を生きるヒーローと戦うのは辛い。 |
不動仮面 (放送) |
だからこそ、俺たちがこの時代に来た。 |
不動仮面 (放送) |
ダークマターやプリンセス・テフテフを、 君たちの手で倒せるか? |
不動仮面 (放送) |
無理だろう? だから、俺たちが代わりにやるのさ。 |
村雨礼司 |
この時代の二人を倒す必要なんてないはずだ! エターナルさえ倒せれば……! |
不動仮面 (放送) |
それこそ無理な話さ。 |
ウサタロー |
おい、不動仮面! あんたともあろう者が、そんな弱音を吐くのか! |
ウサタロー |
ヒーローなら、どんな敵にも打ち勝ってみせろよ! オイラの知る不動仮面は、そういうヒーローのはずだ! |
不動仮面 (放送) |
ハハハ、ずいぶんと高く買われたもんだ。 この時代の俺は、そんなに評価されてるんだな。 |
不動仮面 (放送) |
だが、君たちは何も知らない。 だからそんなことが言えるのさ。 |
不動仮面 (放送) |
君たちは、奴に直接会ったことがないだろう? |
不動仮面 (放送) |
相手は宇宙を消滅させられるような化け物だぞ。 絶対に勝てるわけがない。 |
スピードスター |
だからあの二人を狙うのか? やめておけ、その方法はきっと失敗する。 |
不動仮面 (放送) |
ふむ、きっと失敗するか。 君にそう言われると説得力が違うね。 |
不動仮面 (放送) |
だが、こちらもそう簡単に諦めるつもりはない。 |
不動仮面 (放送) |
どんな手を使ってでも、世界を救ってみせる。 たとえ自分の手を汚すことになってもね。 |
不動仮面 (放送) |
そういうわけだから、帰ってくれ。 |
不動仮面 (放送) |
君たちは、ただ俺を憎んでくれればいい。 すべての汚名は俺たち過去のヒーローが引き受ける。 |
皆野祐樹 |
あの……不動仮面さん。 |
---|---|
不動仮面 (放送) |
はいそこ、ライオンハート君。 |
皆野祐樹 |
あ、恐れ入ります。 |
皆野祐樹 |
僕のような若輩者が、伝説のヒーローに意見するのも おこがましいとは思うんですが……。 |
不動仮面 (放送) |
ライオンハート君は礼儀正しいなぁ。 |
不動仮面 (放送) |
別にかしこまる必要なんてないさ。 言いたいことがあるなら言ってみてくれ。 |
皆野祐樹 |
えーと、このまま帰れというお話なんですが、 謹んでお断りさせてもらいます。 |
皆野祐樹 |
僕らは、絶対に引き下がりません。 嵐山さんも出島先輩も、助けさせてもらいます! |
酉原剛 |
よっしゃ、いいぞ祐樹!よく言った! |
名雲光 |
イヒヒ、やるじゃん。 |
皆野祐樹 |
……あはは、そうかな。 |
森沢江湖 |
そうだよ、私たちも祐樹くんと同じ気持ちだよ! 瑠璃ちゃんも出島さんも、大切な仲間だもん! |
不動仮面 (放送) |
フーム、これはまいったな。 |
不動仮面 (放送) |
繰り返すようだが、俺は君たちの敵じゃない。 一人のヒーローとして、世界を救いたいだけだ。 |
不動仮面 (放送) |
それでも、帰ってもらえないのかい? |
皆野祐樹 |
あんたなんかヒーローじゃない! 嵐山さんも出島先輩も、絶対に渡さないぞ! |
皆野祐樹 |
あんたこそ、今すぐ過去に帰るんだ! 帰らないと言うなら、ぶっ飛ばしてでも帰らせてやる! |
不動仮面 (放送) |
……交渉は決裂ってことだな。 |
皆野祐樹 |
そ、そうだー! |
不動仮面 (放送) |
いいだろう、後世のヒーローたちよ。 そのまま進んでくるがいい。 |
不動仮面 (放送) |
君たちにも痛い目に遭ってもらうことになるが、 悪く思わないでくれよ。 (ブツン) |
村雨礼司 |
……放送が切れたか。 |
皆野祐樹 |
みんな、ごめんね。 勝手にケンカ売っちゃった。 |
皆野祐樹 |
もっと上手く交渉できたかもしれないのに……。 |
村雨礼司 |
かまうものか。 お前が言ってなければ、俺が言っていたところだ。 |
森沢江湖 |
とってもカッコよかったよ、祐樹くん。 |
ウサタロー |
ウオオオーッ! よく言った、皆野!オイラは感動した! |
皆野祐樹 |
ありがとう、みんな。 |
皆野祐樹 |
それじゃ先に進もう! 嵐山さんと出島先輩を早く見つけないと! |
森沢江湖 |
……ねえ祐樹くん。 ちょっと顔色悪くない? |
---|---|
皆野祐樹 |
う~ん……。 なんか、だんだん不安になってきちゃって。 |
皆野祐樹 |
僕、本当にあんなこと言ってよかったのかな? 不動仮面に思いっきり啖呵切っちゃったんだけど! |
村雨礼司 |
まだそんなこと気にしてたのか。 |
名雲光 |
みなのんらしいっちゃらしいけどね。 |
磐城藍 |
私はとてもよかったと思いますよ。 皆野様はもっと自分の発言に自信を持っていいかと。 |
スピードスター |
さすがは未来の伝説。 そう思わせれる発言だったな。 |
磐城藍 |
あ、そうそう、それです。 |
磐城藍 |
あの伝説のライオンハートが目の前にいる。 改めてそのことを実感しました。 |
酉原剛 |
おお、あのスピードスターが祐樹を褒めたぞ。 |
スピードスター |
協力しあうと約束した仲なんだ。 少しぐらい褒めてもいいだろう。 |
皆野祐樹 |
スピードスター……! |
スピードスター |
……それから、その呼び方だが。 俺だけヒーローネームというのも味気ない。 |
宇治館光正 |
俺の名前は、宇治館光正。 これからは名前で呼んでくれ。 |
皆野祐樹 |
うん、分かったよ、宇治館くん! |
酉原剛 |
んで、不動仮面に勝負を挑むと決まったわけだが、 肝心のあいつは今どこにいるんだ? |
村雨礼司 |
この地下施設のどこかに入るんだろうが……。 |
森沢江湖 |
そもそも、この地下施設って何なんだろう? アリーナと関係あるのかな? |
名雲光 |
セクレト、この施設のこと何か知ってる? |
セクレト |
イエス。 ここは不動老師と深い関係のある施設です。 |
セクレト |
通信をオンにします。 詳細は本人から聞いてみるのがよいでしょう。 |
不動老師 (通信) |
……ふむ、その施設のことかね? |
不動老師 (通信) |
そういえば諸君にはまだ話してなかったか。 実はそこは、儂が昭和に使っていた秘密基地なのだ。 |
皆野祐樹 |
おお、ヒーローの秘密基地! カッコイイ! |
名雲光 |
ということは、不動仮面にとっては 庭も同然の場所ってことよね。 |
不動老師 (通信) |
うむ、そういうことになるな。 |
不動老師 (通信) |
過去の儂がいるとすれば、最下層の指令室だろう。 |
不動老師 (通信) |
案内板の矢印や、床のテープラインに沿って 進んでいきなさい。 |
皆野祐樹 |
分かりました。 ありがとうございます、学園長! |
出島ソラ (通信) |
えーと、学園長、ちょっといいかな。 みんなも聞いてもらえる? |
---|---|
皆野祐樹 |
あ、出島先輩から通信だ。 |
不動老師 (通信) |
どうかしたのかね? |
出島ソラ (通信) |
学園長の言ってた案内板と床のラインだけど、 あんまりあてにならないかも。 |
不動老師 (通信) |
なんだと? それはどういう意味だね? |
嵐山瑠璃 (通信) |
私たちも指令室を目指して進んでいるんですが、 どうも同じところを回ってるみたいで……。 |
森沢江湖 |
それって道に迷ってるってこと? |
出島ソラ (通信) |
そういうことになるのかな、これは。 何度も案内は確認してるんだけど。 |
嵐山瑠璃 (通信) |
さっきから、全然下り階段が見つかりませんの。 |
不動老師 (通信) |
そんなはずはないのだが……。 |
森沢江湖 |
学園長の思い違いとか? ほら、また記憶が混濁してたりして。 |
不動老師 (通信) |
基地の様相は昔も今も変わらない。 そこの記憶が変わるとも思えんが……。 |
皆野祐樹 |
……不動仮面たちが何かしたのかも。 ほら、今回の相手は過去のヒーローたちだしさ。 |
村雨礼司 |
総動員で、案内板や床のラインに細工をしたのか。 それぐらいの妨害はしてくるかもな。 |
不動老師 (通信) |
なんだと!? |
出島ソラ (通信) |
わっ、ビックリした。 そこまで驚かなくてもよくない? |
不動老師 (通信) |
諸君、今すぐ立ち止まれ! 皆野君の予想通りだとしたら、非常にまずいのだ! |
皆野祐樹 |
えっ? |
不動老師 (通信) |
そのフロアは、防衛用の落とし穴だらけでな! 落ちると対超人合金製のフロアに繋がっているのだ! |
皆野祐樹 |
ええ~っ!? |
出島ソラ (通信) |
あっ。 |
嵐山瑠璃 (通信) |
きゃあ! |
不動老師 (通信) |
出島君!嵐山君! 返事をしたまえ! |
不動老師 (通信) |
ええい、私としたことが! もっと早く気付くべきだった! |
不動老師 (通信) |
皆野くんたちは無事か!? |
皆野祐樹 |
すみません学園長! ちょうど足元に穴が開きましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! |
ウサタロー |
ギョエエエエエエエ! |
不動老師 (通信) |
くっ、なんということだ。 手遅れだったか……! |
皆野祐樹 |
あいたたた……。 |
---|---|
村雨礼司 |
おい、全員無事か! |
磐城藍 |
はい、全員の無事を確認しました。 ……というかこれ、全員穴に落ちたってことですよね。 |
宇治館光正 |
揃いも揃ってこの体たらく……。 自分のことながら、情けなくなるな。 |
名雲光 |
いや~、今のはノーカンっしょ。 学園長の警告が遅すぎたわ。 |
不動老師 (通信) |
それについては本当にすまないと思っている。 |
不動老師 (通信) |
しかし、まずいのぅ。 説明したとおり、そこは対超人合金製のフロアだ。 |
不動老師 (通信) |
諸君の力では、そこから脱出することは難しいぞ。 |
名雲光 |
一応、空間走査してみたけど、やっぱ出口ないわ。 あとついでにモジャモジャ先輩たちとも分断されてる。 |
森沢江湖 |
このままじゃ、二人と合流できないね。 |
セクレト |
増援をこのフロアに送り込み、消耗させる。 これが敵のプランだと推測されます。 |
衛守アギト |
まずいぜ、兄貴。 こうしてる間にもお嬢ちゃんの身が……! |
衛守カブト |
おのれ、小癪な! このような壁、拙者の蒼角で切り裂いてくれる! |
森沢江湖 |
この壁、すっごい硬いから無理しないほうがいいよ。 前やったときなんて全然歯が立たなかったんだから。 |
ウサタロー |
だが、あれからみんなも成長したんだ! 今なら対超人合金の壁もぶっ壊せるんじゃねーか? |
村雨礼司 |
超変身ならやれるかもしれないな。 手を貸せ、宇治館。 |
宇治館光正 |
……貸してやってもいいが、期待はするなよ。 |
磐城藍 |
対超人合金の壁には、 私たちも苦しめられたことがあるんですよね。 |
ウサタロー |
超変身しても壊せないのか? |
磐城藍 |
能力のタイプの問題ですかね。 あの合金を破壊するには純粋なパワーが必要なんです。 |
皆野祐樹 |
純粋なパワーって、酉原くんみたいなタイプ? |
酉原剛 |
俺様の出番だったのか! くっそ~、俺様も超変身できてればな~! |
名雲光 |
今すればいいんじゃね? |
酉原剛 |
あ、そうか! |
不動老師 (通信) |
うむ、酉原君ならば可能性があろう。 エンゲルマスクよ、今こそ超変身に挑むのだ! |
酉原剛 |
よっしゃー、このときを待ってたぜ! 全部、この俺様に任せておきな! |
磐城藍 |
準備が整いました。 酉原様の超変身を開始します。 |
---|---|
名雲光 |
頼んだよー、トリ頭。 |
酉原剛 |
ンガー。 |
名雲光 |
寝るの早っ! |
村雨礼司 |
……くそ、ダメだった。 超変身してもまだあの壁を壊せないとはな。 |
ウサタロー |
やっぱりダメだったか。 磐城の言っていたとおりになったな。 |
村雨礼司 |
ん、酉原はどうしたんだ……? |
宇治館光正 |
超変身する気なんだろう。 確かにコイツの能力は、あの合金と相性がいいかもな。 |
村雨礼司 |
なるほど、そういうことか。 ……それにしても、大の字とはすごい寝相だな。 |
名雲光 |
普段からこんな風に寝てんのかね? マジウケるわ。 |
森沢江湖 |
……それで私たちのことは酉原くんに任せるとして、 瑠璃ちゃんたちのことはどうしよう? |
森沢江湖 |
酉原くんの目が覚めるまで、無事なのかな? |
宇治館光正 |
分かってはいるが……。 |
不動老師 (通信) |
出島君と嵐山君の救出には、儂が向かおう! 君たちは、まずは脱出に専念したまえ! |
衛守アギト |
学園長! お嬢ちゃんのこと、よろしく頼んだぜ! |
セクレト |
酉原様の脳波をキャッチしました。 脳内モニター、繋がります。 |
皆野祐樹 |
頑張れ、酉原くん……! |
・ | |
・ | |
・ | |
観客 |
ウオオオオオオオオオオオオオオオオッ! |
酉原剛 |
はっ……ここはどこだ!? |
酉原剛 |
満員の観客、割れんばかりの歓声……。 そしてアリーナの中央に設置された、四角いリング! |
酉原剛 |
ハハハ、やっぱりそうか! 俺様の思っていたとおりだぜ! |
酉原剛 |
俺様に試練が課されるとすれば、ひとつしかねぇ! それは最強のプロレスヒーローとの対戦だ! |
酉原剛 |
なあ、そうだろう! |
??? |
むっ、ここは……リングの上、だと……! |
??? |
私は道場で門下生を鍛えていたはずでは……? 第一、私はすでに引退した身だぞ。 |
酉原剛 |
俺様のハートの中じゃ、 あんたはいつまでも現役のままってこった! |
??? |
ほう、そのマスク……見覚えがあるな。 君の名は、エンゲルマスク! |
酉原剛 |
話が早いぜ、嬉しいじゃねーか! |
酉原剛 |
せっかく来てくれたんだ。 お手合わせ頼むぜ、心の師ファルコンマスク! |
過去ヒーロー |
…………。 |
---|---|
出島ソラ |
う~ん、しつこいな。 無言のまま追いかけられるの、怖いんだけど。 |
出島ソラ |
これじゃキリがない……。 |
嵐山瑠璃 |
このフロアには、出口もないというお話でしたものね。 |
嵐山瑠璃 |
いっそのこと、捕まってみますか? そうすれば不動仮面様と直接お話できるかも。 |
出島ソラ |
いや、それはまだやめておこう。 やろうと思えばいつでもできるしね。 |
出島ソラ |
それに……なんだか悪い予感がするんだ。 |
嵐山瑠璃 |
出島先輩がそうおっしゃるのでしたら、 私もそれに従いますわ。 |
出島ソラ |
いいの? 君の意見の方が正しいかもよ? |
嵐山瑠璃 |
何の理由もなくそう仰ってるわけでは ないと思いますので。 |
出島ソラ |
なんとなくで言ってるだけかも。 |
嵐山瑠璃 |
なんとなくかどうかは、顔を見れば分かりますわ。 |
出島ソラ |
ふーん……? ボク、無表情だってよく言われるんだけどな。 |
嵐山瑠璃 |
と、とにかく、考えを聞かせてくださいませ。 |
出島ソラ |
……今の状況、多分、ボクたちの知らない情報がある。 |
出島ソラ |
ねえ、セクレト。 ボクたちに何か隠してない? |
セクレト |
なぜそう思われるのですか? |
出島ソラ |
学園長やみんなとの通信が不自然だ。 みんなの話で、意図的に聞かせてないものあるよね? |
セクレト |
イエス。 一部通信を除外していることを認めます。 |
嵐山瑠璃 |
まあ、どうしてそんなことを? |
セクレト |
私の権限では答えられません。 |
出島ソラ |
ふーん。 まあ、別にいいんだけどさ。 |
嵐山瑠璃 |
いいんですの? けっこう大事なことじゃありません? |
出島ソラ |
多分、それを聞いても状況は変わらないよ。 不自然なことは他にもあるしね。 |
嵐山瑠璃 |
あら、それはどのような……? |
出島ソラ |
今回の任務、ボクと嵐山さんが組んでること自体、 ちょっとおかしいと思わない? |
出島ソラ |
だって今まで、ほとんど話したこともないのに。 知らない相手とチーム組むなんて無茶でしょ。 |
嵐山瑠璃 |
た、確かにそうですわねぇ、出島先輩。 |
出島ソラ |
不自然といえば、 君がボクの表情読んだのもそうだよね。 |
嵐山瑠璃 |
オ、オホホ、人の表情を読むのは得意ですの。 |
出島ソラ |
……なんかすごく動揺してない? それも別にいいんだけどさ。 |
村雨礼司 |
みんな、酉原を中心にして固まれ! 絶対にばらけるな、数で圧倒されるぞ! |
---|---|
名雲光 |
対超人合金で閉じ込めるだけじゃ飽き足らず、 次から次に落とし穴から攻めてくるってズルくない? |
皆野祐樹 |
今ちょっと、手下怪人さんのありがたみ感じてるかも。 倒して消える相手って、いいよね……。 |
宇治館光正 |
ヒーロー相手じゃ、倒しても消えないからな。 |
森沢江湖 |
みんな、怪我したら言ってね! すぐに治すから! |
磐城藍 |
あちら側にも、回復能力者がいるようですよ。 気絶したヒーローを後方に運んで回復させています! |
名雲光 |
ある意味ありがたいっしょ。 ひどい怪我とかさせたくないしさ。 |
皆野祐樹 |
それは僕もそう思うけどさ! あっちの攻撃はかなり本気だよ!? |
宇治館光正 |
とにかく致命傷だけは避けるよう、 気をつけるしかないな! |
衛守アギト |
けどよ、敵の攻撃は派手なうえに規模もデカいぜ! |
衛守カブト |
やたら爆発しまくるのもやりにくいでござるな! |
村雨礼司 |
爆薬の量ミスってるのかってくらいな。 昭和のヒーローはみんなこんな感じだったのか? |
森沢江湖 |
ドッカンバッカン爆発しすぎだよー! |
ウサタロー |
最初のヒーロー、不動仮面の時代だからな。 まだ安全基準とかがしっかりしてなかったのさ。 |
ウサタロー |
無謀ともいえる能力の使い方したりしてな。 ヒーローたちの怪我や事故も多かったんだ。 |
ウサタロー |
だが、昭和は今よりもおおらかでいい時代だった……。 そう評するヒーロー評論家は少なくないぜ。 |
名雲光 |
いや、なんの話よ? |
名雲光 |
はいはい、変な話はそこまで! みんな、しっかり敵を迎え撃ってよね! |
名雲光 |
ただでさえトリ頭いなくて壁不足なんだからさ! 油断してると本当にやられちゃうよ! |
皆野祐樹 |
もちろん分かってるよ! 酉原くんが目覚めるまで、みんな頑張ろう! |
森沢江湖 |
でも今回は本当に逃げ道ないし、 いつも以上に追い詰められてるかも~!? |
酉原剛 |
これでどうだあ! 必殺、エンゲルウェーブ! |
---|---|
実況 |
1、2、3! ここでゴングが鳴った~! |
ファルコンマスク |
くっ……君はこんなにも強かったのか。 私の完敗だ。 |
実況 |
ファルコンマスク破れたり! 今ここに、新たなチャンピオンが誕生した~っ! |
観客 |
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ! |
酉原剛 |
待て待て待て~いッ! 実況ストップ!歓声もストップ! |
観客 |
…………。 |
酉原剛 |
おい、俺様の脳内観客に脳内実況! なに喜んでいやがる! |
酉原剛 |
そうじゃねーだろ! ブーイングのひとつもねーとは、どーいうこった! |
ファルコンマスク |
……どういう意味かな? |
酉原剛 |
俺様はまだファルコンマスクに 勝ってねーって言ってるんだよ! |
ファルコンマスク |
カウントは3まで数えられていた。 この試合に勝ったのは、間違いなく君だ。 |
酉原剛 |
確かにそうなんだけどよ……。 |
酉原剛 |
俺様、初めてファルコンマスクと戦えるってんで すげーアガっちまってよ。 |
酉原剛 |
それで、格闘技みたいな戦い方をしちまった。 |
酉原剛 |
打撃を出鼻でくじいたり、投げを抜けたり、 関節技キメられる前に外したりな。 |
酉原剛 |
俺様はファルコンマスクの強さをよく知っている。 だからこそあんたが怖いし、あんたに勝ちたかった。 |
酉原剛 |
その結果、こんな試合をしちまった……。 |
酉原剛 |
だけどよ……それじゃダメだろうよ! こんな試合、本物のリングの上じゃ見せられねぇ! |
ファルコンマスク |
そうか。 ……そうだな。 |
酉原剛 |
あんたも、俺様も、超人プロレスのレスラーだ! |
酉原剛 |
だったら!だからこそ! 俺様は超人プロレスであんたに勝たねーと意味がねぇ! |
ファルコンマスク |
君が本当にチャンピオンになりたいのならば、 試合で観客を魅了してみせないとな。 |
酉原剛 |
おうよ、そのとおりだ! 避けたり抜けたりじゃ、観客が白けちまうもんな! |
酉原剛 |
ということで、最初からやりなおしだ! 改めて挑戦状を叩きつけるぜ、ファルコンマスク! |
ファルコンマスク |
いいじゃないか! その熱さ、嫌いじゃないぞ! |
ファルコンマスク |
来い、エンゲルマスク! プロレスの神髄を、その身に叩き込んであげよう! |
ウサタロー |
おお、試合が終わったぞ!酉原の勝ちだ! |
---|---|
名雲光 |
やり~! もう試練終わらせたなんて、やるじゃんトリ頭! |
ウサタロー |
……と思ったらまた試合が始まった! 最初からやりなおすみてーだ! |
名雲光 |
は?バッカじゃないの? こっちがどういう状況だと思ってんのよ! |
名雲光 |
さっさと起きろ~! そんでもって対超人合金の壁ぶっ壊せっつの! |
宇治館光正 |
いや、そういうことじゃない。 |
宇治館光正 |
超変身の試練というのは結局のところ、 自分の心と決着をつけられるかどうかだ。 |
磐城藍 |
酉原様が勝ててないと判断したということは、 心との決着がついていないということ。 |
磐城藍 |
それでは超変身の試練を終えることは できないんです。 |
皆野祐樹 |
そっか、試合形式になってるからって、 試合に勝つことが試練の終了条件とは限らないんだ。 |
森沢江湖 |
それで、酉原くんの言ってたのってどういう意味? プロレスで勝つ~ってやつ。 |
森沢江湖 |
さっきも試合には勝ってたんだよね? 反則したわけではないんでしょ? |
村雨礼司 |
相手の実力を最大限まで引き出した上で、 その上を行って勝利しろということだ。 |
森沢江湖 |
相手に奥義を使わせた上で、 もっと強い奥義で倒せみたいな? |
村雨礼司 |
まあ、そんな感じだ。 |
森沢江湖 |
相手が奥義使う前に倒しちゃダメなんだ……。 |
名雲光 |
芸術点でもあるんじゃね? フィギュアスケートとかみたいに。 |
森沢江湖 |
ああ~、そういうことか~。 |
村雨礼司 |
全然違うぞ。 |
名雲光 |
にしても意外だわ~。 イケメンってプロレスに理解あんのね。 |
村雨礼司 |
理解はできるさ。 というよりも、酉原に教え込まれた。 |
村雨礼司 |
あいつ、わかるまで動画を見せてくるんだよ。 実際、見てみると非常に熱い、価値のある戦いだ。 |
村雨礼司 |
真似したいとは思わないがな。 俺のスタイルじゃない。 |
名雲光 |
ふ~ん。 トリ頭も、イケメンみたいな感じならよかったのに。 |
名雲光 |
俺のスタイルじゃない。キリッ。つってさ。 さっさと試練終わらせてくれんの。 |
村雨礼司 |
お前な……! |
皆野祐樹 |
あはは……。 そんな酉原くんは見たくないかな~。 |
出島ソラ |
……あれ? そこに立ってるのってもしかして……。 |
---|---|
嵐山瑠璃 |
ついに現れましたわね……。 |
??? |
俺を呼ぶものがある……大地の轟きと、人の嘆きが。 |
不動仮面 |
不動仮面、推参だ。 |
出島ソラ |
そっか、そっちから来ちゃったか。 |
出島ソラ |
だったら仕方ないな。 逃げ道も見つからないし……。 |
嵐山瑠璃 |
あの、これってどういうことですの? どうして私たちを捕えようと? |
不動仮面 |
その言葉は正しくないな。 |
出島ソラ |
どうしてボクらを殺そうとするの? これが正しいのかな。 |
不動仮面 |
フッ、大した洞察力だ。 さすがだな、ダークマター君。 |
不動仮面 |
そのとおりだ。 残念だが、君たちを殺さねばならない。 |
嵐山瑠璃 |
ガ~ン、またしても殺害予告を受けるだなんて。 なんとなく、そんな気はしてましたけど。 |
出島ソラ |
それで、理由は教えてもらえるの? |
不動仮面 |
今から五年後、君はスピードスター君と戦う。 |
出島ソラ |
ボクが、スピードスターと……? 戦う理由がないよ。 |
不動仮面 |
舞台は、君の妹である出島ナミが入院している病院だ。 |
出島ソラ |
! |
出島ソラ |
ちょっと待って、どうして不動仮面がそのことを? というか、そもそも何の話を……!? |
不動仮面 |
戦いの余波で、君の妹は死ぬ。 そしてそのとき、君は絶望の中で目覚めるのさ。 |
不動仮面 |
最強にして最悪の怪人、 ダークマター・エターナルの力にね。 |
出島ソラ |
ボクが怪人に……? |
嵐山瑠璃 |
はっ……! それはもしかして、未来を滅ぼすという……!? |
不動仮面 |
そう、数十年後、宇宙を破滅させる大怪人。 そして今、時空の穴を操り混乱をもたらす元凶―― |
不動仮面 |
それが未来の君なんだ、ダークマター。 |
不動仮面 |
もちろん、今の君は悪ではない。 しかし近い将来、君は誰も手を付けられぬ巨悪となる。 |
不動仮面 |
俺の力では、怪人化した君を止められなかった。 |
不動仮面 |
だから、ここで止めさせてもらう。 すまないが、俺に殺されてほしい……! |
嵐山瑠璃 |
出島先輩、お逃げください! ここは私が引き止めます! |
出島ソラ |
ふーん……なるほどね。 |
嵐山瑠璃 |
出島先輩、お願いですから早く……! |
---|---|
出島ソラ |
といっても、逃げ道ないしね。 |
不動仮面 |
ずいぶん冷静なんだな。 俺の話を信じていないのかな? |
出島ソラ |
本当にナミが殺されるんだとしたら、 そういうこともありえるかもな~と思って。 |
不動仮面 |
……そうか。 ある程度の自覚はあるということなんだな。 |
不動仮面 |
だからこそ、今ここで君を亡き者にする必要がある。 未来を救うためにもね! |
出島ソラ |
あ~ちょっと待って。 勝手にやる気になられても困るんだけど。 |
不動仮面 |
おいおい。 煮え切らないこと言わないでくれよ。 |
出島ソラ |
ボクのことは分かったよ。 それじゃ嵐山さんは?どうしてここに呼んだの? |
嵐山瑠璃 |
え?あの、それは……。 |
出島ソラ |
とりあえず彼女は逃がしてあげたら? 今の話と関係あるようには思えないけど。 |
不動仮面 |
ふむ。 だそうだが、どうする、プリンセス・テフテフちゃん? |
嵐山瑠璃 |
申し出はありがたいのですけど、 私、絶対逃げるつもりはありませんから! |
出島ソラ |
はあ? |
不動仮面 |
ということで、彼女は決して君を諦めない人間でね。 放っておくわけにもいかなかったのさ。 |
不動仮面 |
彼女を放置しておけば、スピードスター君と結託して、 さらに過去の時空特異点に遡ろうとするだろう。 |
不動仮面 |
この時代の結果を覆し、君を救うためにね。 それがどんなに破滅的な結果になったとしてもだ。 |
不動仮面 |
だから彼女も、ここで殺さなければならない。 |
出島ソラ |
意味が分からない。 過去に飛んででもボクを救おうとするだって? |
出島ソラ |
どうして嵐山さんがそんなことをするんだ? ボクと彼女に、なんの関係があると? |
不動仮面 |
それを俺が明かすのはねぇ。 彼女が自分の口から話すことを願うよ。 |
嵐山瑠璃 |
あの、そのですね……。 |
出島ソラ |
なんなの、もう。 |
嵐山瑠璃 |
わ、私の超人能力は、夢の実体化で……。 この身体は、幻のようなものなんです。 |
嵐山瑠璃 |
本当の私は、別の場所にいるんです。 とある病院に……ずっと入院してて……。 |
出島ソラ |
え……? |
嵐山瑠璃 |
嵐山瑠璃という名前もヒーロー用の偽名で……。 私の本当の名前は、出島ナミといいます。 |
出島ソラ |
なっ……! 君が、ナミだって……!? |
嵐山瑠璃 |
そういうことなの……お兄様。 |
実況 |
さあ、試合時間は残り五分を切った! 両雄共に技を出し尽くし、体力も限界! |
---|---|
実況 |
長く続いた戦いも、いよいよクライマックスを 迎えようとしています! |
酉原剛 |
ハア、ハア……さすがだぜ、ファルコンマスク! めちゃくちゃ強い!あとすげーしぶとい! |
ファルコンマスク |
君こそな。 私の技をすべて受けきるとは恐れ入ったよ! |
酉原剛 |
当然だろ! 俺様もあんたに負けねーくらい強いんだからな! |
酉原剛 |
こんなしんどい試合、初めてだぜ。 だけどよ、こんな楽しい試合も初めてなんだ! |
ファルコンマスク |
ああ、最高の試合だ! 今の私は、全盛期をも凌ぐ力を発揮できているよ! |
酉原剛 |
もっとあんたと戦ってたいぜ。 けど、いつまでもってわけにはいかねーんだ。 |
酉原剛 |
外で、仲間を待たせてる。 悪いが、そろそろ終わらせてもらうぜ。 |
ファルコンマスク |
リングの上だけが戦場じゃない。 リングの外を見据えることは、正しいことさ。 |
酉原剛 |
俺様は勝つぜ! ウオオオッ、エンゲルウェーブ! |
ファルコンマスク |
ぬああああっ、ふんっ! |
実況 |
お~っと、決まったかに見えたエンゲルウェーブ! しかしチャンピオン、これを耐えた~! |
観客 |
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ! |
酉原剛 |
何だって!? さっきは確かに効いたってのに! |
ファルコンマスク |
誰よりも熱狂的なファンの前で、 無様な姿など晒せまいよ! |
酉原剛 |
くっそ~、それって俺様のことかよ! やっぱあんたは最高だ、ファルコンマスク! |
ファルコンマスク |
だが、さすがの私も限界には違いない。 最後の技を受けてもらうぞ! |
ファルコンマスク |
はあああああっ! ファルコン……ダイブ! |
実況 |
なんということか、体力も尽きたであろう試合終盤、 チャンピオンがアリーナ天井まで飛翔したぁ! |
実況 |
そして空中からの、急加速急降下! 猛禽の嘴と化したチャンピオンが、挑戦者を襲うゥ! |
酉原剛 |
ハハハ……こいつは死ぬかもしれねぇ。 だが、悔いはねぇ! |
酉原剛 |
最高のチャンピオンの、最高の一撃! この身で受け止めてみせらぁ! |
実況 |
今ゴングが鳴りました! 永劫に続くと思われた試合が、終わりを告げたのです! |
---|---|
酉原剛 |
…………。 |
ファルコンマスク |
フッ、大したものだ。 |
ファルコンマスク |
私のファルコンダイブを受けきり、 すかさずエンゲルウェーブで返すとは……。 |
ファルコンマスク |
おめでとう……君がチャンピオンだ……! |
実況 |
新たなチャンピオンが誕生しました! 今ここに、新たな伝説が始まろうとしている~! |
酉原剛 |
うおおおお!勝ったぞ! |
ファルコンマスク |
チャンピオンベルトを受け取ってくれ。 |
酉原剛 |
おお……このベルトはいったい!? すげーオーラを感じるぜ! |
ファルコンマスク |
これが君の超変身能力『オールチャンピオンズ』だ。 |
酉原剛 |
ありがとよ、確かに受け取ったぜ! ……で、どういう能力なんだ? |
ファルコンマスク |
超人プロレス団体SUPERS歴代王者たちの 身体能力と得意技が、君の超人能力に加わるのだ。 |
酉原剛 |
マジかよ! それじゃファルコンダイブも? |
ファルコンマスク |
使えるとも。 |
酉原剛 |
ダブルローテーションムーンサルトも? |
ファルコンマスク |
もちろん。 |
酉原剛 |
毒霧も吹けるよな?パイプ椅子も出せる? |
ファルコンマスク |
それは仕込み次第かなぁ。 |
ファルコンマスク |
それよりも、重要なのはパワーだよ。 パワー系超人能力者八人分のパワーが君に宿るんだ。 |
酉原剛 |
つまり、超絶パワーアップしたってことだな! ありがとう、ファルコンマスク! |
酉原剛 |
……もっとあんたと話をしてたいが、 俺様はそろそろ行かないといけねぇ。 |
ファルコンマスク |
ああ、そうしたまえ。 外で仲間が待っているんだろう? |
ファルコンマスク |
では行け、新チャンピオン! 君は誰よりも強い! |
酉原剛 |
おう、行ってくるぜ! |
ファルコンマスク |
……彼と共に、観客たちも去っていったか。 まったく、変な夢を見たものだ。 |
ファルコンマスク |
だが、悪い夢じゃなかった。 |
ファルコンマスク |
未来ある若者を鍛え上げ、託し、送り出す。 指導者の本懐というやつだろう。 |
ファルコンマスク |
では、そろそろ私も夢から醒めるとしよう。 |
ファルコンマスク |
そして、続きは現実で……。 また会おう、エンゲルマスクよ! |
酉原剛 |
うおりゃあああ! 歴代チャンピオンの力、思い知りやがれ! |
---|---|
不動仮面 |
おいおい、こいつは驚いたな。 まさかあの罠を突破してくるとは。 |
酉原剛 |
無事か瑠璃!それから出島先輩! この俺様が来たからには、もう大丈夫だ! |
嵐山瑠璃 |
あら、かっこいい。 助けに来てくださいましたの? |
出島ソラ |
みんな……。 |
衛守カブト |
御嬢、お怪我はないでござるか! |
衛守アギト |
他のやつらに酷いことされたりしてない? 何かあったらちゃんと俺たちに言ってくれよ? |
嵐山瑠璃 |
ふふ、なんともありませんわ。 |
皆野祐樹 |
間に合った!二人とも無事だよ! |
名雲光 |
それにしてもオルチャンのトリ頭、マジすごいわ。 あの対超人合金の壁を突破しちゃうんだから。 |
村雨礼司 |
学園長にしかできない芸当だとばかり 思っていたんだがな……。 |
酉原剛 |
いや~、すまんな礼司。 俺様強すぎて、マジすまん。 |
村雨礼司 |
パワーは認めてやるが、調子に乗りすぎだろ。 |
不動老師 |
フフフ、成長した自分自身を褒めたたえ、 自信とすることもときには必要なことだろう。 |
森沢江湖 |
あ、学園長! |
不動老師 |
いやあ、若者が成長していく姿は、実に快いな。 |
酉原剛 |
おう、成長した俺様の力! バッチリ見せつけてやるぜ! |
不動仮面 |
おいおい、何者だそのジジイ。 そいつも今、対超人合金の壁ぶち抜いてきたよな? |
不動老師 |
儂かね。何者だと思う? |
不動仮面 |
怪人ってわけじゃなさそうだが……、 そんなジジイのヒーローがいるわけないしな。 |
不動老師 |
儂を呼ぶものがある……大地の轟きと、人の嘆きが。 |
不動仮面 |
おい、その口上は……! 何のつもりだ! |
不動老師 |
儂は、この時代のお前だ。 そう言ったらどうする? |
不動仮面 |
ハッ。冗談はよせよ。 この時代の俺って……何歳になると思ってるんだ。 |
不動老師 |
計算してみればよかろう。 自分の年齢じゃぞ? |
不動仮面 |
腕に自信があるようだが、そういう冗談は好かないね。 |
酉原剛 |
お、やる気か? いつでも相手になってやるぜ! |
不動老師 |
まあ待て、酉原君。 |
不動老師 |
まずは儂が相手をしよう。 冗談かどうか、試してみるがよい。 |
不動老師 |
そして、その身で理解するのだな。 儂が何者なのかを! |
不動仮面 |
せいっ! |
---|---|
不動老師 |
はあっ! |
不動仮面 |
バカな……こんなジジイが俺と互角だと!? |
不動老師 |
フフフ、見極めが甘い! 本当に互角かどうか、その目で確かめてみよ! |
不動仮面 |
ぐわぁ~っ! 俺の上を行っている……だと……!? |
不動老師 |
どうだね。 儂が何者か、はっきりしたかね? |
不動仮面 |
確かにこの能力は、俺と同じ能力『不動』! デタラメを言ってるってわけでもないらしい……。 |
不動仮面 |
だが、おかしいだろ? 超人能力は年齢とともに減衰していくはずだ。 |
不動仮面 |
年老いてなお、どうしてあんたは 超人能力を維持できている? |
不動老師 |
フッフッフ、そんなに知りたいかね。 |
不動老師 |
いや、自分のことだ。 おおよその察しはついておるのだろう? |
不動老師 |
不断の努力と鍛錬! |
不動老師 |
これにより儂はお前よりも渋く、賢く、ダンディで、 その上強くなったのだ。 |
不動仮面 |
自分をここまで褒めちぎる奴、初めて見たぜ……。 |
不動仮面 |
だが、間違いない。 あんたは確かに未来の俺だ。 |
不動老師 |
不動仮面よ。 若かりし頃の儂自身よ。 |
不動老師 |
なぜ時代を超え、未来に関わろうとした? 過去の遺物が未来の存亡に関わろうなど、笑止千万! |
不動仮面 |
くっ……。 子供たちの未来を憂いたからこそだ! |
不動老師 |
お前のように思い上がった愚者が手を汚さずとも、 この時代の若者たちには、未来を切り開く力がある! |
不動老師 |
お前が出る幕など、初めからなかったのだ。 |
不動仮面 |
……俺だって、自分の手を汚さずに済むなら、 それに越したことはないと思ってる。 |
不動仮面 |
誰も死なずに済むなら……それが一番だ。 |
不動仮面 |
そこまで言うなら見せてもらおうじゃないか。 この時代の若者たちの、未来を切り開く力ってやつを! |
不動老師 |
では、儂の出番はここまで。 ここからは君たちの出番だな。 |
皆野祐樹 |
はい、任せてください学園長! |
不動老師 |
皆野くん、思いっきりやりたまえ。 |
皆野祐樹 |
はい、行きます! 啖呵のとおり、ぶっ飛ばしてやりますよ! |
酉原剛 |
どうだ、不動仮面! 俺様たちの力、思い知ったか! |
---|---|
不動仮面 |
くっ……なんて力だ。 超変身とは、ここまでのものなのか。 |
皆野祐樹 |
実は僕だけまだなんですけどね。 えへへ……。 |
ウサタロー |
それでも皆野の力は不動仮面に届いてた! 胸を張っていいぜ! |
森沢江湖 |
うんうん、それに祐樹くんだったら、 すぐに超変身できるようになるよ! |
磐城藍 |
ええ、皆野様なら大丈夫でしょう。 私が保証します。 |
宇治館光正 |
さて、不動仮面。 次は俺と藍の力も見てほしい。 |
不動仮面 |
スピードスター君……。 |
宇治館光正 |
ここに来たということは、全部知ってるんだろう? |
宇治館光正 |
この災厄を生み出してしまったのは俺だ。 だから俺は、自分の手で決着をつけたいと思っている。 |
宇治館光正 |
だが、もしも、俺に汚名返上できるだけの 実力がなければ、引導を渡してほしい。 |
磐城藍 |
えぇ……? せっかくいい雰囲気なのに、なに言い出してるの? |
磐城藍 |
ねえ、バカなの? 知ってましたけど、光正って実はバカでしょ? |
宇治館光正 |
バカでけっこうだ。 |
宇治館光正 |
だが、未来のためにここまでしてくれた不動仮面には、 すべての元凶である俺を裁く権利がある。 |
不動仮面 |
おいおい、裁かれたいのか? |
宇治館光正 |
無論、大人しく裁かれるつもりはない。 |
不動仮面 |
フッ……こいつは確かにバカ野郎だ。 だが、君みたいなバカは嫌いじゃないぜ。 |
不動仮面 |
とはいえ、このままもう一戦となると話は別だ。 正直、連戦はキツイね。 |
不動老師 |
フン、たるんでおるな。 鍛え方が足らんのだ。 |
不動仮面 |
叱咤激励と受け取っておくよ。 |
森沢江湖 |
それじゃあ、私が治療してあげるね。 ライフブースト! |
不動仮面 |
ありがとう、ファーストエイドちゃん! これならもう一戦、付き合ってやれるぜ! |
宇治館光正 |
では、手合わせ願おうか。 |
磐城藍 |
まったく……バカなんだから。 付き合う方の身にもなってよね、光正。 |
宇治館光正 |
悪いな、藍。 いつも付き合ってくれて感謝している。 |
不動仮面 |
やれやれ、たまったもんじゃないね。 そういうのは終わった後にやってほしいもんだぜ。 |
不動仮面 |
それじゃ行くぞ! 勝手に始めさせてもらうぜ! |
不動仮面 |
君たちの力は見せてもらった。 |
---|---|
不動老師 |
納得してもらえたかね? |
不動仮面 |
だいたいはね。 だが、まだ最大の懸念が残っている。 |
嵐山瑠璃 |
私のことかしら。 |
出島ソラ |
そしてボクか。 |
不動仮面 |
そういうことだ。 君たちの実力も計らせてもらう。 |
不動仮面 |
ファーストエイドちゃん、 もう一度回復頼んでもいいかな? |
森沢江湖 |
はーい。 |
衛守カブト |
待つでござる。 ならば御嬢の代わりに拙者らがお相手つかまつる! |
衛守アギト |
立場上、見過ごせないんでね。 |
嵐山瑠璃 |
二人とも、お下がりなさい。 |
衛守カブト |
しかし、御嬢! |
嵐山瑠璃 |
もはや不動仮面様に殺意はありません。 それにこれは、力試しというよりも……。 |
出島ソラ |
稽古みたいなものなんでしょ? |
不動仮面 |
察しがいいじゃないか。 そう、これから君たちが成すことのためのね。 |
出島ソラ |
ボクたちは、エターナルを倒さなければいけない。 |
出島ソラ |
なぜなら、エターナルが存在する限り、 ナミが死ぬ未来は存在し続けることになるからだ。 |
磐城藍 |
はい。 エターナルを倒すことができれば、未来は変わります。 |
出島ソラ |
だったらやるに決まってるさ。 |
出島ソラ |
あっちは過去の自分であるボクを殺せない。 こっちの方が圧倒的に有利なんだしね。 |
宇治館光正 |
未来の自分を倒すことに、ためらいはないのか? |
出島ソラ |
ボクの未来が消えてなくなるわけじゃないんでしょ? |
出島ソラ |
今とは違う未来に向かうだけ。 だったら別にいいかな。 |
不動仮面 |
ドライだなぁ、君は。 |
出島ソラ |
妹のこと以外は、わりとどうでもいいかな。 |
嵐山瑠璃 |
私だって同じです。 |
嵐山瑠璃 |
怪人になったお兄様はかわいそうだけど、 宇宙を滅ぼすようなら止めてあげないといけませんわ。 |
衛守アギト |
お嬢ちゃんの覚悟、聞き届けたぜ。 |
衛守カブト |
しからば御嬢! 我ら兄弟、共に並び立つことをお許しいただきたく! |
嵐山瑠璃 |
二人とも……! |
出島ソラ |
えっと、さっきから誰だっけ? |
衛守カブト |
我ら兄弟をお忘れか!? 出島家を代々護衛している衛守家の者でござるよ! |
出島ソラ |
そうだっけ? |
衛守カブト |
若が出島家を出奔なさるまで、 共に過ごしていたではござりませぬか! |
衛守アギト |
お坊ちゃんよぅ、そーいうとこだぜ? だから出島家の家督継げねーんじゃねぇの? |
出島ソラ |
興味ないからなぁ。 |
不動仮面 |
いろいろ積もる話もあるようだが、 そろそろ始めてもいいかな? |
不動仮面 |
何人で来てくれてもいいが、これだけは覚えておけよ。 俺より強くないと、俺の心には響かないからな! |
不動仮面 |
いや~、負けた負けた。 これだけ気持ちよく負けたのは、生まれて初めてだ! |
---|---|
嵐山瑠璃 |
いかがでしたかしら、私たちの実力は……? |
不動仮面 |
文句なんてあるものか。 君たちなら、エターナルを倒せるかもしれないな。 |
宇治館光正 |
必ず成し遂げてみせる。約束しよう。 |
不動仮面 |
さて……そうと決まれば過去の遺物は去るのみ。 みんなをまとめて過去に帰るとするか。 |
不動仮面 |
……ちなみに、どうやって帰ればいいんだ? |
皆野祐樹 |
帰り方分からないの!? |
不動仮面 |
変なワープゲートみたいなものに 引きずり込まれただけだからな。 |
不動仮面 |
出た先にエターナルがいたから話せたが 奴は帰り方なんて教えてくれなかったぜ。 |
不動仮面 |
結局、俺は奴の敵として動くことにしたわけだしな。 |
宇治館光正 |
そういうことなら、俺が送り返そう。 |
不動仮面 |
ああ、頼んだぜ。 |
不動仮面 |
帰ったら、徹底的に鍛えなおさないとな。 ジジイになるのが今から楽しみだぜ。 |
不動老師 |
お前の人生は楽しいと、儂が保証しよう。 ではまたな、儂よ。 |
不動仮面 |
そいつはいいや。 楽しみにしてるぜ、俺。 |
磐城藍 |
帰っていきましたか。 これで学園長の記憶も確定するはずですよ。 |
不動老師 |
おお、頭が冴えてきたわい。 ……ははは、なるほど、そういえばそうだったのぅ。 |
不動老師 |
儂は、ここでジジイに負けたのがとにかく悔しくてな。 そのショックをバネに、死ぬ気で己を鍛えたのだ。 |
名雲光 |
なにそれ、矛盾してない? マジウケるんですけど。 |
村雨礼司 |
さて、これからのことだが。 |
村雨礼司 |
みんなで協力してダークマター・エターナルを倒す。 そういうことでいいな? |
出島ソラ |
それはいいけど。 肝心のエターナルは、どこにいるの? |
森沢江湖 |
問題はそこだよねぇ……。 |
セクレト |
警告!!警告!! |
森沢江湖 |
うわっ、突然どうしたの? |
セクレト |
長野県に観測史上最大の時空の穴が出現しました! |
セクレト |
穴から侵出してきたこれは……怪人ではありません! 解析不能、類似データも見つかりません! |
酉原剛 |
おいおい、なにが現れたっていうんだ! |
セクレト |
侵出した地域が観測不能となりました。 これはいったい……? |
宇治館光正 |
……『宇宙の終わり』が始まったんだ。 俺たちの時代と同じように。 |
磐城藍 |
集められたカオスがこの時代を満たし、 『終わり』が呼び寄せられたに違いありませんね。 |
ウサタロー |
なんだってー!? このまま行くとどうなっちまうんだ? |
セクレト |
十二時間で長野県全域が呑まれます。 十八時間で日本全土が、その三十分後に地球全体が。 |
セクレト |
そしてさらにその五分後には、 全宇宙が呑まれることになるでしょう。 |
皆野祐樹 |
宇宙が崩壊するまでの時間、短すぎない!? |
宇治館光正 |
だが、今ならまだ間に合う! |
宇治館光正 |
そこが『終わり』に呑まれるまで、 エターナルは時空の穴のそばに隠れているはずだ! |
皆野祐樹 |
だったら、すぐに出発しよう! |
不動老師 |
うむ、ヒーロー学園全生徒に出動命令だ。 |
皆野祐樹 |
宇宙を、そして未来を守るため! みんなでダークマター・エターナルを倒すんだ! |