南米チーム プロローグ
リオ・デ・ジャネイロではKOFの派生大会が開催されていた。
非公式大会とはいえ、決勝戦は通行人さえも足を止めて見入ってしまう程の激闘であった。
その激闘も遂に決着がつき、両選手は互いに息を切らしながらも相手への敬意を評し握手を交わしあった。
「はぁはぁ……。それにしても、接近を認識させないような踏み込み見事であった。
まるで、ジャパニーズ歩行ジツ“スリアシ”のよう。
もしやお主は“サムライ”でござるか?」
「いや……。どうみても違うだろ。俺はネルソン、ボクサーだ。
そういうあんたも見た目は怪しいやつだが、その身軽な身のこなしは一流だったよ。」
「うむ。日々の鍛錬のおかげである。公式のKOFに挑むのであれば、これぐらいはできて当然でござるよ。」
「へぇー、あんたも出場するのか。俺も出場する予定だが、あと一人メンバーが集まらなくてな。
あんた、変だけど強いし、既にメンバーが決まっていなければ俺と組まないか?」
「拙者もチームを組むメンバーが居なくて困っていたところでござる。拙者の名はバンデラス。よろしくでござる、ネルソン殿。」
その後、表彰式も無事終わり、決勝の熱が冷めた観客が散り散りに散っていく。
ネルソンはもう一人の参加メンバーを紹介するために会場近くの喫茶店へと移動し、そのメンバーを待っていた。
「お待たせしました!」
明るい声と共に肩にオオハシを乗せた女性が彼らの座るテーブルへと近づいて来た。
「おっ! 来たな。彼女がもう一人のチームメンバーのサリナだ。」
「初めまして、サリナです。とてもお強い忍者さんがチームメンバーに入ったと聞いて飛んで来ました。」
「お初にお目にかかる、拙者の名はバンデラスでござる。」
「変な格好だろ。だが実力は本物だぜ。」
「いやいや、これが正装でござるよ。拙者はブラジリアン忍術道場の師範でござる。」
「でも、門下生は一人もいないんだろ?」
「ぐぬぬっ……。しかし、KOFで活躍すれば門下生が殺到すると聞いているでござる。」
「ほんとーかなぁ。大体どこ情報だよ、それ。」
「ふふふ、お二人とも仲いいですね!」
「せ、拙者のことはいいでござる。ネルソン殿はその自慢の腕のお披露目が目的でござろう。サリナ殿はどのような理由で大会に参加するのでござるか?」
「私が参加する理由は……」
サリナは笑顔を少し曇らせ肩に止まっているオオハシを撫でながら真剣な面持ちで話し始めた。
彼女にとってオオハシのCocoは家族のように大切な存在で、その仲間達の営巣地が大企業に買収され、土地開発の影響で絶滅の危機に瀕している。
その現状を打破するべく、世論にオオハシ達の危機を訴えることで土地開発を中止してもらおうと考えKOFに参加することを決めたとのことであった。
「なんと! そのような事情があったのでござるか。」
「ちなみに彼女の強さはおれが保障する。自己流だが何度か対戦済みだ。」
「なんと、サリナ殿はネルソン殿と戦ったことがあるのでござるか。ナンバー1ボクサーと渡り合えるとは、なんとも心強い。」
「あぁ、だろ。」
彼女は自身の実力を褒められ照れていたが、やはり不安なのであろう、
その笑顔には陰りが見て取れた。
「ところで、俺達の目的はバラバラだがKOFで優勝するという目標は同じだよな。ということは、今日から俺達は同じ目標の為に頑張る仲間だ。
仲間の家族を助けるのは当然だよな。」
「そうでござるな。拙者も仲間の為、サリナ殿の家族のために尽力するでござるよ。
大舟に乗った気持ちでいるでござる。」
「お二人とも、ありがとうございます! 私も精一杯頑張ります!!」
こうして、世界有数の美しい海岸のもとに一人の女性の笑顔が咲き誇り、
南米チームが結成された。
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