オフィシャルチーム プロローグ
世界有数の地下闘技場では様々な事情で表舞台に出られない格闘家達による、ルール無用の戦いが繰り広げられていた。
その中で一際、観客の視線と歓声を集めるのは目玉をあしらった奇抜な衣装に身を包む女性と仮面を目に見えぬ速さで取り替え宙を自由に翔ける女性の姿であった。
「あいつら、強ぇじゃねぇか。」
マジックミラー越しに試合を観戦していた、アントノフは満足げな笑みを浮かべ呟いた。
「電磁気力を操る元ネスツのシルヴィと四川武真流の使い手のミアンですね。どちらもこの地下格闘大会では勝率が90%を越えており、かなりの人気を誇っているようです。」
アントノフの付き人ヤコフ常務が、素早くタブレット端末で選手の情報を引き出す。
「ほぉ~、なるほどなるほど。よし常務、あいつらをオフィシャル招待チームの選抜メンバーとしてスカウトするぞ!」
「かしこまり……。
えっ、えぇええー! スポンサーから推薦のあった選手はいかがなさるおつもりですか?」
「無論、断るに決まっておる。この初代チャンピオンの強さを見せ付けるにはルックスだけが取り得の格闘家なぞ、力不足だ。」
「はぁ……そう仰るのでしたら。では、彼女達を呼んで参ります。」
とある大富豪からの商談ということでシルヴィとミアンは彼の部屋に集められ、
ヤコフの口から契約内容を伝えられる。
「KOFか……。テレビに映るのは苦手だ。だが、報酬金の額によっては参加を考えよう。」
「ポーラは全然ちっとも問題なくOKだよ! ポーラでいいの?」
「よぉし。常務、契約書を渡してやれ。」
「はい、社長。こちらが契約書になります。ご確認下さい。」
「お~、凄い額だね。目玉ちゃんもびっくり仰天の報酬だ!
……ペナルティはあるの?」
「いえいえ、ご心配なさらず。純粋なファイトマネーですよ。」
「この額なら……。さらに、会場の盛り上がり次第では追加報酬か。
契約成立だな。よろしく頼む、アントノフ社長」
「よかった。にひひ、ポーラもよろしくね、社長。」
彼女達を選抜チームに入れることが出来たアントノフは次の試合を観戦しながら自信に満ち溢れた声でヤコフに語った。
「あいつらは強い! 間違いなく大会も盛り上がるだろう。だからこそ俺の強さも映えるというもの、これでオフィシャルチームについては万全だな。最後の一人は誰でもいいぞ、その辺のおっさん釣ってこい。」
「では最後の一人は、スポンサー推薦の選手をアサインするという方向で……」
「その必要はない。選抜チームの最後の一人ならここにいる。早く雇えクズ共が。」
突如、声をかけられ振り返ると、フードで顔を隠した男が部屋の隅に立っていた。
「なんだ口の悪い奴だな。いつのまに現れたんだ。まったく気が付かなかったぞ。」
「雇うのか雇わないのかはっきりしろ。商談は早さがものをいうことを知らないのか。」
「しゃ、社長……。いかが致しますか?」
「うむ。その啖呵気に入った! 常務こいつにも契約書を渡してやれ。」
「えっ? よろしいのですか社長。」
「かまわん、この俺に気配を察知させないなど、並大抵の奴にできることではない。
きっと、強いに違いない。名は?」
「ククリだ。では、契約成立だな。
時間がもったいない、契約内容の説明や交渉は不要だ。何かあればここに連絡しろ。」
そう告げ、契約書を受け取ると、ククリは砂の残像と連絡先の書かれたメモを残し二人の前から消え去るのであった。
Prrrrr……Prrrrr……「俺だ……。KOFへの参加は完了した。報告を待っていろ。」
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